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くちなわ制圧

The Sky of Parts[29]

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

この物語は、軍事好きな筆者が作った育児モノ。


【!】『対話体小説』の読みにくさを軽減させる為、独自の「改行ルール」、「句点くてんルール」を使っています。


「エルリーン、覚悟を決めたようだね」


「き、決めてない……ル、ルイ……やめて……助けて……その首に巻いているやつ……やめて!」


「ああ、これ。

 可愛いだろ?

 このつぶらな瞳のさわり心地がモフモフのぬいぐるみ。

 首に巻くと、気持ちいいんだよね……ちなみに、これは、新たに生み出された――参号。そう、アナコンダ参号だ!」


「ヘ、ヘビ……だめ……あ、あたしが、ヘビはダメだって知ってるだろ!

 ちゃちなおもちゃだろうと、愛らしいぬいぐるみだろうと……ヘビはダメなんだ……こ、来ないで……近づいて来ないでっ」


「エルリーンは、ヘビを見せると、本当に可憐で、魅力的な一面を見せてくれる。普段の男の子みたいな仕草しぐさとのギャップが、またいい。

 オレ、そんなエルリーンが大好き。

 ――あのさ。

 他人が気づくほどじゃないのかもしれないけど、オレ、ほんのちょっとだけ、声が低くなったと思う」


「……へ?」


「オレ、歌うたうから、些細な変化に気づいたんだ。

 あの……その……女の子みたいな顔とか、よく言われてきたけど、やっぱりオレも、男なんだなって意識するようになって……」


「えっと……ルイ……お、落ち着いて……ヘ、ヘビはやめて」


「――エルリーン。

 少し、真面目まじめに、オレの話を聞いてほしい」


「い、いやぁあああ。

 ヘビ持ってるし……ルイが男だっていうのは……分かってるけど……」


「……エルリーンに、うまく伝わるかな。

 ほら。

 オレ、二年飛び越し入学だから、クラスの男子って、今年十五歳になる人たちじゃないか。

 エルリーンとお喋りしてる事が多いけど、体育の着替えとか、そういう時はやっぱり、男同士の会話をしてる……あの……その……オレも、男の子なので、いろいろ戸惑っていて……罪悪感や恥ずかしさをこえる、自分を止められないようなものに、とりつかれる事が……ありまして」


「えっと……はい……?

 り、理解したくない……理解したくないっ! そ、そんなルイ……嫌だ……きゃああああああっ」


「そんな風に、肘鉄砲ひじでっぽうを食わせるような事を言わないで。余計に、エルリーンが欲しくなっちゃう。

 やっぱり、アナコンダ参号を使って、エルリーンを制圧するしかない。つんつん」


「きゃぁあああああああっ。

 や、やめて……アナコンダのぬいぐるみの最大射程距離は、半径四メートル離れていても問題ないほどって設定……きゃあああ!」


「そう。

 前に進みながら、右や左に小刻みに動かす、蛇行機動だこうきどうが可能だよ。

 ヘビのぬいぐるみだから!

 蛇行機動だこうきどうは、本来、攻撃を回避する為の行動だけど、この場合はアタックになる。つんつん」


「ルイに背を向けて、逃げないと……ドラッグ機動だっけ?

 有効射程の外に逃げなくちゃ……ってか、なんで二人とも、軍師殿が遊び半分で教えてくれた、軍事用語を活用しつつ、会話してるんだっ!

 しかも、タワー『スカイ・オブ・パーツ』から放たれる対空ノイズのせいで、主力じゃない戦い方の航空軍事用語だ!」


「母上が、面白おかしそうに話してくれて、二人とも盛りあがって聞いていたからじゃないかな?

 エア・トゥ・エア!

 空対空ミサイルっ!

 って、母上が叫んでいるのが、笑えてきて……って、エルリーン!

 脱線しないで!

 エルリーンを、目標として、アナコンダ参号の終端誘導しゅうたんゆうどう――経路調整は、とっくに終わっているんだからっ」


「あ、あたしを攻撃目標に、アナコンダを構えて……ル、ルイ。

 助けて。

 戦闘態勢に入らないで……っていうか、この軍事用語活用は、もうやめよう!

