家族で一丸となって…?
The Sky of Parts[18]
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この物語は、軍事好きな筆者が作った育児モノ。
Web上での読みやすさ優先で、適当に改行などをいれたりしてあります。
「対話体」のみのコミカルアクション小説『描写例』兼『本編』です。
巷で言う『アンソロジー短編』としても読めなくはない回ですが、内容としては完全に『本編』ですので、「極度にネタバレがお嫌いな方」は、ご注意下さい。
【※】5人出演させています。サンプルとして、この回だけ見る方の為に、あとがきに出演キャラクターの簡易紹介や描き方ガイドなど情報記載先リンクURLをつけておきます。
「へえ。
宣戦布告というよりは、決別宣言かね。
ルイーナ。
父親であるこの僕を、慕うも憎しむも自由だ。
だが、お前は、混沌とした揺らぎから、逃げおおせられるのか?
僕に対する仰ぐ気持ちと、卑しむ気持ち――それは、お前が自身に向ける刃と等価。
相反する感情に、同時に責め立てられ、双方から心を貫かれていく。
絡みあったそれらは、やがて蛇蝎でできた兇器となり、お前の身体に巻きつき、身動きがとれないところに、猛毒を打ちこんでくる――。
忘れるなっ。
お前の決意が、この父との完全なる別離を望むものではなく、単なる分裂であれば……くく。
どうなるんだろうな? ルイーナぁ!」
「か、かかかかか……閣下ぁああああああああ!」
「ん?
タケ、どうした?
心理抑圧を、息子が本気で昇華してしまった――かもと思い、僕は、いろいろ考え込んでいるんだ。
いきなり、顔色真っ青で、執務室に飛び込んでくるな。
で、何だ?
竹内イチロウ。
何が、そんなにもガクガクブルブルなんだ?」
「かかか、閣下ぁあああ!
て、ててててて……天王寺……アリスがががががあああああ!」
「ん?
ああ、これか。
今は、鳥カゴにいるみたいだ。
――竹内イチロウ。
特別に、監視カメラの映像を大画面に切り替えてやろう」
「い……い……ぎゃぁああああああああああああああああああああああああああぁあわああああっ!」
* * * * *
「あ……あ……ぎゃぁああああああああああああああああああああああああああぁあわああああっ!」
「えるり~ん。
おしえてほしいの。
ますかるぽ~ねいしやきぷろばんすふぅ~って、なぁーに?
このてんのうじアリスちゃんに、おしえなさい。
……あははは。
じゃないと、このつぶらなひとみの……さわりごこちもふもふが……えるり~んのくびにも……あははは」
「うわー懐かしい!
アナコンダ……模様的に、たぶん『弐号』かな?
首に巻くと、モフモフして気持ちいいんだよね。
そのヘビのぬいぐるみ。
あれ?
母上。
それどこで見つけてきたの?
前は、箱に入れて、オレの部屋のクローゼットに押し込んであったけど。
他のヘビのおもちゃもあるの?」
「あるわ~よ。
えりおっとのしんしつのくろーぜっとに、いっぱい、いっぱい。
まえかけみたいな、このかばんに、はいるぶんだけ、もってきたの。
えるり~ん。
さあ、おしえなさい……あはは……ますかるぽ~ねいしやきぷろばんすふぅ~って、なぁーに?
おしえられないなら、このあなこんだと、へびさんたちが……あはは……わかってるわねっ!」
「いやぁああああああ。
むりむりむりむりむりっ!
軍師殿ぉ!
むりむりむりむりむりっ!
ヘビは……おもちゃでもダメぇええええええええ!
そんなデカいの絶対にむりいいいいいいぃいい!」
「……ぷっ。
ひょっとして、エルリーンって、ヘビが嫌い……というか、嫌いなんだ。
へえ――」
「ルルル、ルイ!
……お前、なんで軍師殿から、ヘビのおもちゃ……一個受け取っているんだ?
ニタニタして、視線が床っていうか……どこに焦点あわせてる……?
というか、何を考えて……」
「そりゃね。
これが、あれば――エルリーンに、言う事を聞かせられるんだって、思ったら……ね?」
「ル、ルルル……ルイっ!
