ある日、体が小さくなりました
今話8000字弱、長いです。それでも、最後までお楽しみいただければ幸いです(/・ω・)/
イラストは漫画家のくゑ様に有償で描いて頂きました!とっても素敵でしょ♪
「ジュリエット・セレスタイン!貴様のような性悪な悪女はこの由緒ある学院に相応しくない!!即刻、この学園を立ち去りたまえ!!!」
多くの生徒達が集まる講堂で突然始まった断罪劇。
壇上から声高らかに叫んでいるのは、この王立魔法学院の生徒会長である侯爵家の令息だ。
彼に続き、生徒会役員に名を連ねるこの王国の有力貴族の令息達もジュリエットに対して口々に糾弾し始める。
中には「悪役令嬢」と罵る言葉も聞こえてくる。
衆目に晒されるような場で一方的に非難されているジュリエット・セレスタインは、深紅の艶やかな髪を揺らせ、きつく見えてしまう目尻の上がった翡翠色の瞳を壇上に向けた。
「わたくしが性悪の悪女で悪役令嬢とは、一体どういう事ですの?それに、国王陛下でも学院長でも講師でもない、生徒会長というだけの一生徒に、学院を去れと命令されましても承服しかねますわ。そのような権利、貴方にはございませんでしょう?」
震えそうになる声を低い声色で誤魔化し、たじろぐ生徒会長を尻目にこの状況を作り上げた真犯人をじっと見据える。
するとその人物は、水色の瞳を潤ませながら猫なで声を上げた。
「きゃっ……ジュリエット義姉様が睨んでいらっしゃるわ」
ジュリエットの従妹であるセシリア・セレスタインは、いつものようにジュリエットに睨まれたと訴え涙目となった。
ジュリエットのきつい目つきは父親似で、睨んでいないのによく誤解される事が多かった。セシリアはその誤解を逆手に取り、ジュリエットを貶める目的で毎回睨まれたと騒ぎ立てる。
だが今は、意思を持って鋭い視線をセシリアに向けていた。
セシリアにすっかり唆されている生徒会長は、セシリアの綿あめのようなピンク色の髪を撫でて小動物のように震えている体をさすって慰める。
そして、ジュリエットを射殺さんとばかりに睨み付けて叫び始めた。
「口の減らない悪女が!いくらお前がペラペラと御託を並べようとも学院を追放されてもおかしくはない悪行の数々を俺達が知らないとでも思っているのか!!」
「心優しいセシリア嬢の人気に嫉妬したお前は、彼女のドレスを引き裂きアクセサリーを強奪したと聞く」
「さらには!池に突き落とし溺れさせ階段からも突き落とすだなど……なんとも非道な行い!お前の行いはれっきとした殺人未遂だぞ!!」
彼らの口から発せられるジュリエットの行ったという数々の悪女ぶりは、身に覚えのないもの。全ては――セシリアの虚言である。
正義感に燃えるかのごとく、ヒートアップしている彼らに守られるように隠れ、ニヤリと口角を上げたセシリアをジュリエットは見逃さなかった。
(どうして……一体どうしてこうなってしまったの……!)
