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灰色世界と空っぽの僕ら  作者: 榛葉 涼
第三章 調査団
99/135

闇空へと堕ちる

 

 次に気がついた時には、空へ向かって堕ちていた。


 眼を失い、肌を失い、感覚を失い…なのに堕ちていることはすぐに理解ができたのだから不思議だ。堕ちている。落ちているのではない。堕ちているのだ。


 無いはずの眼を開いた。そこには闇が広がっている。黒を黒で塗りつぶしたどす黒い闇……一体、この闇の正体とは何なのだろうか? 答えを出せないその疑問にはとっくの前に背を向けた筈なのに。空へと堕ちていく過程にて、脳裏をチラついたのだった。


 ふと横を向く。見知った顔ぶれがそこには在った。


 

 アサギ、サユキ、エイガ、レイン。他にもたくさん……知っている者から、知らない者まで。


 彼らを認知し、自らを悟った。捨て置かれたのだと。


 

 ……………。


 

 無いはずの眼を閉じる。自らの中に、自らでは無い存在を感じ取った。ただ、彼らは入ってきたのでは無いのだ。ずっとずっと昔から。それこそ自らが存在を始める前から、自らの中にあり、自らを象っていた。故に、“忘れていた”という表現が最も近しい。


 自分は、自らへと“確認”を行うことにした。


(ごめん。たくさん混ざり過ぎちゃってて、今まで声に気がつかなかったけどさ。君たちは、生命があった頃の人間だね? )


 そう尋ねると、自分の中で自らの声が反響をした。無いはずの耳で確かに聞き取る。


(そうか……この闇の原因はやっぱり人間だったんだね。取り返し用の無い罪を……隠す? 美談? そうかい。教えてくれて、ありがとう。ありがとう)


 お礼を言うと、人間の声は聞こえなくなってしまった。多分だけれど、人間が語ることを止めたのではなくて、自分の方に問題があったのだ。



 ――もう、思い出せない。自分とは……一体どのように呼称をされていたのだろうか? 横に在る顔ぶれとは、一体誰なのだろうか?



 無いはずの頭を使った。記録(きおく)を探し求める。記憶ではなくて、記録。自分たちを人間以下の存在として位置づけるためのケジメ。



 自分はたった2つを追録(ついおく)した。1つは、自分がとても強い信念を持っていたということ。でもその内容を思い出せない。すごく大事なことだったのに……忘れちゃいけないことなのに、忘れてしまったなんて。


 

 ――でも、もう1つのことはちゃんと覚えていた。その名前を繰り返す。



(シヅキくん、シヅキくん、シヅキくん…………)



 自分を捨て置いたホロウ。自分を犠牲とし、己が力として取り入れたホロウ。その目的とはとてもくだらなくて……自分はシヅキの為に犠牲となった。犠牲、犠牲となった……。


(でも……それは、君が救いへと辿り着くために必要だったんだね)


 その原動力は痛いほどに理解ができた。99と100、どちらを選ぶかって訊かれれば、後者を選ぶことは当然で……。これはそのような話なのだ。つらつらと語るは、たったソレだけなのだ。


 無いはずの眼を再び閉じた。1つ目の追録、その内容がポッカリと抜けているのはきっと、自分の半分程度が()()()()()()()のだと悟った。残った自分が持っている。まだこっちに受け渡したくはないようだ。


(自分は……酷い奴だね)


 闇空へと堕ちる、堕ちる、堕ちる。末路とは闇だった。 ……闇で待っているよ。また会えたら、その時は少しくらい愚痴を聞いてもらってもいいかな? 許しておくれ。 



 ――たださ、その代わりに。



 (今は君のことを手伝うよ、シヅキ)



 無いはずの心に、確かに誓いを立てた。




 ※※※※※



 ……………………。


 ……………………!


 腕が熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。


 魔素がみなぎる。なんだこれは。余力なんて言葉は不適格だ。 ……だとするならば、この力の名前とは何なのだろうか?



 ――ダボダボの白衣を着た、背の低いホロウが、通り過ぎていく。



「……ブラフとは、ワタシの得意分野だ」


 視界一杯に、コクヨが映る。蔦で拘束をしたその身に向けて、剥き出しの刀を振るい上げていた。このままでは(ころ)される。突破には力が必要だった。


 故にシヅキは(こいねが)った。



『仕方ないなあ。分かったよ、シヅキくん』



 その幻聴が、後押しをした。


 「…………っ!!!!!!!!!!!!!!」



 グシュ


 

 肉と骨を裂く、最低な音が棺の滝にて虚しく鳴った。


「ガ…………アァア゛…………!!!」




 

 耐えがたい痛みに、コクヨがその顔を歪める。


 


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