生き物係
The Sky of Parts[25]
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この物語は、軍事好きな筆者が作った育児モノ。
Web上での読みやすさ優先で、適当に改行などをいれたりしてあります。
「報告、ご苦労。
下がれ。後は、竹内イチロウの名で処理しておく。
はあ……。
何を考えているんだ、あいつ。
そのまま一生、雲隠れ生活に徹してくれれば良いものを……面倒な事しやがって。
女連れて、楽しくやるとかって事で、見逃してやっただろ。
単独行動してくれたので、私が、小僧を頂くつもりだったのに――。
今さら、善良な保護者の真似事するな!
小僧が外出時に、ボディーガードつきになったりで、手が出しにくくなっただろ!
――しかし、意外に、我が軍から離反者がでなかったな。
まあ、それだけあの男の扱いは、難しいという事だ。
ダノン・イレンズは、よくあんな爆弾を引き取ったな。置いておくだけで、内部抗争が起き、全員が不幸な事になっても知らんぞ。
あんな疫病神は、軍では引き取り拒否だ!
あー。
しかし、Lunaの父親という地位が無駄に大きいんだろう。
ガキ育てておいて良かったんじゃないか?
分かってるだろうな。
この竹内イチロウだって、床に落ちた食べカス拾いや、トイレの手伝い、オムツの極秘処理をしたんだ。Lunaを、軍でもらう権利はあるという事だ。
軍を維持していくというのが、私の目的なのは、当たり前のように理解しているだろ!
ドーンと飾れるような人間が必要なんだよ!
いいなっ!
おぼえておけよっ。
何が何でも、うちの軍の上に、『ルイーナ様』を君臨させてやるからなっ!
私の邪魔をするなら、今度こそ、隠しダマなしで、崖の下行きにしてやる!
……ああ。
わたくし事まで、反応してくれるようなツッコミ担当をそばに置きたいか。
その主張には、同意しておいてやろう」
* * * * *
「あららら?
ジーンさん、すっごく不機嫌そう。
七年前は、もう少しだけフレンドリーに、私に接してくれた気がするのだけど。
そこまで、天王寺アリスという人間は、嫌われてしまったのかしら?」
「はあ……軍師殿さ。
分かってるくせに、そういう態度はやめてくれないか。
七年前と違って、あんたが、いわゆる『先方のご家族』の状態なんだ。
あのな。
『先方のご家族』なんだよ!
あんたが、持ち込んできた厄介ブツっ。
世界で、おれだけが悩めるとか、ご名誉な展開はいらんかった!」
「まあ、まあ。
『ご家族同士』の会話なら、後でやってくれないか。
……ジーンさん、俺を、睨みつけないでくれ。
理解はしているつもりだが、単純な話し合いでは、どうにもならない。
だから、軍師殿の腹黒さを暴露して頂いて、別の糸口で解決しようと、俺は考えている」
「あら!
ダノン!
私、疑われているの!
一年間放置したら、リサイクルもできないし、不用品にもできないような、そんなモノを持ってきただけじゃない」
「天王寺アリスって女が、何も企んでいない訳がないし、逆に企んでいてくれ。
俺の組織に持ち込んできた、アンタの旦那だって、謀を固めて作ったような人間だ」
「ダノン。
おかしくない? 私、天王寺アリスなのよ? 天王寺っ!」
「どうだか。
アンタの本当の腹黒さを、この場で、晒してやりたいところだが――まあ、これぐらいにしておいてやる。
ジーンさんもいる事だ。
この反乱組織をまとめさせてもらっているダノン・イレンズという人物で、接させてもらう。
で。
俺が、最良だと考えていたが、実現が難しいと悩んでいた事をどうにかする為に、天王寺アリス。貴女は、姿を見せたと言ってくれるのか?
扱いは、非常に面倒だと言った上だが、エリオット・ジールゲンが生存していて、噂の延長ではなく、Lunaを自分の息子だと認めるのが、重要なプロセスの一つとなるはずだ。
世界が、戦争の脅威から解放される為にはな」
「そうなのよ、ダノン!
天王寺アリスって女が、戦争嫌いなのは知ってるでしょ?
だから、どうにかならないかな~と思って、相談しに来たの。
ルイーナの居場所は、すっかりここだし」
「俺個人としての心の奥底は、エリオット・ジールゲンの命を奪いたいと考えている。
それは、正直に伝えておこう。
――だが、それとは別に、世間の声に応えたいと、強く願っている。
俺だって、戦争は嫌いだ。
こうすれば、戦争は終わるのではないかという構図が形となって、目の前に垂れ下がっているのなら、つい、手を伸ばしてしまうさ」
「ルイーナを、大切にしてくれて、ありがとう。
ダノン。
しかも、あの子を学校にまで行かせてくれて。
母親として、感謝の言葉しかないわ」
「……別に、軍師殿の為なんて、俺は、一度も思った事はない。
親が、戦争の為に戦うだとか、いらんゴタゴタに巻き込まれた子供は、この基地には他にもいる。
たくさんな。
ルイーナだって、その一人としてしか考えていない。
通学を希望してきたのは、エルリーンだったが、停戦状態だったので、思い切って、他の子供たちも学校に通わせてやったよ。
続くんだろうな――。
天王寺アリスの企てにのってやったら、その状態が続くと、約束しろっ」
「ええ、ダノン。
約束する。
腹が黒いかも~は、天王寺アリスという存在を考えれば当たり前だから、否定しないでおくわ」
「貴女とエリオット・ジールゲンが、何を考えているのかを、この場で、根掘り葉掘り聞くつもりはない。
ただ、ルイーナを裏切るなよ!
