制圧者の制圧
The Sky of Parts[29]
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この物語は、軍事好きな筆者が作った育児モノ。
【!】『対話体小説』の読みにくさを軽減させる為、独自の「改行ルール」、「句点ルール」を使っています。
【※】子育てモノとして、コメディをどうしてもやらせて下さい。29章終了時に「なろう」側にシリアス短編を投稿します。
「せ、責任者の人。
落ち着くんだっ!
僕は、たかが君の親の仇というだけじゃないか……後、世界を恐怖で従えようと、独裁政治を敷いただけ。
そう。
アリスを取り戻す為に、この反乱組織を半壊に追い込んだ事もある。
軍の支持率を維持する目的で、腕を振り上げる『見せしめ』の仕事もしていた。
うちの息子の道連れみたいな感じでさらったエルリーンお嬢さんを、軍事政権持続の為の道具に仕立てようともしてみた。
世は、僕の自由裁量で回し、逆らう奴はすべて消す。
そういった姿勢を貫いていただけじゃないかっ!
その程度の事で、責任者の人。君は、青筋を立てて、自分と人々の怨みを思い知れという表情で、このエリオット・ジールゲンに罰を与えようというのかっ!
……こ、こんにゃくを使って……ぎゃぁああぁあわああああっ!」
「ぎゃぁああぁあわああああっ!
ダ、ダノン。
おれまで、巻き込むな……レイピアで、こんにゃくツンツンはやめてくれ……震えるこんにゃく。
む、無理っ!
無理!
っていうか、エリオット・ジールゲン!
お前、よくそんな神が絶対に許さないような、断罪まっしぐら、今すぐ存在自体が消えちまえって、揃いも揃って一様に、誰も彼もがツッコミ入れそうな事を、悪びれる様子もなく言えるな!
というか、罰を受ける気なしだったのか! お前っ!」
「こ、こんにゃくが、首筋だけは……断固として拒否する!
降心できないっ!
別名ジーン・インヴァリッド。本名『後ろの人』ならば分かるだろ。
僕が罰を受ける身だとしても、『不必要な苦痛を与えるこんにゃくを使用する』は、人道上の理由から許されるべきではないんだっ。
ぎゃあああああああ!
責任者の人……こんにゃくのツンツンやめてくれ……ああ……がくっ」
「ダノン!
た、頼む……正気に戻ってくれ!
別名じゃなくて、ジーン・インヴァリッドが本名だ!
エリオット・ジールゲン!
お前、悪事を重ねたくせに……反省していないな!
ダ、ダノン、たしかにこいつは罰した方がいい……だが、おれは――」
「……ジーンさんだってさ、俺から奪ったじゃないか……ツンツン」
「ぎゃぁああぁあわああああっ!
は……?
何をだ?
ダノン……おれが、お前から何を奪ったと言うんだ!」
「――青春」
「は?
えっと、あの……おれが?
ダノンの青春を奪ったって、こと……か?」
「母さんの跡を継いで、リーダーになれと言ってきたのは、ジーンさんじゃないか。
当時の俺は、今のルイぐらいの歳。
思春期、真っ只中。
母さんがいなくなったショックも、もちろんあった。
そして、使命感にあふれ過ぎていた、十五歳だった俺は、思わずジーンさんの案をのんでしまった。
至極当然、そう思い込んでしまっていたんだ!
精神的な成長も重なっていた時期だった。
周りの目も気になった。
ほんの少しでも、冷やかされたらどうしようとか、妙なプライドの高さが邪魔してきて……冷静なふりを、人前ではするように心がけてしまったんだ!
だけど!
だけどっ!
本当は、彼女がほしかった!」
「ん……っと。
そ、そうだな……すまん。
たしかに、年下ではあったが、前リーダーのミューリーさんの息子のダノン以外に適任者がいなくて。
うちの兄貴が無事なら、子供だったお前じゃなくて、そっちというのもあったと思うが。
おれが、リーダーに向かないのは、ダノンが一番よく分かっているだろ?
……だけど。
必死に補佐はさせてもらったつもりだ……ぎゃー、こんにゃくツンツンはやめろっ!」
「な、なるほど……責任者の人。
僕ではなく、『後ろの人』を懲らしめたかっただけなんだな……であれば、僕を、このこんにゃく廊下から解放したまえ……ぎゃー!
こんにゃく……こ、こわい」
「エリオット・ジールゲン。
あんたこそ、俺から青春を思いっきり奪ったよな?
