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閲覧いただき、ありがとうございます。

吸血鬼として生活して、10年。

私は未だに人間を襲っていない。

人間と同じ、家畜の血をいただいている。

吸血鬼になって、初めて知ったこと、それは殆どの吸血鬼が人間を襲っていないということだ。


ガイウス曰く、吸血によって人間が吸血鬼になり、吸血鬼の数が人間より増えた場合、人間の血に飢えた吸血鬼達は食糧不足に陥り、自滅するとのこと。


そして、多くの吸血鬼は人間の血の美味しさを覚えない為、人間を食糧として、襲わないとのことだった。


そういえば、ラスボスは吸血で勇者を殺す描写はなかったな。


吸血をする行為自体、基本的にガイウスが吸血を禁じているので、吸血鬼にとっても、人間を襲撃する吸血鬼は人間を刺激するので、殺人鬼としてみなし、厳しい罰を与えているそうだ。


つまり、ルキウスを始め、村人を苦しめているのは、一部の吸血鬼による快楽殺人だということだ。


10年間、ガイウスの妹として、彼と一緒に過ごしていたが、彼は村人が思っているような吸血鬼ではない。


家族思いで、無駄な争いを好まない。

好戦的なルキウスよりも、よっぽど平和主義者だ。


転生者のチートもあり、元村人だったこともあり、ラスボス=悪者だと思っていたのに、全然そんなことなかった。


ガイウスが力を使うのは、仲間を傷つけられないように、正当防衛として、行う時のみだ。


なんとか、ルキウス達村人とガイウス達吸血鬼を和解させることが出来ないか。


村を守ろうとするルキウスと平和を願うガイウスの根本は変わらないはず。


私にとって、2人は大好きで大切な兄なのだ。


「エミリア、明日は兄さん村に出るから一日家で大人しくしていなさい」


私は頷く。

ガイウスはたまに日中に村へ赴き、吸血鬼の噂や村の状況を尋ねに行く。一部の過激派が悪さをしていないかどうかもここで確かめている。


ガイウスは日中も外に出歩ける数少ない吸血鬼だ。私も同じ家系だから、外に出歩けるみたいだけれど、睡魔のせいで、思う通りに行動が出来ない。



ルキウスはどうしているのだろうか。

過保護なガイウスは村人の討伐を恐れて、私を屋敷から出すことを許さない。

だから、私はルキウスが今どうしているのか知らずにいる。


最後に出会ったのは、5年前。

ルキウスが屋敷に乗り込んで来て、ガイウスの両親を討伐した時だ。


ガイウスがルキウスを見つけて、追い払うより先に、ルキウスが私を見つけた。


物置にひっそりと身を隠して、身体を震わしていた5歳の私。


それを見つけたルキウスは、私に近づいた。


「モンスターとは違って、吸血鬼は俺たち人間と同じく、五感もあるし、こうやって家庭も築いているんだよな。そりゃ、こんな小さい子もいるに決まってる」


ぶつぶつと呟きながら、ルキウスは私の小さな身体を抑えて、杭を振り上げた。


殺される、と私はぎゅっと目を瞑った。


しかし、いつまで経っても、痛みは訪れなかった。

ゆっくり目を開けると、泣きそうな表情をして、震えた手で杭を握りしめるルキウスがいた。


「両親はあんなにあっさり殺せたのに、お前は殺すことができない…お前は何処となく、俺の妹にそっくりなんだ」


苦虫を噛み潰したような表情をする。

どんな吸血鬼であれ、見逃すのはルキウスのポリシーに反する。


吸血鬼を全滅させるのが、ルキウスの悲願だ。ラスボスの妹に情をかけていたら、願いが叶うことはないだろう。


私は杭を持ったルキウスの手にそっと触れた。ルキウスは比較的体温の低い方だが、久しぶりに触れたルキウスの手は温かかった。


もう、吸血鬼になってしまった私には体温がない。この温もりが私とルキウスがもう兄妹ではないことを突きつけていた。


私はここにいるよ、その一言がもう言えない。


私が何も言わずに、ただ手を握っていると、ルキウスはもう片方の手で、私の頭をくしゃくしゃと撫でた。


「…お前は兄貴みたいになるなよ」


ガイウスが諸悪の根源だと思っているルキウスはそんなことを呟いて、物置から去ってしまった。


ガイウスはそんな人じゃない、といった反論も出来ずに、私はその寂しげな背中をただ見送ることしか出来なかった。


「エミリア、ぼうっとしているな。何か悩みがあるのか?」


ガイウスの心配そうな声に、私はハッとする。


私は首を振り、明るく努めてみせた。


「ちゃんと無事に帰ってきてね」


私がガイウスの服の裾を掴んで、そう言うと、ガイウスは私を優しく抱き締めてくれた。


「大丈夫だ。俺はお前を1人にしないよ」


私に何が出来るのだろうか。

たかが、10歳の年端もいかない小娘に、根深い抗争を無くすことが出来るのだろうか。


いや、可能性はゼロではない。

だって、私はかつて勇者の妹であり、今はラスボスの妹なんだ。


…私がやるしかないんだ。


私は決意を胸にガイウスの顔を見た。


「お願いがあります。私も村に連れてってください」


戸惑うガイウス。

今まで、屋敷の外にも出してくれない過保護な兄にとっては、許しがたい願いなのだろう。


それに、出歩くのは昼間。

いつ寝落ちてしまうか分からない。

確かに足を引っ張ってしまうかもしれないが、前日に睡眠時間を調整すれば大丈夫だろう。


ガイウスは、懇切丁寧に私へ説得を試みたが、梃子でも動かない私の強い意志に、最終的には折れてくれた。


「危険だと思ったら、すぐに引き返すからな。決して兄さんの側を離れるんじゃないぞ」


私は頷いた。

ここで、臆していたら前世の二の舞だ。

まず、私が今やること。それは村へのアプローチの仕方を考えることだ。


こうして、私は共同戦線を張るべく、作戦を練り始めるのだった。


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