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青い瞳の想い ~ Antagonism

The Sky of Parts[17]

■■■■■■■■■■■■■■■

 【ブックマーク】、【閲覧】ありがとうございます。

 特にブクマの方、感謝っ。

 一週間で閲覧数がゼロに戻る『なろう』なだけに、ptとして残るブクマ数はエタらない為のパワーを頂いております!


※ほぼ同時アップロードですが、17話は長文なので、中途半端なところで2つに分割します。


この物語は、軍事好きな筆者が作った育児モノ。


Web上での読みやすさ優先で、適当に改行などをいれたりしてあります。


『えっと。

 その……うんっと。

 うん。

 そ、そうだね。エルリーンの言う通り。

 はい、オレの好きな人のタイプは、リリンさんのような、見るからに優しいタイプです。

 う、うん。

 エルリーンは、正反対のタイプだね。

 見るからに、きょ、きょうぼう……そ、その表現は禁止って、目で訴えてくるぐらい……こわいタイプ……あ、いえ!

 強い女性は、はい、結婚対象じゃ……ないと思います。

 はい。

 こ、これでいいの?

 ――良かった。

 ちょっとだけ、安心したって言ってもらえて良かった。

 すっかり、言わされたけど、エルリーンが、そうやってホッとした顔してくれると、なんだか嬉しい。

 うん。

 そうだよね。

 オレなんかじゃ、相手にもされないよね。

 でもね。

 オレの大好きな母上は、今は、あんな風になっちゃってるけど、本当は強い女性だから――ううん。

 なんでもない!

 独り言!』



* * * * *



「よろしいのですか? 閣下」


「ん?

 タケに、また部下を消されたなと思ったが、人為的な人員削減に、いちいち僕が対応していると面倒なので、『sagacity』に任せて放置していた件か?」


「……あの」


「おや。

 久々にタケが、本気で冷や汗をかいているのを見たが、僕の執務室の空調の調子が悪いのだろうか?

 お嬢さんを、アリスに預けた帰り道に、『sagacity』の占いの最新情報を見てみたんだ。

 やはり、僕とアリスだった。

 僕を、倒すべき可能性がある人物はな。

 残念だ。

 お嬢さんが表示されていてほしかったが、そうではなかった。

 そして、竹内イチロウ。

 お前でもない。

 ははっ。

 戦略システムとして作られた『sagacity』に、未来予知なんてできるはずないがね。

 おやぁ?

 タケ!

 顔が、真っ青じゃないか!

 血圧が下がっているのか、上がっているのかは分からないが――心拍数が、早くなっていないかね?

 あれか。

 今日は、ちょうどよい気候の加減だったので、スッキリした気分になるものを飲みたくなり、『緑色の瓶』を選択。

 汗は異常に出てくるし、間違いなく血の気が引くが、やはり、『ハラペーニョジュース』は原液がうまい!

 これで爽快な気分で仕事ができそうだ。

 ――なあ。

 竹内イチロウ。

 という事にしてやるから――いつも通りに業務をしてくれるか。

 で、何だ?

 何が心配なんだ?」


「……そ、それ……緑のタバス……こ……いえ、失礼致しました!

 そうです!

 さっき飲みました!

 『緑色の瓶』っ!

 酢や塩やコーンスターチ入り!

 青臭いのと酸味もクセになりますよね!

 さすが、閣下っ。

 た、竹内イチロウの行動を、よ、よくお見通しで。

 ……ははは。

 あの……。

 監視カメラの件です。音声のみでよろしいのですか?」


「通常運行で、ツッコミ担当しろよ! さもないと、栄養ドリンクの代わりに、手作り『ハラペーニョジュース』を希釈なしで飲めと強要するつもりだからなっ!

 ん?