それが誓えるのなら、おそらく俺が思い描いていた事が、より具体的になったと思われる。
言えよ。
『天王寺アリスの話』とやらを聞かせてくれ」
「はーい。お話しするわ。
ダノン。
ああ。
ジーンさんも、ルイーナに優しく接してくれてありがとう。
私の息子というだけなら良かったのだけど、複雑でごめんね。
いらない『先方のご家族』が、オマケでついてて――向こうのご家族との間でも、話し合いが大変な時期なのに」
「はあ……。
軍師殿。
勝手に、おれの内情を調べないでくれるか……まだ、ダノンにも言っていなかったのに。
安定期前だし、エルリーンのやつにも、内緒にしてる。
天王寺アリスってお方が、『先方のご家族』なんて、やっぱりとんでもなく厄介だ。
向こうのご家族ってやつにも、それとなく気づかれていたんだが、エリオット・ジールゲンが戻ってきてしまって、なんて説明したらいいのやら……」
「……ジーンさん。
なんとなく、伝わってきたが、俺に何を言っていなかった?」
* * * * *
「おはよう、ルイ。
昨晩は、よく寝れたか? あたしよりも、身長は高くなったか? そして、軍師殿とお話はできたのか?」
「二つ目は、一晩では無理な気が……寝れたよ。
でも、母上とはお話していない」
「え、なんでだよ!
一緒の部屋で寝たのに。
あいつか!
やっぱり、あいつが邪魔だったのかっ!
分かった!
班長のあたしに任せろ!
朝ご飯食べ終わったら、顔面に蹴りを食らわせてやるっ!
……ん~。
でも。
とりあえず、朝ご飯いただきますっ。
今日は、学校お休みだから、寝坊してもゆっくり食べられる。
いきなり、卵焼き食べる。
好きなものから食べる!
で。
あいつが、どんな邪魔してきて、軍師殿とお話できなかったんだ?」
「いや。
別に、あいつが邪魔してきた訳じゃない。
母上は、ダノンさんやジーンさんとの長話に行っていて、気づいたらオレが、先に寝てしまっていた。
でも、夜遅くに戻ってきた母上が、オレの寝ているベッドに入ってきてくれた記憶は、なんとなくある。朝起きたら、また出かけていなかったけど。
って……エルリーン!
それ、オレの分のパンだから、勝手に食べようとしないでっ」
「ぎくっ。
やだなぁ、ルイくん。
そんな軽蔑のまなざしはやめて……あはは。
ご、ご、ごめんなさいっ」
「お返し下さいますか?
エルリーン班長!
オレの分のパンっ!」
「は、はい……も、申し訳ありませんでした、ルイ副班長。
あー……。
あ、あいつは、どうしてたんだよ?
軍師殿が、ダノンたちのところに行っていたって事は、二人きりになったんだろ?
変な事を言われたりしなかったか?
……昨夜は、ちょっと心配してた。
なんだかんだで、ルイをさらったり、変な薬を使って操ったり、いろいろ悪い企みをしてるんじゃないかって。
そりゃな。
軍師殿が一緒ならとは思ったけど……もしかして、やっぱり、軍師殿自身が操られてるとかっていうのも、悪い方向に考えるとなくはない。
そう考えたら、不安だった。
明日の朝も、ルイと一緒に食事できるかなって」
「オレだって、気が気じゃなかったよ。
母上が戻って来るまで、あいつが逃げ出したり、変な真似しないように見張っていようと思っていたけど……部屋の隅っこで、寝袋に包まれたまま、あっという間に熟睡している様子だったので――。
オレも、警戒心に眠気が勝ってしまって、力尽きていった。
というか、どうしてだよ!
母上はいてほしいけど、なんであいつが一緒なんだよ!
牢とか……そういうところに入れておいてほしいんだけど……」
「ダノンが、基地に戻ってきてすぐに、そう言い出した時には、あたしも驚いた。
ルイと軍師殿の部屋に、あいつを押し込んでおくって話」
「ゲストルームを使う事になったから、部屋の中にトイレとシャワールームがある。
食事さえ運び込めば、あいつの行動は制限できるけど……どうして、オレと母上で、面倒みないとダメなんだ……?」
「まあ、ルイの気持ちはよく分かる。
ダノンも、扱いに相当困ってる感じだよな……昔なら、絶対に牢屋行きなんだろうけど。
なんだっけ。
せいじてきな理由でなんきん?
