【過去】大学時代のあの日に…… ~ 小鳥歌う籠、彼と少女
The Sky of Parts[15]
■■■■■■■■■■■■■■■
この物語は、軍事好きな筆者が作った育児モノ。
Web上での読みやすさ優先で、適当に改行などをいれたりしてあります。
【※】携帯サイト時代みたいに2千字切りは、『なろう』更新検索に迷惑をかけてしまうので『新規投稿』では難しいですが、なるべくタイトルなどを工夫して対応します。
ご依頼者以外でも、思っている方がいるかもと思い。念の為。
『なんだ、エリオット……。
私は、今から、看護科の後輩たちとパフェを食べに行くんだ。
帰れっ。
寄りつく前に言う、離れろっ!
エリオット。
お前は、この天王寺アリスの敵だ。
敵だ、敵だ!
ああっ。
そこの後輩女子A、B、C……以下、略。
この前使って、死語だと言われたが、キャピキャピした様子で、この男に、『ぜひ一緒に行きましょうよ』などと声をかけるなっ。こいつが来るなら、私は帰る。姿を見ただけで、寒気がする……。
ん?
ああ。
いいよ。
本当に、誰でも好きに、この男と付き合ってもらっても。
できたら、これもほぼ死語だと言われたが、永久就職させて、私の前に二度と現れないようにしてほしい。
いらなくなったら、ポイしてもいいが、確実に処分してほしい。
また、私の方に近づいて来られたら……こらっ!
離せっ!
いきなり、手首をつかまないで……エリオット、痛いっ。
痛いって!
な、何……い、いまさら素直に謝っても……。
え?
どうしたの?
……エリオット、そんな真剣な顔をして。
視線をそらして……何?
何か、企んでいるの?
エリオット。
息を切らして走ってきたみたいだけど、どうし……えっ……父と……母が……』
* * * * *
「は、母上。
何を……エルリーンに何を?」
「何って、身体を私の方に引き寄せて、エルリーンの頭に拳銃を突きつけただけじゃない。
どこに疑問があるのかしら?
それよりも、Luna。
歌って。
あなたの神の歌声を、この天王寺アリスの愛し子、エリオットに捧げてもらえないかしら。
あの子の手に早く、『sagacity』を返してあげたいの。
私は、我が子の為にだったら……何でもしてあげたい。
たくさん、たくさん、たくさん歌って。
倒れても、立ち上がって歌いなさい。
昨日も言ったけど、神話を紡ぐまで、Luna。あなたは、歌うの。
それが定め。
受け入れなさいっ」
「ぐ、軍師殿ぉ……」
「閣下。
天王寺アリス、確実に暴走しています。如何いたしましょうか?」
『天王寺アリスは、もちろん、大人しくさせて確保だ。
即効性があるもので頼む、竹内イチロウ。
ただし、Lunaにも、人質にも、危害が及ばないように対処しろ。
拳銃と人質を使って脅しながら、Lunaから歌声を奪う展開は、後で、このエリオット・ジールゲンが直々に行う予定だ。
今、僕も、そちらに向かっている』
「御意のとおりに」
「タケ……少しでも動いたら、エルリーンを撃つわ。
私の邪魔、しないで」
「母上!
エルリーンを解放してあげて……オレ、歌うから」
「嫌だわ。
それよりも、早く始めなさい、Luna。
この天王寺アリスの愛おしい子は、エリオットただ一人。
我が子の為に、Lunaは、歌う。
――それだけの存在なんだ!
……早く、歌え!
私は、気が長い方ではないぞっ。ほら、こうやって、引き金に手をかけたら……うっ」
「母上っ! ……あっ」
「母さん、大丈夫かい?
また、急に気分が悪くなってしまったのか。
迎えが遅くなって、すまない。
倒れ込む前に、『子供』の僕が、母さんの身体を支えてあげられて良かった。
ダメじゃないか。
拳銃は、護身用に渡しておくと言っただろ。
僕から与えられたものを、こんな事に使うなんて――母さんは、悪い子だ。拳銃は、僕が預かる。元気になったら、少しお仕置きが必要そうだ。
さあ、行こう。
奥で休めるように、タケが準備をしてくれているから」
「YES、エリオット……私は、本当にダメな母親ね。
こんなに身体が弱くては、母さん、エリオットの為にいろいろしてあげられない。
我が子に、世界を与えてあげたいのに。
――ああ。
エリオット。
優しく抱きしめてくれて、ありがとう」
「母上っ」
「Luna。
釈然としない、お前の気持ちは理解してやれるが、今は、疑問を呈する事すらやめてくれ。
僕は、早く、母さんを休ませないといけないのでね――」
「エリオット・ジールゲン。
母上に使っている……タケの薬は、本当に大丈夫なのか?」
「……また、後で来る。
僕が、直々に、お前の歌声をもらいにな。
Luna。
それまでに、そこで状況も分からず、唖然として、珍しく言葉を失っている、お嬢さんを、無礼な言葉をまき散らす彼女に戻しておいてくれ」
* * * * *
「おいっ、小娘。
しっかりと、顔を床につけろっ!