 アリスとお嬢さんの監視か。

 音声のみで問題ない。

 アリスには、お願いしてきた事があるのでね。

 まあ、身を隠せるところを作るという案もあったが――お嬢さんにリラックスしてもらい、いろいろ受け入れてもらえるように、こちらも少しは譲歩したまでだ。

 彼女を堕とせば、同時にルイーナも手に入る。

 女性二人は、どうしている?

 なあ。

 竹内イチロウ。

 先ほどよりも、命の危険を本気で感じて、表情が引きつっているぐらいなら、早く、音声を出力してくれるか」


「……お、仰せのままに!」


『――おいしいっ! エルリーンは、どれがおいしいと思う?

 言わなくても、良いわ。

 当ててあげる。

 タルトかな?

 あ。

 当たりねっ。

 エルリーンは、自分に嘘をつこうとすると、鼻をほんの少しだけ動かして、視線をそらすの!

 で、可愛い顔をする。

 食べてる時だと、フォークとかをくわえたまま、肩を吊りあげたりもする!

 うーん。

 今がまさにそうねっ。

 この天王寺アリスちゃんの職務質問からは、そう簡単には逃げられないわ!

 お口に入った、紅茶をおいしそうに飲み込んでからでいいから、持ち物検査します。

 素直に同意して、ポケットの中身を全部出して』


『あれ?

 軍師殿。

 職務質問なの? 事情聴取じゃなかったの?

 あと、この着ろと言われている赤いドレス。ポケットないと思うよ』


『え。そうなの……エルリーン。

 天王寺アリスちゃんとした事がうっかり……で、でも裁判ごっことかは、やりすぎだと思って!

 ほらっ!

 あれでしょ。

 証拠はあがってるんだ、ささっと吐いちまえよってやつでしょ?』


『それが、事情聴取だったような……。

 あっ。

 ポケットあった!

 今まで気づかなかった……という訳で、もちろん何も入ってないよっ!

 あのさ。

 三文芝居っていうんだっけ? 軍師殿そういうの意外と好きで、基地でもよく見てたよね。

 影響され過ぎてない?』


『今でも、寝る前にソファでゴロゴロしながら、三文芝居の動画に真剣になり過ぎていて、『母さん』の私が、『子供』のエリオットに、寝所ねどこに強制連行されるぐらいに好きよ!

 つちと台がセットのやつ――裁判官が使うハンマーの名前が、ジャッジ・ガベルだって無駄な雑学まで手に入れてしまうぐらいに、三文芝居をのんびりした気分で楽しむのが大好きよ!

 エルリーン。

 何か質問があったら、この三文芝居知識王を気取るアリスちゃんが、ばば~んと答えてあげるから、どど~んと聞いてきなさい!』


『じゃあ、聞くけど。

 軍師殿って、今、どうしてるの?

 どういう状態な訳。

 あいつを、子供と勘違いしてるのは分かってるけど』


『勘違い?

 エリオットの事? エリオットは、私の可愛い子供よ。

 それは間違いないわ。

 でも、これって、あれかしら?

 こっちの方が、ご政道せいどうだって言い張ってるのに、反対に質問攻めにされちゃうパターン。

 そういうコントみたいなの昔見て面白かったので、将来お笑い芸人になりたいなと母に言ったのだけど、『笑顔が絶望的に足りないから、アリスちゃんには無理よ』って言われたの。

 そうよ。

 母が、『アリスちゃんには無理よ』って。

 ――母が、アリスちゃんに。

 あれ?

 そういえば、私、今、何してるのかしら?

 えっと。

 うーん。

 あれれれれ?』


「閣下。

 こんな状態のアリス様で大丈夫なのですか?

 いや。

 私の――竹内イチロウの診察を受ける時も、いつもこんな調子で、ブツブツ言いながら、クマのぬいぐるみなどをそばに置いて、落書きに没頭していますが……。

 今回は、戦略的に、小娘をこちら側の人間として引き込むとお伺いしておりましたので、てっきり、『真面目な傀儡かいらい』に仕立てると思っておりましたが」


「拳銃で脅そうが、僕が直接に独裁演説をしても、このお嬢さんは陥落しなかったんだ。

 タケ。

 方針を大きく変える必要があると思わないか?」


「それは、たしかにそうですが。

 大丈夫ですか?

