くちなわ制圧
The Sky of Parts[29]
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この物語は、軍事好きな筆者が作った育児モノ。
【!】『対話体小説』の読みにくさを軽減させる為、独自の「改行ルール」、「句点ルール」を使っています。
「エルリーン、覚悟を決めたようだね」
「き、決めてない……ル、ルイ……やめて……助けて……その首に巻いているやつ……やめて!」
「ああ、これ。
可愛いだろ?
このつぶらな瞳の触り心地がモフモフのぬいぐるみ。
首に巻くと、気持ちいいんだよね……ちなみに、これは、新たに生み出された――参号。そう、アナコンダ参号だ!」
「ヘ、ヘビ……だめ……あ、あたしが、ヘビはダメだって知ってるだろ!
ちゃちなおもちゃだろうと、愛らしいぬいぐるみだろうと……ヘビはダメなんだ……こ、来ないで……近づいて来ないでっ」
「エルリーンは、ヘビを見せると、本当に可憐で、魅力的な一面を見せてくれる。普段の男の子みたいな仕草とのギャップが、またいい。
オレ、そんなエルリーンが大好き。
――あのさ。
他人が気づくほどじゃないのかもしれないけど、オレ、ほんのちょっとだけ、声が低くなったと思う」
「……へ?」
「オレ、歌うたうから、些細な変化に気づいたんだ。
あの……その……女の子みたいな顔とか、よく言われてきたけど、やっぱりオレも、男なんだなって意識するようになって……」
「えっと……ルイ……お、落ち着いて……ヘ、ヘビはやめて」
「――エルリーン。
少し、真面目に、オレの話を聞いてほしい」
「い、いやぁあああ。
ヘビ持ってるし……ルイが男だっていうのは……分かってるけど……」
「……エルリーンに、うまく伝わるかな。
ほら。
オレ、二年飛び越し入学だから、クラスの男子って、今年十五歳になる人たちじゃないか。
エルリーンとお喋りしてる事が多いけど、体育の着替えとか、そういう時はやっぱり、男同士の会話をしてる……あの……その……オレも、男の子なので、いろいろ戸惑っていて……罪悪感や恥ずかしさをこえる、自分を止められないようなものに、とりつかれる事が……ありまして」
「えっと……はい……?
り、理解したくない……理解したくないっ! そ、そんなルイ……嫌だ……きゃああああああっ」
「そんな風に、肘鉄砲を食わせるような事を言わないで。余計に、エルリーンが欲しくなっちゃう。
やっぱり、アナコンダ参号を使って、エルリーンを制圧するしかない。つんつん」
「きゃぁあああああああっ。
や、やめて……アナコンダのぬいぐるみの最大射程距離は、半径四メートル離れていても問題ないほどって設定……きゃあああ!」
「そう。
前に進みながら、右や左に小刻みに動かす、蛇行機動が可能だよ。
ヘビのぬいぐるみだから!
蛇行機動は、本来、攻撃を回避する為の行動だけど、この場合はアタックになる。つんつん」
「ルイに背を向けて、逃げないと……ドラッグ機動だっけ?
有効射程の外に逃げなくちゃ……ってか、なんで二人とも、軍師殿が遊び半分で教えてくれた、軍事用語を活用しつつ、会話してるんだっ!
しかも、タワー『スカイ・オブ・パーツ』から放たれる対空ノイズのせいで、主力じゃない戦い方の航空軍事用語だ!」
「母上が、面白おかしそうに話してくれて、二人とも盛りあがって聞いていたからじゃないかな?
エア・トゥ・エア!
空対空ミサイルっ!
って、母上が叫んでいるのが、笑えてきて……って、エルリーン!
脱線しないで!
エルリーンを、目標として、アナコンダ参号の終端誘導――経路調整は、とっくに終わっているんだからっ」
「あ、あたしを攻撃目標に、アナコンダを構えて……ル、ルイ。
助けて。
戦闘態勢に入らないで……っていうか、この軍事用語活用は、もうやめよう!
