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13:便利アイテム→狩り

「香草っ。香草ないですか!?」

「こっちにあるよ」


 ここは戦場だ。

 ホットサンドメーカーの使い方を里のエルフに教えるにも兼ねて、夕方には里で熊肉パーティーに。

 エルフも香草やハーブ類を持っていた。

 ハーブはお茶用に、スパイスはドワーフとの取引用だ。


「こうして蓋をして、肉なんでじっくり焼きましょう。時々ひっくり返して」

「どのくらい焼けばいいのだろうね」

「俺も肉を焼くのは初めてなんで、焼け具合は時々中を切って確認しましょう」

「そうするしかないか」


 宣言通り、時々肉を切って中の焼け具合を確かめる。

 あまり分厚く切ってないので、十数分ほどで肉は焼けた。


「もっとこれがあったらいいんだけど」

「ホットサンドメーカーか? そうだなぁ。肉用、野菜用とに分けると、大人数分を一度に焼けないよなぁ」

「やぁーん。真っ黒になっちゃったぁ」


 真っ黒!?

 ルナの悲鳴を聞いて振り向くと、彼女はキャベツを黒焦げにしていた。


「ルナッ。勿体ないでしょう!?」

「だってぇ」

「ルナ、火で炙り過ぎだ」

「ふえぇん。お料理って、難しいですぅ。ちょっと子供たちと遊んだだけなのにぃ」


 料理している時に、普通は遊ばない。たぶん。


「ホットサンドメーカーもだけど、普通に鍋とかフライパンも欲しい」

「この里にそんなものはないわ」

「じゃあお茶を淹れるとき、どうしているんだ?」

「どうって、火石を入れるのよ」


 火石?


「そこにあるでしょ」


 ネフィティアが指さすのは焚火の中。

 石を集めてコの字にして、中で火を燃やしている。ホットサンドメーカーをずっと持っているのも手首が付かれるので、柄の部分を乗せられるように作った簡易竈だ。

 その中で燃えているもの──


 竈を作ったのは俺だけど、火入れはエルフがやってくれた。


「え? 石を燃やしているのか!?」


 よく見ると木がない。ないから炭もでていない。


「火の精霊が宿る石よ。こうして火が出たり、熱を放つことが出来るわ。お湯を沸かすときは火じゃなく、熱を出して貰うのよ」

「他にもねぇ、光の精霊を宿した光石とかー、水石とかー、あるのぉ」

「へぇ。便利な世界だな」

「ただこれを作れるのは、精霊使いだけなんだよ。まぁ我々エルフは、子供以外なら大抵の者が作れるけれどね」


 つまり他の種族だと、精霊魔法の使える者だけが作れるって訳か。


「こういう便利なものはあるのに、調理器具は一切ないなんて……」

「料理をすると決めたのなら、やはり必要かねぇ」


 長老のひとりが考え込むようにして言う。

 そりゃあ必要でしょ。


「チッタの実や果物以外の食べ物を知ってしまうと、もう後戻りは出来ぬな」

「いや、後戻りとか、そんなたいそうなことじゃないと思いますけど」

「鍋やフライパンは、ドワーフと取引すれば手に入る。属性石を集めて交換して貰おう」

「ドワーフは生粋の鍛冶職人だからね。同時に彼らは精霊魔法を使えない。物々交換では、酒と同じぐらい属性石は喜ばれるんだ」


 五人の長老たちがそう教えてくれた。

 酒と同等っていうのが、なんともドワーフらしい。この世界のドワーフも、俺の知っているドワーフ像のまんまなようだ。


 そして属性石を作るために──


「モンスター狩りをしなくてはね」


 そう言った。






「精霊を宿した属性石は、モンスターを倒してドロップするクリスタルで作るの」

「クリスタル?」


 熊肉パーティーが終わって、俺たちはテントに戻って来た。

 腹いっぱい食べたから苦しい。お腹を休めるために、ウッドデッキに置いた椅子に腰かけて夜空を眺める。


「先日、あんたが倒したフォレスト・リザード。あれから出たでしょ」

「あぁ、あの赤い宝石かたのか」

「あのクリスタルは、モンスターの核を破壊して倒した時にだけドロップする石なのよ」

「核を壊すとぉ、モンスターの中の……中のぉ……

「マナよ。それが結晶化して、クリスタルになるの」


 核が弱点だってのは聞いた。かなり硬いってこともだ。

 あんな大きな巨体でも、それさえ壊せば一瞬で死んでしまう。

 この世界のモンスターは、死ぬと黒い靄になって消えるそうだ。


 ん?

 じゃあ他の方法で倒した場合、どうなるんだ?


「核を破壊する以外でも、モンスターは倒せるんだよな?」


 体を起こしてウッドデッキに寝そべる二人を見下ろす。

 俺の膝の上にはいつの間にかやって来たスーモが座っていた。

 精霊だからなのか、重さを感じない。


「当たり前じゃない。むしろ他の方法で倒すことの方が多いわよ」

「じゃあ、その場合核はどうなるんだ?」

「腐るのでーすっ」

「え、腐る!?」


 二人は頷いた。


「モンスターが死ぬと、真っ先に核が腐ってしまうわ。そうなるとモンスターの体内のマナは四散して、結晶化されないのよ」

「代わりにモンスターがもやもやぁになるまで、三十分ぐらいあるのです」

「だから解体して素材を剥ぎ取る時間はあるわ。それに、時々だけど毛皮や鱗、角とか牙がマナを吸収して、上質な素材になることがあるわ」

「じゃあ、それを使って装備とか作ると?」

「そりゃあ全然違うわよ。この里ではお金を使わないけど実際どのくらい違うのか分からないけど、ドワーフにマナ付素材を見せた時の反応が全然違うもの」


 なるほど。

 核を破壊すればモンスターを一瞬で倒せて、クリスタルが手に入る。

 普通に戦った場合は時間が掛かるが、解体して素材を剥ぐ時間が出来る。運が良ければレア素材ゲットも。


 クリスタルの需要もあるが、核の破壊は簡単ではない──らしい。

  

「核の破壊は、そのモンスターより強い力での攻撃というのが絶対条件なのよ」

「じゃあ弱いモンスターなら取れやすい?」

「えぇ。その代わり、取れるクリスタルはとても小さいわ」


 このぐらい──と隣のルナが指で示す。

 ビー玉よりも小さい。


「これぐらいだとだいたい連続使用時間が十時間もないのよ」

「そっか。じゃあ俺もクリスタル集めに協力しなきゃな」



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