俺が、彼女とリアルを充実するような思春期を過ごせなかったのは――あんたが起こした戦争のせいだと思わないのかっ!
ツンツン」
「ぎゃぁああぁあわああああっ!
ま……待ってくれ。
僕とて、複雑な気持ちを抱く思春期に、彼女はいなかったんだ!
せ、戦争で両親を失って……常並み、坦々たる人生を送るなんて事はなかった。
アリス……。
そう、僕の思春期は、アリス姉さんをどうやったら手に入れられるのだろう。
それを考えるだけで終わったんだ!
飛び級までして同じ大学に入ったが、アリス姉さんが、僕に心を開かなかった。
こ、これが世界の悲劇の始まりだ!
アリス姉さんを手に入れる為、まずは『sagacity』システムを試作した。アリス姉さんよりも、階級が上の軍人になれればいいと思った程度だったが、クーデターを成功させてしまっただけだっ!
分かるか!
その結果、エリオット・ジールゲンの悪政――恐怖支配の軍事政権が誕生し、戦火が激しさを増し、責任者の人が青春を失っただけだ!
思春期。
僕が、リアルを充実するような思春期を過ごせなかった。
それが、負の連鎖を起こしただけだっ!
だから……ぎゃぁああぁあわああああっ!」
「ぎゃあああ……って、いうか、エリオット・ジールゲン!
お前、思春期の男子っていうのを言い訳に、よくもそこまで、自分勝手を貫いて、世界中に迷惑かけやがって!
この野郎っ!
やっぱり、お前のところに、うちのエルリーンはやれない!」
「『後ろの人』。
い、今は、僕らが争っている時ではないだろう。
二対一だ。
なんとか、責任者の人を抑え込み、この場を脱しよう……」
「た、たしかに、ダノンの奴も、酒で正気を失っているだけだ。
……こんな状況だとはいえ、お前なんかと、共闘はしたくないが……ダノンの為を思って……よし……ぎゃぁああぁあわああああっ!」
「ぎゃぁああぁあわああああっ!
な、なぜだ!
責任者の人のレイピアが触れていないのに、こんにゃくが揺れたぞ!
ん?
あ……あ……」
「エリオットぉお!
よくも、私の可愛いルイーナに、あのようなものを渡してくれたな!」
「ア……アリス……何を怒っているんだ。
僕は、君に頼まれた通りに、男親として、ルイーナが思春期の道を誤らないように、正しい手引きをしただけだ!
その手にしているものは……銃。
な、なぜそのような物を、君が持っている!
撃つ気か!
僕に罰を与える為に……撃つのか! 撃ったのか! こんにゃくを! その割り箸で作ったゴム銃でなっ!」
「終端誘導っ!
吊るされたこんにゃくを目標に、経路調整完了。戦闘態勢っ!
エア・トゥ・エア!
空対空輪ゴムっ!
ふ。
天王寺アリスのトレンチコートのポケットには、たくさんの輪ゴムが入っている! エリオット。お前の精神が崩れ去るほど長い時間、連続で撃ち続けられるぞ!」
「や、やめろ……撃つなっ。
アリス!
命中したら、こんにゃくが揺れるだろう! そうしたら、君の愛する僕の心が、どれほど痛むと思うんだ!」
「黙れっ!
エリオットぉおお!
お前、どうして、ルイーナにこんなものを渡した!
私だってな……本当は、何もしたくなかったんだ……できたら見過ごしたかった!
お前が、『ルイーナは男子だから、必ずそういう変化を迎える。それが、あの子の命を脅かす事態に繋がらなければいいが』などと、真面目に話題を振ってきた。
女ゆえに、私は気にならずに終わった変化で……そこまで深く考えていなかったが、たしかに急いだ方が良いと思った。
ルイーナを世界の代表のようなものにするという話。
エルリーンの協力があってこそ成り立つという、お前の理論はたしかにあっている。
二人とも、私の可愛い子供。
慌てさせるような真似はしたくなくて、でも、本当に二人がこれからも愛し合っていけるか……そんな不安を、エリオット。お前にぶつけたのが、そもそも失敗だった!」
「ん……あ。
どういう事だ?
うちのエルリーンの協力がいるって話?
ルイの彼女として、これからもエルリーンがやっていけるかどうかという話か?
