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【過去】はなれる二人…

The Sky of Parts[19]

■■■■■■■■■■■■■■■

この物語は、軍事好きな筆者が作った育児モノ。


Web上での読みやすさ優先で、適当に改行などをいれたりしてあります。


『はぁ……はぁ。

 ……ここまで、逃げれば……。

 ルイーナ、怖い思いさせて、ごめんね。

 大丈夫。

 母さんを、誰だと思ってるの? 天王寺アリスなのよ。

 一緒に、外へ。

 電気系統が落ちている間に、なんとか……。

 えっ!

 あああああああっ!

 ル、ルイーナぁあああああああああああ!

 ぐ、軍用ロボットの……拘束テープ……っ!

 ダクトの隙間を使って……ルイーナぁあああああああああああ!

 無事なの!

 ルイーナぁあ』


『――もちろん、ルイーナは、無事だ』


『エ、エリオット……ジールゲン。

 ……くっ。

 監視カメラのスピーカーね……返して! ルイーナを返してっ』


『ん?

 へえ……父親の僕から、ルイーナを取りあげようとしていたのは、誰だったかね?

 なあ、天王寺先輩』


『か、返して……ルイーナを……返して!』


『よしよし、ルイーナ。

 もう泣く必要はないだろ。

 父さんの腕の中にいるんだから、安心して、心が穏やかになる意味をおぼえていくといい。

 これからも、ずっとな。

 ずっと、ずっと。

 ――さて、天王寺先輩。

 いや、アリス姉さん。

 こちらからは、そちらの様子を見させてもらっているが、その表情は、悔しいのかな?

 それとも悲しい?

 僕は、ルイーナをいだいて、とても喜ばしい顔をしていると思うよ。

 ふふ。

 だって、二人のいとし子を、君が産み落としてくれたからっ。

 おやおや。

 アリス姉さんっ!

 目に涙をためて、黙ってしまわないでほしい。

 困るな。

 君にはね、いろいろと言ってやりたい事があるんだ。

 まずは、やっとエリオット・ジールゲンという、意味を理解してくれた事、嬉しく思っている。

 軍人思考を捨てたいなんて、僕から言わせれば、根拠もなく、理論や現実を無視した妄言もうげんにとらわれている君に、なかなか伝わらなくて、正直言うと困惑していた。

 身重みおものからだで、ずっと体調が悪かったので、無理をさせるのはめておこうとも、もちろん優しく考えていたけどな。

 ふふふふふふふ。

 あははははっははっ!

 僕の子の母親になってみて、どうだ?

 あはは!

 世界を制圧して、暴政を敷く、この独裁者エリオット・ジールゲンの妻になる気持ちを、君の言葉で教えてもらいたいな!』


『うるさいっ!

 エリオット……いや、お前が、私に薬を飲ませて、ここに足止めして……』


『あの夜がなければ、良かったと?

 ……おや。

 ルイーナっ!

 悲しい顔をしないでおくれ。

 お前の母さんは、今は、少し乱れているだけだから。

 軍事施設を混乱におとしいれるような、大規模作戦を、たった一人で実行して疲れているんだ。

 大丈夫。

 母さんは、しばらくゆっくり休むべきだが、これからも三人で一緒にいられる。

 ――ずっと、ずっと。

 ほらほら、ルイーナ、いい子だ。

 父さんの腕の中が、そんなに心地いいのかい?』


『か、返して……エリオット……ルイーナを返してっ!』


『よしよし。

 今夜は、ゆっくりお休み。

 ルイーナ。

 母さんが、落ち着くまでは、父さんがずっとそばにいてやろう。

 何も心配いらない。

 そんな形がある事すらきょであるような、淡くて消えてしまいそうな小さい身体なのに、本当に力強く泣く事ができる。

 僕のいとし子。

 これから、この父の子、ルイーナ・ジールゲンとして生きていくのだから、それぐらい激しく叫べる方が、望ましい』


『か……返して……返せっ!