Lunaと違って、お前は、特に価値のある存在じゃないっ。
ああ、一つ価値があったな。
人質として、せいぜい功績をあげるんだな!
後ろ手に手錠されて、この竹内イチロウに押さえつけられて、逃げられると思うなよ!」
「ふふ。お嬢さん。
そうして、僕が、君に銃口を向けている事を、絶対に忘れないでくれ。発言は、控えめをおすすめしておこう」
「だ、誰が、お前ら相手に、大人しい人質なんてするもんかっ。
……おいっ。
ルイっ!
あたしの事は気にするな! こんなやつらの為に、歌うんじゃない!」
「それは、困る。
僕は、お嬢さんとLunaを――僕の『息子』として取り戻したルイーナを、将来結婚させるつもりだ。
勝手に、命を粗末にしないでくれるかね。
世界のすべての存在は、このエリオット・ジールゲンの物であると考えてもらいたい。
分かったか。
Lunaは、歌うべきであって、お嬢さんは、このまま魂をこの世に繋ぎとめて、やがて、否応無しに御輿を担がれ、僕の世継ぎとして世界に君臨する事になった、ルイーナの細君となるべきだ」
「エリオット・ジールゲン! また、そんな事を言うのかっ!」
「って、どういう意味だ?
ルイ。
こいつってさ、何を言ってるの……?」
「お嬢さん、命じておく。
この僕の会話に、まともについて来てくれ。
類語辞典片手に、語彙を増やしてもらえるかね」
「ルイ語辞典、五位?
……あたしに、何を言いたい訳だ……?」
「――まあ、いい。
近いうちに、うちの嫁として、相応しくなれるように、教育を受けさせてやる。
理解してくれ。
アリスとの母さんごっこは、楽しんでいるが――『母親』と『子供』なので、結婚できない設定だと言い張られているんだ。
若いというか、幼いぐらいの二人に、責め苛むように、悪意を向けて――ようは、嫌がらせで結婚させてやろうと思った。
くくっ。
お嬢さん。
僕は、他人の人生の事など、どうだっていいんだ!
裏切者のLunaと、逆賊の君が受けるべき罰を、軽くしてやろうと言っているんだ。これほど慈悲に満ちた行為はないだろ?
感謝の一言でもくれたまえ」
「はあ?
頭大丈夫か……あたしには、あんたの言ってる事が、まったく理解できない……」
「母上は、どうしているんだ。エリオット・ジールゲン」
「Luna。
目上の僕の事を、いつまで呼び捨てにする気だ。
アリスの事は、心配はいらない。
悪いようにする訳ないじゃないか。
少し面倒な行動は目立つが、事実上は、このエリオット・ジールゲンの寵姫として、とても大切に扱っているさ。
ふふ。
お前の母上として、返してほしいのなら――分かるだろう。
頭を下げて、僕のところへ帰って来い。
Lunaのままでいたいのなら、それでも構わないが、軍属として、僕の軍の一員であるという事を忘れないでもらおうか。
勝手な退役を認めるつもりはない。
上官の僕の命令に従って、歌声を提供してくれればいいんだ。
この鳥カゴには、歌声採取用のマイクが備えられている。
僕らが脅しに来なくても、Luna。どんどん歌ってくれないか?
――とりあえず、歌い始めてもらえるか。
でないと、このお嬢さんが、ほんの子供でも知っていそうな言葉ですら、発する事ができなくなるぞっ。
永遠にな!」
「分かった……歌う。
欲しいのは、オレの歌声なんだろっ。
だから、エルリーンには、絶対に手を出すな!」
「Luna。
そんなに、飲んでほしい要求ばかりするなら、可愛い息子に戻るといい。
……ふん。
僕の言葉から逃げるように、歌い出したか。
それでいい!
所詮、お前は、僕に制され、統べられて生きていくしかないだろっ。
『sagacity』が恐れる悪魔の歌声を十分に、このエリオット・ジールゲンに提供してもらおう。それが、お前の大切な母上の今の願いだからなっ。断る理由はないはずだ!
……ところで。
お嬢さん。
朝食は、おいしかったかい?
Lunaから聞かされていたようだが、あれは、君のお父さんの仇でもある僕が作ったものだ。
今みたいに、お嬢さんに銃口を向ける、この手で作られたもの。
――これからも、食べていくといい。
僕に、飼い殺されるように生きていくんだ。
ずっと、ずっと、ご馳走してあげよう。ふふふ」
「うるさい!
ご飯食べる事は、ありがたくご馳走になってやる!