にょ、にょろにょろと本物のヘビみたいに動かしながら……そ、そんな発言するなっ!
……ち、近づいてくるなぁああ。
ぎゃぁああああっ。
ルイ。
お、お前……今、完全に『おとうさん』と……一緒の顔してるぞっ!」
『お嬢さん。
その『おとうさん』は、『義理の父』を当てるやつでいいのかね?』
『か、閣下ぁあ!
きっと、数字の『〇・十・三』で、『〇・十・三』だっ!
……とか、ありがちな感じで返されるだけだから……モニタ……画面消して下さい。
早く……。
無理っ!
ヘビむりっ!
アナコンダ弐号無理ぃいいいいいいいいい!』
「ますかるぽ~ねいしやきぷろばんすふぅ~って、なぁーに?
このてんのうじアリスちゃんに、おしえなさい。
……あははは」
「あ、あたしは、知らないって!
……ってか、ルイ本人がいるんだから、そっちに聞いてよ。
ぎゃーぁあああ。
軍師殿も、ルイも……く、来るなぁああああ!」
『閣下……け、消して下さい!
モニタ画面を消して下さい……か、閣下ぁああああ。
執務室から絶対に出て行くなとか……下知しないで下さい!
ぎゃああああああああっ。
わ、分かりました……義理の父……それで、良いですから……ぎゃあああああっ!』
「え?
母上、『マスカルポーネ石焼きプロバンス風』おぼえてないんだ。
……そっか。
思い出なのに――このヘビのおもちゃ、お父さんと二人で、タケを追い込んだの……楽しかったな」
『本当に、楽しかったな。
竹内イチロウ。
僕の仕込み通りに、ルイーナがお前を追い込んでいく様子、とても愉快なショーだった。
なあ?』
『たのしくねぇ……いえ、た、竹内イチロウといたしましては、楽しくありませんでしたっ!
本物ならともかく、おもちゃやぬいぐるみを見ただけで、取り乱すほどになるって……私が、どれほど責め苛まれたと思っているんですか!
お気を確かに……ねぇ。
か……閣下?
手に何を握って……ぎゃあああああああああ!』
「るな~ぁ、あなた、ますかるぽ~ねいしやきぷろばんすふぅ~しってるの?
このままだと、えるり~んが、どうなっても……あはは。
えるり~んのぶじを、やくそくしてほしいなら~おしえなさい!」
「えー。
どうしようかな。
『マスカルポーネ石焼きプロバンス風』を、母上が作ったら、エルリーンが花嫁衣裳を着るって条件だったと思うけど――ねえ。
だって、このおもちゃさえあれば……ね?」
「ル、ル、ルイ……さ、さっき、護りますとか言ってたよな?
……おま……。
あああああ。
や、やめて軍師殿も。
あ、アナコンダ……ぎゃー、えいえいっとか言いながら、牢の外から、槍みたいに突いたり叩いたりしてこないでっ!」
『ぎゃあぁああ!
閣下ぁ。
ヘビのおもちゃを、投げつけてこないで下さいっ!
ちょっ……。
こ、この喜劇のような悲劇の展開の原因は、『マスカルポーネ石焼きプロバンス風』を作るか作らないかって事ですか?
あれ。
あ、あの。
閣下が、その料理を知ってみえるから、アリス様に教えるって……そう、仰って……ちかづく……な!
……そ、それ以上、私に……この竹内イチロウに近づ……ぎゃあああああ!』
『アリス母さんに、『マスカルポーネ石焼きプロバンス風』が、何か教えてほしかったら、僕と結婚するのが条件だって言ったんだ。
そうしたら、愛し子の僕と結婚なんてしたら、本当に母親失格だからできないと、大声で叫びながら、執務室から走り出ていった。
さすが、母さん。
くく。
どんな惨劇が待っていようが構わないと、残虐非道な作戦を用意してくれたようだっ。
――素晴らしい!
これで、ルイーナも、本能に逆らわず、お嬢さんを我が物にしたくなるだろ?