♠♡♦♧
ジュリエット・セレスタインは、ヘリオドール王国でそこそこ古い時代からある伯爵家の一人娘である。
父親のセレスタイン伯爵の妻で、ジュリエットの母親であるオパールは、ジュリエットが幼い頃に儚い人になってしまった。
二人の間にはジュリエットの他に子供はいなかったが、父親は後妻を娶る事や養子を迎える事はせずにいた。
なぜならヘリオドール王国は、18歳で行う成年の儀式を終えれば女性であっても家督を継ぐ事ができるため、セレスタイン伯爵はジュリエットに当主の座を譲るつもりでいたのだ。
そのため幼い頃よりジュリエットは、座学や魔法の教育を受けながら淑女教育も受けてと忙しい日々を過ごしており、仕事で屋敷に殆どいなかった父親とあまり顔を合わせる事のないすれ違いの生活を過ごしていた。
親子関係が不仲というわけではなく、お互い腰を据えてゆっくり話す時間がなかっただけであった。
16歳で王立魔法学院に入学してから数年が経ち、最終学年に上がったその日に悲劇が起きた。
父親であるセレスタイン伯爵が乗る馬車が事故に遭い、そのまま帰らぬ人となってしまったのだ。
ジュリエットは父親の死にショックを受け、茫然自失の状態で自室に籠りがちになっていた。
「ジュリエット大丈夫かね」
「叔父様……」
両親の肖像画が収まるロケットペンダントを開いたり閉じたりと、虚空を見つめながら繰り返していたジュリエットは、部屋を訪ねた叔父に声をかけられてようやく我に返った。
セレスタイン伯爵の弟である叔父は、そんな状態のジュリエットを見るや否やある提案をする。
「ジュリエット、私はお前が心配だ。兄上が亡くなりこんなに気落ちしているお前がすぐに執務を行うのは少しばかり酷だと思うのだ」
そう諭すように語りかける叔父の手には、必要事項の記入が既にしてある貴族院へ提出するための書類がある。
「叔父様、それは爵位譲位の……」
「一時的に伯爵位を継ぐための書類だ。ジュリエット、お前はまだ爵位を継ぐ年齢ではないから私が代理人となるしかないだろう」
叔父の手から書類を取って見ると、あとはジュリエットのサインが必要なだけの完成された書類となっていた。
相談もなく用意した叔父のあまりの手際の良さに、ジュリエットは僅かに抵抗を感じる。
しかし、今の自分では力不足だとも感じていた。
というのも、デビュタントを終えた後は父親の下に就いて仕事を覚え、徐々に独立していく手筈を父親と取り決めていたからだ。
そのため、父親の業務補佐を行っていた叔父の方が適任であり一時的に伯爵代理となってもらう方が良いのではと、精神的ショックから頭が回っていないこの時はそう思っていた。
「では、わたくしは学院を辞めて業務補佐をいたしますわ。早く仕事を覚えて、デビュタントが終わり次第すぐに爵位を引き継げるようにわたくし頑張ります」
「ジュリエット……兄上も卒業するまでは学院生活を楽しみなさいとおっしゃっていただろう。私も兄上と同じ気持ちだ。それに、今はお前の心のケアの方が先だ。悪いようにはしないから私に任せておきなさい」
父親と面持ちの似た叔父が眉を下げて労わるような眼差しを向ける。その瞬間、堰を切るように涙が溢れ出した。
「うぅ……お父様……」
肩をさする叔父がほくそ笑んでいる事に気付かないまま、ジュリエットはサインをするためにペンを手に取った。
叔父の伯爵代理を認める正式な公文書が貴族院から送られてくると、ジュリエットの同意もないままあれよあれよという内に屋敷に叔父家族が移り住み始めた。
叔父の妻である夫人は化粧もドレスも派手な人で、ジュリエットを明らかに疎んでいる様子であった。
ジュリエットも夫人とは昔から馬が合わなかったが、それよりも2つ歳下の従妹セシリアの方が苦手だった。なぜだかセシリアは、ジュリエットを貶める事ばかり周りに風潮するからだ。
ジュリエットに髪を引っ張られた、押されて転んだ、つねられた。
無論、ジュリエットは一切そのような行いをしていないと否定するが、セシリアがつく小さな嘘は、どういうわけか周りを信じさせる力を持っていた。
