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籠の主、籠の中の小鳥

The Sky of Parts[13]

■■■■■■■■■■■■■■■

この物語は、軍事好きな筆者が作った育児モノ。


Web上での読みやすさ優先で、適当に改行などをいれたりしてあります。


『閣下。

 天王寺アリスですが――今、見て頂いた通りです。

 私の方で、かなり調整をしてみたのですが、どうにも、自分の子供がいないと、どこにいるんだと叫びながら……これは、錯乱という言葉を使ってもいいと思います。

 そういう状態を止める事ができません。

 体力的には、十分回復しています。

 閣下の素早く、そして的確な蘇生処置が大功たいこうをなした結果だと思います。

 その上で、この竹内イチロウの薬を使うご許可を頂いた事、深く感謝致します。

 自身をほふる作戦を実行する天王寺アリスが、本当になりたかった自分――というのは、今はまだ分かりません。最低限、自身が消えてしまうというのは、本望ではなかったという事でしょう。

 目覚めた状態で、もう少し確認して、調整を進めたいのですが……これでは、ずっと大人しくしていてもらうしかありません。

 閣下。

 軍で管轄している、ルイーナ様ぐらいの子供を、一人頂けないでしょうか?

 もちろん極秘であるとは認識しております。

 身代わりに対する処置、そして煩雑な事まで含めて、わたくしの方で対処しておきますので。

 えっ。

 閣下自身をですか?

 えっと。

 なんとかなるかは、試してみないと分かりませんが。

 ――あの品行良くない、不道徳極まりない裏切り者の小僧から、一番大切なものを、この手で取り上げてやりたい……などと言われると、この竹内イチロウは、断る事ができません。

 承知いたしました。

 すべては、エリオット・ジールゲン閣下の望まれるままに』



* * * * *



「母さんの提案通りに、反乱分子の連中には、適度に手を出しつつ、泳がせておくように指示を出しておいた。

 ありがとう。

 母さんの口から、小鳥が僕の物であると、公表してもらって。

 やつらには、それを十分に広める手伝いをしてもらわないとね。

 ……母さん。

 寝てしまった?

 やれやれ、今日も僕の膝の上で、眠ってしまったのか。

 穏やかな寝顔だ。

 この僕に身体を預けている事が、気持ちが落ち着くと思ってくれているようで、とても嬉しいよ。

 うなじを、指でゆっくりなぞられても、起きる気配もみせないね。

 ――では、アリスと呼ばせてもらおう。

 明日、いや、もう今日なのか。

 夜が明けたら、久々に、僕らの子ルイーナに直接会える。

 アリスは、本当はどう思っているんだ?

 もう思う事もできないのかもしれないが、我が子の顔が見えて、嬉しかったら、もう一度、あの子の母になってもいいんだよ?

 僕を、慈しむべき子だと思ってくれている、仮初かりそめの今のアリスももちろん、アリスの一つだから、いとおしいさ。

 だが、元のアリスがいなくなってしまった事を、後悔していないと言ったら、はっきりとした嘘になる。あからさま過ぎて……自分すらだませていない。

 ふ。

 いいの?

 僕に抱きあげられて、大人しく連れ去られるのが、普通になってしまって。

 ……今みたいに。

 このまま、僕のなすがままにされる、君で。いいのかい?

 そのつややかな黒――漆黒色のドレス。

 僕を超える頭脳の持ち主であるアリスを、誰もが高貴だと認めるように、身につけてもらっているだけ。

 本当は、エリオット・ジールゲンの正妻として、僕の横に立ってもらう時に着させるつもりで、用意していたんだ。

 アリスが本当に望む自分というものが、僕のそばを離れたかった訳じゃないという実感がほしいから……着てくれて、ありがとう。

 戻ってきてはくれないのかもしれないが、僕のところへ、帰ってくるように、命じてはおく」



* * * * *



「閣下。

 小鳥ともう一名。『スカイ・オブ・パーツ』建物内に到着したそうです。

 二人を、上層階へ護送して来る前に、今回の計画に携わった者たちの記憶をすり替えてくる処置がありますので、しばらく、お時間を頂きます」


「タケ、頼んだぞ。

 まだ母さん――アリスが目をさましていないので、僕は、動くつもりがない。

 ……アリスの活動できる時間が、短くなければ、四年前に彼女を連れ戻した日のように、エレベータの扉が開いたところで、ルイーナと再会させてやろうと思っていたが、まあ、それはあくまで余興の一つにしかならない」


