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拝啓、過去の私へ

作者: ダヴコ

ベッドに仰向けに寝転んで天井を見上げると鏡に映った自分を思い出した。自分の顔はひどく疲れているような気がするし、やつれているような気がする。随分と老け込んだような気もする。


10年前、何も知らなかった私は夢を見て上京してきた。親を説得して、大学には行かず、高校を卒業してギターを一本だけ持って東京に来た。自分には才能がある、きっとスターになれるはずだと信じて疑わなかった。そして夢は叶わなかった。


誰もがみんな同じことを考える。みんな私のように自分だけは特別だと考える。ありもしない才能を信じて努力を怠って、いつの間にか現実を知る。そして今思う。あのときにああしていれば、もっと何かをやっていれば。過去の自分を恨むのは今の何もしない自分。明日になれば昨日のことを後悔する。歳だけが無駄に積み重なって世界に置いていかれる。


ねぇ、過去の私。もしこの声が聞こえるなら少しでもいいからギターを弾いてみませんか? 適当に作った歌を歌ってみませんか? 子供の時のように。楽しかったあの時を思い出してさ。誰に聴かせるわけでもなくさ。自分が楽しくなるための音楽を奏でてみませんか?


そしたら未来の私は何かになっているかもよ。


でも過去に語りかけても何も起こらない。未来の私を変えるのは結局今の自分だからだ。


そこまでわかっているのに私は今日も仕事から帰って来て埃を被ったギターをちらりと見ただけでベッドに潜り込んだ。

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