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灰色世界と空っぽの僕ら  作者: 榛葉 涼
第二章 “絶望”
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変な子


 目の前に並ぶ2体を交互に見やった後、茶色の癖っ毛が印象的なホロウは露骨に怪訝な表情を浮かべた。


「……あなたたち、何があったのほんと」


 サポートが主な役回りの雑務型……その1体であるソヨは、心底呆れた声で訊いた。


「シヅキとトウカさん……2体がチームを結成してから数日が過ぎて、そろそろ慣れだしたかなー? なんて思っていたけど。蓋を開けてみたら、あらあらまあまあ」

「……チッ」

「あー! 今シヅキ舌打ちしたよね? いいのかなー? ソヨさんにそんな態度とっちゃって」

「うっせーよ黙れ。虫酸が走んだよ!」


 ドスの効いたシヅキの声はオドのロビー中に響き渡る。2Fの連絡通路から数体のホロウが覗き込んだ。


「……クソがよ」


 吐き捨てるように言ったシヅキ。彼が頭上を睨み付けると、すぐに野次馬たちは顔を引っ込めた。


「シヅキねぇ、もうちょっと低圧的な態度にしてくれない?」

「あ? 低圧?」

「高圧的の対義語。雑務型の中で流行ってるのよ。嘘だけど」

「……今日の任務はこなしてんだ。俺はもう帰んぞ」

「ちょっと、シヅキさぁ」

「……付き合ってやる義理はねーんだよ」


 漆黒のフードを目深にかぶったシヅキ。睨むようにしてソヨを見た後に、そそくさとロビー奥へと消えていってしまった。


「あー……もう」


 額に手を当てて、首を横に振るソヨ。シヅキを呼び止めることも諦めてしまったようだった。


「……ごめんなさい」


 そんなソヨを見て、小さな声で謝罪するホロウが1体。両手にギュッと握られた錫杖は小刻みに震えていた。


「初めにオドを訪れたときは、あなたたち……相性は悪くないかなって思ったんですけどね」

「あまり、良くなかったみたいで……」

「今のシヅキはちょっと会話出来ないみたいで。厄介なんですよ。あそこまで怒ってしまうと」


 そう言いながら、シヅキが消えていったロビー奥を一瞥したソヨ。視線を戻した先にあったトウカの表情は、今にも泣き出してしまいそうだった。


「私の、せいで」

「トウカさん……」


 すっかりと、どんよりしてしまった雰囲気。ソヨは自身の頬をポリポリと掻いた。


(どうしたものかなぁ)


 心の中で呟いたソヨ。こればかりは2体の問題であろう。雑務型という役職は、他の型のサポートはすれど、個人間の友好関係にまでは踏み込まない。


 トウカから提出される魔素は、他のホロウと比べて別段少なすぎる訳ではなかった。魔人を浄化して、魔素を回収する……そんなやるべきことはやっているわけだ。任務の遂行に支障は出ていない訳だから、ソヨとしては、2体の問題に我関せずの態度を取ってしまっても問題ないわけだが。


「……」


 改めてトウカを見た。白銀の髪が少しだけ掛かった琥珀色の瞳は、ひたすらに足元を見つめている。 ……というよりは前を見られないのかもしれない。本当にシヅキとのことについて落ち込んでいるのだろう。


(いい子なんだろうなぁ)


 それは、数回会話を交わした程度のソヨにでも分かることだった。そこに関しては演技でも何でもない、性格なんだろうなと。


 ――だからこそ、企みを抱きオドへとやって来た彼女の動機が気になるのだが。


ソヨは、トウカが溢してしまった“あの言葉”を思い出しながらそう思わざるを得なかった。


「ハァ」


 どこかの誰かのように溜息を一つ吐いたソヨ。兎にも角にも、対話しなければ分かるものも分からないだろう。


「……変な子が入ってきたなぁ」

「え」

「あ、やば。口に出てた」


 ソヨは口元にサッと手を当てたが、当然それは意味のある行為ではない。ソヨを見上げるトウカの表情は訝しげだ。


 そんなトウカを見て、ソヨは明るい口調でこう提案した。


「トウカさん、少しだけお話しましょうか」

「お、お話ですか?」

「ええ。 ……ですが、雑務型は個人間の問題まで踏み込むことはできません。プライバシーと呼ばれるもののせいで、です。なのでここは業務をサボろうかと思います」

「え……?」


 呆気にとられたようで口を半開きにしたトウカ。それをを気にすることもなく、ソヨはトウカの手を強引にとった。そしてニッと笑う。


「ガールズトークでもしようか! トウカちゃん」



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