「天王寺アリス、いえ、アリス様。

 最初に比べると、目をさましている時間は増えましたが、やはり、自らの命を、自らの意思だけで消そうとしているところ、無理に繋ぎとめたからなのでしょうか?

 ……体調や脳波など、医学的には異常がないのですが、どれだけ調整しても、よく眠ってしまわれますね。

 閣下が、根気よく言い聞かせて、傀儡かいらいに仕立てている時以外は、自分は母親であると主張するだけの幼子おさなごになってしまいますし……竹内イチロウの診察中にも、低俗な悪戯いたずらを仕掛けてくる事があり、手を焼いております。

 申し訳ありません。

 そのような御辛そうな御顔おかおを、閣下にさせてしまって……この竹内イチロウの力が足らず、弁解の余地もございません。

 調整を続けて、お望み通りのアリス様が、閣下の横にお立ちになる日が、一日でも早くきますよう。

 わたくしも、挺身ていしんさせて頂く所存です」


「タケ。

 とりあえず、今は、あの二人を、タワーの上層に連れてくる事だけ考えてもらえればいい。

 アリスが目をさましたら、調整しておく。

 実の子だと思い込んでいる僕と、積み木遊びをしようと、また、しつこく訴えてくるかもしれないが――どこに出しても恥ずかしくない、傀儡かいらいとしての彼女に切り替えてやる。

 やり方は、だいたい分かってきた。

 ――まったく、『子供』の僕が、『母さん』のアリスを、しつけているようなものだ。

 考え方の方向性を、僕の部下であるという風にしてやれば、作戦立案だろうが、『sagacity』システムの世話だろうが、こなしてくれるが、その状態が長く続かない。

 僕が世界を統べる者だとか、『sagacity』の完成の為に、一緒にいくさを仕掛ける存在になってほしいと希望しているのは、彼女が作って、僕に読み聞かせてくる、へんてこな内容の絵本にも採用されているようなので、少しずつ理解していってくれているのかもしれないが……。

 童心にかえった母親というものは、非常に扱いが難しいが、こちらもお人形遊びでもしていると思って、アリスの心をもてあそんでやるさ」


「御意のとおりに。

 ……ルイーナ様が、再び閣下を、御父上であると認めるまでの持て成し方、下知げちを頂きありがとうございました。

 もちろん、御前ごぜんでは、これまでと同様、閣下の御子おこであると思い、竹内イチロウの方が仕える立場であると徹させて頂きます。

 では、行ってまいります。

 収容が終わりましたら、報告致します」



* * * * *



「……タケ……ウチ……イチロウっ!」


母子おやこだね。

 母親も、四年前に連れ戻しに行った時、私の顔を見て、同じ事をまずは口にしたよ、Luna。

 そうそう。

 そうやって、狼狽えもせずに身構えて、全身で警戒を表現して……ああ、ただ母親の方は、自分の身を多少は心配していたのか、心騒ぎしている様子を見せてくれていた。

 Luna。

 今の君の目を見ていると、この竹内イチロウと、その後ろにいるお方への恨みというか、憎悪のようなものをはっきりと感じ取れる」


「エルリーンはっ! ……ああっ!」


「ふん。

 驚きがすぐに、怒りに変わったかい?

