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The Sky of Parts[31]
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この物語は、軍事好きな筆者が作った育児モノ。
【!】『対話体小説』の読みにくさを軽減させる為、独自の「改行ルール」、「句点ルール」を使っています。
『ふーん。やはりな。
タケ。
僕にも使っていたんだ、お前の薬』
『ええ。
しかし、まさか使った直後から、ご存じだったとは……さすがは、世界を支配できる男。
幼かったとはいえ、ルイーナ様に、あの日、目撃されてしまったので、そちらから聞いたのかと思いました。
……あはは。
ご自分で気づいていたとは。
お見事です。
薬を使った者のリストを渡せと言われた時は、傀儡の天王寺アリスを使って、私のコンピュータをあさらせたのかと、焦りました』
『それは、僕の台詞だ。
アリスを使って、『sagacity』の管理者権限アクセスキーを盗み出したのだろ?
困った奴だ、竹内イチロウ。
僕の愛しいアリスを、無許可で使ったという事がなっ!
おかげで、『sagacity』本体に、アリスが、バックドアを取り付けられるようになってしまった。
お前に与えてあった、『sagacity』使用権限は、そんな事の為に用意してやった訳ではないのだがな』
『ええ。
あれは、竹内イチロウにとっても、誤算な出来事でした。
キリンやロバのぬいぐるみが可愛いなどと、おどけた様子で言いながら……天王寺アリス。
本物の『天王寺アリス』が、まだくすぶっていたとは。
そこに倒れている女、白旗を掲げてからが本当の戦いだと言わんばかりに、向かってくる!
戦争のルール違反だっ!』
『ああ。
それは、同意しておいてやろう。
天王寺アリスは、何度も背信行為を行っている。
仇なしてくる可能性がないか確認する為、拳銃を手渡してみれば――ははっ。
わざと悪用して、僕の手に戻した後に、詐取するなんてな!』
『敵なんですよ。その女』
『そうだな。
あはははははっ。
『sagacity』を一方通行とはいえ、バックアップするのは失敗だった。劣化『sagacity』から、データを盗み出しても、僕の生体認証がなければ、無用だと思っていたが――本体への逆流経路を、天王寺アリスという女は作り出した。
幽閉される前であれば、クラッキング済みの劣化『sagacity』を、自分で操作するつもりだったらしいが、僕に捕らわれ、さらに操り人形にされ、自由に動ける時間が限られてしまった。
そんな彼女に、勝機をつかませたのは、お前だよ。
竹内イチロウ!』
『コンピュータに詳しい方ではありませんが、あの女が行った事は、だいたい把握しています。
劣化『sagacity』に仕掛けてあった時限爆弾を、本体の方から、自動で吸いあげさせた。
そして、あなたに言われて、担当させられたプログラミング作業の折、わざと穴をあけ、そこに、ルイーナ様の生の神の歌声を流し込んだ……こんな感じですか?』
『竹内イチロウ。
ふふ。
そんな感じだ!
その他のリスクの高さを考慮し、いろいろと便利なグリッドにしなかったのにな。
天王寺アリスという女の存在が、すべてを台無しにしてくれた訳だっ。
紛い物は、ゴミ処理しておくべきか?』
『だから、消せって言ったじゃないですか……『sagacity』も、あの女を消せと――ああ、今は、違う。
紛い物は、ゴミ処理しておくべきですか?』
『何を言ったところで、お前は、このエリオット・ジールゲンを消すつもりなのだろ?』
『その通りです。
あなたは、もう必要のない人間です――』
* * * * *
「ええ。
ルイーナ様の母上さまに使った、あの薬の使用者リストです。
あなた自身にも使おうとしましたが、それは未遂に終わったので、ルイーナ様は、このリストに含まれておりません」
「この付箋紙が挟まれた、ほとんど未記入のページ……使った相手は、誰だ?
