【おまけ】竹内イチロウの階級を勝手に決める
「旧日本軍ベースの軍医総監が中将相当官だったんだ、だからタケは、『中将』でいいんじゃないかと、僕は思う」
「……閣下。
それでは、この企画が改行どころか、句点すらなく終わってしまいます。
いや。
あの、中将って、現実世界の軍隊でいったら、相当な地位でして、御任命頂けるなら光栄ですが、そんなあっさりで良いのでしょうか……」
「読点は使ったんだから、いいじゃないか。
ちなみに、この企画は、最初の一行で本当に終わった。
あとは、軍隊の階級に興味ある方のみが読んでくれ。
軍は、このエリオット・ジールゲンの私物状態という設定なんだ。タケの階級ぐらい適当に決めてしまえばいいんだ。
――まあ。
竹内イチロウが、クーデター成功時からの側近という設定なら、僕が軍を掌握した直後は、まずは大佐あたりに据えると良いのかもしれない。
前勢力の将官クラスの階級の連中は、正直言って邪魔だ。
だが、政権移行時に、一時的に僕の道具としては使いたい。
僕の息のかかっている者たちで、佐官の地位を埋めてしまう。前勢力の将軍や提督の言う事など、まったく聞かない部下どもだ。
大佐なら、連隊長や、戦艦の艦長だって務められる。
くくっ。
僕の手の者に、現場の末端兵士を支配させるんだ。
軍が新しい色に染まった後に、前勢力の将官――将軍や提督たちを、次から次へと失脚に追い込んだり、消していく。
そうして、タケたちクーデターの功労者に、相応の地位を与えていくんだ」
「な、なんで無駄に、まじめに考えちゃったんですか。
閣下。
現実世界で通用するかは別にして、フィクションでクーデター成功でって展開で、極悪な独裁者が悪政を敷くぞって設定なら、なくはないです……。
ところで、ミリタリーじゃない人だと、そもそも、『中将』って何? だと思います。
あの……その。
『将官』とか、『佐官』って言われても……『将軍』は聞いた事ある人多いと思いますけど、『提督』の定義を知らない人は意外と多いと聞きますし。
ましてや、『軍医総監』という言葉を知っているのは、それなりのミリタリーな方だけだと思いますが」
「ん?
タケ。では、こう言えば、分かりやすいか。
『将官』、『佐官』、『尉官』は、将校や士官といって、一般企業でいう役職だ。
とても、分かりやすく、簡易に表現する為に言うと、取締役、部長、課長みたいなものになる。
大将・中将・少将が階級の事で、『将官』がそれをまとめた呼び方で、役職に例えると『取締役』。
大佐・中佐・少佐が階級の事で、『佐官』がそれをまとめた呼び方で、役職に例えると『部長』。
大尉・中尉・少尉が階級の事で、『尉官』がそれをまとめた呼び方で、役職に例えると『課長』。
繰り返すが、ミリタリーな人以外にも分かりやすくする為の簡易表現だ。
場合によっては、准将とか、上級大尉という階級もあるがな」
「そうですね。部長という言葉は、小学生でも知っている可能性が高いと思います。
閣下。
『階級は、提督ッ!』という、Web創作フィクションをみかけて、軍人がお仕事の竹内イチロウとしては、気になる事があります……」
「空中戦艦や、宇宙戦艦が出てくる、ゲームやロボットアニメなどに、『提督』と呼ばれる人物が出てくる場合が多いからな。
僕から言わせれば、『階級は、提督ッ!』と書く前に、Web検索ぐらいはしてくれと思うが――きっと、みんなわざとやっているんだ。
フィクションだからいいんだ。
異世界の設定なんだ。
気にしたら負けだ。
きっと、この作品にもいろいろツッコミどころは多いはずだ。
まあ。
いちおう、この僕が、説明しておいてやろう。
『提督』というのは、海軍の『将官』、つまり海軍の大将・中将・少将を意味する。
ついでに『将軍』という言葉を説明しておくと、陸軍や、一部の国の空軍の大将・中将・少将を意味するんだ。
分かったか。
つまり、竹内イチロウが中将という設定なら、『将軍』という地位にいる事になる。
急に偉そうな感じがしてくるだろう。
『将軍』がなんとなく、偉そうな感じがするのは、小学生でも想像しやすいはず。
――このエリオット・ジールゲンの対話用キャラクターのくせに、『竹内一浪軍医中将』と書くと、タケがまったく別人のように感じてくるぐらいだ」
「海軍は、現実世界では、戦艦を管轄しているので、空中戦艦や宇宙戦艦をまとめる、地位の高い創作キャラクターが『提督』と呼ばれるパターンが多いという事ですよね。
閣下。
竹内イチロウのこのような説明でよろしいでしょうか?」
「その通りだ、竹内イチロウ。
だが、フィクションは意外と曖昧で、『提督』という言葉は使うが、階級は描かれない場合が多い。
結果として、『提督』が階級であると勘違いしてしまう人々が、増えてしまったのではないかと、僕は推測している。
だがな。
きっと、こういうのは、ミリタリーを知っている人のこだわりだと思うんだ。
この作品にも、拳銃という表現をたまに使わせてもらうが――銃に詳しい方々から言わせると、引き金に手をかけて、顔の前で拳銃を構えている映画ポスターとかには、何か言ってやりたい事があるらしい」
「引き金――トリガーに手が触れていると、誤射の恐れがありますからね。
弾が当たらないにしても、顔の近くで、発射してしまうと、いろいろ危ない上に、音とかかなり大きいですし。
あ。
そういえば、閣下。
あと、『軍医総監』の説明だけしておいた方がいいのではないでしょうか。生まれて初めて聞いたぐらいのワードだと思いますよ」
「面倒な概念は、この僕の独断で適当に省いておくが、タケ。いいだろう。説明してやろう。
『軍医総監』は、軍医の最高位だと考えてくれ。
軍人と言えば、軍人なのだが、本職は医学博士とかが多い。
医務局長とか、軍の関連の重要な病院の院長だと考えてくれればいい。明治時代の話だが、順天堂医院院長だった佐藤進氏が、『軍医総監』の任官者の一人になる。
もっと、有名な人物だと、森林太郎氏が中将相当の『軍医総監』だな。
『森 林太郎』は、作家の『森 鷗外』の本名だと補足しておこう。
まあ、当たり前なのだが、戦争をするなら、当然のように怪我人が出るわけで、現場で対応できる医者が必要だ。それをまとめられるような人物が、重用されていたという話だ」
「軍医は、部隊指揮権とか有さないのが普通の考えですが、中将とかになると、完全に軍の権力者にはなりますね。
あ。
この作品は、閣下が、人道ガン無視の行いをしているって事で、軍医の私に現場指揮官とかやらせてしまっていますが……それで功績をあげて、大佐から、中将まで昇進していったとかって、リアリティの無駄づかいというやつですか?」
「そんな感じだ。
だから、竹内イチロウが中将という設定で、問題はないだろ」
「旧日本軍ベースだと、軍属で『将官』という地位もあったようですが、今現在のルイーナ様の軍の内部の地位だと、そんなポジションではない。
だから、中将設定のこの私が、Luna相手なら上から目線は当然という、リアリティの無駄づかいというやつですか?」
「よく分かってるじゃないか、タケ。
どうせ、フィクションなんだから、適当で良いとは思うが、ほんの少しリアリティを追及してみただけだ。
竹内イチロウは、軍医中将にして、僕の侍医という事にしておけ」
「御意のとおりに。
エリオット・ジールゲン閣下の御心のままに――という事にしておきます」




