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そもそも、大好き、なんだろ

The Sky of Parts[30]

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

この物語は、軍事好きな筆者が作った育児モノ。


【!】『対話体小説』の読みにくさを軽減させる為、独自の「改行ルール」、「句点くてんルール」を使っています。


※ほぼ同時アップロードですが、30章後半は長文なので、中途半端なところで2つに分割します。


「僕とアリスになりたいなんて……ね?」


「エリオット。

 あの話をしよう……というか、してほしい。

 ルイーナの――いや、二人の母として、お願い。

 天王寺アリスから、エリオット・ジールゲンに頼みたいの」


「……タケ」


『はい。なんでしょうか。

 申し訳ありませんが、ルイーナ様とエルリーン・インヴァリッドさんの会話、この竹内イチロウもすべて聞いてしまいました。

 ご自分で、御二人には、伝えた方がいいんじゃないですか?

 私に、任せると、すべて伝えてしまいますよ――』


「タケ、お前がやれ。僕だと、すべてを伝えられなくなるかもしれないだろ――な?」


『やれやれ。

 あなただって思っているんじゃないですか? 命で償えたら、どんなに楽だったかって――ねえ、先輩』


「そうだな、後輩。『いいから、とりあえず、言え。以上』」


『現在、軍を管理している身としても、御二人とは、お話したい事があります。

 わだかまりが残るような、変なしこりがあると、この竹内イチロウがこれから、強大な軍事力を維持していく上でも問題になるんです。

 いい機会をいただいたと思っておきます。

 決して、先輩の為ではありません。あなたは、軍にとって、敵だから』


「ふん。

 このエリオット・ジールゲンを、『敵対』相手だと言うのか。

 竹内イチロウ。

 今すぐ、軍を潰してやってもいいんだぞ」


『先輩の奥様が、先日、タワー『スカイ・オブ・パーツ』にお越しになった際、仰っていました。

 エルリーン・インヴァリッドさんを、軍でいただくのと引き換えに、この竹内イチロウの口から、ルイーナ様に、すべて伝えるようにとね』


「タケ!

 私は、その事は、エリオットには、黙っておけと言ったじゃないか!

 約束違反だ!

 エルリーンは、あげないぞっ」


『天王寺アリスさん。

 貴女の想いを離れて、ルイーナ様と考えを合わせる意味で、エルリーン・インヴァリッドさんは、軍のトップに就任して下さると思います』


「ううっ!

 タ、タケ!

 もういい!

 私は、エリオットの奴が、ずっと、ひた隠しにしてきたバカばかバカな事実が、ルイーナに伝わればそれでいい!」


『先輩。

 と、奥様も仰っていますし、ルイーナ様が真実を知る事、後悔しませんね?』


「僕は、今や天王寺アリス軍の『三十二等兵』だからな」


『そっちは、勝手に、奥様と仲良くやって下さい。

 ヘマするような事があったら、容赦なく、討ち取りますので、そのご覚悟をもって行動願いますが。

 分かりました。

 この竹内イチロウが、ルイーナ様にお伝えします。

 ――奥様のお気持ちを取り戻せたように、先輩のところに、ルイーナ様が戻る事を願って、全力でことたらせていただきます』


「タケ!

 さっきから何度も、何度も……。

 私は、独身だ!

 天王寺アリスとこいつは、書類上、赤の他人だ!

 というか、私は、書類すらない!」


『ルイーナ様に伝わりやすいように、書類で資料を用意しておきます』


「タケ、適当な事を言うのも、お茶をにごす行為だぞ!

 天王寺アリスは、このままシングルマザーを貫き通すんだ!」


『どうぞ、貴女のお好きなように。

 黙ったままのようですが、先輩も、お好きなように。

 竹内イチロウは、もう、あなたなどいなくても、存在意義たる権力維持を遂げる事ができますので――書類の件で、私の邪魔が入る事は、二度とありません。

 あ。

 返事は、必要ありませんよ。

 あなたの仰る事で、この竹内イチロウが行動しなければならないなんて……バカらしいじゃないですか。

 ね?』


「……エリオット。

 黙ったままでいいのか?

 ――ふう。

 タケ。

 お前たちの大学の大先輩の天王寺アリスが、伝えておいてやる。

 エリオットは、タケに言う事はないそうだ。

 顔にそう書いてある」


『大学の天王寺アリス大先輩。

 了解。

 まだまだ、やる事だらけでしょうが、貴女も一安心じゃないですか。

 この竹内イチロウの口からは、多くを聞きたくないと思うので、それだけ言っておきます』


「悪いタケタケにしては、気がきく。

 ふう。

 本当に、私の子育ては、まだまだやる事だらけだ!

 だ、だけど、良かった。

 ――あんな書籍を読んで、ルイーナがどうなってしまうのか、ひどく焦ってしまった。

 ドキドキしてた。

 け、今朝、お布団の中で、ルイーナが私の身体に……ドキドキ」


「なんだと!

