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其れは、断金の交わり、にて

The Sky of Parts[30]

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

この物語は、軍事好きな筆者が作った育児モノ。


【!】『対話体小説』の読みにくさを軽減させる為、独自の「改行ルール」、「句点くてんルール」を使っています。


「ルイが……ルイである為に、伝えたい事ってなんだよ?

 両親の子って。

 ――あっと。

 何度も言ってるけど、お前が、エリオット・ジールゲンの息子だっていうのは、世界の誰もが知ってる事だし、あたし自身も受け止めてるから、卑屈にならずに、ちゃんと言って。

 黙ってるなんてやめてほしい。

 本当だよ。

 あたしは、一生、ルイと一緒にいる気があるから、ちゃんとすべてを話して。

 隠さないでほしい」


「ありがとう、エルリーン。

 アナコンダ参号。

 いったん、この布袋に入れて、エルリーンの目にれないようにするね。

 ちょっと待って。

 ……お待たせ。

 あのね。

 たまに、エルリーンに意地悪したり、言う事聞けオーラ出しちゃうじゃないか。

 毎度、怒られるけど、あれも、オレ自身なんだ。

 エルリーンに、『悪い事』と言われて、少し、悩んでいた。

 自分を否定されている気がして……ね」


「あ……ごめん。

 えっと……なんて言ったらいいんだろう……好きな女の子にイタズラしたい……とかって事?」


「うん。

 そういう事。

 エルリーンにだけ、やりたくなってしまう。

 イタズラは、小さい頃から大好きだったよ。

 居場所としては、タワー『スカイ・オブ・パーツ』に幽閉されて育ったようなオレだけど、生活としては、たぶん、普通だった。

 三人しか――父上とタケ、そして母上しかいなかったから、女の子って存在を、物語の中の世界でしか知らなかったけど。

 父上の正体を知ってからは、ほんの少しふざけてみようと思うのにも、すごく気をつかうようになった。

 軽々しくやれないよ……。

 だって、いつか、あんな父親と一緒の自分になってしまったらと思うと……怖くて」


「そうだよな。

 それは、あたしでも、簡単に想像できる。

 最初にこの基地にきた頃、ルイ、すごく大人しくしてた」


「悪者になるっていうのは、今でも、本当に嫌だと思う。

 でも、なんだろう。

 エルリーンを好きになれば、好きになるほど――悩んでしまった時、もう、オレ、訳がわからなくなってしまって。

 ……弱気になって、エルリーンに護られる方がいいなって思っていた時期もあるけど、やっぱりオレの方が、エルリーンを護りたいって思うようになっていった。

 エルリーンを護れるようなオレになろうと思うと、強くならなきゃって。

 男らしくしなくちゃって。

 そう思うと、不思議と、意地悪なオレになってしまう」


「そう思うと、あたしに、イタズラしたくなるの?

 ルイは、そう言いたい?」


「うん。

 最初は、自分でも、よく分からなかった。

 気づくと、エルリーンに、イタズラしたくなってしまう。

 あと、さっきも、受け止めてくれるって言葉をもらったけど、オレの生まれ――世界中の人々から怨まれていて、しかも、エルリーンのお父さんの仇が、オレの父親なわけで……オレ自身が、消化できなくて、頭がおかしくなりそうだった。

 でも。

 今は、オレが、父上の子でいいよって、みんなが言ってくれる。

 父上を否定する必要がなくなって、また、受け入れようと考えていた時、ある事に気づいたんだ」


「ある事? って、なんだよ……」


「エルリーンを、独り占めしたいと思うオレも、本当のオレなんだなって。

 いつでもじゃないけど、オレだけを見てほしいって、思う時がある。

 エルリーンの中で、一番になりたいなって考えちゃうんだ。

 オレ自身が大好きなはずの母上に、エルリーンが甘えていてもね。

 母上からですら、取り返したくなってしまう。

 一番は、オレがいい。

 実感がほしいなって思うと、つい、意地悪したり、言う事を聞かせようとしてしまう」


「あのさ、ルイ。

 今、そのすぐにうつむいてしまう、辛そうな表情で、受け止めてくれるか分からないけど、あたしは、いつも、ルイが一番だって思ってるよ」


「ありがとう、エルリーン。

 それは、分かっていたんだ。

 こういうのが相手をねじ伏せると言われたり、卑怯だって思われるのかもしれないけど――オレの生まれもあってで、少し話させて。

 相手を自分の思い通りにしたいなんていうのは、オレ、『悪』だと思っていた。

 でも、好きな子にしたいのなら、ほんの少しは、いいのかなって。

 ……あの……。

 男子だんしだけで話していて、みんなも、同じような事を考えているみたいなんだ」


「ん?