言われてみれば、ルイがそれなりの地位につくなら、エルリーンだって……」
「ジーンさん。
今日、基地のほとんどの人間には、この天王寺アリスの計画通りに出かけてもらったの。
ジーンさんに残ってもらった、いくつかの理由の一つが、エルリーンの今後について相談したくて――だったりするわ」
「軍師殿。
ルイの彼女として、エルリーンも、世間から注目を集めるから、心配してくれてるって事か?
うちのエルリーンは、度胸があるし、肝っ玉も据わってる。
言い方が正しいか分からんが、アイドルの延長みたいなルイ――Lunaと付き合っていくにしても、なんとかやっていけるんじゃないか?
本人に確認せずに、叔父のおれが、勝手に返事をしてはいかんと思うが」
「だから、ルイーナに、エルリーン本人の意思を確認するように言っておいたわ。
ジーンさん。
実は、ほんの少し違う形で考えてもらいたいの」
「どういう事だ?
おれに、どう考えてほしいんだ。軍師殿」
「くくっ。
僕の当初の願い通りという事さ。遅れていた計画が実行されるという話だ!」
「ダノン、天王寺アリスが命じます。
制圧よろしく」
「俺から、青春を奪ったのに、ちゃっかり子供をゲットしてるリアル充実な奴らは、こんにゃくが揺すぶられる様子に怯えて、恐怖で思いがはち切れるといい! 心の中の爆発に巻き込まれろ!
ツンツン!」
「ぎゃー……奴らって。
お、おれもか……ダノン。
おれだって、最近まで彼女を作らず、この反乱組織の為だけに生きてきたのに!
ダノン……お前、実は、心が狭いな!
ぎゃー!
ツンツンするな!」
「ジーンさん。
天王寺アリスからのお願いだと、最初に言っておくわ。
世界の平和を安定させる為に、エルリーンを、ルイーナの正式な婚約者にしたい。そして、軍のトップにしたいの」
「はっ?
ちょ、ちょっと待て……ルイとの婚約はともかく。
な、なんで軍?
軍師殿……やっぱり、そこで、こんにゃくの恐怖に怯えて、不様にぐったり倒れ込んでるエリオット・ジールゲンに操られているのか!
おれの兄貴を――エルリーンの父親を奪った軍のトップに、エルリーンがなるなんて……正気じゃないだろうっ! エルリーンは、戦争が終わるのを望んでいるんだっ。
冗談でも、あんたの口から、そんな事は聞きたくなかったっ」
「だからよ。
エルリーンなら、みんなが戦争をやめたくなるような軍を作っていけると、私は思っている――」
「は?
……え?
軍師殿……おれには、ちょっと意味が分からないんだが……何を言ってる?」
「さっきも言ったが、僕が、当初に計画した通りという事だ。
『後ろの人』。
エルリーンお嬢さんには、軍の連中の上に立てるようなカリスマがあると、僕は認めている。
ただし、お嬢さんは、軍の人間じゃない。
そして歳も若い。
軍のトップとして、受け入れられる為には、仲立ちとなるような、正当で、筋の通った、だが、しかし、霊媒に近い根拠が必要だ。
これも、僕の案通りに、うちのルイーナとの結婚という形で、成り立たせる事ができるだろう」
「うつぶせで、ぐったり倒れたまま、顔だけあげてニヤニヤするな、エリオット・ジールゲン!
結婚は……こいつの意見なんぞ聞いてないぞ!
ルイとの結婚は、若い二人が望むならという事で、理解はしてやろうと思う。
だけどな。
何度も言うようだが、軍にエルリーンをやる訳にはいかん!
軍師殿。
さっき、天王寺アリスの願いだと言ったな!
軍が存続する事を……あんた自身が望んでいるって事かっ!
ルイを、自分の息子を実権のない指導者にとか、うまい事を言って……やっぱり、最後はこの男と組んで……ルイーナを次代の世界の支配者に据えるつもりかっ!
答えろっ!」
「軍を、単になくしたら、また誰かが作るわ。
ジーンさんも、なんとなく、それは気づいていたし、憂慮していたでしょ?
軍は、存在するのだけど、否定されるべき。
圧政を行う為の武力を持つ軍という意味ではね」
「ルイが、父親……そこで、くたばり損ないのゴキブリみたいに倒れているエリオット・ジールゲンの非道な行いが、間違っていたと否定するのと同じ意味で、エルリーンに、軍を否定しろって事か?