 中身が『天王寺アリス』とはいえ、さすがにこの様子では、竹内イチロウでなくとも、心配になると思いませんか?」


「ふふ。

 ちょっと、和ませてやろうと思ってな。

 僕に、散々話しかけられたあとだろ。

 すっかり敵の手駒になっているとはいえ、姿は、お嬢さんが母親のように慕うという天王寺アリスだ。

 あんな無駄過ぎるトークをぶつけられたら緊張もほぐれるんじゃないか。

 タケ。

 まあ、見ていろ。

 心配はいらない。

 そろそろ準備運動が終わったので、交渉を有利に進める為に用意した傀儡かいらいアリスが出てくる」


『エルリーン! エルリーンね。

 久しぶりに、二人きりでお喋りできると思って、いろいろ考えてしまったわ。

 どこから話したらいいかしら?

 そちらから聞きたい事があるなら、質問してくれてもいいと思う。

 ――途中で、『私』が、途切れてしまったらごめんなさい。

 記憶の混乱が激しくて、今、どんな自分でいたらいいか……分からないの。

 全部が私なんだと思う。

 どれもが、天王寺アリスという人間。

 だけどね。

 自分が、いったいどんな自分になりたいのか、よく分からなくて。

 私、本当にどうしてしまったんだろう。

 はっきり認識しているのは、エリオットの事を、絶対に嫌いになりたくない。

 だから、エリオットは、大切ないとし子なのかなって思ってる。

 私には、子供がいたはずなの。

 きっと、それがエリオットなのよ!

 あと、エルリーンの事は、しっかりおぼえているわっ。

 基地のみんなの事も。

 そこにいた頃の事も。

 エルリーンたちの基地で、生活していた事はおぼえているのだけど……そういえば、私、どうしてあそこにいたのかしら?

 あの基地を、どうして出ていく事になったのかもおぼえていないの。

 いつから、エリオットのところにいるとかも……考えると、いつも分からなくなってしまう……』


「アリスが、昔の仲間――反乱分子の連中の事をおぼえていてくれたのは、『sagacity』が完全でなくされた時には、とても助かった。

 僕に聞き出されるままに、自分が昔いた組織の事や、その関連組織の話をしてくれて。

 まあ、自分がいた頃のメンバーの名前ぐらいしかおぼえていなかったがな。

 手渡してくれるには、十分な情報だ。

 おかげで、ルイーナの消息がつかめたよ。

 基地での日常生活の話題しか、おぼえていないようで――聞き取りには時間がかかったが。

 なあ、タケ。

 今の天王寺アリスからは、戦争に関する事が、すっぽり抜けていると思わないか?」


「私の薬を使用後、覚醒している状態のアリス様とは、閣下の方が、長い時間接していると思われます。

 ですが、そうですね。

 たしかに、そんな気がした事はあります。

 この竹内イチロウへの文句などは、相変わらず憎たらしいぐらいですが、以前は感じていた彼女の闘争心のようなものは消えていて、単なる子供のイタズラに変化したように思えます。

 軍医ではありますが、私も、いちおう軍の一員。

 いくさの世界には、長くおります。

 『天王寺アリス』という人間は、抑えようとはしていても、心の奥底は、常に戦争の事を考えているなと感じておりました。

 閣下。

 雑談程度に受け止めていたので、ご報告したか、記憶がさだかではありませんが――妊娠中のかなり体調が悪い時期でも、滞在しているのが、軍の施設であるというのを気にしているような事を、何度か言っていました。

 あと、やはり、閣下が軍人である事を意識している発言は、目立ちました」


「そうか。

 アリスのやつ。

 大学の頃の事もおぼえているみたいだが、友達と遊園地などに遊びに行った話や、学食で何がおいしかったとか、売店で売っていたボールペンが、人生で一番書きやすかったとかばかり。