……自分で答えてくれ、タケ」
「ルイーナ様。
もう、きっと、理解していると思いますが、イニシャルが『E』と『Z』という名のお方です。
効果は――『家族を、道具としてしか見えないようになれ』」
「イニシャルが『E』と『Z』――『Eliot Zealgene』。
……タケ。
オレの父上って事でいいか……家族を……道具としてって……え……!」
「え……。
じゃ、じゃあ、あいつは……ルイの……父ちゃんは……整髪料のにおい振りまくスーツにネクタイ野郎の薬のせいで、ルイや軍師殿に、ひどい事をしてたって事か……」
「そうです。
私は、自身を擁護するつもりはありません。
――今から口にする事は、事実としてお伝えします。
ルイーナ様の御父上は、薬を使われた事、直後からご存じだったみたいです。効果を含めてね」
「え……父上が、知っていたって……じゃあ、なぜっ!」
「あの方や、天王寺アリスさんぐらいになると、自分の意思をほんの少し捻じ曲げられたぐらいでは、駄目だという事。
所詮は、違和感をなくす程度の効果しかない薬。
しっくりこない事があると気づき、ちぐはぐになった食い違い部分を、他とのかかわりで、埋めなおす事は可能だったようです。
当のご本人たちに伺った訳ではありませんが、後から考えると、私に対して、いくつか確認の為の言動があったように思えます。
キリンやロバのぬいぐるみね――。
ふ。
二度と、可愛らしいと思わないようにしようと思いましたよ。
ああ。
すっかり不信感をつのらせる相手になっていた女を連れ戻して、効果を確認しようとかね。
あはは……。
ルイーナ様の御父上は、竹内イチロウの薬の効果を『悪用』して、家族を護る為に使おうとしたんです」
「ど……どういう事?
……だって、オレと母上を、このタワー『スカイ・オブ・パーツ』に閉じ込めて……え?
どうして……。
他にも、オレや母上にひどい事を……え?」
「――ルイーナ様、考えてみてください。
あなたと天王寺アリスさんは、恐怖政治を敷いた者の家族です。
ルイーナ様が、『スカイ・オブ・パーツ』から逃げおおせた先は、母上さまが、いろいろと取り計らっていて、かなり安全が確保されていたと思います。
ですが、母上さまの逃亡生活は、過酷なもの。
事実上のご夫君である、ルイーナ様の御父上からも狙われています。身を寄せた反乱組織内でも、正体が噂され、肩身が狭かったようです」
「あ……ダノンとジーン叔父さん、その頃から軍師殿が、エリオット・ジールゲンと繋がっているのを知っていたんだ」
「エルリーン・インヴァリッドさん、その通りです。
幼かった貴女は、無邪気に甘えていたと伺っていますが、周りの大人たちの反応を思い出してみてください。
――言い方が非常に悪いですが、天王寺アリスさんは、大罪人の血を繋いだ女です。
そう見られながらも、貴女のいる反乱組織に力を貸していたんです」
「そうだったんだ。
だから、軍師殿、たまに一人きりで寂しくしていたんだ……。
連れ出せなかった息子――ルイを想って泣いているって、あたしは、そう思って、よく慰めていたんだ」
「タケ、質問していいか。
……父上が、家族を護ろうとしたという言葉の意味は、なんだ?」
「よほどの好機がめぐってこない限り、ルイーナ様を、タワー『スカイ・オブ・パーツ』から出さないと決めた事です。
中途半端な形で、世間に出してしまえば、取り返しのつかない事態につながっていた可能性が高い。
おぼえています?
七歳になる年から、学校に通える話を、御父上がしていたの。
遠くに、あなたをやるつもりだったみたいです。全寮制の学校に入れて、父親の自分のそばから離そうとしたんですよ。
うまくいく訳ないのに――ね?」
「じゃあ、本当に……父上は、オレを学校に通わせるつもりで……。
遠回しに、取り止めたような事を言われたおぼえがある。
それから、オレの部屋に、外から鍵がかけられたり……母上が連れ戻されたり。
急に、父上の態度が変わったと感じたのは、たしかに、六歳の誕生日を過ぎた後だ」
「ルイーナ様が六歳の頃、戦争が、かなり激しかったんです。
――あなたの母上さまが反乱組織に与えた戦略と、『sagacity』の考えた戦略のぶつかり合いでした。
つまり、外では、御父上と母上さまが、『敵対』の真っ只中。
そんな、御時世。
身分を偽ったとしても、ルイーナ様。あなたを外に出していたら、まあ、命を失っていた可能性が高いです。
遠方の辺境といえど、誰かがあなたの正体に気づいて、斬り捨てられていた。
そういう事です」
「タケの薬で、家族のオレが『道具』に見えるようになって……取り止めたって事?
