其れは、断金の交わり、にて
The Sky of Parts[30]
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この物語は、軍事好きな筆者が作った育児モノ。
【!】『対話体小説』の読みにくさを軽減させる為、独自の「改行ルール」、「句点ルール」を使っています。
「ルイが……ルイである為に、伝えたい事ってなんだよ?
両親の子って。
――あっと。
何度も言ってるけど、お前が、エリオット・ジールゲンの息子だっていうのは、世界の誰もが知ってる事だし、あたし自身も受け止めてるから、卑屈にならずに、ちゃんと言って。
黙ってるなんてやめてほしい。
本当だよ。
あたしは、一生、ルイと一緒にいる気があるから、ちゃんとすべてを話して。
隠さないでほしい」
「ありがとう、エルリーン。
アナコンダ参号。
いったん、この布袋に入れて、エルリーンの目に触れないようにするね。
ちょっと待って。
……お待たせ。
あのね。
たまに、エルリーンに意地悪したり、言う事聞けオーラ出しちゃうじゃないか。
毎度、怒られるけど、あれも、オレ自身なんだ。
エルリーンに、『悪い事』と言われて、少し、悩んでいた。
自分を否定されている気がして……ね」
「あ……ごめん。
えっと……なんて言ったらいいんだろう……好きな女の子にイタズラしたい……とかって事?」
「うん。
そういう事。
エルリーンにだけ、やりたくなってしまう。
イタズラは、小さい頃から大好きだったよ。
居場所としては、タワー『スカイ・オブ・パーツ』に幽閉されて育ったようなオレだけど、生活としては、たぶん、普通だった。
三人しか――父上とタケ、そして母上しかいなかったから、女の子って存在を、物語の中の世界でしか知らなかったけど。
父上の正体を知ってからは、ほんの少しふざけてみようと思うのにも、すごく気をつかうようになった。
軽々しくやれないよ……。
だって、いつか、あんな父親と一緒の自分になってしまったらと思うと……怖くて」
「そうだよな。
それは、あたしでも、簡単に想像できる。
最初にこの基地にきた頃、ルイ、すごく大人しくしてた」
「悪者になるっていうのは、今でも、本当に嫌だと思う。
でも、なんだろう。
エルリーンを好きになれば、好きになるほど――悩んでしまった時、もう、オレ、訳がわからなくなってしまって。
……弱気になって、エルリーンに護られる方がいいなって思っていた時期もあるけど、やっぱりオレの方が、エルリーンを護りたいって思うようになっていった。
エルリーンを護れるようなオレになろうと思うと、強くならなきゃって。
男らしくしなくちゃって。
そう思うと、不思議と、意地悪なオレになってしまう」
「そう思うと、あたしに、イタズラしたくなるの?
ルイは、そう言いたい?」
「うん。
最初は、自分でも、よく分からなかった。
気づくと、エルリーンに、イタズラしたくなってしまう。
後、さっきも、受け止めてくれるって言葉をもらったけど、オレの生まれ――世界中の人々から怨まれていて、しかも、エルリーンのお父さんの仇が、オレの父親なわけで……オレ自身が、消化できなくて、頭がおかしくなりそうだった。
でも。
今は、オレが、父上の子でいいよって、みんなが言ってくれる。
父上を否定する必要がなくなって、また、受け入れようと考えていた時、ある事に気づいたんだ」
「ある事? って、なんだよ……」
「エルリーンを、独り占めしたいと思うオレも、本当のオレなんだなって。
いつでもじゃないけど、オレだけを見てほしいって、思う時がある。
エルリーンの中で、一番になりたいなって考えちゃうんだ。
オレ自身が大好きなはずの母上に、エルリーンが甘えていてもね。
母上からですら、取り返したくなってしまう。
一番は、オレがいい。
実感がほしいなって思うと、つい、意地悪したり、言う事を聞かせようとしてしまう」
「あのさ、ルイ。
今、そのすぐに俯いてしまう、辛そうな表情で、受け止めてくれるか分からないけど、あたしは、いつも、ルイが一番だって思ってるよ」
「ありがとう、エルリーン。
それは、分かっていたんだ。
こういうのが相手をねじ伏せると言われたり、卑怯だって思われるのかもしれないけど――オレの生まれもあってで、少し話させて。
相手を自分の思い通りにしたいなんていうのは、オレ、『悪』だと思っていた。
でも、好きな子にしたいのなら、ほんの少しは、いいのかなって。
……あの……。
男子だけで話していて、みんなも、同じような事を考えているみたいなんだ」
「ん?