 Luna。

 目を潤ませて、小刻みに身体を震わせて。

 何度も見た事があるだろう。

 君の母親が、空中回廊とかに行く時につけさせられていたのは、VRゴーグルなんかじゃない。

 天王寺アリスは、閣下に反逆した罪囚ざいしゅうだったからね……息子の君も、囚人と変わりがない生活をしているようなものだったけど。

 気づいていなかっただけで、赤子の時から座敷牢暮らし。

 まあ、どちらかと言うと、母親に対しての人質として、養い育てられていた――」


「うるさいっ!

 タケっ! エルリーンを解放しろっ!

 彼女は、関係ないだろ……逃がしてやってくれ! オレは、どうなってもいいっ!」


「では、閣下にお願いしてみては如何いかがですか?

 タワー『スカイ・オブ・パーツ』を出て行ってから、許しをこうても、許される事のないような行為を平然と行っていた。

 いくら実の御子息とはいえ、閣下の慈悲がたまわれるとは思えないが。

 竹内イチロウといたしましては、個人的な怨恨は別にして、閣下が、御子おこであると仰るのなら、そのように遇させて頂きます。

 ――だが。

 今は、道徳の心もない、閣下の恩に背いた、Lunaという名の軍の一員。そういう扱いで良いと、御沙汰ごさたが下っているのでね。

 Luna、もう少し、私の近くに来てくれるか。

 鳥カゴへの収容も終わっているので、手錠も外す」


「……鳥カゴ?

 タケ……ここ……ここって、まさかっ」


「そうだよ。Luna。

 かつて、居住エリアだった場所だ。

 壁をすべて取っ払って、Luna。君を収容する為の巨大な鳥カゴを作った。

 玄関と呼ばれていた扉はそのままで、あのあたりが、天王寺アリスの独房があった位置で、君の部屋がそっちだったかな。

 内部に巨大な鉄格子を設置した。

 リフォームなんで、外装の変更が困難で、竹内イチロウとしては、窓の配置がやや美観を損なっていると考えているが……そこは内装でカバーしておいた。

 閣下が望まれた鳥カゴで、やっと小鳥の飼育をして頂ける。

 懐かしい?

 リビングでの暮らし。

 今日から、また、閣下が与えて下さるものをついばんで、かてにして生きていくといい。

 ふ。

 おいおい!

 目も、耳も、口も、自由にしてやっただろ。

 手錠だって外してやったんだ。

 Luna、この私を睨みつける事はないだろ?

 はい。

 次は、これに着替えてくれるかな。

 口にするものだけじゃない。身につけるものも、すべて閣下からたまわって過ごしていくんだ――昔みたいに。

 ああ、君の場合は、母親と違って、この世に存在できる事自体が、閣下のおかげだったかっ」


「タケ。母上は、どうしたんだっ! 無事なのかっ」


「さあ? 私が答える義務はないよ。

 Luna、後で閣下がみえた時に、直接お伺いしてみるといい。

 それにしても――この竹内イチロウの顔を見たら、母親の事を真っ先に口にすると思っていたが、一緒に連行されてきた、その小娘の心配をとてもしていた。

 そんなに大事なんだ。

 ……へぇ。

 じゃあ、こうやって、小娘の頭に拳銃を突きつけられたら、どうするっ!」


「や、やめろっ! タケ……やめろ!」


「視覚も聴覚も奪われて、身動きも許されずに、今どこにいるかも分からずに、怯えながらたたずんでいる女だ。

 どこにも逃げられず、果てる事になるぞ!

 引き金を引かれたくなかったら、とっとと着替えてくれるかい?

 Luna。

 君を着替えさせたら、次はこの小娘の拘束を解除して、こいつにも着替えを与えるように言いつかっている。

 やる事だらけなんだ。

 これ以上、この竹内イチロウの手をわずらわせないでくれ。

 さあ、早くしろっ」


「わ、分かった……。

 タケ。絶対に、エルリーンを傷つけるなよっ」


「どうでしょうか? 主君の御子おこであれば、御命令として承る事ができますが……そう、それでいい。今まで着ていた服は、鉄格子の外へ――こちらへ渡してくれるか。

 ……へぇ。

 似合うじゃないか、Luna。

 赤子の頃から、やんごとない身分のお人形のような格好ばかり。

 母親が来てからは、彼女の趣味なのか、今さっきまで着ていた、庶民のような服を身につけたりして。ああ、女のようなアイドル衣装を着ている事もあったね。

 演技や演出としても、袖を通した事がなかった、軍服はどうかな。

 ……あれ?