今までは距離を取る事で難を逃れていたが、セシリアが魔法学院に入学する年齢となり学院内で顔を合わせるのかと頭を悩ませていた所に、まさかの同居生活である。最悪の生活にジュリエットは苦しんでいた。
それは、学院でも同じであった。いや、学院の方が酷い状態になっていた。
セシリアの吐く嘘はだんだん一人歩きしていき、ジュリエットは従妹を虐めるとんでもない悪女となっていたのだ。
巷で流行しているロマンス小説に登場する「悪役令嬢」と皮肉られ、卒業までの残りの学院生活まで肩身の狭い思いをしなくてはならなかった。
父親が願っていた学院生活を楽しむなんて到底出来るような環境ではなく、ジュリエットは学院を辞めて仕事をしたいと何度も叔父に訴えかけたが叔父に退けられていた。
こうなったら貴族院に訴えて叔父の伯爵代理を無効化し、屋敷から叔父家族を追い出そうとも考えたが、貴族院の調査が入ってもセシリアの虚言を信じている屋敷中の者達が味方となり、社交界にまで広まっているジュリエットの悪女の噂のせいで耳を傾けてはくれないだろうと思いとどまった。むしろ、叔父達を追い出そうとしていると、ジュリエットの悪女ぶりがさらに広まるだけだ。
屋敷でも学院でも味方はおらず、居場所を奪われていったジュリエットとは対極的に、セシリアはさらに高位貴族の令息達を味方につけていった。見目麗しい令息達に囲まれお姫様のように扱われる。それに、青色の大きな瞳をパチパチと動かすと惚けた令息達が願いを叶えてくれる。
そんな異常とも思える状況を誰一人として不審に思わず、魔法使いの多い学院の講師達もセシリアに傾倒する者、高位貴族とトラブルになりたくないと見て見ぬふりをする者と、もはや講師でさえも当てにならず、学園長でさえも無言を貫いていた。
♠♡♦♧
講堂に呼び出されたジュリエットを待っていたのは、壇上から断罪を叫ぶ生徒会役員の令息たちと、嬉しくて笑いが止まらない顔をしているセシリア、そして忌々しげにジュリエットを取り囲む学院の生徒達であった。
「わたくしはセシリアを貶める行動や言動をとった事は一度もございませんわ!これは冤罪よ!」
かなり切迫した状況の中で、ジュリエットが声を張り上げて必死に抗議をする。
ジュリエットは翡翠色の瞳を真っすぐ生徒会長である侯爵家の令息へと向けた。
その一瞬、「うっ」と令息は悲痛な表情を浮かべたように感じたが、セシリアが泣きまねを始めると、そちらに反応してまた鋭い目つきに戻ってしまう。
「嘘よ!嘘!!ジュリエット義姉様は嘘ばっかり吐くの!皆、嘘つきを信じないで!!」
嘘つきはどっちだ――!
ジュリエットは悔しくて震える拳をぎゅっと握りしめ心の中で叫んだ。
「嘘つき」
誰が言ったのか、その一言で講堂内が一瞬静寂に包まれる。
そして、波が押し寄せるかのように一斉にジュリエットを糾弾し始めた。
「嘘つき!」
「嘘つきの悪女は出ていけ!」
「消えろ!悪女!!」
「悪女を掴まえろ!!」
「嘘つきな悪女に制裁を与えろ!!!」
暴徒化した生徒達は目をぎらつかせながらジュリエットににじり寄る。誰かが掴まえろと叫ぶと一斉にジュリエットに飛び掛かってきた。逃げるために扉に向かって走り出したジュリエットの腕を掴み、髪を引く。
迫ってきた大勢の手によって後ろへ倒されたジュリエットは必死で魔法を紡いだ。
すると、ジュリエットの周囲から旋風が起こり、覆いかぶさろうとする生徒達の体を弾き飛ばしていく。
その隙にジュリエットは立ち上がって駆け出すと、扉の前に数人の生徒が立ちはだかった。
「おどきなさい!」
声を張り上げて魔法を紡ぐ。大きな風の塊がジュリエットから放たれると、扉の前の生徒たちが慌てて避ける。
直後、ドカンと大きな音を立てて扉が破壊されると、ジュリエットはそのまま外へと飛び出した。
すぐ背後からはなおも追いかけてくる足音が複数聞こえ、ジュリエットは走りながら小さなガラス玉よりも小さい風の球体を指先で作り、振り向いて追いかけてくる生徒達の足元に狙い撃ちした。
足に当たった者達が次々と転んでいき、転んだ者につまずいてさらに転ぶといった具合に、うまく足止めが成功しジュリエットは正門の馬車寄せまで走った。
貴族が多く通う学院にしては似つかわしくない、真っ黒に塗られた窓のない馬車が停車しているのが目に入る。
