親鳥の胸の内
The Sky of Parts[24]
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この物語は、軍事好きな筆者が作った育児モノ。
Web上での読みやすさ優先で、適当に改行などをいれたりしてあります。
『アリス。
心配はいらない。
この竹内イチロウという男は、医者なんだ。
最低限の医療器具は、持ち合わせている。
出してもらおうか。
拒否したところで、それは頂く。
ジャケットの内ポケットに入っているのだったな。
――銃弾を体外に出すのに必要だ。
拒む権利を、すべて放棄してもらおう。
僕の愛しいアリスを救う為に、逆らってもらっては困る。
ああ。
いらん心配をするな。
お前にやらせるつもりはない。
戦場で行う、応急外科手術以上の事ぐらいなら、僕は、訳もなくできるさ。お前も、知っているだろ?
さあ、渡せ! 竹内イチロウ!』
* * * * *
「ええっと。
あの……あたし、夢見てないよな!
なあ、ルイ!
今って、夢の中じゃないよなっ」
「……ははうえ? 母上っ!」
「ルイーナ、エルリーン。
一年ぶりね。
かけてあげたい言葉は、心の中にあふれているのだけど、私には、いろいろと伝える義務がある」
「僕などの発言が信じられるかは別として、その天王寺アリスは、ただの天王寺アリスだ。
エリオット・ジールゲンのただの依頼主」
「はあ……。
やはり、黒幕は、軍師殿か。
映る監視カメラを選べるような誘拐犯が、証拠をたくさん残していくはずがない。
しかも、わざわざエリオット・ジールゲンが生存している事まで教えてくれた。
来いと言わんばかりに、挑発的な態度もいいところだ!
建物外には、容疑車両が堂々と駐車されていた。
罠すらなかった。
なんでだ。
軍師殿。
なぜ、俺の組織に、その男を押しつけにきたんだ。
一年間も隠し持っていたんだ。そのまま永久に所有しておいてくれよ」
「ダノンもやっぱり、この男いらない?
あららら。
たった、一年で価値が下がっちゃうのね。そんな程度の男だったのね。
だから、私は、天王寺アリスなの。
もちろん、こいつもエリオット・ジールゲンのまま」
「母上? どういう意味?
えっと……」
「軍師殿。
俺の組織に、その男を引き渡してもいいと言いたいのか?
あくまで、行動を共にしていただけの相手だと。
まあ。
悪いが、俺としては、天王寺アリスという女が、私的な理由に基づき、エリオット・ジールゲンの逃亡をほう助していたと認識させてもらっている」
「ダノンにそう言ってもらえると、私も、あまり負い目を感じなくていいわ。
どうせ、後から、あなたには話さなければならない事だし、ルイーナやエルリーンにも聞かれるだろうから、言っておくわ。
本当は一年前に、こいつの身柄をダノンにあげられると良かったんだろうけど――ちょっと、眠気に勝てなくて。
半年間ぐらい、寝たり、起きたり、ぼんやり過ごしちゃったのよね。
しっかり目がさめたなと思った時には、戦争の気配が止まっていた。
タイミング悪い時に、この男を持ち込んでごめんね」
「責任者の人。
僕の個人的な罪状に、天王寺アリスの身柄を拘禁していたという事を加えておいてくれ。
神の歌い手であるLunaの略取もだ。
どちらの件も、軍の指導者として行った訳ではないからな」
「あ。ダノン。
ルイーナを解放してあげてもらっていい?