 えっと。

 学校のクラスの男子だんしの事?」


「そう。

 彼女いる子も多いし、男子だんしばかりになると、最近は、すぐにそういう話題になる。

 誰だったか忘れたけど、良い事を言った子がいたんだ。

 本当の自分を知ってほしいから、好きな人が、自分だけを見てくれる時間を作りたくなるんだって。

 だって、お喋り、たくさんしたいじゃないか。

 好きな人の事だって、たくさん教えてほしくなる。

 そういう気持ちが強くなる時、意地悪して、女の子の気を引きたくなるんだって」


「……ルイ」


「で、なかなか、うまい具合にそういう機会が作れない時、やきもきして、気をんでくると、ちょっと強引に相手の考えに割り込みたくなってしまう。

 へへっ。

 その話題が出た時に、『じゃあ、彼女を鳥カゴに閉じ込めて、言う事を聞くように独裁演説すればいいのかな』って、オレが言ったら大ウケだった!

 彼女を独占したいなんて、誰だって思うからってね。

 ……クラスのみんな、すごいよね。

 オレが、エリオット・ジールゲンの息子だって知っているのに、受け入れてくれて――戦争に巻き込まれた子だっているはずなのに」


「え……ルイって、男子だんしの前だと……そんな風に喋っているのか。

 あたし、知らなかった……そうなのか」


「うん。

 最初、学校に行った時は、オレの存在って、嫌われると思っていた。

 エルリーンと一緒にいられれば、それでいいやぐらいの気持ち。

 だけど。

 思ったよりも、みんなが、オレを受け入れてくれた。

 Lunaだから、優しくしてくれるのかなって思い込んだ。

 複雑な気持ちだった……でも、どうせ、エリオット・ジールゲンの息子だっていうのは、認めてもらえないんだろうって考えていたんだけど、男子だんしばかりの時に、ネタにして話してみたら――みんな笑ってくれた。

 愛想笑いじゃなさそうなんだ。

 以来、男子だんししかいない時は、父親ネタを使ってバカ話してる。

 ほら。

 おぼえてるかな?

 だから、あの作文を書いたんだ」


「提出しなかった、あの作文の事?」


「そう。だから、あの作文を書いた。

 いつか、みんなを護れるような、騎士――ナイトになりたくて」


「あの作文、あたしと一緒にいたいって、書いてくれたのも、すごく嬉しかった。

 戦争を終わらせる事ができる力――ルイは、本当に持っているよ」


「うん。

 これからも、エルリーンと一緒にいたい。

 戦争を終わらせて――みんなが望むような未来を、作っていきたい。

 オレが本当に、戦争を終わらせる事ができる力を使えるのなら、使いたいんだ。

 そして、それが、父上を、また受け入れていいっていうのなら――オレ、世界のみんなに感謝したい」


「……ルイ。

 大切にしておけよ、その気持ち。それが、本当のルイだっていうのなら」


「ありがとう。

 何度も言うようだけど、盲目的に従うつもりはないよ。

 あの人を、自分の父親として、認識しているって話。

 無理に拒絶しない方が、オレが、オレ自身を受け入れられそうでさ。

 そういう事。

 母上と、父上の子として生まれてしまったので、どうしても、どうにもならない事なんだ」


「あたしにも、あいつを、お前の父親だって、もっと認めてほしいのか?」


「ううん。

 蹴り飛ばしてやってもいいよ。

 これからは、オレも、そんな風に接していくつもり。

 『新しい普通の父親』だと思って、かかわりあっていくよ。

 へへっ。

 オレだって、成長して、中身が変わっているんだから、昔と一緒の関係に戻る必要がないというか、それでいいんだって思った。

 怨みを込めて、イタズラ、どんどんしてやるよ!

 あはは。

 ありがとう、エルリーン。

 ――オレよりも先に、父上を、オレの父親だと認めてくれて……エルリーンのお父さんの仇なのに」


「――ルイ。

 戦争を終わらせてくれるって、約束だけはしてほしい」


「うん。

 もちろん。

 オレ、逃げてばかりで、いや、あの人の方も逃げていたと思う。父上には、その事で、いきどおっていた。

 あと、どうして、エルリーンはそんなにも、うまく立ち回ってしまうんだろうって、オレ自身の弱さを見当違いに、エルリーンにぶつけてしまって、一人でイライラしている時もあった。

 タワー『スカイ・オブ・パーツ』で、捕まっていた頃もね」


「……ルイが、言いたい事は分かったって伝えた上だけど、あの時は、危険がいっぱいだったから。

 どうにか逃げ切らないと、ほら、今頃、違う意味でルイは、あいつを父親だと認める事になっていたかもしれないし」


「そうだね。

 エルリーンが、うまく立ち回ってくれたおかげで、オレが、オレである状態で、また、あの人を受け入れてみようと思える、今に辿たどり着けた」


「この前も言ったけど、あたし、自分が、父さんを受け入れられなくなったら、辛いと思うんだ。

 ――あいつの事は、嫌いだよ。

 だけど、ルイの心が、ずっと痛い思いをかかえているのは、あたしも、辛い」


「エルリーン……」


「だからさ、ルイ。

 あいつの事を嫌いなままのあたしと、これからも一緒にいる為に、父親の事、受け入れろ。

 これ。

 班長命令だよ」


「うん。

 了解しましたっ!

 お掃除・皿洗い班の副班長として、天王寺ルイーナは、これからも、エルリーン班長のご命令のみに従います!