 何?

 私の方を見て。

 この竹内イチロウに、何か質問でもあるのかい?

 Luna。

 すでに表情が、疑問に対する回答を求めているみたいだが」


「タケ……どうして、半ズボンなの?」


「私が答える義務はない。

 はい、これ――マントをどうぞ。

 あと、その長い赤髪。このひもで軽くってほしい。そうしないと、軍服姿では、少し締まりがないのでね。

 Luna。

 その雑然というか、たいして手入れをする気もないのに、髪を伸ばしたい君の考えが、竹内イチロウにはまったく理解できないよ。

 とりあえず、着替えてくれて、ありがとう。

 そのマントを羽織ってもらったところで、小娘の解放を始める」


「母上……母上のご指示なのか……?

 タケ。

 母上が、オレの着るものを選んでくれたという意味?」


「私が答える義務はないだろ。

 手錠が外れた。

 後は、口の拘束具を外すだけだ。小娘は、これで手も、目も、耳も、口も、自由だ」


「……くうっ。

 あっ。

 お前も、軍のやつかっ! この野郎っ。よくも、あたしらを押さえつけたな!」


「お、落ち着いて、エルリーン。

 こいつ……拳銃を持ってるっ!

 いきりたって、闘争心と敵意丸出しで、鉄格子を握りしめないで!」


「ああん?

 ルイっ。あたしはな、基地に侵入した賊を、素手で五人倒した事があるんだぞ!

 相手は、武器を持っていたけど、上から水の入ったバケツを落としてやって、怯んだところを……離せっ!

 ルイ!

 離せっぇ」


「エルリーン……お願い……一旦大人しくして……副班長としてお願いします……」


「こいつ軍のやつなんだろっ!

 あれ?

 何、ルイ……軍服着てるのか。

 マントのサイズあってない? ズレてるぞ。華奢な上に、肩幅狭いからか。

 でも……なぜに、半ズボン?」


「し、知らないよ。オレが聞きたいぐらいだ!」


「……あー。遺伝って事か。

 Luna。

 竹内イチロウとしての意見だが、そういう相手はおすすめしない。

 確実に。

 絶対。

 とりあえず、君たちの収容が終わった事を、私は、報告にいかなくてはならない。

 これ、Luna。

 小娘用の着替え。

 悪いが、君の母親の何倍も口の悪いその小娘に、これに着替えるように言っておいてくれないか……まだ、その小娘を消せとの指示は受けていないのでね。

 これ以上、関わっていると、御意向ごいこうないがしろにするような、不敬ふけいな事になりそうだ」


「なんだとっ!

 この整髪料のにおい振りまくスーツにネクタイ野郎っ!

 逃げないでかかって来いよ……ルイ!

 しがみつくな……あたしは、戦うぞ!」


「エルリーン。

 やめよう……とりあえず、着替えて……いろんな意味で落ち着こう……ね?」


「ふん。小娘が。

 生かされたまま、この『スカイ・オブ・パーツ』上層まで来れた事に、そもそも感謝するんだな。

 だが、この分では、人質としての価値も与えられず、処分されるだろう。

 それが嫌なら、怯えた様子で、慎ましく、泣き喚きながら自らの助命を懇願こんがんするんだな――まあ、このやり取り自体が、監視カメラを通して、すでに伝わっているがな!

 エリオット・ジールゲン閣下に」


「えっ!

 あいつが、ここにいるのか!

 出て来い!

 あたしは、あいつを一発ぶん殴る為に生きてきたんだっ。

 隠れてないで出てこ……ル、ルイ……あたしの身体を……引っ張るな……って……いでで、頬をつねるな!

