Strange Bedfellows ~ 青い瞳の想い
The Sky of Parts[17]
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※ほぼ同時アップロードですが、17話は長文なので、中途半端なところで2つに分割します。
この物語は、軍事好きな筆者が作った育児モノ。
Web上での読みやすさ優先で、適当に改行などをいれたりしてあります。
「……エリオット・ジールゲン閣下の仰せのままに。
『ルイのやつ! 大道芸の如く、あいつの吹く笛に操られて、ヘビみたいにニョロニョロ出てきたら、カゴ入りだろうと、ザル入りだろうと、上から蓋して、押さえつけてやるからなっ! 覚悟しておけよ! ヘビ使い本体の方は……あのアホっ。おのれっ。ヘビみたいに捻じ曲がった性根を叩き直して、商売ができないぐらいに追い込んでやるから、おぼえておけよっ』。
これで、如何でございましょうか」
「タケ。
三ヘビ点やろうっ。
及第点はやるが、『ヘビ』が足りない。もう少し、努力してもらいたい。
ふん。
やけに素直だな、竹内イチロウ。
ここまで、責め苛んでやっているのに、ノリが悪いんじゃないか?
振り回してやってるんだ。
様々な感情を持つように、揺さぶってやっているだけじゃないか。
あはっははっ!
どうしたんだ?
普段なら、こんな低俗な事を押しつけられたら、『はいはい、分かりました』と言わんばかりに、『御意のとおりに』と言うのに、ほう、こんなふざけた様子の僕に、『仰せのままに』か。
――タケが、知らずに使っているとは思えんが、命令に絶対服従するという意味で作られた用語ではなかったか?
『エリオット・ジールゲン閣下の仰せのままに』。
ははっ。
お前にとって、満足の意を表する事なのか?
不平不満などないと誓えるのかね。竹内イチロウ」
「先ほど、上官である閣下に対して、不遜な態度をお見せしてしまいましたので。
規律を正す意味でございます」
「ほう。
だがな、タケ。
僕は、決めたんだ。
今日は、たっぷりお前に規律を乱してもらうとな!」
『エルリーン、どうしてしまったの? そんなに怖い顔して、動きを止めてしまって……大丈夫?
とりあえず、お茶でも飲んで落ち着いて』
『いや、大丈夫だよ。
軍師殿。
頭の中で、ルイには蓋をして、あいつは、商売ができないように追い込んでやったから……はは……もう、大丈夫さ……あははっ』
「……私の作文通りじゃないか。
いや!
こ、これは、普通驚きますよね!
規律を乱すとかという問題ではなく。
竹内イチロウでなくとも、思わず呟きます!
そ、それよりも閣下、なぜ、カメラを停止したのですか……?」
『あのね。
さっき、エリオットが、カメラを停止してるって言っていたでしょ。
私も、よく分からないんだけど……エルリーンに、渡さなければいけないものがあるみたいなの。
ちょっと待ってね。
クローゼットの中にあるから』
『え……あの。これっ! 軍師殿!』
「一体、何なのですか?
アリス様には、閣下からという事で、何か手渡すように依頼したのですか?」
「うむ。
僕が渡したら、間違いなくいらないと言われると思って、アリスに任せる事にした」
『あの……どうしろと』
『貴女の母親代わりとして、してあげられる事って何かなって思って……なぜか、そう強く考えちゃったのかな。
でも、きっと、この気持ち。すぐに忘れてしまうのでしょうね。
私の――天王寺アリスの想い、もう、すでに曖昧になってきてしまっているの。
エルリーン。
いいわ、何も言わなくて。
理解してくれるだけでいいの。
今の私は、伝えるだけの役だから。
――この白いの着てみてくれない。
これを貴女に着せろと、エリオットから言われた。
あれ?
どうしたんだろう?
私、さっきまでは、私の可愛い子供、エリオットが望む事を叶えたい気持ちばかりだったのに……私の胸の中に、本気で飛び込んできてくれた、エルリーンを抱きしめていたら……なんだか……よく分からなくなってきてしまっている。
記憶が、あやふやになっていって……頭が……』
『大丈夫! 軍師殿っ』
「閣下。
音声のみでは、現場の様子が、まったく分からないのですが、小娘に何を渡したのですか?」
「ウェディングドレス。
真っ白の」
「は?