信頼してもらえるなら、私が、解いてあげたいところだけど、天王寺アリスが敵ではないという証拠はあげられていないから。
エルリーンには、そのまま拳銃で狙っていてもらって、ダノンが解いてあげて。
これも、信用できないと言われてしまうのかもしれないけど、ダノン。あなたたちの仲間であるルイーナを解放させてもらうわ」
「母上……」
「ふん。
こちらも、僕の罪状に加えておいてくれ。
天王寺アリスからは、ルイーナを拘束しろとは言われていない。僕の独断だ」
「本当に面倒な事だ。
厄介な上に、鬱陶しい。
はあ……。
エルリーン。
拳銃を向ける役は、俺が代わる。
ルイを解放してやってくれないか。二人で、俺の後ろにでも戻ってきてくれ」
「分かったよ、ダノン。
ルイ、今、解いてやるからな。
……ほら、大丈夫か?」
「エルリーン……ありがとう。
オレは、大丈夫。
あ、あの……母上」
「……ダノンの指示通りに、部屋の隅に移動して、二人とも。
そんなに不安そうな顔をしなくても、私は、大丈夫よ。
ふふ。
天王寺アリスが、どんな女か、二人は、よーく知っているでしょ。
さあ、早く」
「母上……後で、いろいろ話してよ。エルリーンにも、ちゃんと話してあげてよ」
「うん。分かったわよ。
ルイーナ。
もう、ちょっとダノンとお話させてね。
はーい。
これで、人質もいなくなりました。
私も、両手をあげて、床に膝をついた方がいいかしら?」
「いや、貴女は、そこまでしなくていい。
軍師殿。
ただ、そのトレンチコートの大きなポケットの中身が空かだけは、念の為に、貴女の手を使って教えてくれないか?」
「ああっ!
あのカーキ色のトレンチコートって、よく見たら誘拐犯ルックのやつじゃないか……軍師殿のだったのか。
女モノだったのか!
サイズ小さい訳だ。
うわっ。
コートの下、白と黒柄のワンピース着てる。
ロングブーツとあわせても、なんか大人の女性って感じでいいっ!
なあ。
息子のルイとしても、良いって思わないか?
黒いドレス姿も良かったけど、これもありありあり!
髪、少し切ったんだっ。
肩上!
似合ってるなぁ」
「えっ……ああ、たしかに、似合うね……。
でも、どんな格好してても、母上は、母上だけどね。
オレの――Lunaのプロデューサーで多忙だった頃とか、部屋に一日缶詰だからと、パジャマ姿ばかりを何日も見た気がするけど、それでも、オレの母上には変わりがなかったから」
「ああ!
軍師殿、あたしらと基地で暮らしている時も、作戦立案で缶詰すると、パジャマ姿でずっと机に向かっていたんだよ」
「……そうなんだ。
子供の頃から、服は誰かに選んでもらうのが普通で、こだわりが少ないとか、いつぞや母上が言っていたおぼえがある。
――まあ、オレも、タワー『スカイ・オブ・パーツ』にいた頃、服は、用意されているのが普通だったけど」
「で、ダノン。
この男、引き取ってくれるの?
天王寺アリスも、共謀者という事で、引っ立ててもらって構わないけど」
「軍師殿。
本当に、厄介なタイミングで、エリオット・ジールゲンを持ち込んでくれたな!
もしも、貴女が嘘をついていなかったとしても、半年前から普通に過ごしていたんだろっ!
その段階でも、遅すぎるぐらいだが、正直、今さら押しつけて来ないでほしかった。
どうせ知っているんだろ。
その男がいなくなったせいで、軍からうちの組織に、それなりの数の移籍者が集まった事を。
息子であるルイーナに仕えようとしてやってきた連中だが。
しっかりした面接の上、本気でルイーナのボディーガードをしたいという奴らばかり採用した。
その分、エリオット・ジールゲンへの忠誠が本気だ。
普段は、ルイーナを特別扱いしないなど、こちらからの条件も守れるような人間性にも優れた人材ばかりだが、元からうちの組織所属のやつが、エリオット・ジールゲンを討ち取ったらどうなると思う!
俺の仲間全員を人質に取るような汚い真似しやがって!
答えろよ!
天王寺アリスっ」
「うーん。
どう受け止めてもらっても、構わないわ。
天王寺アリスという女は、正義の味方ではないから。
でも、軍がなくなった訳じゃないし、戦争が終わった訳じゃないし、ダノンだって、頭打ちというか、世界が完全に解放されない事に、軽く閉塞感を感じていたんじゃない?
だから、この男が、出てきたら、少しは何かが変わるかな~と思って、持ってきたんだけど」
「今の世の中で、手にすると最も物騒だという、エリオット・ジールゲンの身柄の扱いを、俺に手渡して、貴女は満足だろうな!
英雄気取りのつもりか!
万が一を恐れて、俺が、誰も連れずにここに来た訳が分かっているんだろっ!」
「ふん。
責任者の人に、言っておく。
僕は、一年前にタワー『スカイ・オブ・パーツ』を脱出してすぐから、この場所で、天王寺アリスの身柄を確保したまま過ごしていたんだ。
君たちの基地からも近い、この森のこの小屋。
全然、見つけてくれなかったじゃないか。
ははっ。
ルイーナの学校のある街にだって、何度も、現われていたんだ。
このエリオット・ジールゲンを、今日まで取り押さえられなかったのは、君の落ち度ではないと言い切れるのか?
