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3:ウィンナー→勝利

*第1話を改稿しました。情報量が多かったので少し削った程度です。

 ストーリーに変更はございません。

「なっ、なんだこれ。奴らの攻撃か!?」


 慌てて避けると、黒い球体はブォンっと鳴って消えた。

 ふ、ふぅ。なんとか躱せたな。

 う、今のでなんか疲れた。ちょっと休憩しよう。


 下を警戒しつつ、朝食の準備をする。

 今日はキャベツも一緒に挟んで焼こう。


「あっ。俺のウィンナー!」


 ぽろっと落ちたウィンナーは、そのまま転がって木の下へ。


『ギュ!』

『ギュギューッ!!』

『ギィーッ、ギギュ』


 え、なにこれ怖い。

 一本のウィンナーを巡って、兎が殴り合いを始めたぞ。

 人参には見向きもしなかったくせに、ウィンナーは好物かよ!

 つまり肉食ってことだよな!


 どうしよう。どうしよう。

 と、とにかく食べよう。

 腹が減ってたらまともに考えることもできやしない。

 落ち着くためにも──


「ふぅ、食った食った。贅沢言えばウィンナー以外の肉もやっぱり欲しかったな」


 腹も満たされたし、片付けも終わったし、次は兎だ。

 あぁ、また増えてるよ。

 なんとかして奴らを追い払いたいけど、武器になりそうなのはパン切包丁と火ぐらいか。


 そのうち諦めてくれないかなと様子を見続けて、更に一日が経過した。

 未だに兎モンスターは木の下にいる。しかも夜の間に数が増えて、倍近くになっていた。

 こうなったら強行突破するしかないか?


「無理……だよなぁ。兎にしては大きいし、狂暴だし。お?」


 兎が一匹、その角を使って巨木に突進してきた。

 さすがに大人数十人が手を繋いでやっと届くぐらいの太い幹だ。ビクともしない。

 けど──


「おいおい、だからって協力して突進してくることはないだろっ」

『ギギギューッ』


 何十匹が一斉に頭突きをすれば、さすがに太いこの木も揺れる。

 

「おい止めろ、止めろって! あぁくそ! こんな所で死んでたまるかっ。

 せっかく異世界に来たなら、冒険ぐらいやらせろよっ。なにがスキルなしだ! ふざけるな!

 なしなら、あっちも無し(・・)にしろよ!」


 ブォンっと、また電子音のようなものが聞こえ、黒い球体が目の前に浮かぶ。

 兎の攻撃!?


 ──いや、違う?

 ただ浮かんでいるだけだ。


 そういえばさっきも、俺が兎に向かって怒鳴った時に出て来たな。

 てっきり攻撃だと思ったけど、もしかしてこれ……


「俺か?」


 スキルはないんじゃなかったのか。

 けどそうしたらコレはいったい何だ?


 ユニークスキル:無


 無し……ん?

 普通は「なし」なら「無し」って書かないか?

 んー、でも有無の確認なら「無」でもありだよな。


「これが実は『なし』ではなくって、"()"だとした──ほわっ!?」


 黒い球体がまた出た!

 ぐっ、なんか眩暈がする。さっきもあの球体が出た後、体がだるくなったし……。

 

「こ、これがスキルなら……どんな効果があるのか……確かめ、なきゃ……」


 無で現れるスキル。無属性攻撃とか、そういうスキルだろうか。

 これを奴らにぶつけたり出来れば──消えた!?


『ギギュウーッ』

『ギェッ』


 いや違う。下に向かって飛んで行ったんだ。

 枝から顔を出して下を覗くと、血を流して倒れた兎が二匹いた。

 どっちも体に穴が空いているようで、ピクピクと痙攣しているのが見える。


 無……無うぅぅぅぅぅ!?


「も、もう一発──"無"」


 ブォンっと音を立てて黒い球体が現れる。ピンポン玉サイズのそれを、今度は指先で触れるようにして手を伸ばした。

 すると球体はすぅっと指先に吸い寄せられるようにしてくっつく。

 何も起きない。ただ倦怠感が半端ない。


「は、はは。つまりゲームっぽく考えれば、MPを消費して発動しているからってことだろうな」


 こんなに疲れるものなのか、スキルって。

 とにかく確認だ。これを兎にぶつけて──


「食らえっ」


 指先をくいっとすれば、それに合わせて球体が飛ぶ。

 群がっていた兎どもの一匹にそれが当たる。いや、当たったと言うより、球体が触れた場所がそのまま消滅!?

 

「エ、エグい……それに……もう、ダ、メ……」


 MP量が少ないのか、それとも消費量が多いのか。

 とにかく意識が……






「はぁっ!? 俺寝てたっ、寝て──」


 寝ている間に何かが巨木を登って……痕跡は無し。というか俺無事だし。

 木の下は?


「兎……いなくなってら」


 穴が空いた兎もいない。血痕は残っているけど、死体はない。

 なら生きているのかな。


「ん? なんか光ってるな。なんだろう」


 血痕の残った地面に、何か光るものが見えた。

 気になるけど、ここから下りて調べる気にもならない。

 

「そういやどのくらい意識失っていたんだ? スマホ、スマホ。一時半か」


 気を失ったのは陽が昇ってすぐだった。朝食すらまだな時間、確か六時過ぎだったよな。


 バッテリーが少なくなってるし、充電しておこう。

 防災用の懐中電灯と繋いでハンドルをぐるぐる回す。

 そうしているとお腹が空いて来たので、昼食にした。


 倦怠感……無くなってるな。

 休むとMPは回復するのだろうか。


 そういやスキルって、あの水晶玉以外の方法で見れないのかな。

 ステータスは?


 ステータスオープン……でいいのだろうか。

 けどちょっと恥ずかしいぞ、それ。


 などと思っていると、「キャァーッ」という女性の悲鳴が聞こえてきた。

 今のは人の声か?

 意外と近い。どうする?


 立ち上がって辺りを見渡すと、巨木の隙間から人影が二つ見えた。

 

「人だ! おーいっ」


 呼んでみたが、どうやらそれどころじゃないらしい。

 

 ここは異世界だ。

 魔王もいれば兎のモンスターやスライムだっている。


 なら──


 俺の視線の先に、巨大な蜥蜴が姿を現す。


「ドラゴンがいたっておかしくはない……」




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