えっと、花嫁衣裳ですよね?
……購入……わたくし、竹内イチロウは、御命令頂きましたっけ?」
「このエリオット・ジールゲン自らが、手に入れてきた。
堂々としていれば、私服姿で、マスクに帽子にサングラスで十分だろ。
軍で設置している監視カメラのブラックボックステストを行ってきたと考えてくれ。
ふ。
映っているのが、僕であると、まったく認識されていなかった。
技術部門の責任者を、見せしめにしてやろうかと思ったが――現地で、収穫があったからな。
恩赦を与えてやっただけだ。
来店前は、オーダーメイドしかないと思い込んでいたが、既製品で十分に良い品があったので、購入してすぐに持ち帰って来れた。
お嬢さんの身長が、大人の女性の下限値に達していてくれて良かった。
竹内イチロウ。
分かったか?
誰にも悟られず、街へ繰り出し、買い物を済ませる事ぐらい、僕には容易いんだ」
「閣下っ!
御身の安全上の理由とかを、もう一度確認して頂き、護衛なしの勝手な御忍びは、今後謹んで頂く事を、この場で御約束して頂けますか?
この竹内イチロウと、御約束して頂けますね!
ヘビは、駄目です!
勝手に買ったりして来ないで下さい!」
「あはっはははは!
規律を乱したりせずに、僕に、絶対服従するんじゃなかったのかね?
タケ。
僕は、今、お嬢さんが花嫁姿になってくれるかの方が、気になっているんだ。
すべてが戯れ言だと受け止めるように、下知しておく」
「あの……閣下」
「竹内イチロウ。
いつも通りに業務をしてくれるか」
「……仰せのま……御意のとおりに。
エリオット・ジールゲン閣下の御心のままに」
「進展がないな。
お嬢さんの事だ。
『こんなの着たら、あいつの思い通りになるだけだから着ない!』と、即答してくれると思っていたが。
母親と慕うアリスが、手渡したせいか。
ふん。
アリスでなければ、思わず嫉妬してしまうところだ」
「今からでも、カメラを作動させましょうか? 閣下の持たれている疑問が払拭できるかと」
「僕にとって、女性は、アリスただ一人なんだ。
お嬢さんの操を守ってやる事は、アリスとの信頼を守る事と同義であると考えている。
タケ。
呆れたような表情を見せてくれたので、理解してくれたと受け止めているぞ」
『軍師殿が、あたしを、本当の娘のように思ってくれていたんだって気持ち、今、抱きしめてもらいながら感じたよ。
でも、その白いの……着れない!
そいつは、どうせ、あいつが用意したものなんだろうっ。
こんなの着たら、あいつの思い通りになるだけだから着ない!』
「お嬢さん。
悪いが、逸脱を許されない軌道のような運命の経路が、すでに用意されている。
アリスには、必ず、お嬢さんに着せろと命じてある。
今の『話の通じるアリス』の状態は、それほど長く維持できない。
謎の夢世界と、机上の空論と、そして、絵に描いた餅を振り回すアリスに戻った時のしつこさに、お嬢さんは、たえられるかな?
どこのクローゼットに収納していたかすら忘れていた、幼い頃のルイーナの服を持ってきて、僕に着てほしいと言いながら、襲いかかって来た時は、あまりのしつこさに、タケから預かったもので、プスッとして大人しくさせたぐらいだ。
くくっ。
タガが、外れるどころか破壊された天王寺アリスが……何をしでかすか分からない、とだけ言っておこう。
お嬢さん!」
「閣下……アリス様の微調整。
本当に、もういらないのですか……?」
「ああ、必要ない。
このアリスの子供じみた行動を、分析してみたんだ。
どうも、僕のところを出て行って、勝手気ままにしていた頃に、ルイーナに何もしてやれなかったのが原因のようだ。
想いの深層に形成された苦痛が、半ばトラウマとして残ってしまっている。
癒しきれない間に、再びルイーナと離れたので、激しく表面化してきたらしい。
我が子の為に、何かしてやりたい。
時には、不安を抱えるほど――母親として、正しく振舞えているのだろうか?