そういう、存在になれって。
ルイと付き合ってるから、エルリーンを選んだのかっ。
そんな理由ならやめてくれ。
あの子は、たしかに強い子だが、普通の子なんだ!」
「ううん。
エルリーンなら、できると思ったから、お願いする事にしたの。
たしかに、ルイーナとの関係が、ちょうど都合が良いというのも、否定はしないわ……そこは、軽蔑してもらって構わない。
もちろん、エルリーンの意思は尊重する。
すべてを話して、あの子がやりたくないと言うなら、断ってもらっていい。
天王寺アリスとしては、あくまで、推薦したいというのを、保護者であるジーンさんに知ってほしかったの」
「はあ……やっぱり、面倒なヤツと付き合っちまったって事だな……うちのエルリーンは。
普通の子だぜ?
エルリーンは。
銃の命中率が、幼い頃から大人よりも遥かにすぐれていたし、子供たちをまとめるのもうまい。
そもそも戦争の概念が分かっていて……だからこそ、どうしたら戦争が終わるんだろうって、本気で考えられるような子ではあったが。
……はあ。
兄貴が遺したエルリーンは、すごい娘って事だな。
亡くなったミューリーさんも、幼いエルリーンを本気で認めている様子だったし、そして、軍師殿。あんたも認めていたな。
そして、こっちが認めたくないって意味を含むだが、圧政の支配者にまで……。
――軍師殿。
本当に、エルリーンが、軍のトップになったら、あんたは、戦争が終わると思っているのか?
言うまでもない事かもしれんが、エルリーンがそれを望むのならという条件をつけた上だ。
おれの心配事は、あんたが、消しておいてくれるんだろうな?
天王寺アリス。
後、ルイ同様、普通の生活が続けられる形なんだろうな?」
「大丈夫。
天王寺アリスに、任せてちょうだい。
ルイーナと同じで、平和の象徴に、エルリーンにもなってほしいの。
さっきも言ったけど、エルリーンなら必ず、みんなが戦争をやめたくなるような軍のトップになってくれると思うから――」
「……分かったよ。
何度も言うようだが、エルリーンが望むならな。
――天王寺アリスとしては、それが、エルリーンの願いをかなえるという結論なんだろ?
ルイと二人で、助けあって生きていきたいって思った時に、エルリーンにとって、それが最善だって」
「うん。
私の考えを理解してくれて、ありがとう。ジーンさん」
「けっ。
最初に、同じような事を言い出したのが、あんたの悪逆非道な旦那だったって過去があるから、かなり嫌な感じがするが。
母親代わりもしてくれてた、軍師殿。あんたが言うから……信じてやるよ!
エルリーン自身が、あんたを好いてるんだ。
その気持ち、絶対に裏切るなよっ!」
「えー。
ジーンさんまで……そこのこんにゃくに成敗された奴は、私の旦那じゃないわ。
天王寺アリスは、生涯、子持ちの未婚です。
後ね。
ついでに伝えておきたい事があるの。
ジーンさん。
ダノンは、リーダーの資質があると、今でも認めてる?
指導者になれるような器があるって、本気で思っているかしら」
「ああ。もちろんだ。
子供だったダノンに、リーダーになってもらった事は、当時から悪いと思っていた……だけど、おれは、たった十五歳の子供だったダノンについていきたかったんだ。
それぐらいに天賦の才を感じていた。
……あはは。
エルリーンは、十四か……もうすぐ十五になるが……はは。
タチが悪い言い丸め方で、おれが完全に納得しないといけないように仕向けてくるな!
世界一の軍師、天王寺アリスさんよ!」
「うん。
理解してくれて、ありがとう。
ジーンさんの人を見る目ってすごいわ。
あのね。
私、ダノンにもしばらく前からお願いしていた事があるの。今、反乱組織などで活動している人たちを、まとめる立場になってほしいってね」
「なるほどな。
ルイがなれって言われてる、実権がねぇ支配者って、意味があるのかって思っていたが……実務は、ダノンにやらせるつもりだったのか。
次の誕生日で、やっと二十三。
世間で言えば若造だが――ダノンは、戦火をくぐってきた。
他の反乱組織との強い繋がりがある。
指導力があるって意味でもな。
ルイ――Lunaの受け入れ先のリーダーだしな」
「そして、僕、エリオット・ジールゲンの身元を引き受けた――」
「人の事言えないが、こんにゃくに倒された奴は黙ってろ!
いろいろ、お膳立てばっちりって訳か!
おれに、そんな話をする為に、こんにゃくゾーンを用意したというのか!」
「あー。
ジーンさん。
これね――こんにゃくじゃないの。
私が用意した、偽物!
おもちゃ!」
「な……なんだと……アリス……!」
「ほ、本当か!