 何を学んでいたか、おぼえていない。

 ご両親の事も、日常、本当に普通に生活していた事でしか思い出せないらしい。

 そして、大学時代の僕の事は、忘れている。

 もちろん、軍人になったと強く意識している、そのあともだ。

 ――結果として、ルイーナが、なかった事になってしまっている。

 ああ。

 タケの事は、悪ふざけの対象であった、医者であると認識しているみたいだ。

 僕のそばに仕えている時は、軍服を着る事もないしな。

 ふふ。

 竹内イチロウは、表向きは、軍医採用だが――前線で、十分通用するぐらいの実戦経験させてやったし、僕の代理で、指揮官やらされている事すらあるのにな――アリスの中では、あまり意識されていなかったようだ」


『軍師殿。

 あいつらのせいで、そんな風になっちゃったんだよね。

 必ず助けるよ。

 ルイと三人で、みんなの所に帰ろう。

 ねえ、軍師殿。

 前も言ったけど、Lunaが、軍師殿の本当の子供なんだよ。天王寺ルイーナ。本当に、どうしても思い出してあげられないの?』


「ちなみに僕、エリオット・ジールゲンは、一緒に遊んだ少年という初期設定だったらしい。

 だが、戦火で焼け落ちた街で出会ったのは、忘れられてしまっている。

 男の子を産んだという、曖昧あいまいな記憶はあるらしい。

 それを思い出そうとすると、すべてが戦争を強く意識する結果になって、ルイーナの事を思い出せなくなる。

 ――歪みのような隙間があったので、僕が、入り込ませてもらったが」


『ルイーナ。

 たしかに、エリオットの口からも、その名前を何度も聞いた事があるわ。

 それは、Lunaの事だったのね。

 ……でも、もしも、Lunaが私の子供だとしたら、エリオットは、私にとっての何なのかしら?

 エリオットを嫌いになろうとすると、それを考えただけでも、頭がすごく痛くなる……すごく。

 今も……痛くて……うう……っ!』


「アリス、知能指数は、まったく衰えていない。

 うまく誘導して、戦争を意識させずに戦略を立てさせてみると、変な設定付きになってしまったり、多少無理がある事は目立つが、僕から見ても一定レベル以上のものを、必ず提出してくる。

 かなりの回数を試させているが、合格品ばかりなんだ。

 ゲームだと偽ってやらせてみたら、クラッキングなどもいとも簡単にこなしてくれた。

 はは。

 実戦でも使える御抱おかかえ軍師に仕立ててやりたいんだが、欲を出して無理をさせると、今みたいに頭が痛いなどと言い出す。

 発汗や、時には軽い発熱を伴って苦しんでいる様子なんだ。

 のらりくらりと言い逃れて、僕に、すべてを差し出すのを拒否している訳ではないようだが――。

 タケ。

 お前の薬で作り変えてもらったアリスの現状を、必要かは知らんが、まあ、情報共有程度に教えておいてやろう」


「このような貴重な機会を頂き、閣下の御恩情ごおんじょうたまわり、深く感謝致しております。

 閣下の御意見をお伺いする事を、怠っていた訳ではありませんが、タイミングを逃しておりました……いえ、すべてはわたくし、竹内イチロウの至らなさです。

 余計な事を申しました。

 データとして、わたくしの見解なども加えた上で、書類を作成致します。迅速に対応させて頂きます」


「ああ。

 データは、もういい。

 竹内イチロウ。

 必要だと思えば、僕の方からまた提出依頼をする。

 お前の薬による微調整も、今後は必要ない。

 このアリスをうまい具合に導いて、軍の影響下にある人間として、そして、連れ合いであり、協力者として、完成に近づける事にした。

 タケ。

 返事代わりの、長い講釈を聞いてやりたいところだが、女性二人の会話が再開しそうなので、少し黙っていてもらえるか」


『大丈夫?