父親として、有効な術を与えてやったまでだ!』
『な、なんで……すべてが大人しい子に育ててやらなかったんですかっ!
イタズラだけは、我慢させては可哀そうだとか……い、いつも犠牲になっていたのは、この竹内イチロウただ一人!
お、幼いルイーナ様っ、普段は奥ゆかしいぐらいだったのに、イタズラをする時だけは、完全に独裁者のむすこ……ぎゃぁああ!』
『あはっははっ!
タケ。
監視カメラの映像を見てみろっ!
他を支配する『力』をその手にした、僕の血を引く『息子』のルイーナが、お嬢さんを制圧しようとしているっ』
「エルリーン。
母上に、ヒントだけなら、あげてもいいけど――どうする?」
「ル、ルイ……くん?
いろいろ……はは……軍服姿お似合いですよ……に、なってるけど……ぐあああああ!
よ、横からっ!
横から軍師殿のアナコンダがぁああああ。
ルイの表情……あははははは。
今すぐ、独裁者やればできる子になってる……ああっ。
いつの間にか、ルイの両手にヘビ!
ぐ、軍師殿のアナコンダもきたぁあああああっ」
『が、画面見るの……む、無理ですっ!
竹内イチロウ本人が、完全に戦闘中なので……はぁはぁ。
な、なんで、天王寺アリスに、料理の事を教えなかったんですかっ。
おしえなかった……ん、です、かあああっ!
ぎゃーぁああああ!
アナコンダ壱号っ!
……はぁはぁ……やはり、閣下が持って……ぎゃーああああああ』
『タケ!
考えてみろ。
お嬢さんとルイーナが、婚礼する事はめでたい。
だが、僕は、気づいてしまったんだ。
ルイーナが結婚する――つまり、僕は、息子に先を越されるという事になる』
『はぁ……?
ぎゃああああああ、壱号ぉおおおおお。
アナコンダぁあああああああ……やめろ! 先っぽで、突いてくるなぁ! ぎゃあああああ』
『僕は、十一歳長男ありにして、書類上は、まだ完全独身なんだ!
理解しただろ。
子供たちが縁を繋ぐ前に、なんとしても、僕自身が結婚する必要が出てきた。
口八丁に説き伏せ、公の正妻とするのは容易いが、プライベートでは、『母さん』と『子供』の関係が続くなどという状況は、歓迎できたものではない。
だから、アリスを追い込んだっ!
そうしたら、強行策に打って出たっ。
ただ、それだけだ!
くくっ。
あと、分かっているだろうな?
竹内イチロウ。
お前の口から直接聞きたい』
『……え……あ、あの……閣下……』
『濡れ衣を、僕の方から着せてやろうと言っているんだ。
タケ。
お前の心の内など、知った事ではない。
この世界のすべては、エリオット・ジールゲンのもの。
僕が思う事が『法』だろ。
すなわち、『罪』というものも、僕が勝手に作って構わないという事だ。
あはは。
竹内イチロウ!
間違えて口を割ってしまったら、その場で消えてもらう。
――罰する事も、赦す事も、この僕の独断ですべてが決まる。
いいな。
ヘビの玩具如きで脅され、屈するような奴は、僕の軍にも、この世にも不必要な存在だ。
幼いルイーナを操って、ヘビの玩具を見ただけで怯えるようなトラウマを、たっぷりとお前に植えつけたのは、僕だがなっ!
くくっ。
今後、より鮮明なフラッシュバックが起こる事を、ただ願うといい。
それは、お前の命が繋がっている未来に到達できているという事だっ!』
「あのね、母上。
マスカルポーネチーズそのままのせて、石の上で焼くだけ。
プロバンス風は、自分で調べるか、考えて。
このヘビがあれば、オレ自身が、エルリーンに花嫁衣裳を着てってお願いできる。
だから、母上。
これに関しては、失敗は成功だと思ってくれるぐらいでいい。
『私の負けです。あなたに従います』的な感じで、エルリーンに花嫁衣裳を着てもらった方が、オレは、ちょっとだけ嬉しいし。
ね?」
「ね?