そして次の瞬間――
馬車の扉が勢いよく開き、顔を隠した覆面の男達がジュリエットの体を掴んで馬車の中へと引きずり込んだ。
「いや!たすけっ」
「早く出せ!」
助けを求めて叫ぼうとすると、男が馬車を出すように吠える。よほど慌てているのか扉は半開きのまま走り出す。
ジュリエットはこの機会を逃さまいとして、半開きの扉側にいる男を両足で思い切り蹴っ飛ばした。
「うおぁ!??」
扉から体が外へ飛び出した男は必死で馬車にしがみ付いて、投げ出されないように踏ん張る。
「こンのアマ!」
ジュリエットを掴んでいたもう一人の男が、ジュリエットに向かい拳を振り上げて思い切り殴った。
口の中でじわっと血の味が広がるが、ジュリエットは構わずに魔法を紡いだ。
「こいつ……!」
魔法の気配に気付いた男は、ジュリエットの両手に魔法封じの手枷をはめる。だが、一瞬の差で先にジュリエットの魔法が放たれた。
「うわぁ!!?」
「くそ!ふざけんな!!」
馬車の床に穴を開けて車軸を壊したせいで、バランスを失った馬車が大きく揺れ動く。
慌てふためく男達の隙をついて、ジュリエットは魔法で開けた床の穴に、意を決して飛び込んだ。
「うっ……く……」
走行中の馬車から落ちた体は、ゴロゴロと石畳の車道を転がってやがて止まる。気が遠くなりそうな程の全身の痛みに、歯を食いしばりながらジュリエットは立ち上がった。
少し先で横転している馬車を見ると、馬は倒れて暴れ、投げ出された御者が呻き声を上げている。
覆面の男達が中から出て来ない内にと、ジュリエットはよたよたと歩き出した。
ジュリエットの転がり落ちた場所は、まだ学院の敷地内で「妖精の森」という目に見えない小さな妖精たちが住まう森だ。
生い茂る草木に足をつまずかせながら、日の暮れ始めた森の奥へとあてもなく進む。
大木に身を預けて一息ついた時であった。ガサッと草木を踏む足音が聞こえて、ジュリエットはビクっと身を震わせ警戒した。
「誰ですの!?」
ハッとして両手で口を押さえる。
声を出せば自分の居場所を教えているようなものだ。
近付いて来る何者かに備え魔法を紡ごうとすると、両手を拘束する魔法封じの赤いリングが光り、ジュリエットの手首をぎちちと締め上げる。
「痛っ……」
リングに黒い呪詛の文字が浮かんでいる間は、対象者を締め続ける仕様で、ジュリエットは痛みに顔を歪める。
やがて呪詛の文字が消えて締め付けがなくなると、魔法を使えない緊急事態に気付いてバクバクと心臓が打ち鳴らし始めた。
(どうしたら……魔法封じのせいで魔法を使えないわ)
何者かが近づいて来る恐怖にジュリエットは目をぎゅっと瞑り、はっはっと短く荒い呼吸を繰り返す。
(さっきの人攫い!?それとも学院の生徒――!?)
近くでガサッと音がしたその時、目を開けると目の前に黒いフードを被った人影が立ちはだかった。
「――ッ!!」
声に鳴らない悲鳴を上げたジュリエットは恐怖で体が硬直する。
フードで顔を隠す人物の顔を見ようとした瞬間、口元が弧を描いたように見えた。
「きゃぁぁぁぁ!」
ジュリエットは一瞬で黒いモノで体を覆われた。
その黒いナニかは生き物のようにうごめき、ジュリエットの全身に纏わりつく。
背中に焼き印を押し付けられているのか、燃えるような熱さと激痛にジュリエットは悲鳴を上げる。
やがて呪詛の文字が浮かび上がり全身を取り囲むと、何かを吸い取られていくような感覚に立っていられず膝から崩れうずくまる。
とどめを刺す気なのかフードの人物がジュリエットに近付く気配がする。
(わたくし……ここで死ぬのね……)
ジュリエットは死を覚悟し目を閉じた――その時、ジュリエットの体を金色の光が包み込む。
日が落ちた暗い森の中で、急に目に突き刺さるような強い光。フードの人物は思わず小さな呻き声を漏らすと目を覆う。
「そこに誰かいるのか!?」
突然、森に男の声が響き渡る。
駆け寄って来る足音にフードの人物は舌打ちをし、未だ目がくらんで良く見えないままに慌ててその場を逃げ出していく。
「この辺りが光っていたと思ったが……って……ん?何だ?」
(誰……?)