えっと。
学校のクラスの男子の事?」
「そう。
彼女いる子も多いし、男子ばかりになると、最近は、すぐにそういう話題になる。
誰だったか忘れたけど、良い事を言った子がいたんだ。
本当の自分を知ってほしいから、好きな人が、自分だけを見てくれる時間を作りたくなるんだって。
だって、お喋り、たくさんしたいじゃないか。
好きな人の事だって、たくさん教えてほしくなる。
そういう気持ちが強くなる時、意地悪して、女の子の気を引きたくなるんだって」
「……ルイ」
「で、なかなか、うまい具合にそういう機会が作れない時、やきもきして、気を揉んでくると、ちょっと強引に相手の考えに割り込みたくなってしまう。
へへっ。
その話題が出た時に、『じゃあ、彼女を鳥カゴに閉じ込めて、言う事を聞くように独裁演説すればいいのかな』って、オレが言ったら大ウケだった!
彼女を独占したいなんて、誰だって思うからってね。
……クラスのみんな、すごいよね。
オレが、エリオット・ジールゲンの息子だって知っているのに、受け入れてくれて――戦争に巻き込まれた子だっているはずなのに」
「え……ルイって、男子の前だと……そんな風に喋っているのか。
あたし、知らなかった……そうなのか」
「うん。
最初、学校に行った時は、オレの存在って、嫌われると思っていた。
エルリーンと一緒にいられれば、それでいいやぐらいの気持ち。
だけど。
思ったよりも、みんなが、オレを受け入れてくれた。
Lunaだから、優しくしてくれるのかなって思い込んだ。
複雑な気持ちだった……でも、どうせ、エリオット・ジールゲンの息子だっていうのは、認めてもらえないんだろうって考えていたんだけど、男子ばかりの時に、ネタにして話してみたら――みんな笑ってくれた。
愛想笑いじゃなさそうなんだ。
以来、男子しかいない時は、父親ネタを使ってバカ話してる。
ほら。
おぼえてるかな?
だから、あの作文を書いたんだ」
「提出しなかった、あの作文の事?」
「そう。だから、あの作文を書いた。
いつか、みんなを護れるような、騎士――ナイトになりたくて」
「あの作文、あたしと一緒にいたいって、書いてくれたのも、すごく嬉しかった。
戦争を終わらせる事ができる力――ルイは、本当に持っているよ」
「うん。
これからも、エルリーンと一緒にいたい。
戦争を終わらせて――みんなが望むような未来を、作っていきたい。
オレが本当に、戦争を終わらせる事ができる力を使えるのなら、使いたいんだ。
そして、それが、父上を、また受け入れていいっていうのなら――オレ、世界のみんなに感謝したい」
「……ルイ。
大切にしておけよ、その気持ち。それが、本当のルイだっていうのなら」
「ありがとう。
何度も言うようだけど、盲目的に従うつもりはないよ。
あの人を、自分の父親として、認識しているって話。
無理に拒絶しない方が、オレが、オレ自身を受け入れられそうでさ。
そういう事。
母上と、父上の子として生まれてしまったので、どうしても、どうにもならない事なんだ」
「あたしにも、あいつを、お前の父親だって、もっと認めてほしいのか?」
「ううん。
蹴り飛ばしてやってもいいよ。
これからは、オレも、そんな風に接していくつもり。
『新しい普通の父親』だと思って、かかわりあっていくよ。
へへっ。
オレだって、成長して、中身が変わっているんだから、昔と一緒の関係に戻る必要がないというか、それでいいんだって思った。
怨みを込めて、イタズラ、どんどんしてやるよ!
あはは。
ありがとう、エルリーン。
――オレよりも先に、父上を、オレの父親だと認めてくれて……エルリーンのお父さんの仇なのに」
「――ルイ。
戦争を終わらせてくれるって、約束だけはしてほしい」
「うん。
もちろん。
オレ、逃げてばかりで、いや、あの人の方も逃げていたと思う。父上には、その事で、憤っていた。
後、どうして、エルリーンはそんなにも、うまく立ち回ってしまうんだろうって、オレ自身の弱さを見当違いに、エルリーンにぶつけてしまって、一人でイライラしている時もあった。
タワー『スカイ・オブ・パーツ』で、捕まっていた頃もね」
「……ルイが、言いたい事は分かったって伝えた上だけど、あの時は、危険がいっぱいだったから。
どうにか逃げ切らないと、ほら、今頃、違う意味でルイは、あいつを父親だと認める事になっていたかもしれないし」
「そうだね。
エルリーンが、うまく立ち回ってくれたおかげで、オレが、オレである状態で、また、あの人を受け入れてみようと思える、今に辿り着けた」
「この前も言ったけど、あたし、自分が、父さんを受け入れられなくなったら、辛いと思うんだ。
――あいつの事は、嫌いだよ。
だけど、ルイの心が、ずっと痛い思いを抱えているのは、あたしも、辛い」
「エルリーン……」
「だからさ、ルイ。
あいつの事を嫌いなままのあたしと、これからも一緒にいる為に、父親の事、受け入れろ。
これ。
班長命令だよ」
「うん。
了解しましたっ!
お掃除・皿洗い班の副班長として、天王寺ルイーナは、これからも、エルリーン班長のご命令のみに従います!