母上を取り戻す為の『道具』」
「御父上に、はっきりとは確認していませんが、当時の言動などを思い出しても、そのようです。
さっき少し触れましたが、その頃、母上さまに、不信感をつのらせていたようです。
『sagacity』も、天王寺アリスさんは、危険人物だと警告してきたぐらいでしたから。
……ふふ。
なのにね……あの人、天王寺アリスさんの事、『家族』だと思っていたんですよ。
ルイーナ様を一生護りきるには、『sagacity』の完成が必要で、その為には天王寺アリスさんが必要で――『道具』として、彼女を連れ戻して、再び、愛するきっかけを手に入れてしまったみたいです。
おかしい話だ。
私が、仕組んだ事、すべて失敗だと思いませんか?
ルイーナ様。
竹内イチロウという男は、ただの道化師役なんです――」
「タケ。
あの……オレ、もうなんて言ったらいいか……。
父上は……ずっと、オレを愛してくれていたって事になるじゃないか」
「ええ。
とても、とても、あなたを愛していましたよ。
ルイーナ様が生まれた直後に、連れ出そうとした天王寺アリスさんに対して、本気の怒りをおぼえるぐらいに、我が子を愛してしまったみたいなんです――。
タワー『スカイ・オブ・パーツ』が完成する前、安全にあなたを基地に残せないと判断する時は、密かに、戦線に連れて行っていたぐらい。
――父親の自分がそばにいれば、護りきれるからとね。
親バカでしたよ。
世話の回数が多い赤ん坊を連れてきて、戦争するんですよ?
軍用車の中で、オムツ交換で手が離せないからと、唯一、事情を知っている軍医採用の私に、代理指揮官をさせて。
『sagacity』があるから、なんとかなるだろうって……無責任にもほどがある!
他人の命なんて奪ってしまえばいいと下知しながら、自分の息子にだけは、愛情を注いでいるんですよ。
本当に、馬鹿らしい……」
「父上……」
「本当に、なんて言ったらいいか、息子のあなたにも分かりませんよね。
愛を、一身に受けたからこそ、何も言えませんよね。
ルイーナ様。
だからこそなんです。
世界の為に、人柱になってください。
あなたの神通力をもって、戦争のない、新しい時代を、世界に定着させていただきたい。
罪滅ぼし、よろしくお願いします。
――戦争の加担者の一人として、この竹内イチロウも心身を捧げさせていただきます」
「ルイ。
……あたしの父さんの為にも、戦争がない時代を作ってほしい。あたしも、ルイと力を合わせていくよ。ダノンだっているから。
あたしの手を握って、誓ってほしい」
「……うん。
エルリーンの温かい手が、これからもオレと繋がってくれるように――戦争の火種は、絶対になくすよ。
天王寺ルイーナが思い描く世界に、戦争はないよ。
――絶対に」
「ありがとう、ルイ」
「……エルリーン・インヴァリッドさん。
この竹内イチロウ、近いうちに、正式に貴女の配下になりますので、懺悔しておきます。貴女の父上さまが、いなくなった時――私は、その場にいました。
私の作った自白剤を使ったんです。
飲ませたのも、私自身。
『この世で一番好きな女性の名前を口にする』ように仕向けましたが……父上さまの口から出たのは、貴女のお名前でした」
「整髪料のにおい振りまくスーツにネクタイ野郎。
いや、竹内イチロウ。
あたしとルイに、いろいろ話したのは、この場で斬り捨てられてもいいって覚悟があるのか?」
「はい。
そうです。どうぞ、お構いなく。
私は――竹内イチロウは、本来なら、もう存在していない人間なので、斬り捨てられても、問題ありません」
「タケ。
オレたちに、まだ何か隠しているのか?」
「さすがですね。ルイーナ様。
やはり、あなたは、あの御二人の御子だ。
凛とした、頼もしい御顔。
態度や姿だけでなく、お声も凛々しく、引き締まっておられる。
あっと。
エルリーン・インヴァリッドさん。
私、上半身裸になりますが、よろしいですか?」
「は?
