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芽出す光と闇

The Sky of Parts[11]

■■■■■■■■■■■■■■■

この物語は、軍事好きな筆者が作った育児モノ。


Web上での読みやすさ優先で、適当に改行などをいれたりしてあります。


「悪いね、ルイ。

 部屋を移動するとか……何かを思い出しながら、怯えているようだった。

 嫌な事ばかり考えさせてしまって。

 でも、俺と一緒に来てくれて、ありがとう。

 ルイに滞在してもらっている部屋だと、壁がそれほど厚くないし、そもそもエルリーンが、ドアを少し開けて、聞き耳を立てると思うんだ。

 エルリーンは、まったく隠れる様子もなく、ひどいと途中でドアを全開にして、言葉を挟んでくる。

 それは、この部屋でも一緒で――たぶん、ルイには多少怖いと思わせてしまうだろうけど、『内側』から鍵をかけていいかな?」


「うん、ダノンさん。

 いいよ……『内側』からなんでしょ」


「ルイ、ありがとう。

 とりあえず、俺とジーンさんと、君だけで話がしたくてね。

 ……聞かれるとまずいって言った段階で、それなりに何の話をしたいか、分かっているみたいだね。

 身をすくめたりしなくていい。

 状況として、聞きたいだけだから。

 無理に、その緊張した顔をやめてくれと言うつもりもない」


「……エリオット・ジールゲン」


「ジーンさん、なるべくルイとは、俺が喋るから、必要があったらアドバイスよろしく。

 いろんな意見が入りすぎて、ルイが混乱してしまうといけないから。

 ルイ。

 そうだ。

 言いたくなければ、無理に喋らなくていい。

 君の言葉で教えてほしいって言ったら、強要しているようにも聞こえると思うけど……もしも、その方が伝えやすいのならという意味で、そうしてもらえると良いかと思う」


「うん。分かった、ダノンさん。

 ……エリオット・ジールゲン……あいつに育てられたのは……間違いない。

 物心ものごころついた時には、すでにそばにいたよ。

 あと、この前チラッと顔写真を見せてもらった、『竹内イチロウ』って医者も、ずっと一緒にいた。この二人が、オレの世界にいる全ての人間だった。

 そこに、たしか七歳ぐらいの時だったと思うんだけど、母上が加わった。

 ダノンさんたちのところに来るまで、この人たちと暮らしていた。

 Lunaとして、タワー『スカイ・オブ・パーツ』の外に出してもらえる機会はできたけど、結局は、母上を除いた二人に言われるがまま……軍の関係者とだって、まともに会話すらしていない。

 ……ごめん。

 たぶん、ダノンさんがほしいと思っている回答をしたくないんじゃなくて……オレ自身が、エリオット・ジールゲンって人が……オレにとってなんであったのか……よく分からなくなっているんだ……」


「いや、十分だよ。ルイ。

 養育者……と、いう事だね」


「かな……?」


「その事について、恩を感じている?」


「……分からない……」


「ルイ。

 これから言うのは、俺が、君を確実に脅していると思って、受け取ってくれていい。

 ……ゾッとしたね。

 もの恐ろしくなって、今すぐこの部屋から逃げ出したいという顔をしているけど、できたら、最後まで聞いてくれ。

 俺らが、エリオット・ジールゲンにとって、どういう存在なのか――きっと、もう気づいていると思うけど、そんな俺らと一緒に、ルイ。君は、これからも行動するつもりかい?」


「え」


「エルリーンに言われた事。ルイにとって、きっと心の傷になっていると思うけど、でも、それが現実なんだ。

 ここの連中は、エリオット・ジールゲンを憎んでいる。

 ――命を奪える機会があれば、そうしたいぐらいにね。

 いいよ。

 俺やジーンさんと目線を合わせないようにしてくれても。全然構わない。

 ルイ。

 君が、そういう反応するって分かっていて、話しているから、自由にしてもらって大丈夫だ。

 身体を支えているのが辛いと思ったら、そこの椅子に座ってくれればいい。

 話を中断してほしかったら、遠慮なく言ってほしい。

 俺らは、君を傷つけたいわけじゃない。

 でも、それは、君が、君だからだ。

 君が、君ではなく、エリオット・ジールゲンに養育の恩を感じていて、俺らから何かを奪おうという存在であるというなら――それは、そのように扱わせてもらうしかなくなる」


「……あのっ! ……オレ……」


「ルイが、軍師殿――天王寺アリスさんの息子であると、知っているのは、俺と、ここにいるジーンさん、そしてエルリーンだけだ。

 仮説をもとに、憶説おくせつしている者はいるかもしれないが――そもそも、今、仲間の中に天王寺アリスさんの顔や子供がいたとか、そういった事を知っている者も、ほとんどいない。

 そして、ルイの正体……それは、エルリーンも知らない。

 確信を持っているのは、俺とジーンさんだけだと思ってもらって大丈夫だと思う。

 ――最初に言っておいた通り、脅させてもらう。

 ルイ。

 ジーンさんも、俺も、エリオット・ジールゲンに家族を奪われている。君を、育てあげた……あの手によってね。

 大丈夫か?

 今日は、ここまでにしようか?