そういった漠然とした不安の塊にとりつかれると、秩序を失うほど乱れるらしい。
そもそも、『子供の存在』がなければ、どちらも満たす事ができないので、最初、目覚めた時に、錯乱状態に陥る訳だ。
ふふ。
これに気づいた時、溜飲が下がるような思いがしたよ。
反乱分子の連中なんぞに手を貸して、僕を倒そうなどと考えたからだ。
素直さが足りなかったな。
ルイーナを、抱きしめたかったんだろ。
気楽な気持ちで、それなりに大きな街へと繰り出し、軍設置の監視カメラに映ってくれるとかすれば良かったんだ。
着の身着のまま、軍の施設に足を運んでくれればな。
こちらとしては、ルイーナと会わせてやれる準備が、いくらでもあったんだ。
そして、ルイーナそのものを、このタワー『スカイ・オブ・パーツ』から逃がしたりして……己が行いのせいで、そのしわ寄せが及んでいるだけだ!
アリス。
僕への服従を拒み、あまつさえ謀反を企てた末に、呱々《ここ》の声をあげた君のその苦しみを――このエリオット・ジールゲンの道具の一つとして、扱ってやろうっ」
『エルリーン……着てもらわないと困るわ。
これを、貴女に必ず着せるって、エリオットと約束したの。
私の愛し子のお願い、聞いてあげて。
嫌と言うのなら、無理やりでも。
できたら、エルリーンが自分で着て頂戴。
おぼえているでしょう?
私は、お人形遊びの服を、絶望的なまでに上手に着せる事ができなかったっ。
あ、あんな目にあいたいの?』
『あんな目にあいたいの……っていうか、どう不器用にやったら、自分以外の着替えがあんなにできないってだけで。
軍師殿。
あれでしょ?
屋根の上から飛び降りたり、四十五度以上の斜面を、段ボールで滑りおりるとか、女の子だからとかって問題じゃなく、そういう遊びばかりを、軍師殿とあたしでしていたじゃないか。
で、基地のみんなに、さすがにいろいろ言われて、頑張って二人で、お人形遊びに挑戦した時の事でしょ?
軍師殿が、何時間頑張っても、お人形に服を着せられなくて……苦戦してただけじゃないか。
夕方までやっても、一体にも着せられなくて、『そんなに難しいの?』って、あたしが質問しちゃったぐらいだった。
『たぶん、私は、赤ちゃんを育てるのに、向いていなかったんだ。オムツは、服じゃないから頑張れたんだ。ふ。無駄に紐のパーツが多い、肌着っていうのが、いつも上手に着せられなくて、はだけてくると、掛け布団でごまかしていたんだ……バスタオル、バスタオルを服の代わりに巻きつけるのはできていた……でも、私は、母親として失格だったんだな』。
……って、違う方向にどんどん沈んじゃって、あたしが、ずっと慰める展開になって』
『うん。
そうよ。
エルリーンが、自分からこのウェディングドレスを着てくれずに、この天王寺アリスが、貴女に無理やり着せようとしたと考えてみて?
貴女が、これを着ている姿を、私の可愛い子供のエリオットに見せられなかった。
それは、つまり。
つまりよ!
……母親失格。
エルリーンっ。貴女は、また私を、ずっと慰める展開になるわ……それが、やりたくなかったら、着なさい!
さあ、早く!』
「ん?
アリス?
ルイーナが生まれてすぐ、僕が訪問すると、『ちょ、ちょうどルイーナを着替えさせようと思っていたの。エリオット……良かったら、ルイーナの沐浴を見ていく? そ、その後、服を着せるところまで、絶対にいてくれる約束ねっ』。
服を着せるのは、いつも、僕の役だった。
……ふふ。
そうか。
父親として、信頼してくれているんだなと思っていたが、あれは、天王寺アリスの巧妙にして卑小な戦略だったのか。
愛するアリスとの間に、我が子が誕生した喜びで、どこか綻んでいた僕の心を弄び、利用していたという事か。
アリス。
後で、僕の服を着せろと命令してやる。
着せられない間は、ずっと責め続けられるお仕置きが待っていると思え」
「閣下。
ここ数年は、『天王寺アリス』とは、同居していたではありませんか。
その……それ以上に、深い事も……それでも、お気づきではなかったのですか?」
「タケ。
僕は、他人に服を着せてもらうというのは、好まない。だが、まあ、多くを言わせるな。
逆は好きだ」
「……特に、最後の一文は、必要であったのか分かりませんが、竹内イチロウといたしましては、いろいろ了解しました」
『落ち着いて! 軍師殿……。
着てくれないと、泣いちゃうわよーみたいな顔で、その白いの持って、ジリジリ近づいて来ないで!