しかも、結局のところ、天王寺アリスから、僕を差し出される形になっているんだ」
「エリオット・ジールゲンっ!
貴様ぁっ!」
「落ち着いて! ダノンっ!
エリオットっ。
余計な事は言わないで!」
「――了解。
今の僕は、アリスの下で働く身だ。マスターの命令は、絶対だからな」
「母上……いったい、この一年で何があったの?
ど、どうして、その……あの……そいつは、母上の事を、マスターとか呼んじゃってるの?」
「ん~。
ルイーナには、今すぐ教えてあげたいところだけど、ダノンの返事次第かな。
この男の身柄が、いらないって言うんだったら、どこか他をあたるから、はっきりとした返事を頂戴。
ダノン。
あなたが、今、私たちに銃口を向けているし、小屋ごと包囲していると思うけど――天王寺アリスとしては、特に、問題に感じていないわ。
私、戦争が嫌いなの。
ずっと眠っていたいと思うぐらいに、見たくないの。
だから、戦争を終わらせるツールとして、エリオット・ジールゲンという男を、有効に使ってくれるところにあげてしまおうと考えている」
「本当に、信用できない女だな。
天王寺アリスっ。
断る権利なんて、俺にはありはしないっ。
ちっ!
……ルイーナ、エルリーン」
「えっ。ダノン、何? あたしとルイに何を……」
「君たち二人は、天王寺アリスという女性を信用できるか?
特に、ルイ。
目の前にいる君のお母さんは、本当に、君のお母さんか?
エリオット・ジールゲンの手下じゃないと思えるか。
俺に、遠慮はいらない。
ルイが、思った通りに素直に答えてくれ。
押しつけて悪いが、俺の組織で、エリオット・ジールゲンと『敵対』してくれると言っていた、天王寺ルイーナの見解を教えてほしい」
「ルイ。
あたしは、普通に軍師殿だと思うけど……ほら、タワー『スカイ・オブ・パーツ』で再会した時の出来事があったじゃないか。
だけど、今の軍師殿は、本当に普通で、普通にしてると思うんだ。
……逆に、それなら、なんで、エリオット・ジールゲンと一緒に行動してるんだっていうのが疑問だけど……」
「ああ。
ルイーナ。
僕は、明確に悪意を持っていると考えてくれ。
天王寺アリスをマスターだと思い、命令を受ける側ではあるが、出し抜けるチャンスがあれば、それは自由にさせてもらう約束なんだ」
「エリオットは、黙っていて。
ルイーナの心をかき乱すというのなら、私も黙っていないわよ」
「了解。マスター。
余計な事を言った。今後は、口を慎むよ」
「ルイ、どうなんだ。
君のお母さんを、俺の組織で引き受けていいと思うか?
――その横にいる男もついてきてしまうがな」
「……あのダノンさん。
その。
あのね。
母上が、正常かと言ったら、おそらく大丈夫だと思う。
だ、だけど、だからこそ、エルリーンも言っていたけど、なんでこいつと……一緒に行動しているのか分からない。
マスターとか呼ばれているけど、正常な状態で……その……母上の方が、手下になっている可能性も否定できないかなって、オレは思う」
「ルイ。
君は、この二人のどちらにも、疑念を抱いているという事だね。
――分かった。
天王寺アリス。
どうせ、俺にNOなんて答えは用意されていなかったと思うが、引き受けよう。
取り扱いが、とてつもなく難しいその男を、うちの組織で一旦は預かるよ。
ただし、基地に戻ったら貴女は、俺やジーンさんの質問にしっかり答えてくれ。それは、約束しろっ」
「ありがとう、ダノン。
ふふ。
さすがは、とてつもなく怪しい女だった私を、軍師として雇ってくれたミューリー・イレンズの息子だわ」
「ダノン!
こ、この男を基地に連れていくのかっ!
軍師殿には、来てほしいけど……そのあの……なあ、ルイ」
「う、うん。
ダノンさん、どうするの?
