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プロローグ
空には月が煌々と輝いている。
「綺麗…」
窓を開けて一歩、少女はベランダへと進む。
「あら…?」
ひらひら華麗に舞う蝶。
その姿は月光を受け、ただ白く、幻想的だ。
「触れる……かな?」
思わず手を伸ばそうとした時、
ガサッ。
近くの茂みが揺れた。
「何!?」
ビクッとして、その場所を見る。
「しー」
ゆっくりとその場所から出てきたのは、自分より少しだけ年上に見える少年で…。
「内緒…にしてくれ」
少年は指を少年自身の口元に持っていった。
こくり、と少女は頷く。
そのまま、少年は去っていった。
「行っちゃった」
その姿を見ながら、少女は寂し気に呟く。
遠かったし、陰になっていたので少年の顔は見えなかったが、月夜の邂逅は少女の心に深く刻まれたのだった。