って、いう扱いだからとか、軍出身の連中に、ダノンが言い聞かせていたな」
「ダノンさん。
昔から、ここの組織にいる人たちにも、言い聞かせていたね。
監視下に置いて、行動を制限する形をとるとか、説明していた」
「子供のあたしには、難しい話だったけど、牢屋行きの一種って事かな?
う~ん。
それだと、ルイや軍師殿も、牢屋に入ってるようで嫌だな……あ。
見張り役って事か」
「見張り役――だと思う。
だけど。
はぁ……。
『僕の朝ご飯の持ち帰り、よろしく』って、くだけた調子っていうか、そんな表情で、腕立て伏せしながら声をかけてくるんだ。
なんで、オレが世話しないといけないんだよ……たしかに、食べさせてもらっていた側の立場だったけど。
……いや、でも、だって奴は、元独裁者エリオット・ジールゲンな訳で。
いろいろ知っちゃった後だと、オレですら複雑で……。
まあ、他の人だと、もっと複雑なんで、母上とオレで、どうにかしてほしいって事だよな……はぁ」
「ルイ。
今は、これしか言えない。ドンマイ」
* * * * *
「報告、ご苦労。
下がれ。後は、竹内イチロウの名で処理しておく。
はあ……。
あいつ、牢屋行き回避か。
まあ、軍離反の所属員の視線を気にするのなら、Lunaの縁者扱いで、軟禁が無難な選択と言える。
だがな。
知らんぞ。
あいつを、小僧と一緒にしておくなんて。
ダノン・イレンズくん。
暴走して、天王寺アリス共々、Lunaを連れ去られ、足取りが追えなくなっても後悔するなよ!
――しかし、何を企んでいる天王寺アリス?
あの女が、あいつのそばで大人しくしている時は、だいたい良い展開が待っていない……」
* * * * *
「ねえ、ルイ。
そのパン、ちょっとだけ。
端っこだけでいいから、あたしにかじらせて……がじがじ」
「ネ、ネズミの真似のつもりなの……?
突き出した両腕を、上下させて……。
エルリーンの生態を知らない人は、きっと、そういうツッコミすらできないと思う。
駄目だよ。
ちゃんと全部持って行かないと、オレが怒られる……あの、ダノンさんとかに怒られるから……生き物係になったつもりで頑張る」
「生き物係って……ルイ。
まあ、そんなかたい表情しながら、視線を床に向けるなって。
手にした、朝食プレート落とさないようにな。
しかし、あいつの事だから、なんか文句つけるのかね?
自分が料理の達人だからって、嫌味ったらしく。
あ。
一つだけ言っておくけど、ポテトサラダは、リリンが作るやつの方が……うまいっ!」
「文句なんてつけたら、オレが、百回でも、何万回でも、作ってくれたリリンさんたちに謝らせてやるっ!
……入るよ。
カッコ、父親の尊称、カッコ閉じる。
朝ご飯を持ってきた……よ……って、あれっ?」
「って、無人……?
あ、あたしの目には、部屋の中が空っぽに見えるぞ!
えっ!
あいつ逃げたのか……鍵とか、どうして!」
「いや、最初から鍵はかけてないよ!
母上とオレも、寝泊まりする部屋だから……逆に、ダノンさんがそうしてくれって言うから……。
それに、外に、見張りの人がいるし……あれ?
今、廊下に誰もいなかったよねっ!」
「ルイ。
っていうか、今、見える範囲に誰もいないよ!」
「……オレが、食堂行く時に、見張りをしていたのは、前に、軍にいた人だった……」
「ちょ……。
それ、本気でまずくない!
この基地内で、エリオット・ジールゲンを取り逃がしたって……やばいよっ。
しかも、部下だった奴とか連れて逃げたって事!
だ、誰か、呼ばなきゃ……って……ルイっ!
どうした?」
「窓の外……いたっ! 何やってるんだっ! あいつ……勝手に、どこか行くなってっ!」
「あ、ちょっと! ルイっ。
まったく……気持ちは、分からないでもないけど、班長のあたしを置いていくなって。
ん?
あれ?
机の上に……白旗。
この前、自転車の前カゴに入っていた、お子様ランチのやつじゃないか」
* * * * *
「報告、ご苦労。
下がれ。後は、竹内イチロウの名で処理しておく。
はあ……。
『sagacity』の劣化バックアップが、また破壊されたのか……。
アリバイ工作とかだったら、本気で鬱陶しいと思わせてもらうからな!
後で、私のところには、いつも通りに、請求書と記念品が届くそうだ。
毎度、ふざけるなっ!
はぁ……はぁ。
――請求書に、ご記載頂いた、落書きと私への悪口が、筆跡鑑定に引っかからないカラクリ。
人生の幕引きを、この竹内イチロウが与えてやるから、その時に教えてくれ」




