プロローグ
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ここは、ラミア村。別名、吸血鬼村だ。
理由は名前の通り、この村には吸血鬼がいるからだ。
吸血鬼の数は少ないが、圧倒的な権力を持ち、山に小さな集落を作り、生息している。
村人はそんな吸血鬼の存在を疎ましく思っている。
何故なら、吸血鬼のせいで、村人達は夜の襲撃に怯えながら、暮らさなくてはいけないからだ。
しかし、多くの村人はこのラミア村から出ていかない。いや、正確に言えば、出ることができないのだ。
村の外の人間達は、私達、ラミア村の村人達を生贄として、捧げているのだ。ここの村人達は代々吸血鬼の生贄とされている。
私達はこの村で生き、この村で死ぬのだ。それが村のしきたりで異論は許されなかった。
多くの村人が自分の運命を嘆きながら、受け入れていた。しかし、私の兄だけは違った。
私の兄、ルキウス・カルスは、この現状に異議を唱えた。幼い頃から正義感に溢れ、理不尽なことが大嫌いだった兄。私はそんな兄のことを心から尊敬していた。
両親は出稼ぎに出ており、滅多に帰ってこない。
近所の人達の助けもあって、2つ上の兄と何不自由ない暮らしをしていた。
そして、両親の帰りを二人で待っている時、兄はいつも私に夢を語ってくれた。
いつか、村人の生活を脅かす吸血鬼という存在を全て駆逐すると。
私はその兄の夢を応援する素振りを見せたが、内心諦めて欲しいと思っていた。
なぜなら、私は吸血鬼達の力が強いことが痛いほど知っていたからだ。
物心がついた頃から私には秘密があった。
それは、このラミア村は前世に私がやり込んでいたRPGゲーム「ブラッディ・ヴァンパイア」の舞台であるということを知っていること。
そして、私の兄であるルキウスはその舞台の主要操作キャラクターの勇者なのだ。
前世、このゲームは鬼畜ゲームとして有名だった。Easyモードと呼ばれるものは、まるで他のゲームでいうNightmare モードだった。
チュートリアルにも関わらず、容赦なく勇者一行を叩きのめす吸血鬼達。
チュートリアルを掻い潜るだけでも、もはや奇跡と呼ばれるほどの難易度の高いゲームだった。
一部のマニアには好かれたが、殆どのプレイヤーには不満の嵐で、このゲーム販売をきっかけに、販売元のゲーム会社は倒産した。
1つのゲーム会社を潰すほどの力を持つ吸血鬼の威力。正直、私は兄に関わって欲しくない。たった1人の兄妹であり、普段は2人で暮らしているのだ。兄が居なくなってしまったら、寂しさに耐えられなくなるだろう。
どうか、兄が諦めますように…!そう、思っていたのに、私の願いは砕け散った。
私が13歳の頃、15歳になった兄は村人を鼓舞して、まるで戦争のように吸血鬼の討伐を行った。
こんなことをしても、誰も幸せにならないのに。
現に、一部の村人は逃げ出したくても逃げられない状況で、兄を筆頭とする討伐隊と吸血鬼の戦いに巻き込まれ、多くの命が犠牲となった。
やはり、兄のやり方は間違っていたんだと気づいた時には、もう遅かった。
そして、ついに吸血鬼の逆襲は兄にまで降りかかった。
「お兄ちゃん!」
「マリア!来ちゃダメだ!」
兄が吸血鬼達に襲われそうになる時、私は咄嗟に兄を庇った。
複数の吸血鬼に羽交い締めにされて、大量の血を一気に吸われ、薄れゆく意識の中、最期に見たのは、悲痛に満ちた兄の表情だった。
一応、村の人達と鍛錬していたのにな。
こんな形で終わっちゃうんだ。
そして、私の意識はぷっつりと途絶えた。
こうして、私の2つ目の人生は呆気なく終わった。あの後、兄はどうなったのだろうかという疑問は数年後、知ることが出来た。
死んだ私が何故知ることが出来るのかって?
幽霊になったわけじゃない。転生のループに入った私は再びこのラミア村に転生してしまったのだ。
「エミリア、起きたのか。夕食の時間だよ」
今世の私にも兄がいる。
兄の名前はガイウス・サビヌス。
この兄もゲームの登場人物である。
察している人もいるだろうが、この兄こそ、ゲームのラスボスである吸血鬼の長だ。
そう、今世の私は吸血鬼になり、かつての兄、ルキウスが憎み、敵対していた人物の妹として生まれ変わってしまったのだ。
前世の兄が敵対していたラスボスの妹として生まれ変わった私は果たしてどうなるのだろうか。
10歳の私は小さな手で拳を握りしめ、わなわなと自分の呪われた運命に身震いをしたのだった。
プロットはある程度、出来ているのですが、文字起こしする時間がないため、不定期更新とさせていただきます。
気長にお付き合いいただければ、幸いです。
完結済みのシリーズを多数用意しております。
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