 ルイーナの奴、エディプスコンプレックスというやつかっ。

 まったく。

 いけないじゃないか!

 アリス。君には、今すぐ、お仕置きが必要のようだ」


「黙れっ。

 『三十二等兵』!

 しばらく、何も言わなかったくせに、急に、イキイキとした顔をして、私の方を見るな!

 ニヤニヤ顔やめろっ!」


『あれ、ルイ。

 あたしへのお願いって、三つなんだよな。もう一つって、何?』


「ん?

 そういえば、ルイーナの三つ目の願いは、私も気になっていたんだ。

 ふう。

 エリオットが、タイトルも、内容も怪しい書籍を渡していたから……どうなるかと心配していたが、本当に、変な出来事がなくて良かった」


「くくっ。

 それは、どうかな。

 アリス。

 僕は、君よりも、ルイーナと長く暮らしていたんだ。

 ルイーナの事は、母親の君よりも理解している。

 同じ男としてもな!」


『エルリーン。

 結婚は、確約でいいよね! オレの奥さんになってくれるって事でいいよね?』


『ああ。

 ルイ、もちろん。

 あたし、ルイの奥さんになるよ……って、恥ずかしい事を言わせるな!』


『あの……新婚生活で、エルリーンにお願いしたい事が、あります』


『え?

 か、顔赤いよな、あたし……きっと赤い……えっと、何?』


「うわっ!

 モニタ画面消すぞっ!

 こ、これは親として、私たちが見たり聞いたりしては、絶対にいけない。

 タケも、音声だけとはいえ、すぐにOFFに……こ、こら!

 私の端末だ!

 エリオット! か、返せっ!

 お、親として、これは、き、聞いてはいけない!」


「さあ、本番の始まりだっ!

 父親として、ほろりともさせてもらったが――僕は、この時を、待ち望んでいたっ!」


『――エルリーンを、鳥カゴに入れて眺めてもいい?』


『は?』


「は……?

 ル、ルイーナ……私のルイーナ……ちょ、ちょ……ちょっと!」


「くく」


『え?

 あ?

 ルイ?

 真顔……冗談ですかって、あたしが聞き返せないような雰囲気を、作らないでくれるかな……ね?』


『オレが、本気の本気で話している時は、適当な発言でも、お茶をにごすの禁止。

 いいって言ったよね?

 オレが、オレである為に必要なら、拒絶しない。

 遠慮せずに言ってって。

 これは、言論封殺げんろんふうさつした上での強圧的な手段だから……ね?』


「うわわあぁあああ……ル、ルイーナ!

 私のルイーナぁあああ! ……な、何を言って……」


「ルイーナ。

 お前は、やはり僕のいとし子だ。

 ふふ。

 まずは、アナコンダ参号で威圧する。相手が、話し合いに応じる姿勢を見せたら、いったんは、精神的支配から解放する。これは、非常に有効な手段だ!

 できれば、他人の邪魔が入らない環境を用意するといい。

 完璧だなっ。

 そうして、もっともらしい話をする。

 この時、主張の正当性を、相手に認めさせながら、密かに自分の本心を入れる事が重要だ。

 託言かずけごとは、全体的に駆使する。

 内容を繰り返すように話しかけられると、聞き手は、だんだん飲み込まれていく。

 その場に存在しない、他者の的確な意見を加えながら、雄弁をふるう。

 自分は、悪い事をしているわけではない。

 そう思い込むのも、話を続ける為の推進力となる」


「エリオット!

 や、やはり、お前が、この書籍の著者だな!

 私が、手にしている本を見ろ!

 HN:E!

 タイトル『!”ぼくを拒む彼女” を作り出す』」


「聴衆が、壇上だんじょうの演説者の意思を、おのれのものよりも優先すべきであると考え始めたら、もう、こちらが主導権を握っていると言ってもいい。

 このあたりで、わざとれてやるのも、信服しんぷくさせ、魅了し、民衆を継続的にきつけておくには効果的だ。

 イニシアティブを握られているにもかかわらず、話し手と対等、いや、聞いている自分の方が優位なのだと思い込ませる為だ。

 自分の方が、壇上だんじょうから見下ろす立場になったと誤想ごそうした聞き手は、そこから逃げ出す事ができない。

 壇上だんじょうという牢獄に、囚われたからだ。

 ははっ。

 これで、仕組みの中に、完全に、相手を閉じ込める事ができる!」


「はは……じゃない!

 わ、私のルイーナが、ルイーナが、おかしい事になっているじゃないか!」


「うんうん。

 刷り込みにも似た、非可逆的思想に追い込んだら、反逆のを断ち、話し手のいかなる思惑を知ったとしても、必ず、服従する事を約束させる。

 そうだ!

 あらかじめ伝えておいた真義の開示が始まる。

 くくっ。

 お嬢さん。

 ルイーナは、何度も言っていたではないか!