 班長の『敵対』相手である、エリオット・ジールゲンとは、これからも戦っていきます!

 必ず、倒します。

 ――オレが、あの人の『悪』を否定するという方法で、必ず、討ち取ります。

 エルリーンと、世界のみんなを、戦争のない時代に導くという約束と引き換えに、オレは、父上の子に戻ります」


「約束だよ、ルイ。

 必ず、エリオット・ジールゲンを倒して。

 そして、あたしの父さんの仇を、討ってほしい」


「う……うん……ああ……ごめん……オレ、泣いてしまって……ごめん。

 エルリーンの前で……ごめん」


「あたしも、泣いてるかも……ぐすっ。

 ……いやっ!

 これで、本当に、父さんの仇が討てる事になったんだ!

 泣いてる場合じゃない!

 ルイ!

 あたしに頼みたい事があったら、遠慮なく言ってほしい!」


「本当?

 ――実は、エルリーンに三つお願いがある」


「ん?

 ルイ。

 いきなり泣きんで、パァとした表情になったな……。

 まあ、そのまま、ずっと泣いたままでも、あたしも困るからいいんだけど。

 なんだよ、同時に三つもか。

 いいよ。

 それが、ルイが、ルイである為に必要なら、拒絶しないから――遠慮せずに言って。

 ルイには、これから、エリオット・ジールゲンを倒してもらわないといけないし」


「うん、ありがとう。遠慮せずに言うね。

 エルリーン。

 オレと一緒に、オレと一緒の意味で――戦争の火種が、もう二度と燃えあがらないというあかしとして、軍のトップになってほしい。

 世界の人々を戦争から護る、平凡で下支えしかできない支配者、天王寺ルイーナの未来の妻としてね――。

 はい!

 エルリーンが、何か言う前に、二つ目のお願い!

 オレが、本気の本気で話している時は、恥ずかしさマックスになっても、お茶をにごさない!

 エルリーン班長、返事は!」


「断固、拒否しません!」


「……あはは。

 ありがとう……嬉しくて、オレ、また涙出てきちゃった……ありがとう……本当に……エルリーン、ありがとう」


「か、顔が赤くなるのは、ダメだって言われても無理だぞ……まったく、ルイと一生一緒にいる気だって、何回言わせれば気が済むんだよ! 拒絶もしないって言ってるのに。

 ま、まさか……このタイミングで……つ、妻とか……あわわ!

 お茶をにごす禁止は、言論封殺げんろんふうさつした上での強圧的な手段だ!

 ……まあ、本気のプロポーズで、お茶をにごされたらショックだよな」


「うん。

 二人とも、将来も一緒にいようと言っているけど――がない関係になりがち。

 だからこそ、ビシッと決める時が、たまにはあっても良いんじゃないのかな。

 キス断られたの――今でも、怒ってるよ。

 だから、みんなの前で、オレとキスして祝福されてね。

 はい!

 これ、意地悪なオレでーす!」


「ルイ、意地悪すぎるな……でも、これ、あたしにだけ見せてくれるルイなんだ」


「そうだよ。

 エルリーンだけに見せる、独裁者のオレ。

 男らしいところを、一つでも増やせって言うのなら、そういうオレを、オレ自身が認めていく必要があると思う。

 ――髪、切るよ。

 父上の存在を拒む必要なくなったし、オレ、あの人よりもすごい人間になれたのかなって思い込んだら……バカらしいよね。

 小さい気持ちで、張り合ってるのって!」


「あたし、女の子らしくなった方がいい……?」


「う~ん。

 エルリーンが、そうなりたかったら、そうしてくれてもいいよ。

 でも、今、言っているのは、オレの決意だから。

 ――どこか、怖かったと思うんだ。

 大人になるの。

 そして、誰かと結婚するの。

 ぼやっとしか想像できないけど、いつか自分が父親になったら……怖いよね。うちの父上、あんな人だから。幼い頃は、正体を知らなかった頃は、父上みたいになりたい――そう、思っていた」


「……間違ってたら、ごめん。

 ルイが、何も知らなかった頃に憧れた大人の男の姿――父親みたいな男になってもいいかって、言いたいのか?」


「ふう。

 エルリーン、絶対に結婚してね!

 オレの事を分かってくれるのは、世界中さがしても、エルリーンしかいないから。

 幼い頃に、思い描いた男を、目指させてほしい。

 それは、圧制の恐怖政治を敷くエリオット・ジールゲンではなく――オレが、憧れた父上の姿。

 意地悪だってするし、オレに意見をぶつけてくるし、そして、優しさもくれた。そういう父親。あれが、だまされていたり、まぼろしでもいいんだ。

 将来オレが、どういう男になりたいかって言われたら、あれなんだ」


「……じゃあ、やっぱり、あたしは、このままだな。

 幼い頃になりたかった自分は、軍師殿――お前の母親、天王寺アリスさんだから」


「あはは。了解です。

 でも、オレの父上と母上か――書類上の結婚できなかったら、ごめんね!

 あはは」


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