え……えっと。
話し合いに必要なら、どうぞ……」
「ありがとうございます。
では、遠慮なく、脱がせてもらいます。
ルイーナ様、私が後ろを向いたら、右肩をご覧ください――」
「……タケ。
それ……どうしたの……傷跡だよね……それ!」
「ワイシャツだけ着ますね。
撃たれました。
あなたの母上さまに。
タワー『スカイ・オブ・パーツ』から脱出した直後に、御父上の命を狙わせていただいたのですが、失敗しました。
――私が脅して捨てさせた、御父上の拳銃を使って、目をさました天王寺アリスが、後ろからバーンってね」
「父上を、裏切ろうとしたのか……タケ」
「はい。
ルイーナ様。
あなたを擁立して、軍を再興するつもりでした。
擁立の件は、あなたたち御二人が、最初に婚約するという話が出た頃には、すでに、画策していた事。
私は、野心を抱いたんです。
竹内イチロウは、上司が誰か、自分の考えで決めたかったんですよ」
「……エ、エルリーンを……タケに預けていいか、オレに判断しろって意味で、聞いているのか……?」
「さすがは、ルイーナ様。ご明察の通りです。
ご婚約者さまにして、近い将来の御内儀、エルリーン・インヴァリッドさんの配下として、この竹内イチロウは、適任でしょうか?」
「――ルイ。
あたしは、大丈夫だよ。
整髪料のにおい振りまくスーツにネクタイ野郎が何か企んでも、蹴り飛ばしてやったり、拳銃を奪い取ってやったり、出し抜いてやるから。
あれだっ!
あいつ――今は、『三十二等兵』の元独裁者だって、整髪料のにおい振りまくスーツにネクタイ野郎は、自分の命を狙っているって知った上でそばにおいてるって言ってた。
だったら、あたしは、整髪料のにおい振りまくスーツにネクタイ野郎を部下にするよ。
コイツ、捨てても、どこかでリサイクル不可能な廃棄ブツになるかもしれないから、あたしが拾っておく」
「エルリーン・インヴァリッドさん。
いい根性してますね……まだ、ほんの小娘なのに。
ふ。
ルイーナ様は、どうされますか?」
「タケ……父上は、お前を許したのか? 母上も……許したのか?」
「……命で償う事、望まれませんでした。
母上さまに撃たれて、弾が身体に残ってしまったんです。
贖罪の時を経て、消えるつもりでしたが――御父上自ら、救命手術をしてくださいました……命を狙った、この竹内イチロウのね。
……あははは……。
本当に、不様だっ!
同じような事が、人生でもう一度あるのなら……もっと、貫通力ある弾で、急所を撃たれたいものだ。
あれじゃ、ほんの少し苦しい思いをして……惨めな助かり方をしただけじゃないか……。
困るんだよ……。
ああいう時は、あんな風にされちゃ……あんたの事を、天王寺アリスが愛しているという、確かな証拠を……渡してしまっただけじゃないかっ!
それだけになってしまった……」
「……タケ、肩が、震えてる」
「……ああ。
申し訳ないです……私とした事が……心配はいりません。
赤ん坊の頃のルイーナ様と違って、何をしても、泣き止まないなんて事はないので。
――天王寺アリスの直接の罪状にしたくなかったと言われました。
汚らしい竹内イチロウの命を奪う罪。
だから、助けただけだと。
おかしい話だ。
……本当に、馬鹿らしい……。
あの女だって、その生み出した戦略によって、戦争で、誰かの命を奪っているのにね……ふふ。
口が過ぎました。
命で償うぐらいなら、戻って軍を管理しろと。
言い出しっぺとして、必ず、『天王寺ルイーナ』様にお仕えしろとね。
それだけです」
「『天王寺ルイーナ』に……父上の口から、そう言われたって事か……」
「はい。
また意識を失ってしまった母上さまを抱きあげながら、はっきりと仰っていました。
だから、私――竹内イチロウは、ルイーナ様に、必ず、お仕えするしかありません。
ルイーナ様の御内儀であるエルリーン・インヴァリッドさんに、反逆する訳にはいかないのですよ。
そういう、構図なんです……これ。
ダノン・イレンズくんにしたって、あなたの恩人ですから……ひどい戒めですよね」
「父上も、母上も、タケを許さなかったって事だな。
分かった。
じゃあ、息子のオレが許すよ。だから、恩着せがましく言うよ。タケは、エルリーンにこき使われて」
「仰せのままに。
この竹内イチロウ、御二人の為に、すべてを捧げさせていただきます――」
* * * * *
『え……閣下……今、なんと仰いましたか? 産休を取るという事ですか?
