自分嫌いは得をする
自分を嫌いすぎた女の子の独白。
突然ですが、私は自分が嫌いです。鏡を見ると目眩がし、録音された声を聞くと耳鳴りがし、髪の毛から香る石鹸の匂いは、吐き気を催します。
手を見ると、あかぎれやひび割れなどの荒れがすごく、顔を見ると引っ掻き傷やニキビ、そばかすなどの荒れがひどい。
全てが醜く気持ち悪い。だから私は自分が嫌いです。
でも、そんな私にも好きだと言ってくれる人がいます。
手荒れはたくさん働いて出来た勲章だと、言ってくれました。
だから私は彼のために尽くそうと決め、好きになってもらうために必死になりました。
手や顔のケアはもちろん、髪も爪も見えるところ全てを綺麗にしました。
私が自分で決めて、行動しただけです。彼に言われてません。
変わり始めた私を、彼以外の人間も興味を持ち始めました。今まで見向きもされなかったのに、すれ違うと振り向かれるようになりました。
彼も私を見てくれて、好きだと言ってくれました。
私も彼が好きだったので、付き合うことになりました。
付き合い始めてから、彼は変わりました。俺はお前のためにこうした、だからお前は俺のためにこうするべき。俺はお前のためを思って言っている。
俺のことを想ってくれてるなら、できるだろ?
今までの行動が嘘みたいでした。俺はこうした、俺は、俺は。人間を支配するというのはどこまでも滑稽で、醜いことを知りました。それに従うことはもっと醜いのだと。
そして気づきました。彼をこのようにしたのは誰なのか。どうしてこうなってしまったのか。
全ての原因は私だったのです。
私は彼に気に入ってもらうためだけに行動しました。周りの言葉も聞かず、1人で走り続けました。結果彼は、私だけを見てくれました。あの時以来、褒めてくれなかったけど。
彼に、人を支配する快感を教えてしまった。
もう私はここから抜け出せません。彼のために私の一生を捧げるしかないのです。
彼を変えてしまった、その責任をとらないといけない。これからもずっと、彼のそばにいることが、せめてもの償いになるはずなんです。
殴られようが蹴られようが、罵られようが全てを否定されようが、私は受け入れるしかないのです。
でもね、先生。
私は幸せなんです。
彼と一生を過ごせることが。好きな人と共に死ねるのが。
そう思うと、得をしたって思えてくるんだ。
私のせいで彼はこうなってしまったけど、根はいい人なの。壊してしまったのは私なんだけどね。
だから悪く思わないで。これは私のせいなの。私の責任なの。私の、罪なの。
あぁ、だけど1つだけ言いたいんだ。
私、好きだけど、大嫌いなの。