表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

65/106

子供の作文

The Sky of Parts[23]

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

この物語は、軍事好きな筆者が作った育児モノ。


Web上での読みやすさ優先で、適当に改行などをいれたりしてあります。


『父上。

 はい、分かりました。ボク、いい子にしてますね。

 食事は、冷蔵庫から出して――今日は、夜になっても帰っていらっしゃらないって事ですね……はい。

 分かりました。

 もう一人でお風呂に入れるし、サスペンダーで、ズボンを吊れるようにもなりました。

 変なところで転んで、ひざりむいて、父上にご心配をおかけしないように気をつけます。

 ……この前みたいに絵の具で、白いシャツに水色のシミを作らないように、注意して遊びます。

 先日は、父上のお手をわずらわせてしまい、申し訳ありませんでした。

 窓もこまめに開けて、ちゃんと外の空気も吸います。

 お外を眺めながら、大人しくしています。

 父上のお言いつけは、すべて守りますので、早く帰ってきて、抱きしめて下さいね。

 いい子で、待ってますから』



* * * * *



「ルイ。

 なんで、宿題の作文を提出しなかったわけ?

 昨日ちゃんと仕上げて、今朝、二人で鞄に入れたのを確認しあったじゃないか。

 なのに、忘れてきて、しかも、書いてないって、どうしてそんな事を先生に言っちゃったわけ?」


「んん……なんか、学校に来てから読み直したら、まるで演説の為の原稿みたいで」


「え?

 あれが?

 別に良かったと思うけどな……というか、ちょっと嬉しかった。

 うーん。

 それよりも、あたしは、やっぱり文章センスないかも。

 口なら言える事もあるんだけど、いざ文字に書けって言われると、ダメだ。

 枚数指定とかも、どれぐらいの内容基準とかも言われなかったから、素直に書いただけなのに」


『昨日の晩ご飯のエビフライがおいしかった。

 平凡な気分で、エビフライが食べられると思うと、とても幸せに感じる。

 今日も何事もなく、過ごせてるんだなって思う。

 だから、またありふれた日常に感謝したいから、エビフライが食べたい』


「先生に、たったこれだけ?

 って言われた上に、今年で十五歳になるんだから、もう少しテーマ性というか、想い込めて文章は書きなさいって、開いた口が塞がらないぐらいの様子で言われた。

 ……これさ、ルイなら分かると思うけど、あたしの人生ワーストファイブに入るぐらいの危機の時の想いが込められてるんだよ?」


「エルリーン。

 オレは気づいていたから、肩を落として、そこまで落胆らくたんする必要はないと思うよ」


「タワー『スカイ・オブ・パーツ』で、本当のルイが消されてしまって、あいつの手先にされちゃうって。

 そして、あたしも、そんな風にされたルイに、すべてを捻じ曲げられて、基地のみんなの敵にされちゃうって時に食べたエビフライが……おいしかったんだ。

 本当に、おいしかった!

 だからこそ、とっても凶悪な味がしたなって、今でも思っているんだ。

 基地に無事に帰って来れて、おかずがエビフライの日が来るたびに、もう酷い事はされないんだなってホッとしてる。

 胸をなでおろしたりしてる。

 実感できるんだ。

 助かったんだなって。

 あたしからしたら、そんなとうといぐらいな想い込めた文章なんだけど……先生には、まったく伝わらなかったか。

 しょんぼり」


「先生が、エルリーンの――エルリーンとオレの複雑すぎる事情を、理解しきれていないだけじゃないかな。

 説明するのもなんかおかしいし。

 ……そもそも、作文って、決められた枚数書くとか、変じゃないかなって。

 書く人が何歳だから、これぐらいの内容が書けないとダメだとか、それもよく考えてみると、とてもヘンテコ。

 学校だからとか、課題だからなんて理由――素直に変だと思った。

 『世間の常識』ってやつを知らずに生きてきたオレだからかもしれないけど」


「いや、ルイが正しい!

 基地の勉強部屋の頃も、授業が終わったら、外で遊びたいのに宿題とか渡されて……しかも、テスト!

 点とかつけるの意味が分からないっ」


「あれかな?

 まなだから、なんらかで評価する必要があって、だから基準を作って、点数つけするって事。

 だとしたら、もう不思議って言ってもいいと思うよ、エルリーン」


「そうだ! そうだ!