独裁者が……産休』
『産前休業だ!
……略せば産休か……まあ、いい。
天王寺先輩は、もう臨月に入っている。休業が、それほど長い期間ではないと願いたい――』
『閣下。
以前にも申し上げましたが、御子、もう御一人で大丈夫だと思います。
天王寺アリスさんの体調が安定しましたら、そのようにした方が良いかと。
あの……その……母体が、あまりにも不安定なのは、御子にとってもよくないと、竹内イチロウは考えています。
ご許可いただけるのでしたら、大ごとだと思いますので、私がしっとう……』
『タケ。
それは、天王寺先輩――いや、アリス姉さんと相談して決める。
彼女がそう願うのなら、僕自身がやるつもりだ。知っているだろ。僕は、今すぐ外科医に転職できる程度の腕ならあるさ』
『し、しかし……それは、理解していますが。
御心が乱れている時です……あの……必要であれば、仰ってください。
彼女。
今日は、三十八度前半で落ち着いていますね。
――それが、落ち着いているという表現。
おかしいのですが。
御子と離れてしまえば、天王寺アリスさんにも、通常に近い治療が行えますので、前向きにご検討ください。
……どちらかというと、あなたをよく知る、大学の後輩として、言っておきます。
独裁者でいるのは、お仕事中だけにしておいた方がいい』
『子供か。
得たいと思う反面、このままアリス姉さんの方を失うのではないかと、ひどく怯えるよ。
他人の命など、平気で奪う、このエリオット・ジールゲンがな……これが、神罰というやつなのか。
……なあ』
『さあ……私には、お答えできません』
『――アリス姉さんのところへ行ってくる。
タケ。
先ほどの案、前向きに検討してみるつもりだ。検討だけな――』
* * * * *
「ルイ、おいしいな。パフェ」
「うん、エルリーン。
おいしいね。おいしいって感じられるからかな?」
「そうだな……そういう事だよな。
生きてるから、感じられる。
――戦争。
絶対に終わらせよう。で、戦争のない世の中を作っていこう。あたしとルイで、それから、みんなで」
「そうだね。
オレ、世界の人々の心に響くような歌、また作ってみる。
――考え方を捻じ曲げる薬で、自分と同じように、戦争が正しいと、『家族』にも思わせようとした、大バカな父上の大バカな行い、必ず、倒してやるよ」
* * * * *
『……ルイーナ……たすけて……ぼくを……たすけて……』
『だ、だれ……?
ボクに、助けてって……きみは……だれ?
青い瞳……黒い髪……誰なの?
どうして、こんなに真っ赤なの……全部、真っ赤……どうして、きみは、岩に縛られているの……きみは、だれ……?』
『このままだと、お父さんとお母さんの顔を忘れてしまうかもしれない……ぼくを、たすけて。
……ルイーナ……そして、おまえを……おまえとして、ちゃんと見えなくなるかもしれない……』
『え?
……あれ……何……これ?
変なの……なにかのチューブみたい……こ、こないでっ!
ボクの方に、こないで……こ、こわいよ!』
『ルイーナ……すまない。
逃げ出せそうもない……本当に、すまない。
来年の誕生日は、共に祝えないと思い……酒を飲みすぎてしまった。
失敗だったよ。
もしも、夢からさめてしまっても、大人しくもう一度、お眠り。
そうしてくれ、僕の愛し子……』
『ちちうえ?
父上なの? そうなんでしょ! 父上、父上! ちちうえぇえええ!』
『……大丈夫。
これからも、僕は、お前と一緒にいる――必ず、お前を護ってやるから。
だから、安心して、お眠り。
僕の愛しいルイーナ。
おやすみ――』
【7章より】
「まあ、今は、僕の便利な道具なんだが。だから、好きにさせている」
「道具……ですか。だからか……いえ、口のきき方がなっておりませんでした!」
これが、一番最初のまともな伏線になります。
書くのもどうかなと思ったのですが、投稿前に読んでいる人からも「30万文字前は……さがせない!」と言われ、Web読者さま向けに書いておけという意見をもらったので。
詳細は避けますが、読み直していただける機会がありましたら、アリスが『我が子』と言っている部分、そして、回想中のエリオットの心の動きなどに注目してみてください。
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【※】子供が39度の発熱。活動報告に次回投稿予定の件、書いておきます。




