オーバーロード overload
The Sky of Parts[34]
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この物語は、軍事好きな筆者が作った育児モノ。
【!】『対話体小説』の読みにくさを軽減させる為、独自の「改行ルール」、「句点ルール」を使っています。
「まったく……あたしに、何をさせたいんだよ。軍師殿までかかわっていたなんて」
「アリス! 第二区画へ立ち入る為の生体認証は、完了している。
扉は、開放済みだ。
第二区画通路の迎撃システムの沈黙には、後どれぐらいの時間がかかりそうなんだ?」
『ん~。
それほど長い時間ではないと思うけど、作業に集中したいから、いったん通話を切るわ。
エリオット。
第二区画迎撃システムのクラッキングには、成功している。
――少し、酔っ払っているの……』
「は?
ア、アリス……酒を飲んでいるのか?
……僕の命がかかわっていると思うと、うっかりミスをしてやろうと思うのかね。
怨まれるような事などせずに、実直を旨とし、君に接してきた僕だぞ。もう少し、大切に扱ってもらいたいものだ」
「包み隠さな過ぎて、怨まれまくってるだろ!
今までの人生で、事実上の妻子である軍師殿とルイを、どれだけ苦しめてきたって思ってるんだ!
生きてる間は、ずっと、謝っていけよ!
これからは、ずっと、ルイの普通の父ちゃんとして生きていけっ!」
「お嬢さんが、どうしてもと言うのなら、考えておく。
しかしだ、手順が違うのではないのかね?
そんなにも要求を通したいのなら、まずは可愛い娘となって、僕をお義父さんと呼ぶべきではないか?」
「黙れって!
誘拐まがいで、あたしをここに連れてきて、HNE独裁演説ぶつけてきながら銃を渡そうとして……しかも、訳が分からない演説は、整髪料のにおい振りまくスーツにネクタイ野郎――竹内イチロウの分と二連戦だったんだぞっ!
あんたが、発砲して見せてくれたから……銃を、受け取ったけど……最終的に、あたしに何をさせたいわけ?
これ、殺傷能力の無いヤツ!
サバイバルゲームとかで使う、遊戯銃――エアソフトガンじゃないかっ」
「だが、玩具とは呼べないぞ。
使い方をほんの少し間違うだけで、武器となる。お嬢さん、取り扱いには注意してもらいたい」
「それは、何? この二連戦だった、扉開けゲームの事を言ってるのか?」
「――なぜ、このエリオット・ジールゲンを討ち果たさなかった?
父親の仇を討つ、絶好のチャンスだったのではないのかね? ここなら、ルイーナだって、他の人間だって見ていない。
しかも、僅かに手元が狂っただけだと、簡単に言い訳ができたじゃないか。
なぜだい? お嬢さん」
「意味も分からず、扉開けゲームに付き合わされたからだよ!
……扉開錠の生体認証をすると、いきなり、認証対象のあんた自身がロックオンされるとか……言い出すから!
出現した的を、全部撃てって、急に言うから!
あたしだって人間なんだから、驚いて行動してしまう事もあるだろ!
勘違いするなっ。
あんたを護った訳じゃない。ルイの心を護ったんだ!」
「いつもなら、僕自身が的あてゲームもこなすんだが、迎撃システムのクラッキングの代償として、ロックオンされてから実際に撃たれるまでの時間が短縮されている。
僕とはいえ、手助けが必要だと考えたんだ。
そこで、お嬢さんにお願いする事にした!
いや、見事だっ。
二回とも、全弾一発命中とはね!
お嬢さんに狙われたら、いかなる屈強な兵士といえど、逃げる事かなわない! その上で、強大な権力を動かせるほどの覇王としての素質を持っている! 君は、どれほど恐ろしい力を秘めているというんだい。
くく。
それを見抜いたのが、僕であったという事に、軽く酔いしれるよ」
「あんたは……ルイのところに必ず帰れ。
ただ、それだけだ。
ダノンと三人で、世界から戦争をなくすんだ。そうしたら、あたしは、父さんの仇討ちができる――そうなんだよ!」
「お嬢さん、息が荒いようだ。神経がすり減る思いをしたのかい?