あの……この後」
「ルイ、悪いが、俺には今すぐ、君が納得できるように返してやれる言葉がない。
だが、ルイが心配していると思われるような事にはならないし、する訳にはいかないんだ。
はあ……。
本当に頭が痛い。
とりあえず、交渉成立と考えて良いのか?
軍師殿。
それならば、小屋の外で待機させている連中を、ここに呼ぶ。
その男を、連れ帰らなければならない可能性は、最初から想定していた。
いざという時に、ルイーナを護らせる為のボディーガード部隊――ようは、その男の元部下たちと、純粋なうちの組織の人間を両方連れてきている。
その男も、貴女も、身体的な拘束は避けさせてもらうが、変な真似はしないでくれ。
組織の人間は、俺が取りまとめるし、軍出身の人間側の隊長させている奴もかなり信用できる人間だが、後の不安に繋がるのが嫌だ。
特に、その男。
必要のない私語を慎むように、貴女からよく言い聞かせてくれ」
「エリオット、良いわよね?」
「了解。マスター。
そうだな。
今日は、久々にルイーナに多くの事を語ったので、僕の口も疲れている。余計な事を言わないと、約束しよう」
「……あっと……同じ屋根の下でって……さっき、オレに言ったのって、まさか……っ」
「ああ。すまない。
ルイーナ、僕は、私語を慎むように言われているのでね」
「先に、俺の方から、軍出身部隊の隊長に言い聞かせておく。
あんたの顔を見ても、話しかけるなとな。部下たちにも、順守するように伝えてもらう。
軍にいた頃にも、それなりの階級を持っていた上、人望の厚い人材を確保できたのでね。向こうは、あんたへの忠誠は、今でも強く持っているそうだ。
理由が、理由だったので、採用させてもらったが――。
雲の上みたいな地位に、君臨していたあんたなんかじゃ、顔もおぼえていないんだろうがな」
「僕は、仕事離れして、もう一年ほど経つんだ。
将官クラスの人間ですら、顔と名前が一致しないぐらいに忘れてしまっているさ。
おっと。
すまない、余計な私語を呟いてしまったよ」
「エルリーン、ルイ。
しばらく、通学や外出の際は、組織の純粋な人間と軍出身の人間の両方をボディーガードとしてつけさせてもらう。
二人で遊ぶのに、支障があるという理由を強く訴えられて、渋々承知していたが、こんな形で、誘拐まがいの事件があったからには、エルリーンがボディーガード代わりをするのは認められない。
ケンカして、ボディーガードが、側にいないなんて失態、俺じゃなくても、こういう決断をすると思ってくれ」
「……ああ……。
はい。
ご、ごめんなさい……ルイも、ごめんな……」
「ごめん、エルリーン。
オレが、変な事を言って、怒らせちゃったから……」
「ルイーナとエルリーンが、互いに謝る必要はないわ。
ボディーガードが、何人いようが、私の計画が実行されたら、誰も阻めない。
ふふ。
ダノン。
ありがとう、また、この天王寺アリスを信頼してくれて。
――ダノンも、今後、世界が向かうべき道を考えていてくれたようだけど、辿り着くべき場所に、正確に着地できるように、私の方からも最大限に力を貸すわ」
* * * * *
『本当かね、アリス!
今、僕が聞いて、受け止めた事が、正しいとするならば、それは、世界からすべてを奪い取るに等しいのではないか?
驚いた。
ふふ。
それが、僕の愛しいアリスの考えであったとはな』
『聞いた通りだ、エリオット。
そんな考えの私と、お前は一緒にいるつもりか?
愛しいなどという言葉をかけてやるような女ではないんだ、天王寺アリスという人間はな。
結局は、軍人を目指していた頃の事など忘れていなくて、お前とは違う形で、戦を終わらせる為の戦を、世界に向けて仕掛けようとしている』
『神話とは、騙し合いでなりたっているとも言える。
どうせ、僕ですら、欺瞞の対象なんだろ?
今だって、君が語ってくれている事が、すべて真実であるとは思っていない。
だからこそ、僕は、アリスの事を愛おしく感じるんだ。
面白い!
それでこそ、君の道具となる決意をした価値があったというものだ。
このエリオット・ジールゲンを好きに使ってくれ。
天王寺アリスという独裁を行う全知全能の神が、我が子ルイーナを現の支配者に仕立てる作戦を、ぜひに見てみたい!
まさに、神話じゃないか!