おれが怖いのは、食品のこんにゃくだけだ!
偽物か!
完成度高いな!」
「……ツンツン」
「ぎゃぁあああああ!
せ、責任者の人……やめてくれ……ぼ、僕の生命耐久を測定する為の指標はとっくに尽きている!
ぎゃー!
……はあ、はあ。
僕は、たとえおもちゃであろうとも、吊るされたこんにゃくは、駄目なんだ……た、食べる事はできる。
料理に使い、ルイーナにも食べさせていた!
だが、垂れ下がるのだけは……かはっ。
悪用する者がいないよう、世界を支配した時に、思わず、世のすべてのこんにゃくを管理する工場を作ってしまったぐらいに、無理なんだっ!」
「そ、それでか……なぜ、うちの彼女が働いている工場、軍が作ったのに、こんにゃくを扱っているのか……少し疑問を感じていたんだ。
おれが、こんにゃくにトラウマがあるのに気づかれている。
それを負い目のように感じていて、結婚を承諾してくれないんだ!
お前のせいじゃないが……エリオット・ジールゲン!
おれが、書類上の結婚ができないのは、お前のせいな気がしてきた!
軍師殿!
その割り箸で作った銃を借りれるか!」
「おうっ!
もちろんだとも、ジーンさん!
気が済むまで、こいつを懲らしめるといい……心理制圧してやれ!
今やこいつは、この私――天王寺アリス軍の『三十二等兵』。
好きにしていい!
私が上司であり、こいつが部下なんだ!
ダノンにも、しっかりと復讐させてあげたくて――ダノンは、どうにも自制してしまうから。それを取り払ってあげたの!
思わない?
心に、何かをためておくのは、精神衛生上良くないって!
だから。
ジーンさんも。
ダノンも。
――ふふふ。
好きなだけ、この男に復讐しなさい! 私が、許可する! というか、これは、私の復讐でもある!」
「じゃあ、おれまで巻き込むなよ!
最初から、おもちゃのこんにゃくだって言ってくれれば……」
「ジーンさん。
さっきも言っただろう……俺、ジーンさんにも、言ってやりたい事があったんだ」
「あ……!
す、すまない。
ダノン、申し訳なかった……彼女作って。
……さ、先を越して悪かったな!
こ、これからも、おれは、ダノンを支えていくつもりだから、許してくれ。
酒が入っているとはいえ、そんな真顔で怒りをぶつけてやるみたいな……恐ろしげな表情するな……っていうか、ダノン。
少し酔いがさめてきてないか?」
「……少しだけな……頭が痛い……。
だが、エリオット・ジールゲンには、もっといろいろ言ってやりたいんだ……ツンツン!」
「ぎゃぁああぁあわああああっ!
せ、責任者の人……僕は、命でなら償う……だから、こんにゃくをレイピアで突くな……こんにゃくだけは」
「ああ、ダノン。
兄貴やみんなの仇を討とう! エア・トゥ・エア! 空対空輪ゴムっ!
だったか?」
「ぎゃぁああぁあわああああっ!
『後ろの人』!
僕と違い、彼女とは書類上でも結ばれる事ができるよ……。
だから、終端誘導!
経路調整完了。
戦闘態勢! の実行に快楽をおぼえたような顔をしないでくれっ……そういうのは、一度でも、経験してしまうと、撃った後の感覚が忘れられなくなるんだっ!
……はぁはあぁ」
「エリオット。
割り箸で作った銃――もう一つあるんだっ。
さっきも言ったが、私のコートのポケットには、まだまだ大量の弾、輪ゴムが入っている!」
「ア、アリス!
……ま、まて。
仕方がなかったんだ……。
僕が、僕である為には……恐怖政治を敷くしかなかった……エリオット・ジールゲンが、エリオット・ジールゲンである為には――ぎゃぁああああああああああああああああああああああああああぁあわああああっ!」
サーベルは、武器であり、軍隊をイメージする一つ。
レイピアは、騎士道精神の象徴と言われ、護身用の印象が強いですが、何かを傷つける事は可能です。
銃火器が発達し、サーベルは儀礼刀という扱いになりました(自衛隊でも使われています)。
自然現象、そして人そのものも、何かを傷つける事は可能。
『力』とは至極当然、存在するが、考え方次第。そういう事です。
【※】次話は本文としては約500文字ほどですが、「あとがき」に約2千文字の短編を収録します。
この件は、過日、活動報告で書いた通りです。