フードの人物とは違う気配を感じたジュリエットは、頭上から聞こえてきた男の声に反応して恐る恐る目を開ける。
すると先ほどまでは無かった、視界いっぱいに生い茂る大きな草、そしてさらに大きな人の足が見えた。
目線で人の足を伝い、見上げたジュリエットは瞠目したまま固まった。
そこには、何メートルもありそうな大きな人間、巨人が立っていたからだ。
「きゃ……!???」
ようやく体が動いたジュリエットは、立ち上がって後退りをするが足がもつれて尻餅をつく。
「うわっ動いた!何だコレ……??」
巨人のような大きな男もジュリエットの姿を見て驚きの声を上げる。
男はその場でしゃがんで手に持っていた魔道具のランプをかざしながら観察するようにジュリエットに顔を近付けた。
「え……」
男の顔が魔石に灯る黄色い光に照らされると、ジュリエットはポカンと口を開けて惚けてしまった。
なぜなら、きらきらと星を散りばめたように輝くシルバーブロンドの髪、そして藤色の瞳を持つ、物語に出てくる王子様のような美しい容姿をした、とんでもないイケメンの巨人であったからだ。
「お前は高位の妖精なのか?」
しばらく惚けていたジュリエットは、男の声で我に返ると慌てて目を逸らした。
(いけない!巨人とはいえ3秒以上も殿方を見つめてしまったわ)
ジュリエットの体に染み付いている厳格な淑女教育――その内でも、特に注意が必要なランキング上位に入るマナーを破ってしまった事に、淑女教育の講師の顔を思い出してあわあわと挙動不審となる。
「おーい聞いてるか?」
自分の世界に入り込み、男の話を聞いていないジュリエットに再び声がかかった。
ハッとして顔を上げると、胡坐を組み膝に頬杖をついている男の表情が、「面倒くさい」と語っている。
「あ、あ、あなた……」
「おっ喋った」
「なななななんで、そんなに大きいのかしら!??」
まさか、そんな事を言われると思わなかった男は一瞬あっけにとられ、すぐに眉を寄せて不機嫌そうにジュリエットを指差した。
「はぁ?たしかに背はデカい方だが、そんな驚く程デカくねぇよ。つーか、俺がデカいんじゃなくてお前が小さいんだよ」
「え?わたくしが小さい……それってどういう……?」
イケメンなのに口も態度も悪い男の不穏な指摘に、嫌な予感が走り冷や汗が伝う。
よろりと立ち上がり周りを見渡すと大きくて太い草がジュリエットの腹部まであり、森の木々は首が痛くなる程見上げないと上まで見えなく、全ての景色がとんでもなく大きくなっている。
「どういう事なの……?何で、体が小さく……」
「あっおい!」
今日一日、立て続けに襲われて必死で逃げ続けたジュリエットは、体力も思考もすでに限界を超えておりそのまま気を失うように倒れこむ。
大きな草がクッションになるかと思ったら予想外に体は温かい所に落ちて、咄嗟に男が受け止めてくれたのだと気付く。
手の平の温もりに安堵して無意識にすりっと頬ずりをすると、ぼんやりとした意識の中で困惑するように揺れた藤色の綺麗な瞳と目が合う。
ジュリエットは微笑みを浮かべると、鉛のように重たくなった瞼をそっと閉じて意識を失った。
⇒次話、3/6の7時です。
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