 軍師殿、落ち着いてきた?

 もう、その事は考えなくていいよ。

 あいつを好きだとかにはなってほしくないけど……そんなに、辛そうに頭を抱えるなら、今は、無理に嫌いにならなくてもいいからね』


『……ありがとう、エルリーン。

 でも、きっと、エルリーンの望む答えを渡せていないのよね……。

 ちょっと、席を立ってもいい? 窓の外を、眺めてもいいかしら?』


『オッケー。

 軍師殿。

 あたしも一緒に、窓の外見てもいい?

 うわー。

 街も、人も、ちっちゃく見える。

 あそこに見える山とか、どこのだろう?

 方角とかは、全然分からないや。

 でも、すごいね!

 ヘリに乗って、ルイを助けに来た時は、ここよりも高いところにいたんだろうけど、あの時は必死すぎて、よくおぼえてないし、楽しむ感じじゃなかった。

 川とか、道とかも……あそこ、ヘビみたいな形に見える……ほんのちょっとヘビは嫌いなんだよ……見るのも嫌さ。

 軍師殿!

 それは、おぼえていてくれたんだ。

 もう、クスクス笑いながら、うんうんって、うなずかないでよ!

 子供の頃よりは、平気になったんだ。

 お掃除・皿洗い班の班長として、ヘビ討伐した事だってある。

 ルイやチビには、もちろん内緒っ。

 あたしは強いんだぞって言って、ヘビを退治して、夕食の時も英雄談のように、繰り返しかたってやったぐらいなんだけど……夜の夢に出てきて、うなされた……あはは。

 あれから……まぎらわしい形で落ちてるロープとかでも、軽く怯える事がある』


「――なあ、竹内イチロウ」


「閣下!

 聞く前に、お断りしてもいいですか?

 絶対に却下しますっ。

 先ほどまでは、真剣な……これぞ、エリオット・ジールゲン閣下という御顔おかおをされておりました。

 御側おそばにいるだけでも、この竹内イチロウ、震えあがってくるぐらいの威圧感を感じておりました!

 ですが!

 しかしですねっ!

 今は、飄々《ひょうひょう》としておられるというか、もう少し的確な言葉で表現しますと、ウキウキになられているところ申し訳ありませんが、ヘビの入手依頼の御命令は、閣下の為を思っての事とご理解頂きたいのですが、竹内イチロウといたしましては、お受けできませんっ。

 NOを、はっきりと突きつけます!

 だいたい、ヘビなんてものを使って、嫌がらせしてやろうと思うと、たとえ本物ではなく、玩具であろうと、喜劇のような悲劇の展開になります!

 閣下の御心おこころが乱れておられる時に、いさめさせて頂いたり、正しい方向にみちびかせて頂くのも、私の使命だという腹積もりです!

 いいですね!

 分かりましたかっ!」


「命が惜しくないのかっ、竹内イチロウ!

 この僕に、異を唱えるのかっ。

 ――明日の朝、が昇る様子を見たいとは思わないか?」


「本日の黄昏たそがれが見えなかったとしても、後悔しない覚悟があるからこそ、申し上げておりますっ!

 いつも、仰ってますよねっ。

 脅されたぐらいで、意志を曲げるような奴は、我が軍にはいらないって!

 ええっ。

 このまま、普通に処される事になったとしても、竹内イチロウは構わないと思っております!

 大学時代に、閣下と横並びに座って、ラーメンをすすった記憶でも頭の中で再生しながら、怯える様子も見せずに果ててやる所存です。

 閣下っ。

 おおやけの場で見せている悪政支配者としての様相ようそうていして、ドスの利いた声で威圧したぐらいでは、私の考えを変える事はできないとお考え下さい!

 ヘビは、駄目ですっ」


「もういいっ。

 今度、このエリオット・ジールゲン自らが、ヘビを手に入れてくる!

 ノリの悪いやつだっ。

 竹内イチロウ!