 もっと、もっと、言ってやれ! ルイ副班長」


「いや……オレは別に、学校や宿題にそれほど、文句をつけたい訳じゃないから。

 作文に限って言えば――。

 自分の想いを、なんとなく込められればいいんじゃないかな。

 実際に書いた文章が大事なんじゃなくて、書こうとして考える事が重要。

 だって、オレ、なんかすごい作文とかもらって、そこに書かれた想いを理解したから、エルリーンと一緒にいたいとか思った訳じゃないもん」


「ル、ルイ!

 さ、さらっと、照れるような事を言うな!」


「ふふふ~ん。

 文章っていうか、だったら、オレ、小さい頃から作っているからね」


「う……。

 たしかに、ルイとあたしは、付き合ってはいるけど、あらためて言葉にされると、恥ずかしい……」


「――でも、たしかに言葉にしないと、伝わらない事もあるね。

 オレも、不器用だったし。エルリーンも不器用。

 あ、ゴチンしないでね!

 なんとなく、『おなか減った』とか、『今日は天気がいいね』とか、文章にしたら、本当に短いなぁって思う事の連続で、好きになっていった気がするんだ。

 それは、素直に思った事だったから。

 間違いなく、想いこもっていた。

 結局、二人一緒に過ごしていた時に、付き合う事になったから、お手紙っていうか……ラブレターみたいなものは、交換ゼロだったけど、あんな気分の時に、エルリーンに渡す作文書いていたら、何枚でも書けていたかも。

 そして、どこかの作文コンクールで入賞していたかも。

 テーマ性はもちろんバッチリ!

 感動を、いっぱい文字にしてる。

 心の動きは、本当に率直に表現できるはず。

 オレの生まれの問題があるから……そういった事を許してもらえるか……そんな不安も、大好きだからこそ知ってほしくて、伝えたくなっていたかもね。

 あの時に、お手紙とか書いていたら」


「あたしも、あの時は、たしかにすごく自分の想いを表現したくなった。

 ルイに伝えたくて。

 知ってほしくて。

 もう、『とにかく、あたしの想いについて来いっ!』って感じだった。

 うーん。

 でも、どうかな。

 あたしは、やっぱり文章にしたら、『いいから、とりあえず、付き合え。以上』だったかもしれない」


「あはは。エルリーンらしいし、すごくエルリーンの気持ちが込められている文章だね。

 エルリーン。

 今日も、帰り道にデートしてもらえますか?」


「ルイぃぃぃ!

 ひ、ひざまずくんじゃない!

 そして、顔をキリッとするんじゃない。

 まったく……ルイは、ちゃっかりしてる。

 抜け目がない!

 今から言う事は、もちろん冗談に受け止めろ!

 さっき、『演説みたいで嫌』とか言っていたから、どうせ今は、生まれの事、ちょっとばかり気にしてる時だ。

 気にするなって意味で、説教がてら言ってやる。

 ルイ。

 こんなにあざとく、悪知恵を働かせて、立ち回ってくる独裁者さまが、なんの歯止めもなくなって、あたしを口説きにこなくて良かったっ!

 絶対に落とされて、あれよあれよという間に、状況に流されて、気づけばまったく逆らえなくなっていたと思う!

 そうなっていたら、きっと、エビフライがおかずに出るたびに、これは、苦しみの始まりだったって言っていたよっ。きっと。

 でも、現実は違う未来になった。

 だから、エビフライが今でも、素直においしい!

 おいしいんだ!

 エビフライになってくれたエビたちに、心の底から感謝しながら、いただきますって言って食べるんだ!

 以上」


「はいはい。

 気にしません、気にしません。

 エルリーンの想いがたくさんたくさん込められた、作文の読み上げありがとう」



* * * * *



【作文】


 ぼくには、お父さんとお母さんがいません。戦争によって奪われました。


 辛いのは、ぼくだけじゃないと思います。他にも同じ思いの子供たちが、そして逆に、子供を奪われた方も大勢いるはずです。


 戦争は、いけない事です。早く終わるべきだと思います。

 ほしいです。

 戦争を終わらせる事ができる力というものが、ほしいです。

 心の底から、ほしいんです。


 でも、戦争は、すべてを奪うだけではありませんでした。

 出会いもくれたんです。

 将来、結婚したいなと思う人を、ぼくにくれました。


 消えてしまった人たちを取り戻す事は、決してできません……少し大きくなったぼくには、もう分かるんです。もちろん、今でもその人たちの事を思い出して、なぜいなくなってしまったのだろうと、涙を流す事はあります。


 もし、お父さんとお母さんが、いまのぼくに声をかけてくれるとしたら――未来を見つめてほしいと言ってくれるような気がします。


 だから、ぼくは、彼女をこれからも愛し、いつかは新しい命を授かって、自分が、お父さんとお母さんのようになろうと思います。

 そうなったら、ぼくのところに、お父さんとお母さんが帰ってきてくれるような気がします。

 その日に向かって、ぼくは、これからも強く生きていきます。



* * * * *



『ふふ。天王寺先輩、今宵もありがとう。

 おや?