……えっと。
あの出来事。
慰めるの……本気で大変だった。
後にも先にも、軍師殿と接していて、あんなに鬱陶しいと思った事はない。
なんか、放っておけない雰囲気満載で。
もう、逃げ場もなく、長時間ひたすら慰め続けた。
うは……。
たしかに、あれがもう一度は、勘弁してほしい。
けど、やっぱり、あいつの為に着ろって言うなら、嫌なんだ。
だから、軍師殿が、あたしのお願い聞いてくれたら、自分から着てもいいよ!』
「ほう。
思わぬ展開になったな。お嬢さんが、取引条件を提示してくるとは。
さて、何かな?」
『お願い?
それを私が聞いてあげるだけで、エルリーンが、自分でウェディングドレスを着てくれるのね。
何かしら? 教えて頂戴』
『あのさ。
Lunaが――ルイが、昔、軍師殿に一度だけ料理を作ってもらった事があるらしいんだ。
その時の料理を作って、食べさせてやってほしい』
『料理を作るのはいいけど……私には、それがどういう料理だったか、記憶がないわ』
『料理の名前は、あたしが、ルイから聞いてる。
あのね――マスカルポーネ石焼きプロバンス風――って、言うらしいんだけど』
『……へっ?』
* * * * *
『ふーん。
報告ご苦労。下がっていいぞ。
アリス姉さん。
相変わらず元気で良かった。
チーズが好きは、確定の情報で良さそうだ。
しっかりと活用させてもらう。
軍閥のトップとしても影響力がある、天王寺家の後継者として、いろいろ大変そうにしているんだね、アリス姉さんは。
民間人の僕は、とても気楽だよ。
施設でも、学校でも、楽しくやってる。
みんな、僕の言う事を、ちゃんと聞いてくれるんだ。
――知っていたんだ。
気づいていたんだよ。
幼い頃から、僕には、相手の心を操る……人を動かせる能力があるって事。
今は、誰に縛られる事もなく、自分の為に役立てているよ。
最近は、子供らしく遊んでばかり。
独裁者ごっこ。
大学のカリキュラムの勉強もしてる。
ああ。
でも、アリス姉さんは、今の僕の歳の時には、大学のカリキュラムなんて終了していたんだっけ?
ふふ。
やっぱり、僕よりすごいのは、アリス姉さんだけだ!
あはははは。
それにしても――。
僕の身が、まだ幼いのが問題だっ。
中身は、大人なんかよりも、ずっと優れているのに!
本当に理不尽で腹立たしい!
……ねえ。
もう少し、待っていてね。
僕の方から、そばに行くから。
アリス姉さんを、従わせる為に。
ね?
僕のところから、アリス姉さんが絶対にいなくなったりしないように、強大な力を、必ず手に入れるつもりさ』
『女王陛下の仰せのままに(at Her Majesty's pleasure)』。
英連邦王国の合法的な権力に由来する法律用語です。
英語が得意ではない筆者ではございますが、『pleasure』=『喜び、満足』なのは、Webさんにお伺いすれば、すぐに分かります。
『わたくしの身も、心も、すべては、女王陛下のものにございます。絶対の忠誠を誓い、従わせて頂きます』。
まあ、実際には、実務的な使われ方をしている用語です。
『御意のとおり』は、目上の人に対して言う「仰るとおりです!」と同義です。
くだけた言い方だと、「そうそう、あなたの言う通り!」。
御意は、『目上の人の御心』という意味も持ち、『御意に従います』『御意のままに』だと、服従してる感じが出ます。
「御意のとおりに。
エリオット・ジールゲン閣下の御心のままになるように、取り計らっておきます――」
↓
「言ってる事、理解しました!
先輩の思っている通りになるようにしときますわ~」
先輩についていきます感は、十二分にあります。
これは、筆者が勝手に変換したもので、心の底から忠誠を誓っているキャラが使っても問題はないかと。
ただ、フレンドリー感あふれる設定ではなく、絶対服従キャラを作る場合は、『仰せのままに』の方がオススメです。