あたしが女の子で、ルイが男の子っていうのは、もちろん分かってるよ。
だけど、あたしたち、まだ学生じゃないか。
落ち着け……な?」
「……この前、エルリーンにキスを断られてから、ずっと、やきもきしてて……うん。
そうなんだ。
うん」
「へっ……でも、ファーストキスは、しばらく先にしようって。
……あの……ルイの方から、世界の代表みたいなのになる時に、みんなの前で、祝福されながらファーストキスしたいって」
「うん。
だって、そうしたら、『その時』になっても、断られないかなって思って……ショックだったんだ。
オレだって、いちおう……そのなんていうか、プライドがあるので。
……うん。
そんな感じで、あの日――誘拐まがいの事があった日、気落ちしていたんじゃなくて、エルリーンに対して怒れてきちゃって、基地に帰りたくないって思って、公園に一人でいたんだ」
「えっと。
そ、そうだったのか。
ごめん……予告もなしに、唇を欲しいと言われて、あたしも、恥ずかしくて……つい、突き放してしまって、悪かったよ……だ、だから、ヘビ――アナコンダは、片づけてくれないかな……?」
「母上に、命じられたんだ。
今日、必ず、エルリーンから婚約の内定をもらいなさいって。
それが、世界の為に必要だからって。
言われたからじゃないんだ。
きっかけでしかない。
これは、オレの願いでもあるから。
内定っていうか、確定がほしい!
今すぐ、結婚できるならしたいけど、年齢的に無理だから、諦めるよ。
だけど。
だけどさ!
はぐらかされるのは、もう嫌なんだっ。
エルリーン、恥ずかしくなると、すぐに話題を変えたり、実力行使に出たり、とにかく煙に巻いてくる!」
「分かった、分かった……!
でも、ほら、付き合う事になった時、結局は、あたしの方から好きって言ったじゃないか……だから、ヘビ持って……いつでも、つんつんできますって顔で、こっち眺めてくるのやめよう。
ヘビ、片づけて、ルイ副班長さま。
ね?」
「あの時、二人とも、危険な状態だったじゃないか。
つり橋効果で、付き合えただけだったらどうしようって。
オレ、今でも、エルリーンを護る騎士――ナイトだって気持ちは、強く持っているよ。
タワー『スカイ・オブ・パーツ』の鳥カゴ牢に、閉じ込められていた時みたいに、いつでも護っていないといけない状況じゃないだけで。
朝ご飯を一緒に食べて、自転車二人乗りで学校行って、帰りに公園や土手でお喋りデートをする。
何気ない日常が、すごく楽しいだけに、怖いんだ。
最初は、友達として仲良くなったし、付き合う事になった時も、戦友みたいな、そんな感覚だから大好きって、エルリーンに言ってもらって、それがオレも嬉しかった。
だから――。
心臓がいつでもドキドキするような状況じゃなくなっても、エルリーンは、オレを好きでいてくれるのかなって。
戦う仲間っていうのは、表現ちょっと悪いね。
これからも、ずっと協力者でいてくれるのかなって、不安なんだ」
「……ルイ。
あたしは、ずっと、ルイの協力者でいるよ。
あの。
その……話題を変えたり、ゴチンするのは、恥ずかしさもあるんだけど、じゃれる気持ちもあって……その……あの」
「うん。
気づいてはいた。
論点をずらすような行動に出るのって、実は、エルリーンが、オレを信頼しているメッセージ送信でもあるって。
特別扱いなんだろうなって、嬉しい反面、他の人が羨ましくなる。
エルリーン、母上には、素直に甘えるじゃないか」
「えっと……さ。
たしかに、あたし、恥ずかしさマックスになると、お茶を濁している気がするよ……うん。
ぐ、軍師殿は、あたしにとって育ての『おかあさん』だから、普通に甘えているだけだよ。
あれか……?
実は、ルイ。
母ちゃんをあたしにとられて、妬いたりしてな……いですか……終端誘導――アナコンダ、目標に対し経路調整完了。戦闘態勢に入りますって顔しながら、ヘビのぬいぐるみを構えないで!
……落ち着け、落ち着け。
ヘリクツをこねて、やり過ごそうとしてる訳じゃない。
だから、ヘビを使って脅してこないで……っ。
ほら。
だって。
お前の父親の方とは、『話長すぎるだろ! HNEっ!』って敵対の仲だし……きゃあああああ。
つんつんしてこないで!
……ヘビは、ダメぇええええ!」
「それ、実は、すごくイライラしていた。
エルリーンにも、そして……父上にも、憤りを感じていた」