どちらにしても、アリスからの連絡待ちだ。座って少し休もう」
「あたしに、指図するなって……ふう。そ、そうだよ!
へ、へたり込みたい気分さ!
だってさ……目の前で……あんたが撃たれるとか……勘弁してくれよ……いくら、あんただっていってもさ……」
「ふーん。そうか。
恋人と縁が深い僕に、親の情を持ってきたのかい?
本当のお父さんよりも優れている僕に、親しみを感じ、心を開こうとするのは自然な事だ。
ふふ。
二度目の的あてゲームの時は、ルールが分かっていたはずなのに、それでも、僕の命が続く事を願ったんだ!
自分を偽る事はない。
お嬢さん。君はいつか、ルイーナを通して、このエリオット・ジールゲンと縁を繋ぐと誓ったも同然。将来、子供ができる事があれば、後世に、僕を継ぐ者となるだろ。
エリオット・ジールゲンという存在を否定する気がないのなら、素直に、この僕を父と認めるがいい」
「うるさいって。
父さんは、父さんだ。あんたは、あんたで、ルイの父ちゃんだ!
ってか、認めろって、十分に認めてやってるだろ!
うちの父さんに、これ以上、何の怨みがあるって言うんだよ!」
「僕が、誰だか知っているだろ?
お嬢さん。
たとえ君の実の父親だと言われようとも、僕よりも価値が高いなどという事を認めるつもりはない。さあ、このエリオット・ジールゲンこそが、君の唯一の父であると、諾なうんだ」
「はあ?
あんたって、本当にバカだな……まったく違うだろ。
一番や二番がある事じゃない。
答えてくるヤツがいるとしたら、そいつは、偽物の答えを言っているだけだ。答えないのが、本当に認めてるって事だよ!」
「――なるほどな……完璧だよ。
実に美しい!
お嬢さん。君になら、ルイーナを託してもいい。あの子と、生涯を共にしてほしい……そばにいてやってくれ。ずっと、ずっと」
「あんたなんかに言われなくても、ルイとはずっと一緒にいるよ! ダノンともな!」
「責任者の人、いや、統治者の人とは、ずいぶん長い仲なんだろ?
彼の事は、どう思っているんだい?」
「ダノンは、あたしたちのリーダーだ。
これからもリーダーだ。いいから、とりあえず、リーダーやれ。以上。
だけどさ、ダノンがこれからもリーダーっていうか、統治者でよかった。あたしも、その方がやりやすい。
ああっ!
あんたが、また余計な事をHNEしてきそうだから先に言っておくぞ。
ダノンとは、兄妹になるかもしれなかった仲だから、うまくやっていけるよ。ルイと三人でな。これからも、ずっと」
「……どういう……事かね?」
「ん?
あれ?
珍しいな……あんたが、そんな表情するなんて。
一瞬、焦ったような顔をしただろ……え? あたし、そんなに動揺させる事を言ったか……。
今さら、表情を戻しても、たしかに見たぞ。
あれか!
あたしとルイはよいとして、やっぱりダノンは邪魔って事かっ!」
「違う。
そんな事は、思っていない。お嬢さんと、統治者の人は……それほど、縁が深かったのかい?」
「ああ。
結局、二人ともいなくなってしまったけど、うちの父さん、ダノンの母ちゃんの事が好きだったんだ。
ダノンの母ちゃんも、父さんの事、気にかけていた――だけど、別れた旦那が忘れられないって言われて、なかなか話が進まなかったみたい。
あんたには、何か言われるかもしれないけど……あたしは、軍師殿に本当のおかあさんになってほしくて、父さんと軍師殿をくっつけようと、アレコレしてたんだ。
父さんはかなり困っていた。
……あたしが、無理やり、軍師殿を父さんの前に連れて行って、『軍師殿は、父さんの事が好きなんだ! だから、二人は結婚して!』と……ガチ迷惑な事までしてた……ダノンに見られちゃったし。
はは……あれは、子供の頃とはいえ、本当に悪い事をした……。
って、父さんの仇のあんたに、なんて話をしてるんだ!