班長の『敵対』相手である、エリオット・ジールゲンとは、これからも戦っていきます!
必ず、倒します。
――オレが、あの人の『悪』を否定するという方法で、必ず、討ち取ります。
エルリーンと、世界のみんなを、戦争のない時代に導くという約束と引き換えに、オレは、父上の子に戻ります」
「約束だよ、ルイ。
必ず、エリオット・ジールゲンを倒して。
そして、あたしの父さんの仇を、討ってほしい」
「う……うん……ああ……ごめん……オレ、泣いてしまって……ごめん。
エルリーンの前で……ごめん」
「あたしも、泣いてるかも……ぐすっ。
……いやっ!
これで、本当に、父さんの仇が討てる事になったんだ!
泣いてる場合じゃない!
ルイ!
あたしに頼みたい事があったら、遠慮なく言ってほしい!」
「本当?
――実は、エルリーンに三つお願いがある」
「ん?
ルイ。
いきなり泣き止んで、パァとした表情になったな……。
まあ、そのまま、ずっと泣いたままでも、あたしも困るからいいんだけど。
なんだよ、同時に三つもか。
いいよ。
それが、ルイが、ルイである為に必要なら、拒絶しないから――遠慮せずに言って。
ルイには、これから、エリオット・ジールゲンを倒してもらわないといけないし」
「うん、ありがとう。遠慮せずに言うね。
エルリーン。
オレと一緒に、オレと一緒の意味で――戦争の火種が、もう二度と燃えあがらないという証として、軍のトップになってほしい。
世界の人々を戦争から護る、平凡で下支えしかできない支配者、天王寺ルイーナの未来の妻としてね――。
はい!
エルリーンが、何か言う前に、二つ目のお願い!
オレが、本気の本気で話している時は、恥ずかしさマックスになっても、お茶を濁さない!
エルリーン班長、返事は!」
「断固、拒否しません!」
「……あはは。
ありがとう……嬉しくて、オレ、また涙出てきちゃった……ありがとう……本当に……エルリーン、ありがとう」
「か、顔が赤くなるのは、ダメだって言われても無理だぞ……まったく、ルイと一生一緒にいる気だって、何回言わせれば気が済むんだよ! 拒絶もしないって言ってるのに。
ま、まさか……このタイミングで……つ、妻とか……あわわ!
お茶を濁す禁止は、言論封殺した上での強圧的な手段だ!
……まあ、本気のプロポーズで、お茶を濁されたらショックだよな」
「うん。
二人とも、将来も一緒にいようと言っているけど――継ぎ目がない関係になりがち。
だからこそ、ビシッと決める時が、たまにはあっても良いんじゃないのかな。
キス断られたの――今でも、怒ってるよ。
だから、みんなの前で、オレとキスして祝福されてね。
はい!
これ、意地悪なオレでーす!」
「ルイ、意地悪すぎるな……でも、これ、あたしにだけ見せてくれるルイなんだ」
「そうだよ。
エルリーンだけに見せる、独裁者のオレ。
男らしいところを、一つでも増やせって言うのなら、そういうオレを、オレ自身が認めていく必要があると思う。
――髪、切るよ。
父上の存在を拒む必要なくなったし、オレ、あの人よりもすごい人間になれたのかなって思い込んだら……バカらしいよね。
小さい気持ちで、張り合ってるのって!」
「あたし、女の子らしくなった方がいい……?」
「う~ん。
エルリーンが、そうなりたかったら、そうしてくれてもいいよ。
でも、今、言っているのは、オレの決意だから。
――どこか、怖かったと思うんだ。
大人になるの。
そして、誰かと結婚するの。
ぼやっとしか想像できないけど、いつか自分が父親になったら……怖いよね。うちの父上、あんな人だから。幼い頃は、正体を知らなかった頃は、父上みたいになりたい――そう、思っていた」
「……間違ってたら、ごめん。
ルイが、何も知らなかった頃に憧れた大人の男の姿――父親みたいな男になってもいいかって、言いたいのか?」
「ふう。
エルリーン、絶対に結婚してね!
オレの事を分かってくれるのは、世界中さがしても、エルリーンしかいないから。
幼い頃に、思い描いた男を、目指させてほしい。
それは、圧制の恐怖政治を敷くエリオット・ジールゲンではなく――オレが、憧れた父上の姿。
意地悪だってするし、オレに意見をぶつけてくるし、そして、優しさもくれた。そういう父親。あれが、騙されていたり、幻でもいいんだ。
将来オレが、どういう男になりたいかって言われたら、あれなんだ」
「……じゃあ、やっぱり、あたしは、このままだな。
幼い頃になりたかった自分は、軍師殿――お前の母親、天王寺アリスさんだから」
「あはは。了解です。
でも、オレの父上と母上か――書類上の結婚できなかったら、ごめんね!
あはは」