 振り返って、僕が、どれぐらい不機嫌顔に変化したか確認しない気か!

 まったくっ!

 ふん。

 今は、お嬢さんのトークを楽しませてもらう!」


『あたしさ、本当は窓の外を、じっくりと見てみたかったんだ。

 閉じ込められてる牢からも、外が見えてて、興味があったんだけど、ルイが、嫌がるんだな。

 ルイのやつ。

 物心ついた時から、ずっと見ていて、昔は好きだったけど、気づいてしまえば自分に与えられていた、ちっぽけな世界だったとか言うんだ。

 『外を見てると、虚しくなってくる』とか、あたしが、窓に近づこうとするだけで、後ろからずっと、ネチネチ声をかけてくる!

 正直、あんなに窓が大きいと、目に入れない方が難しい。

 歯磨きしてる時とか、ボケーとしてる時に、あたしが青空の方に集中しているだけで、立てた両膝りょうひざを抱えて座ってるんだ。

 はぁ……。

 ルイは、不安になると、すぐに体育座りするんだよな。

 『なんだよ。オレが嫌がってるのに、エルリーンは窓の外に夢中なの?』。

 そんなメッセージを、気弱そうな目つきで送ってくる。

 ……本人の前じゃ絶対に言わないけど……あれは、遺伝だ。

 しばらく前から、ルイのそれには気づいていたけど、さっき本場というべきか、ネチネチ理論ずっと叩きつけられてハッキリした。

 ああ。

 これだ。

 同じだ。

 間違いないって思った。

 はは……やばいな。

 ルイが堕とされると、絶対に執念深く、そして鬱陶うっとうしいぐらいに陰湿な勧誘にあうな。

 早く、牢に帰って、ルイをぶん殴ってでも、歌うのやめさせたくなってきた。

 ……ははっ』


『顔が引きつるほど、エルリーンは、Lunaの事が嫌いなの?

 あと、勧誘って、エリオットの部下になるっていう、ご招待のお話?

 それなら、ここで私が――』


『いや、いくら軍師殿の頼みでも、それは断っておく。

 ハッキリ断言。

 うん。

 別に、あたしは、Lunaの事が嫌いになった訳じゃないよ。

 ただね。

 戻ったら、髪の毛一本ぐらいの精神でも、絶対にあいつに手渡すな! って、とにかくお前は、天王寺ルイーナ以外にあり得ないからと、強く強く強く念を押すように、性根を叩き直してやろうとしてるだけさ。

 絶対に!』


『そうなの?

 エリオットには、できたら、お仲間にご招待しておいてねっ、とは言われているんだけど、実は、それはできたらでいいんだって。

 あのね。

 Lunaの入手に成功したら、この機会にエリオットが教鞭きょうべんって、DNAに新たに練り込んでやるって。

 エルリーンが積み上げてきて、成り立ってきた個性をすべて無駄だったと思うぐらいに、否定してやる方法を教え込むって言っていたわ。

 だから、母さん。これに関しては、失敗は成功だと思ってくれて構わないって――。

 あ。

 でも、折れ曲がるはずもない性情せいじょうを打ち消して、自身が在る事をあやふやにするところは、エリオットが直々に、服従を強いながらやるって』


「――なあ、竹内イチロウ。

 作文、得意か?」


「はっ?」


「苦手だと言っても、やってもらおうっ!

 ――お嬢さんが、言葉でリアクションしてくれない。

 映像がないが、おそらく鬼の形相ぎょうそうをしてくれていると思うんだ。

 その表情が確認できないなんて、砂をむようなものだろ。

 これは、タケが代わって、彼女の心の奥底を表現するしかないと思わないか?

 たしかに、タケは、僕の大学の後輩ではあるが、今は、勤務時間内だ。

 上官の命令は、絶対だと考えてもらいたい」


「……ルイーナ様が、いつものリンゴ味のがないのなら歯磨きしないとダダこねた時に、勤務時間外でしたが、私が、買い出しに行ったりした事ありましたよね?」


「僕は、脅しに屈さないような奴にだって、容赦するつもりはないんだ!