 あたしは、お掃除・皿洗い班の班長なんだぞ!」


「……Luna、とりあえず、小娘を着替えさせておいて下さいね。

 では、後ほど。

 ああ、鳥カゴの事なんだが。

 もちろん窓は開かない。この鉄格子も、外の扉もオートロックなんで、よろしく」


「なんだっ。あの整髪料のにおい振りまくスーツにネクタイ野郎!

 あいつ、性格悪いぞっ!

 世話してるガキんちょの悪口とか、どうせ寝ついているだろうと思ったら、本人の前で平気で言うタイプだ!

 女なんて軽視して、暴言吐いても悪びれる様子もない最低野郎だ。

 絶対に!」


「……すごい。

 一度も会った事なかったはずなのに、タケの特徴つかんでる……こ、これが女の勘?

 そんな事より、エルリーン。とりあえず着替えて!」


「あたしは、あいつの言う事なんて聞く気はない!」


『では、僕の言う事なら、聞いてくれるのかね? 元気過ぎるお嬢さん』


「だ、誰だっ!

 どこから声が……?」


「こ、この声、エリオット・ジールゲン……っ。

 エルリーン!

 たぶん監視カメラのスピーカーとかから聞こえてるんだよ」


『ああ、Lunaも元気そうで、なにより。

 目上の僕の事を、呼び捨てかい?

 監視カメラ越しとはいえ、こうして、会話をするのも数ヵ月ぶりだ……Luna、そんなに怖い顔をするな。

 僕の手の中に戻ってきてくれて、とても喜ばしく思っているよ。

 おかえり。

 可愛いお前の為に、鳥カゴを用意してみたんだが、気に入ってくれたか?

 このエリオット・ジールゲンの配下として、ずっと生きていくといい。

 ずっと、ずっと。

 ね?』


「う……うるさい! オレは……オレは……」


『Luna。それ以上、何も言えないんだな。

 そうだろう?

 ああ、目をぎゅっとつぶって悔しがる様子が、とても愛らしい! 鳥カゴの中のお前を、この僕が、これからも大切に飼っていってやろう。

 ふふ。

 ところでお嬢さん。

 僕の方から、そちらに足を運ばせてもらうつもりだが――条件を一つ出させてもらう。

 渡した衣装を、身につけてもらえないか?

 Lunaにも着替えてもらった。

 僕は、いつも通り軍服姿でお伺いするつもりだが――同伴者にも、正装させていくつもりなんだ』


「……っ。

 母上! 母上かっ! どうしているんだっ。母上は!

 エリオット・ジールゲン!

 オレの母上は、無事なのかっ! 答えろっ」


「えっ! 軍師殿……っ! 軍師殿に会えるって事!」


『僕が、答える義務はない。

 はは。

 お嬢さんも、同伴者には興味があるみたいだね。

 急に大人しくなった。

 怯えているというよりは、期待している気持ちが、表情に出ている。

 では、お願いするよ。お嬢さん、着替えてくれるね?

 あ。

 Luna。

 監視カメラの映像転送は、一時的に停止しておくが――彼女の着替えが気になるようだったら、お前のマントでも貸してやったらどうだ。

 念の為、レディの扱い方のアドバイスをしておく。

 よろしく頼んだぞ、Luna。また後でな』


「……ま、まてっ……エリオッ……ちょ……と、エルリーン! いきなりマント引っ張らないで……」


「ルイだって、母ちゃんに会いたいだろ! よし、マントを貸せ。あたし、すぐに着替える」


「いいのかっ……エリオット・ジールゲン……やつも、一緒に来るんだぞっ」


「だかーら、あたしは、あいつを一発ぶん殴ってやりたいの!

 あっちから来てくれるなら、大歓迎だ!

 迎え撃ってやる。

 ……とりあえず、ルイ。お前も念の為、後ろ向いておけ。至近距離過ぎるから」


「あ。はい……班長」


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