君の描く『物語』には、毎度期待させてもらっているよ』
『独裁か……誰かのせいで、すっかり嫌な言葉に聞こえるようになった。
私の描く『物語』は、エリオットが望むものではないかもしれないぞ。それでも、ついてくるのか?』
『無論。
僕がいるべき唯一の場所は、アリスの側だけだ。
ふふ。
何度も言っているが、僕を、追い出す事はおすすめできない。
アリスがいるべき唯一の場所が、僕の側になってしまうのだからな』
『エリオットが、何を企んでも、最後は、私が出し抜かせてもらう。
それは、忘れないでくれ』
『了解。
うん。そうだな。
この後、アリスの方が、僕のマスターという事にしよう。
それにしても、僕が望む通りのアリスが、本当のアリスであったとは――ルイーナをアイドルにした頃には、かなり明確なビジョンを用意した上だったのだな。
あの子を、タワー『スカイ・オブ・パーツ』の外へ出した時、すでに現を、ひとたび廃滅に追い込むつもりだったとはっ。
だが、酷いな。
その時は、僕が上司だったんだ。
報告は、必要だったんじゃないか?』
『機が熟していなかったからな。
天王寺アリスが描く『物語』の一部が、エリオット・ジールゲンが描いた『物語』の一部と交わったという話なだけだ』
『いや、僕が描いた通りだよ。
とても、楽しみだ。
このエリオット・ジールゲンが、仕えても良いと考える唯一の存在、天王寺アリスが、世界を統べる日が来るなんてな!
そして、ありがとう。
僕の愛しい息子でもあるルイーナが、世界の支配者として君臨する事となるんだ。
それも、あの子が、自ら、身も心も捧げてくれるように仕向ける方法まで考えてくれるとは!
ははっ。
うまい具合に、僕を、誑し込んできたな。
うんうん。
こちらも遠慮なく、アリスとルイーナは、僕の道具だと思わせてもらおう。
そして、二人が、生まれ持った力のすべてを振るってくれるのであれば、特に問題ない。
さあ。
始めてくれないか!
アリスが描く、世界を破壊する『物語』をなっ』
『――私は、やり切るしかないんだ……いえ、やり切りたいの。
エリオット。
本当に、協力するつもりがあるのね?
……まあ、そんな口約束をしたところで、エリオット・ジールゲンと天王寺アリスは、お互いずっと『敵対』関係だけど』
『その通りだ!
君が、失態を演じたり、隙を見せたりしたら、容赦なく、再びエリオット・ジールゲンが統べる世の中となる。
そうして、今度こそ、アリスとルイーナは、完全に僕の手に堕とさせてもらう。
それは覚悟の上だろうな!』
『いいわ。
失敗したらでしょ。
私を誰だと思っているの? 天王寺アリスなのよ。
はい。
交渉成立。
今すぐ、世界の支配権を取り戻せると豪語する、エリオット・ジールゲンという存在のすべてを、私の為に使いなさい』
『了解。マスター。
最大の敵を、味方にしたいなどとはな。
ははっ。
そんな大胆な事を考えるのは、僕だけかと思っていたが――さすがは、愛しいアリスだ。
ああ。
僕に、謀られないようにだけは注意してくれ。
それだけ、気をつけてくれれば道具として、僕を好きに使いたまえ』
「うっとうしい」って、大阪弁なんですね……アニメや漫画、ゲームでも普通に使われていたので標準語だと思っていました。
そして、「ダンマリ」は、東京語。これも方言だったのか。
父親は九州出身の名古屋育ち、母親は京都で生まれてすぐに栃木に引っ越し、就職後に尊敬語・謙譲語・丁寧語を教えてくれた先輩は、島根出身と見せかけた東北民。大阪育ちが、東京進出。仲良しの友達は、中華圏の血筋を引いたアメリカンと、新潟県民のハーフ。
――な~んて、最近じゃよくある話だと仮定しましょう。
プロの脚本家の方や小説家の方といえど、果たして標準語のみで文章を書いておられるのか。
方言がまじっているのは、誤字や表現違いではありません。
と、セルフ防御をしつつ、他の方の文章を読ませて頂く時、これからも、方言かどうかを確認しようと、あらためて決意しました。
『ボディーチェック』は、日本のみで通用するもので、英語だと「ボディーサーチ」、「セキュリティチェック」とかになるみたいです。