あたしが、それを嫌がって、卑屈な態度を見せたりするのを期待していたんなら、残念だったな!
ルイと軍師殿と三人で……あのドレッシングのレシピを手に入れて、みんなの待つ基地に帰るぐらいのつもりで、ガツガツ食べてやる!」
「鋭い洞察力じゃないか。
そうだ!
あのドレッシングは、僕の手作りだ!
ちなみに、副業で販売している。軍の関連施設のみの取り扱いだが、それなりの資金源にすらなっている。
ふふ。
しかし、お嬢さんは面白い。
命の危険を感じないのか?
この僕に、そんな態度をとれるのは、天王寺アリスぐらいだと思っていたが――君は、彼女から、特別な指導を受けたそうだね。
うちの歌う以外は、まるで何もできない、軟弱者の小僧よりも、お嬢さんの方が、よっぽど軍人に向いている。
どうだい。
僕の軍に、所属する気はないか?
物怖じしないところが、非常に気に入っているので、引き抜きたい。
ヘッドハンティングを希望させてもらおう。
今、ここで良い返事をもらえるのなら、待遇は、このエリオット・ジールゲンの言いつけがある状態で決定されると考えてくれていい」
「軍の人間になんて、ならないよっ!
ふざけるな!
絶対にここから逃げ出して、軍の目を欺いて、あのドレッシングを購入してやる!
そんな事よりも、あたしに一発殴らせろっ!
父さんの痛みを、無念を、少しでも分からせてやるっ。
ルイや軍師殿に対しても、あんたの口から、謝らせてやるからな!」
「ふざけているのは、お前の方だっ。
小娘!
エリオット・ジールゲン閣下に対して、なんという口のきき方だ!
閣下の御手をお借りする必要はない。このまま私が、お前の首に手をかけれ――」
「黙れって!
整髪料のにおい振りまくスーツにネクタイ野郎っ。
彼女がいないようなツラしながら、独り言みたいな悪口を、あたしにぶつけてくるんじゃない!
だから、モテないんだって!」
「な……っ!
私はな、身近過ぎる、どこぞのいろいろ安定性に欠ける家族のせいで、非営利というやつが、ダメになっただけだ!
子供を持つ事など、あり得ないっ!」
「竹内イチロウ。
それは、僕も知らなかった。
だいたいそういう事になる時は、大学の先輩夫婦のいろいろな問題とかを見てしまったか、職場の上司の御家騒動があった場合だ。
……なんて事だ。
僕とタケは、大学も、職場も、一緒じゃないか。
このエリオット・ジールゲンが、直々に叱責してやろう。
教えてくれないか?
『相手のご家族の事が心配ですから』とか思うのなら、A宅、B宅のような、イニシャル的な表現でも構わない」
「閣下……。
冷静というか、視線がどこを向いているのか分からないような御顔をされて、小娘の方ではなく、銃口が、わたくし……竹内イチロウの方を向いております……。
あ、あの。
回答には、十分注意してもらいたい……と、いうやつですよね……えっと。
あのですね。
そのご家族は、複雑な事情を抱えておられて、そもそも、ファミリーネームの『イニシャルって何なの?』という状態なんです。
そういった理由で、お答えする事ができません」
「八十一点やろう。合格だ。
竹内イチロウ。
今後は、無駄口を叩くな!
このエリオット・ジールゲンに、暴言を吐いても良いと許可されているのは、天王寺アリスと、そのアリスに教育を受けて才能を開花させた、このお嬢さんだけだっ。
――という事なんだ。
お嬢さん。
僕は、君を多大に評価している。
我が家の嫁に迎える件に加えて、軍の正式な一員としても手に入れたい。
重用したいと考えている。
どうかね。
まずは、あそこで、僕の言いつけを守り、歌う事は止めずに、こちらをジト目で見ている腑抜けの軟弱小僧を陥落させる手伝いをしてもらいたい。
手駒になれという意味だ。
祝言を挙げさせられるのからは、逃げられないんだ。
ならば、小僧をその時までに、少しでも頼りがいのある男に矯正しておいた方が良いのではないかと思う。
軍だって、君ら二人に、いずれ譲り渡そうと言っているんだ。
今から君の好きなようにカスタマイズしていったらどうだろうと思い、入隊をすすめているだけだ。
ふふ。
名目上は、あそこの惰弱な御令息を据え置くしかないと思うが、正直使いものになるとは思えない。事実上は、お嬢さんが軍のトップとして立ってもらって構わないと、今から許可しておこう。奴には、ハンコ押しとか、雑用をさせればいい。
お嬢さんは今、十三歳だったか?
座学は好きそうではないが、昨日、Lunaを説得していた様子からして、頭の回転が遅いようには思えない。
素質さえあれば、帝王学を学ぶのに遅い早いはないと考える。
欲しくないか?