……じゃないいいぃいいあああああああ、アナコンダを牢の中に投げ入れてきたぁあああ。
え!
あ?
ぐ、軍師殿どこへ……」
「母上が、どこへ行ったっていいじゃないか。
今、気にするのは、それじゃないと思うよ。エルリーン。
それよりも、『ボク、今夜はお父さんと一緒に、ヘビのおもちゃでタケにイタズラしたいです』、『タケにヘビのおもちゃでイタズラしたいから、そばにいて下さい、お父さん』。
楽しかったな」
「よ、寄るな……ルイ!
は、半径四メートル以内に……近づくなぁああああああ!」
「うん。いいよ。
――エルリーン。
ひとつ言っておく。
このつぶらな瞳の触り心地がモフモフのぬいぐるみを見て。
アナコンダ弐号はね、半径四メートル離れていても、余裕でツンツン攻撃できるんだよっ!
ツンツン!」
「ぎゃあああああああああああ。
ル、ルイぃいいいいい」
『か、閣下ぁああああああ!』
『タケ。
そんなにヘビが嫌いなら、最初に話題にあがった時に、言ってくれれば良かったんだ。
僕としては、すっかり忘れていた。
お前が、あまりに『ヘビ、ヘビ』と言うので、思い出してしまっただけじゃないかっ』
『や、ヤブヘビになるから……言いたくなかったんですよ!
お分かりでしたよね?
というか、閣下は忘れてなどいなかったのに、私から、言わなかったから……はぁはぁ……ち、近づいて来るな……っ!
アナコンダ壱号を、持ったまま……かっ……ぎゃあああああああああああああああ!
な、何も!
竹内イチロウは、閣下に対して、何もかくして……ぎゃぁああああっ』
「エルリーン。花嫁衣裳姿、見せてくれるね……あれ?
何?
この音? ……サイレン?」
『ん?
『sagacity』からの警告だ。
建造物関連に異常があった場合のアラートが発令されているようだ。
タワー『スカイ・オブ・パーツ』の上層で、火災?
屋上。
空中回廊かっ!
奇襲……にしては、規模が小さ過ぎるな』
* * * * *
「ますかる~ますかる~ふふふ……ますかるぽ~ねいしやきぷろばんすふぅ~っ」
「アリス……いや、母さん。
本拠地『スカイ・オブ・パーツ』への建造物等損壊罪だ。
軍としては、正式に罪状を突き付ける形で、検挙させてもらっていいかね?
……母さん。
そのマスカルポーネチーズは、冷蔵庫にあったものかい?
空中回廊の床は、確かに石みたいに見える。
だが、そこで、マスカルポーネチーズを直に焼かないでもらいたい!」
「閣下。
固形燃料、着火器具など、押収致しました!
……だいたい想像はできますが、アリス様は、火の気をどこから持ってきたのでしょうか」
「マスカルポーネチーズは、甘味もあり、乳脂肪分も多く、生クリームに似ている。
だが、母さん。
酸味や塩気が少ないんだ。
チーズフォンデュにするなら、塩コショウなどで調整しなければ。だから、チーズフォンデュなどで使っている固形燃料を持ってきて、火を通すだけでは意味がないのだよ。
しかも、ここは単なる屋上。
よく考えなくても理解できると思うが――野ざらしの床の上で、そのままチーズを焼かないでもらいたい!」
「あら~? えりおっと?
そういえば、ぷろばんすふぅ~って、なぁーに?
……あ」
「ああ、すまない。
少し痛かったかい? 背中は、それなりに注射針が刺さりにくいから。
大丈夫だ。
タケが、アナコンダ壱号を首に巻いたまま、床で焼かれたマスカルポーネチーズをおいしく頂いて、しかも、掃除もしておいてくれる」
「閣下。
わたくし、竹内イチロウを罰したいと思う事がおありでしたら、逃げる事なく、処分を謹んでお受けする所存です。
ですが!