あー。
でも、ルイの為に、ルイの為だぞ!
教えておいてやるよ!
軍師殿さ、うちの父さんに『前の旦那さんの事、まだ、愛しているんですか?』って聞かれたんだ。続けて父さんが言っていた事の記憶が曖昧だけど、軍師殿が答えやすいようにしている様子だった。
前の旦那を愛しているかっていう答え、はっきりおぼえている。軍師殿、『はい』って答えていたんだ……。
うぜぇな。
軍師殿の前の旦那の野郎っ。
ふざけるなーって、舌打ちしながら、子供心に思ったんだけど……本当に、うぜぇ野郎だった。
しかも、父さんの仇になるようなヤツ。
あれ?
ってか、前の旦那も何も、いまだに一度も結婚してないのか。
……おい!
あんた、責任取れ。
あんたが、ルイの普通の父親になるっていうのが、あたしのこれからの幸せの一つに繋がるんだ。
軍師殿を、マジで大事にしろっ。
そして、ルイを幸せにして、あたしに幸せをよこすんだ! 本気で、あたしに罪滅ぼしをしたいって思うのなら――そうしろって!」
「――そうか。
君の天国のお父さんに、謝意を表しておくよ。礼拝堂の床に膝をつけなくて、すまない……」
「なんだよ。
なんで、うちの父さんに嫌がらせみたいな事ばかり言うんだ。
また、あたしを嫁として用意してくれて、ありがとうって事か? 謝意を表するって、そういう意味だと、前に言っていただろ」
「……そうだな。
どう受け止めてもらっても、構わない。
だが、ルイーナの事は、これからも支えてやってくれ。あの子の太陽になってほしい。
アリスの事は、これからも愛していくよ。心の底からな。僕の命が尽きるまでだが……ずっと、ずっと」
「よし! 約束だぞ!
あんたの残りの人生は、ルイと軍師殿、そして、あたしと世界のみんなの為に使え! いいなっ」
「――YES、お嬢さん」
『……エリオット。タワー『スカイ・オブ・パーツ』中層部、第二区画迎撃システムの解除が終わったわ。
手順は、先ほどと変わらない。
打ち合わせ通りの速度で移動をお願い。
念の為にもう一度、伝えるわ。こちらで、移動範囲内の迎撃システムの作動を一時停止する』
「了解だ、アリス。
――アリス……すまなかった。アリス、愛しているよ……ずっと、ずっと」
『エリオット……』
「いや、なんでもない。不安な顔をしないでほしい。声に憂いをのせて、それを伝えないでほしい。
君が、笑顔である事が、今の僕には必要だ。
僕は――道具の一つにすぎないんだ。
アリス。
マスターである君が、気に留めるような存在ではない。次の区画の攻略も、君を信じている。
そして、ルイーナを真に愛してくれている……このお嬢さんを信じるんだ」
『分かっている……エリオット』
「いくぞ。お嬢さん、万が一に備えて第二区画通路も、僕が先を歩く。
君は、ルイーナにとっても、世界にとっても、大切な人だ。ふふ。僕の生を、もう少し続けさせてくれるのなら、一緒にきてくれ」
【※】
筆者以外で、最終話まで読んだ人からも「ハッピーエンド公言OK」もらいました!
個人の好みはあると思いますが、「ハッピーエンド」タグはつけて良いという事です。エンディングの内容は、秘密です。
来週は、投稿します。
活動報告を少し書いておきます。