 方法を変えてでも、罰してやるつもりだ。

 竹内イチロウ。

 作文をしろ。

 『あいつ、本当にヘビのように、しつこい! 絶対に、アホだっ。たしかに、遺伝子操作技術とかさ、ゲノム編集とか、SF物語の話じゃなくなってる。それに、街中歩いている時の受動喫煙ですら、たしかにDNA変異する事あるさ。だけどな、細胞のDNAを置き換えされたとかじゃなく、いいから父上の言う事聞け以上ぐらいの脅しに屈したのなら、それは、単に言い包められただけと判断して、ルイ。お前を張り倒す!』。

 ――その程度の作文は、認めない!

 アリスの作る、謎の絵本のように。

 そうだっ!

 アリスの無駄に残ってしまった、雑学知識というか、妄想産物のような――ああいったものを組み込んだ著作物として、タケには、全力で献じてもらいたい!

 ん?

 学校に通学できていたとしても、遺伝子工学は、お嬢さんの歳で、どれぐらい勉強済みだったか?

 ヌクレアーゼとか、エクソンとイントロンあたりの事とか。

 僕、ルイーナの歳の時には、大学のカリキュラム勉強していたからな。まあ、例文に根拠や理屈はいらんだろう。

 さあ。

 タケ。

 作文提出はまだかな?

 今日、うちの上司、喜怒哀楽というか、感情や興味を持つ事が、ローラーコースター用に敷かれたレールよりも激しく変化し過ぎだろうという顔をして、仕草しぐさにあらわれるぐらいに戸惑っているのなら、作文を早くしてくれるか!

 構わない。

 僕の事は、『あいつ』。

 ルイーナの事は、『ルイ』。

 『アホ』の使用も、差し許そう。

 そして、できる限り『ヘビ』という単語を使ってくれ。

 『ヘビ』がメインになる勢いぐらいがいい!

 竹内イチロウ。

 命で償う気がないのなら。

 僕の嫌がらせは、甘んじて受け入れろっ」


 後半続きます→。


 【ブックマーク】、【閲覧】ありがとうございます。

 特にブクマの方、感謝っ。

 一週間で閲覧数がゼロに戻る『なろう』なだけに、ptとして残るブクマ数はエタらない為のパワーを頂いております!


 と、冒頭でも書きましたが、本当に【ブックマーク】、【閲覧】ありがとうございます。


 『なろう』執筆者たちの闇の病みとして、閲覧数が一週間で『ゼロ扱い』があり……『エタり問題が後を絶たない』があります。

 書き手になってみて、それは本当に強く感じました。


 1話が、1万五千文字クラスで、途中分割での投稿が難しい回が続いただけに、『ブクマが1増えたという喜び』は、乗り切る力を、かなり頂きました。


 下書きは終えている作品なのですが、読み手様の反応などを参考にさせて頂き、『加筆訂正』をかなり行いながら推敲しております。


 予想はしてましたが、メイン読者の年齢層が小学生ではなさそうなので、ムーンライト側での年齢制限シーンの追加なども行っておりますが、やはり『本編あっての短編』。


 次の18話で、エリオットとアリスが、実際に『できちゃった』という過去話になるのですが――はい。もちろんムーンライト側で年齢制限シーンを予定しております。

 年齢制限上、閲覧不可能な読者にも、本編上での展開でカバーは予定しています。


 『初夜話』は、前から書いてあったのですが、本編18話完了が、投稿の条件でした。

 なんとか、『初夜話』が未発表にならずに投稿できそうな見通しがたったのは、【ブックマーク】、【閲覧】ありがとうございます、なんです!


 特に、ptとして残るブクマの方、重ねて言います、本当にありがとうございました。

 目の前の目標として、本編18話と制限『初夜話』の推敲作業を続けていこうと思います。


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