強大な権力というやつを。
喜ばしく考えてくれ。
君の父親の仇も同然の力を、その手に握らせてやろうと言っているんだ。
生かされ続けたとしても、反乱分子の連中のところに、帰れると思うなよっ。
あははは。
お嬢さんの意思などまったく無視して、誘いにのってもらうつもりだ。
僕のしつこさは、君が尊敬する天王寺アリスというお人が、お墨付きをくれているほどだからな!」
「……おいっ。
エリオット・ジールゲン……エルリーンに何を……」
「小僧っ!
勝手に歌うのを止めるな!
お嬢さんを撃つぞっ。
そこは、独立して考えている。
拳銃に手を添える程度にとどめていたが、引き金に手をかけるぞっ!
いいんだな!」
「くっ……分かった、歌う」
「そうだ、Luna!
お前は、ただ歌っていればいい!
ふん。
この僕と天王寺アリスとの間に生まれたのに、まったくをもって小さい人間だ。
器が足りない。
主体性にも欠け、すぐに逃げ出す。
責任の所在を明らかにせずに、他人の慈悲や言い訳に頼れたら楽だと考えているんだろ。
そんなお前が、下の者をうまく扱えるとは思えん。
他人の話に耳を傾けて、機転をきかせて、新たな提案をする事が、そもそも得意ではない。
逆境がやってこれば、すぐに絶望する。
体力も、圧倒的に足りないっ。
天啓の詩を歌いあげて、この世に降臨させる。これが世間に、奇矯な振る舞いと受け入れられる唯一のものだ!」
「あんたの言葉、難しすぎて、分からないところもあるけど――ルイが、自分の言う事を聞かないからって、単に言いがかりつけてるだけなら、やめろって!
ルイは、たしかに弱っちいよ。
あたしよりも背が低い。それは、歳が二つ下だからってだけだ。
知らないなら教えてやる。
ルイは、あたしらの基地じゃ、ちゃんとチビどもに慕われていたんだ。
歌だって、みんながうっとりしてしまうような――あたしじゃ、あんなもん歌えないし、あんただって無理なんだろ?
分かるだろ。ルイは、全然、小さい人間じゃない。
それに、そんな評価の物差し、あんたの頭の中だけの話だろっ!
だから、ここにはルイは置いておけない。
あんたなんかの手に、ルイは渡せない。
ルイは、あたしらの仲間として、世の中から必要とされてる人間なんだよ。これからも、そうやって生きていけばいいんだ。その為にも、あんたのところからは、必ず逃げ出してやるっ」
「はは。本当に命が惜しくないんだな!
天王寺アリスが、君を躾けていた様子を見てみたいぐらいだ。
お嬢さん。
これ以上、僕から値打ちがあると思われると、本当に支配下にいれたくなる。
ふふ。
注意した方がいい。
君の大切な人を人質にしてでも、言う事を聞かせたくなるかもしれないからな。
Lunaが、子供たちに好かれていたという事実は、求心力があると思って評価しておこう。あと、歌うたいとして、特殊な能力があるのは、もちろん大きく認めている。
ただ、何だろうね。
このエリオット・ジールゲンの前に突き出されたり、銃口を向けられても、それでも希望を捨てない。
仇の血縁者を受け入れる、器の大きさ。
身体の丈夫さはもちろん、この僕を倒すという信念を曲げない心。
副班長――目下の者の話をよく聞き、的確なアドバイスをする。それによって、十分な求心力を発揮している。相手が困りそうな事は、自分の責任でなんとかできる。
一見は、行き当たりばったりに思えるが、考え方は一貫しているように感じる。ようは主体性があるという事だ。
……言い訳などせずに生きているお嬢さんを見ていると、生まれがやんごとないなんて、全く以て意味がない。そう痛感させられただけだ。
ああ。
そうだな。
やはり、最愛の息子に帰ってきてほしくなってきた。
適当に弄びながら、Lunaを、この手に取り戻させてもらう。
お嬢さんをうまく使って、じわじわと心理制圧しながらな。
安心してくれ。
父親として、楽しく遊んでやるつもりなだけさ。
良いやり方を、思いつくきっかけをくれた事に感謝しておこう!」
「あんたなんかに良く思われても、全然嬉しくない! それよりも、殴らせろっ! ぶん殴らせろって!」
「それは、僕の誘いかけに同意し、絶対の忠誠と服従を誓うと約束してくれたら、考えてやってもいいぞ。
――義理の父親としての、戯れ程度にな」
【※】
大人同士、アリス母さんとエリオット閣下の『夜のお話』は、ムーンライトノベルズ側で公開しています。
年齢制限に問題のない方のみのアクセスでお願いいたします。
『狂愛夫に、塔の上に』のキーワードで検索できると思います。