 君を独占したい。

 自分の思い通りにしたい。

 閉じ込めておきたいとなっ!」


「最初についている『!』は、命題の真偽反転――否定か……『N』、Notだなっ!」


「ほう。アリス。

 学生の頃は、コンピュータなどさわる気もしないと、『私は、超並列でどうにかして、バイト先のハンバーガー屋に寄与きよできるぐらいに、自力で気象予測に関するシミュレーションできるからいいんだ!』などと、つかみどころが難しく、ツッコミのポイントを考えるのすら、若干煩わしく感じるような、不明確発言が目立っていたが――『sagacity』に対抗する為に、基礎の基礎から勉強したんだな。

 その通り!

 著者は、僕だっ!

 都に行った時に、本屋で入手してきた。

 同じ大学に入学したが、アリス姉さんが振り向いてくれなくて、僕も、いろいろ考えたんだ。

 HN:Eの名で、雑記程度に、ネット発表をしていたら、書籍にしないかという話が舞い込んできた。

 『sagacity』システム試作の為にも、金が必要だったのでな。

 いい収入源になったよ」


「な、内容が怪しすぎる、この本、売れたのか……というか、これが、クーデター成功の資金に……せ、世界を混乱におとしいれた『魔の書』じゃないか!

 天王寺アリスでも思いつかないような、変なタイトルのこの本が、売れたのか!」


「タイトルについて、一つだけ断っておく。

 数理論理学で語るのであれば、『ぼく以外の他者』も含む事になってしまう。

 だが、これは教科書ではない。

 エクリチュール。

 そう、書籍は、タイトル自体が、書く事の一つの表現となると、僕は思うんだ。

 考えてくれ。

 この書籍を手にする者の心を。

 著者である僕がそうであるように、世界には、彼女と自分以外にいないっ!」


『エルリーン。

 あのさ。

 できたら、ストレッチャーや柱も、お願いしたいんですけど、い、いいよね?

 も、もちろん、オレと結婚したあとって事だから……今すぐじゃないから!』


「ぐっ……草食系男子すぎるっ!

 ルイーナっ。

 父上としては、今すぐ、お嬢さんを押し倒すぐらいの勢いがほしかった」


「エリオットぉおおおおっ!

 お前、私のルイーナの中に……変な遺伝情報をひそませたな!」


「はははっ。

 アリス!

 すべては、手遅れだ!

 ルイーナが、思春期の階段を駆け上がる事、今の君に、阻止する手立てはない。

 無意味な自責じせきの念に駆られない方がいいぞ。

 たまたまルイーナの口から聞いてしまっただけで、アリスが見ている事に関係なく、さだめられていたんだ!」


『ル、ルイ。

 落ち着いて。

 えっと……。

 そんなに、積極的になるほど、そういうのに興味があるの?

 あたしを、閉じ込めたり、縛ってみたいの?』


「ああああああっ!

 私のエルリーンがぁ! ル、ルイーナ……落ち着いて!」


『……うん、エルリーン。オレ、すごく、興味があります』


「ルイーナ。

 僕の息子!

 実に素直で、可愛らしい!

 父上は、気づいていたぞ。

 そういうのに興味がある事を! だから、この書籍の事を思い出して、お前の手に握らせてやったんだ!

 あはっはっははっ。

 この父の言いなりになって、あの時、お嬢さんを手に入れておけば良かったのにな!

 そうしたら、圧政をいる若き支配者として、誰に気兼きがねする事なく、お嬢さんを自由にできただろ!

 鳥カゴだろうと、ストレッチャーだろうと、柱だろうと、我が家には用意があったんだ。

 どれでもすぐに与えてやれたものを」


『落ち着け。

 ルイ、落ち着いて……あたしは、普通でいい……普通がいい!』


『で、でも。

 きっと、エルリーンが憧れる母上は、興味があると思うよ!

 鳥カゴとか。

 ストレッチャーとか、柱とかっ!

 オレ、見たんだ!

 父上と母上が、柱で遊んでいるの! 目撃しちゃったんだ!』


「ちょ、ちょっと……ルイーナ?

 そ、それは、ルイーナが『スカイ・オブ・パーツ』から、逃げ出せた日の事を言っているの?

 ま、待って。

 はは……。

 どう考えても、私とエリオットは、遊んでいた訳ではないじゃないか……」


「アリス、そうだったのか!

 では、今宵は、そのように過ごさないか?

 思い出話でもしながら――なあ。

 タケ!

 お前も、アリスは、興味があると思うだろ」


『ええ、竹内イチロウといたしましても、天王寺アリスには、そういう趣味があると思います。

 先輩に早く会いたいから、手錠と目隠しと鎮静剤注射を持って、私に迎えに来いとか――まあ、天王寺アリスは、間違いなく興味があるんでしょう!』


「な……ない!

 私は……そんな」


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