 今日は、いつもよりも嫌な顔をしてくれている。

 可愛らしいな――こっちにおいで……おっと。

 無理だ。

 君なんかが、僕に手をあげようなんてなっ!

 手首をつかまれて、それで、おしまい。

 何度、こういう結果になったら、諦められるんだい?

 ……ああ。

 意地悪を言い過ぎたか?

 君の目には、すでに涙がたまってきている。

 駄目じゃないか、そんな程度の戦略では。

 天王寺アリスらしくない。

 あはははっは。

 なんだ?

 戦争もいいものだなと、僕が言ったからかい?

 おかげで、僕は、こうして君を、腕の中におさめていられると言ったからかね?

 珍しく冷静さを失ってしまって、本当に君らしくない。

 ――そうか。

 あっちかっ!

 君のご両親は、戦争を起こす側の人間だったじゃないか! 天王寺先輩の中にも、そんな血が流れているのではないのか。

 そんな風に言われたから、怒れてきたのかい?

 それは、失礼。

 反省して、謝っておこう。僕は、天王寺将軍ご夫妻に助けられた身だ。

 今宵は、天王寺先輩が、特に愛らしく思えてきて、こちらも熱くなってしまった。

 徹底的に追い込んでやりたくなってしまい、つい失言をしてしまったよ。

 すまない。

 ふふふ……。

 だが、忘れないでくれ。

 僕は、単なる民間人の子供だった。

 戦争で、両親を奪われなければ――こうして、恐怖政治を敷く指導者にはなっていなかったかもしれない。

 君は、僕と出会った時、僕の両親が奪われた時に、すでに軍人を目指していたのではなかったのかな。

 親に言われたから、軍人になるつもりだった。

 そんな言い訳をする気かね?

 せよ。

 素直に言ったらどうだ。

 本当は、戦争が好きだって。

 その考えを否定して、消そうとして、軍人思考を捨てようなどと、あれこれちぐはぐな事をしてみたところで、君の心根こころねは、戦争を求めている!

 天王寺先輩。

 君に与えられた選択肢は、二つしかない。

 ずっと戦争をし続けるか、僕と共に、戦争を起こせる力をもって戦争を止めるかだ。

 どうだい。

 前からお願いしているが、僕の協力者にならないか?

 戦争を、自分の力で抑え続けるんだ。

 それは、きっと戦争をしている並みに、君の心を刺激するはず。戦争を終わらせたはずなのに、満たされたままでいられる。

 素晴らしくないか!

 さあ、こっちに来るんだっ。

 身体だけでなく、心も、このエリオット・ジールゲンに、すべてをゆだねるんだ!

 戦争を起こす側の人間の血を引いた君が、戦争から目をらすこと自体、罪を感じるべき行為ではないのかね? 僕にだって、どこか申し訳ないと考えてくれていたんだろ。

 では、君の方から許しをこうてくれないか?

 僕も、君を許してやって、楽にさせてやりたいと心底思っている。

 だから、こっちに――こっち側に来るんだっ!』


 今回の『作文』を書く為に、小学生の作文をいくつか読ませて頂きました。

 コンクール入賞のものから、『思いつき』で書き、大人を驚かせたものまで幅広く読みましたが、『思いつき』シリーズの方は、良い意味で笑わせてもらいました。


 筆者は、学生の頃、「込める想い」が作文には重要だという事に、気づいていませんでした。

 もちろん、作文の課題が嫌いで、褒められた事もありません。


 下書き時代から考えると半年間ぐらい、キャラクターの気持ちを考えながら執筆してきたので、その立場になりきって作文を書いてみました。


 隠していたテーマではありませんが、この作品は、『反戦メッセージ』も込めさせて頂いております。

 アリス、エリオットの二人の関係、ルイーナを含む家族の関係以外に、『反戦メッセージ』の部分も描き切れると良いなと、頑張ってみようと思います――と、書きながらも、適当に流して下さい。


 テーマなんてものは、香り付けなんです。

 前面に出しても面白くないし、なければないでいいし、まあ、あってもいいかな~程度のものなので。


 テーマを用意した上で、娯楽的に楽しんで頂けるものを描けているとしたら、それは筆者冥利に尽きます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