2話
それから一年後……
ということがあって現在の俺が生まれたってわけさ。
どうだよ、滑稽だろ。
自分で絶対にウケると思っていたギャグが全くウケなくて、その後結局なすすべなくクラスカーストの最底辺に落ちていった俺は無様だろ、笑えるだろ。
笑えよ、笑えばいいだろ。
クソっ、なんでだよ。
何で俺がこんな目に遭うんだよ。
俺が何したってんだよ?
まあ、つまらないギャグはかましたんだが。
いじめられはしなかったものの、結局誰にも話しかけられることなく一年間分終わった。
なんなら挙句の果てに英語の授業の時なんて二人で英会話する時はどんな人だろうと俺の時だけ無言を貫かれたよ。
俺の英語の成績どうすんだよ。
ただでさえ英語が苦手なのに、英会話を真面目にやってないと判断されて去年は英語の評定が2だったんだぞ。
俺だって最初の1日以外でアクションを起こさなかったわけじゃない。
だがその全てが裏目に出て失敗に終わった。
荷物運び手伝おうと思ったら中身は女バレの洗濯物だったり、女子が辛そうに下腹部を抑えていたから励まそうと声を掛けようとしたらついポロッと
「大丈夫?生理でも来た?」
と言ってしまい、ビンタされてしまうなど。
今考えるとよく俺いじめられなかったよな、と思ってしまうようなことをしてしまっていた。
もう疲れたよ、パトラッシュ
やることなすこと裏目に出るのはもう沢山なんだよ。
俺は悟ったよ、俺が友達を作るなんて100年早かったってことが。
もう諦めるよ、どうしようもないんだ。
そういう星の下に生まれてきたと諦めるしかないんだ。
マジで高校生活最悪だぜ。
今日は5月6日。ゴールデンウィークも終わり、周りが「ゴールデンウィーク中どこ行った〜?」なんて会話が飛び交っている。
同然のように俺はその会話に参加していない。
参加できてないのほうが正しいのかもしれない。
学年が変わり2年生になったからと言って何かが変わることはなかった。
あいも変わらず俺は周りに馴染めていないし、かと言って他のクラスに友達がいるなんてこともなく………
休み時間は教室で本を読んでいるだけ、昼飯は一人、一緒に帰る人もいないから一人電車に揺れる帰路。
普段と変わらないいつも通りの生活だ。
だが一つ変わったことがある。
それは俺の席の隣には学校トップレベルの美少女がいるということだ。
彼女の名前は椎名奏。
彼女は文武両道、容姿端麗、温厚篤実という三拍子揃った完璧美少女だ。
その完璧さからか、周りからは必ずさん付で呼ばれ、ある一部の心酔するもの達は様を付けられて呼ばれることもある。
そういうすごい人間は出る杭は打たれるの如く、虐められるなんてことがあるかと思う。
見た目、成績だけが優秀なら虐められていたかもしれない。
だが彼女は先程の通り性格も素晴らしいのだ。
誰もやりたがらない学級委員に進んでなり、先生に頼まれ荷物運びをやらされている時に一緒に運んであげていたり、何より俺が教科書を忘れたときに机をくっつけて見せてくれるなどクラスの中で地味な俺にさえも優しくしてくれるのだ。
その時高校に入って初めて人の優しさに触れたような気がする。
そんなわけで椎名奏は非の打ち所がない完璧美少女が隣の席にいるというのはなかなかに羨まれる状況なのだ。
別に彼女とお近づきになりたいわけじゃない。
ただ、純粋に隣に美少女がいるという事実が実に気分がいい。
それだけで何故か去年よりも良い状況になったと思わせてくれる。
まあ、それでも友達がほしいと思う気持ちは変わらないけどね。