失礼を申し上げさせて頂きますっ。
これ以上、ヘビのネタを続行される場合――居住フロアの廊下、および閣下の執務室や居室に……お化け屋敷の演出を施させて頂きます」
「た、竹内イチロウ……な、なぜ、それを知って……っ」
「上から吊られたコンニャクが、首筋の辺りに……。
ね?
ルイーナ様、本を読んで知ってみえたのか、お化け屋敷ごっこを希望されていた事がありましたね。
閣下が、人生最大の戦術を組まれたのか、口八丁で回避。
全力で阻止しておられましたが――。
いいですかっ!
ヘビのおもちゃ、全部撤去して頂けますね!
さもないと、この竹内イチロウ、ルイーナ様を支持し、擁護する立場にまわらせて頂きます。
あの方なら、私の理想とする世界――閣下にイタズラして仕返ししてやろうという、完璧なお化け屋敷を作って下さると思いますので!」
「分かった……分かった……た、タケ。
落ち着け!
……落ち着け、竹内イチロウ!
せ、世界の支配者でもあるエリオット・ジールゲンが、お前の望みを……聞き届ける。
分かったから……お化け屋敷は、駄目だっ!
タケ。
ひ、必要があればだが、普通にお前を罰するっ」
「そこまで、狼狽え、騒いで、慌てふためいて頂きましたが……念を押させて下さい!
竹内イチロウが、強く、強く、強く、申し上げますっ。
ヘビのおもちゃは、全部撤去して下さいね!」
「YES、竹内イチロウ!
……コンニャクが首筋……考えただけでも……いや、違う事を考えて落ち着こう――アリス、知っていたんだな」
「閣下。
とてつもなく頑張って、落ち着きましたね。
いや、まだ、冷や汗が垂れていますよ。
――私の方を、ジト目で見ないで下さい。
何がですか?
アリス様は、何を知っていたと」
「調理器具を収納している棚のロックの解除方法だ。
今使っている、システムキッチン一式は、元々のリビングからそのまま移設したもの。
タケには、前にも話した気がするが、なんとなく思い出もあってな。
ふ。
『天王寺アリス』は、調理器具を手にして、僕に襲いかかるぐらいの事はできたのに、それをしなかった。
それだけだ」
「元々の『天王寺アリス』という事でしょうか……?」
「そうだ。
調理器具如きで襲撃しても、僕を倒せないと踏んだのか。
失敗すれば、ルイーナ共々に、座敷牢扱いではなくなるリスクを感じた……いや、考え過ぎだな。
――目の前の僕を、傷つけたくなかったなんてな。
ふ。
まあ、過去の事はどうでもいい。
しかし、やはり、『天王寺アリス』は、確かにいるという事だ。
いくらでも僕の自由にできそうに、無防備に横たわるのは――術計が尽きてなどいない、アリスだという事だ。
ははっ。
怖い怖い!
だが、アリス。
おぼえておいてくれ。
君の籌略は、僕が打ち砕かせてもらう。
こうやって、抵抗する事なく、いつまでも僕の腕に抱きあげられて、過ごしていってほしいんだ。
その為に、君は、僕に謀られ、陥れられ、そうして崩れ落ち、敗北する。
ああ……愛しいアリス!
このエリオット・ジールゲンに、仇なしてきて欲しいっ。
性情すらも握り潰したい。
僕の手の中に、永遠におさめさせてくれ。
ふふふ」
* * * * *
「エルリーン。
ご、ごめん……ま、まだ怒ってるよね……あの、もうしわけ……ありませんでした!」
「半径四メートル以内に寄るなっ。
あたしのナイト様っ!」
「は、はいっ!
……あ、そうだ。
これ食べる?
母上が、作ってくれた料理。
おとうさ……いや、あいつも手伝ったらしいけど、『マスカルポーネ石焼きプロバンス風』。
あの、もう、無理に花嫁衣裳を着なくてもいいそうなので、それは気にせず食べて」
「ルイ……ところでさ、それって何?」
「えっ。
だから、『マスカルポーネ石焼きプロバンス風』」
◆対話体のみのコミカルアクション小説『描写例』サンプルとして、この回だけ見る人向けの簡易設定集。
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(リンク先は検索除外の「エッセイ」扱いです)
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