 ルイーナを、返せっ』


『ふん。

 エリオット・ジールゲンの実子を連れて、どこに行くのさ?

 アリス姉さん!

 聡明そうめいな君なら分かっているだろうっ。

 理解しようとしていないだけで、君の産んだ息子は、普通になんて生きられはしない!

 僕に、すべてをゆだねて、これからを過ごしていくしかないんだ。

 父親は――この僕だから。

 そして、アリス姉さんも。

 もうアリス・ジールゲンとして生きていく以外に、道があるとは思えない。

 君が、いくら僕よりも優れた頭脳の持ち主だからと言っても、思いつくのかね?

 ――僕の影響下以外で、苛政かせいの独裁者の血を引く、ルイーナのせいを繋いでいってやるすべを。

 判断は、とっくについているんだろ。

 俗世に放り込んだら、それがルイーナの命を脅かす行為になるって!

 だから――』


『うっ……わ、私を……どうする気だ……っ』


『アリス姉さんっ。

 長い間、軍人思考を休業していたから、少し油断してくれて、ありがとう。

 どうするって……右手を拘束させてもらっただけじゃないかっ!

 大人のアリス姉さんは、そのダクトは通れないが、どうかな?

 赤子のルイーナの身体を、安全に包めるぐらいに柔らかい素材だろ?

 ――軍用拘束テープっ!

 それを、知ってもらいたくて……くく。

 なんてなっ!

 タケが、もうそっちに向かっているんだ。

 お医者さんの指示通りに、『薬を処方されて』、少し落ち着いてから、僕のところへ戻ってきてもらおうっ。

 僕は、ルイーナの世話と、今日に限って入り込んだ反乱分子どもの相手で忙しいのでね。

 アリス姉さんの迎えに、直接行けなくて申し訳ない』


『エリオットっ! お前のところに戻る気はな――』


『……ルイーナと二人で、待っている。

 ああ。

 そうだ。

 今日、僕にした仕打ち。

 許しをこう言葉とか、考えておいてくれ。

 ルイーナを、一時いっときでも早く抱きしめたいのなら、反省文をあらかじめ用意しておく事をおすすめしておこう。

 プロポーズの言葉は、僕に用意させてくれ。

 アリス姉さんは、単にそれを受け取って――これからは、エリオット・ジールゲンの横に立つ者としての自覚をもって行動してもらえれば、それだけでいい。

 せっかくの先天的な能力だ。

 子育てが落ち着いてきたら、君の戦略を立てる事ができる才能を、夫である僕の軍の為に使ってくれないか?

 嫌だと言い張っても、そうさせるまでだっ。

 アリス姉さん!

 僕は、生まれ持った力を、使いたい。

 抑えるつもりはないっ。

 だから、常世とこよともにある為、君に心をあわせさせる! 必ず!』


『嫌だっ。

 断固として……拒否する!』


『断固拒否するって――貴女には、そんな権利は与えられていませんよ。

 天王寺アリスさん。

 事実上の御夫君である閣下へのお言葉には、もう少し注意を払って頂きたい……そして、この私――竹内イチロウに対する態度も。

 ……おいっ。

 アンタさぁ……。

 よくも、この私を、計略にめてくれたなっ……! アンタのせいで、閣下の御手おてわずらわす結果になった……!』


『おやおや、タケ……さん。

 手にしているのは、この天王寺アリスを黙らせる為の鎮静剤入りの注射かな?

 ――お前を、めただと!

 何を言っているっ。

 それは、こちらの台詞だっ!

 私に、『毒』を盛り続けたのは、お前だろうっ』


『タケ、あとは任せた。

 僕は、反乱分子排除の指揮に戻る。

 こちらの通信は、切らせてもらう。

 その女は、予定通りBブロックの反省室に閉じ込めておけ!