 あたしが女の子で、ルイが男の子っていうのは、もちろん分かってるよ。

 だけど、あたしたち、まだ学生じゃないか。

 落ち着け……な?」


「……この前、エルリーンにキスを断られてから、ずっと、やきもきしてて……うん。

 そうなんだ。

 うん」


「へっ……でも、ファーストキスは、しばらく先にしようって。

 ……あの……ルイの方から、世界の代表みたいなのになる時に、みんなの前で、祝福されながらファーストキスしたいって」


「うん。

 だって、そうしたら、『その時』になっても、断られないかなって思って……ショックだったんだ。

 オレだって、いちおう……そのなんていうか、プライドがあるので。

 ……うん。

 そんな感じで、あの日――誘拐まがいの事があった日、気落ちしていたんじゃなくて、エルリーンに対して怒れてきちゃって、基地に帰りたくないって思って、公園に一人でいたんだ」


「えっと。

 そ、そうだったのか。

 ごめん……予告もなしに、唇を欲しいと言われて、あたしも、恥ずかしくて……つい、突き放してしまって、悪かったよ……だ、だから、ヘビ――アナコンダは、片づけてくれないかな……?」


「母上に、命じられたんだ。

 今日、必ず、エルリーンから婚約の内定をもらいなさいって。

 それが、世界の為に必要だからって。

 言われたからじゃないんだ。

 きっかけでしかない。

 これは、オレの願いでもあるから。

 内定っていうか、確定がほしい!

 今すぐ、結婚できるならしたいけど、年齢的に無理だから、諦めるよ。

 だけど。

 だけどさ!

 はぐらかされるのは、もう嫌なんだっ。

 エルリーン、恥ずかしくなると、すぐに話題を変えたり、実力行使に出たり、とにかくけむに巻いてくる!」


「分かった、分かった……!

 でも、ほら、付き合う事になった時、結局は、あたしの方から好きって言ったじゃないか……だから、ヘビ持って……いつでも、つんつんできますって顔で、こっち眺めてくるのやめよう。

 ヘビ、片づけて、ルイ副班長さま。

 ね?」


「あの時、二人とも、危険な状態だったじゃないか。

 つり橋効果で、付き合えただけだったらどうしようって。

 オレ、今でも、エルリーンを護る騎士――ナイトだって気持ちは、強く持っているよ。

 タワー『スカイ・オブ・パーツ』の鳥カゴ牢に、閉じ込められていた時みたいに、いつでも護っていないといけない状況じゃないだけで。

 朝ご飯を一緒に食べて、自転車二人乗りで学校行って、帰りに公園や土手でお喋りデートをする。

 何気なにげない日常が、すごく楽しいだけに、怖いんだ。

 最初は、友達として仲良くなったし、付き合う事になった時も、戦友みたいな、そんな感覚だから大好きって、エルリーンに言ってもらって、それがオレも嬉しかった。

 だから――。

 心臓がいつでもドキドキするような状況じゃなくなっても、エルリーンは、オレを好きでいてくれるのかなって。

 戦う仲間っていうのは、表現ちょっと悪いね。

 これからも、ずっと協力者でいてくれるのかなって、不安なんだ」


「……ルイ。

 あたしは、ずっと、ルイの協力者でいるよ。

 あの。

 その……話題を変えたり、ゴチンするのは、恥ずかしさもあるんだけど、じゃれる気持ちもあって……その……あの」


「うん。

 気づいてはいた。

 論点をずらすような行動に出るのって、実は、エルリーンが、オレを信頼しているメッセージ送信でもあるって。

 特別扱いなんだろうなって、嬉しい反面、他の人が羨ましくなる。

 エルリーン、母上には、素直に甘えるじゃないか」


「えっと……さ。

 たしかに、あたし、恥ずかしさマックスになると、お茶をにごしている気がするよ……うん。

 ぐ、軍師殿は、あたしにとって育ての『おかあさん』だから、普通に甘えているだけだよ。

 あれか……?

 実は、ルイ。

 母ちゃんをあたしにとられて、いたりしてな……いですか……終端誘導しゅうたんゆうどう――アナコンダ、目標に対し経路調整完了。戦闘態勢に入りますって顔しながら、ヘビのぬいぐるみを構えないで!

 ……落ち着け、落ち着け。

 ヘリクツをこねて、やり過ごそうとしてる訳じゃない。

 だから、ヘビを使って脅してこないで……っ。

 ほら。

 だって。

 お前の父親の方とは、『話長すぎるだろ! HNEっ!』って敵対の仲だし……きゃあああああ。

 つんつんしてこないで!

 ……ヘビは、ダメぇええええ!」


「それ、実は、すごくイライラしていた。

 エルリーンにも、そして……父上にも、いきどおりを感じていた」


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