 はは。

 天王寺アリスは、まだ、僕の妻になる約束を取り付ける前だからなっ。

 セキュリティエリア全土の電気系統を機能不全におとしいれるなんて、大それた罪を犯した咎人とがびととして、引っ立ててやれっ。

 くくっ。

 アリス姉さん。

 あとで、自戒じかいの念をたっぷり込めた、君の反省文を聞かせてくれ。

 このエリオット・ジールゲンに対する、冒涜ぼうとくに等しい大罪行為であったのに、改悟かいごの機会を与えられた事に感謝してもらおうか!

 背かぬと絶念ぜつねんし、僕に付き従う妻になると誓うまで、ルイーナを抱きしめる事は許さないっ。

 心にしっかりと刻んでおいてくれ!

 ――では、竹内イチロウ。

 その罪人の身柄の拘束を頼んだぞ』


『御意のとおりに。

 エリオット・ジールゲン閣下の御心おこころのままになるように、取り計らっておきます――。

 さて。

 天王寺アリスさん。

 行儀がいい訳でもない、馬鹿げた、どこにでもいる程度の女を演じ続けて……この竹内イチロウをだまして……ここまでよくやってくれたものだっ!

 拳銃を自分の頭に突きつける、アンタの顔を見て、ああ、こいつはどこまでも戦いの中に居られる女なんだなと思った!

 だから、容赦するつもりはないっ』


『私は、演じていたつもりはない。

 必要のない自分だったので、出していなかっただけだ!

 竹内イチロウ。

 お前とて、演じているではないか――慎ましく、誰かの下に従っておさまっているような人間には見えないがなっ』


『ほう。

 噂の名軍師、天王寺アリスのし当てとやらを見せて頂くとは。

 ……あの方は、御自分の寝首をかくような、不埒ふらちな考えをいだいている者を好んで下さるのでね。

 そういう図々しいまでの無遠慮ぶえんりょをお許し頂いたので、私としても、忠誠を誓い、恩に報いたまで。

 エリオット・ジールゲン閣下が、絶大な権力を築きあげて下さっている時世ときよに従うのが、あつらえ向きだと思っているだけだ。

 逸脱いつだつは、愚かでしかない。

 まさに、おこの沙汰だ。

 分かるだろ?

 閣下の心髄しんずい

 いくさに対していだかれている念に、れて感じているんだろう?

 これが、天質てんしつを持った真の支配者なのだと。

 怖気立おじけだつ事をせずに、向かっていったアンタだからこそ、気づいているはずだっ。

 勝ち目などないって!

 なあ。

 ここで、降伏しろよ。

 天王寺アリス。

 アンタなんて、今すぐ消してやりたいぐらいに憎いが……そう思う事をしでかしてくれたからこそ、閣下の御前ごぜんひざまずかせてやりたくなる。

 この竹内イチロウの為にも、アンタの力を閣下に捧げてくれないか?

 権威不変維持の人柱になれよ』


『聞けぬなっ。

 私が――天王寺アリスが、力を使うべきと考えるのは、いとしい我が子を護る為だけ――自身を放棄する事があるとしたら、それは、ルイーナの為だけだ!

 お前やエリオットに……投げて出してやるものなど、断じてない!』


『あははははっ。

 天王寺アリス!

 アンタって存在を、見落としていたよ!

 あの小僧……行きずりの過ちの末ぐらいにしか引っ掛けていなかったが、使い物になるんじゃないかっ?

 閣下とアンタの子だって!

 どれほどの利用価値があるのだろうかっ!

 はは……あははははっ!

 愉快な未来の展望ってヤツが見えてきたっ。

 ふふふ。

 ――小僧。

 使えると思ったら、使ってやるよ!

 竹内イチロウが、あおあがめるような……絶対的権力を描きあげる道具としてなっ!』


れ者が……黙れっ!

 私は、どんな事をしてでも、ルイーナを護り抜く!

 誰からも留め置かれる事のない、自由に羽ばたける世界に、あの子を導き出す。

 それが、うつつを創り出すような――荒唐無稽こうとうむけいだとののしられるようなすべであったとしても……必ず、あの子が、あの子であるという、そういった場所に辿たどり着かせる――』


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