 すごい冷や汗だ……着替えた方がいい」


「いや……いいよ。

 ダノンさん。

 ここで、話を止めたら……オレは、もらってる部屋にすら戻れるか分からない……だけど、座ってもいいかな……身体は、すごく動揺している……」


「構わないよ。

 洗いたてのタオルが、ちょうどあるから、汗を拭いてくれ。

 少し、落ち着こう。

 ジーンさん、水を注いで、ルイに渡してやってもらっていいかな」


「ありがとう、ジーンさん。

 うん。

 分かっていた……。

 あいつの正体を知ってしまったから……部屋から出られなくなって……もう、あそこで寝てたら、二度と目が覚めないといいなって、ずっと願っていた。

 でも、母上が、まだ捕まっているから。

 見当違いな解釈してるかもしれないけど……よく分かってないかもしれないけど……本とかぐらいでしか、世の中の事知らないけど……母上は、関係ないんだろっ。

 オレを産んだってだけで……母上は、エリオット・ジールゲンからしたら、何でもない存在って事なんだろっ!

 ……オレが、もっと、早く気づいてあげれれば……母上は、本当に、たった独りで、エリオット・ジールゲンと戦っていたんだ!

 なのに、オレ……きっと、ずっと、ずっと、母上の足を引っ張ってきた……ちくしょう……オレを逃がす為に、母上は……うう」


「ルイ。

 水、もうちょっといるか?

 あと、タオルは汗だけじゃなくて、涙も拭いていいから。

 そこまで言ってもらった上で、念の為に言っておく。

 養育者が恋しいと思うのなら、恩着せがましい言い方だけど、見逃してやるから、どこか軍の施設に足を運んでくれ。

 どうやって行くかとか、道案内はできないが、おそらく自己紹介しなくても、監視カメラにでも映れば、そのまま、養育者とは元通りの関係になれると思う。

 君次第かもしれないが――無事、お母さんにお会いできる可能性もある。

 ――ルイ。

 君は、どうしたい?

 俺らは、君に求めている事がある。

 それをしていいかは、俺だけでは判断できない。君からの働きかけが、必要だと思っている」


「オレの歌……歌声だよね。

 母上が、それとなく教えてくれていた。

 ちょっと変わった物語とか作ってくれて読ませてくれたり、一人芝居劇を見せてくれたり……遊びの延長みたいなので。

 目の前で見張っている、エリオット・ジールゲンに見つからないように、工夫して、オレに伝えてくれていたと思うんだ。

 だから、母上を助けたい気持ちがある……その気持ちだけは、すごく強いんだ!

 でも、オレ、どうしていいか分からない……。

 もう一度、あいつの前に立って、母上を助けられるかって言ったら、たぶん無理だと思うんだ。

 ……どれだけ、オレが頑張っても、赤ん坊の時からそうであったように……思い込みとかじゃなくて、今度こそ、オレってものを本当になくされて……ただ、あいつの為だけに、生きている人形にされるんじゃないかって……正直怖い」


「最初に……助け出された時に、ルイ、君自身にも危害が及ぶような事を、はっきり言葉にされたと言っていたね。

 お母さんの方は、確実に捕らえられている姿で、非道な仕打ちとののしるべき行為を受けていたという事だった」


「うん、ダノンさん。

 エリオット・ジールゲンと竹内イチロウ……あの二人に、母上は……。

 ここに来てからも、信じ直せるかは考えてみたよ……でも、やっぱり、あの時の母上の姿が頭に浮かんで……。

 助けたいんだ!

 母上を助けたいって思う気持ちにしか、最後は辿たどり着かないっ」


「君のお母さん――天王寺アリスさんも、同じ事を言っていたんだ。

 ……ルイ、顔をあげたまま、黙って俺の方を見ててくれればいいよ。

 もちろん、天王寺アリスさんも、エリオット・ジールゲンには複雑な思いを持っていたと思う。

 でも、息子の君を助けたいという気持ちが、それにまさっていて、俺らに作戦を与えてくれたり、本当にエリオット・ジールゲンを倒す事になったとしても、後悔はしないと――そう思ってくれていた。

 ルイ、もう一度言う。

 もしも、中途半端な気持ちが、少しでもあるのなら、悪いが、この基地を出て行ってくれ。

 その後どうするかは、任せるが……戦場で敵として出会う事があるとしたら、たとえ、君が今日の事を、俺らの事を本当に忘れてしまっていたとしても――容赦をするつもりはない。

 今までの人生は、君が決められる事じゃない。

 だけど、君が、ここで決断して、エリオット・ジールゲン側の人間に本当になるとしたら、もうそれはどんな形にしても、俺らにとって倒すべき相手だからだ」


「ダノンさん。

 すべて、吹っ切れたって言ったら、嘘もまじってしまうかもしれない。

 だけど、ここからの人生で考えたら、オレ……あいつのところには戻れない……戻るつもりはない。

 母上を助け出して……たしかに、その後の事は、うまく考えられていないと思う……でも、ダノンさんたちの気持ちを裏切るような事は……考えていないと思う。

 ……これ、言っとくけど、演技じゃないから。

 天王寺ルイーナとしての……本当のオレだと思ってもらっていい!」


「よく言ってくれた……すまないね。

 たった十歳の君に、こんな決断をさせてしまって。

 これは、ルイからしたら流してくれればいい話だけど、俺の母さんが、どうして天王寺アリスさんを受け入れる気になったか……分かった気がするよ。

 もちろん、すべてを理解している訳じゃないけど。

 ルイ。

 天王寺アリスさんの――俺らの軍師殿の息子として来てくれて、ありがとう。

 俺らも、君に何をしてあげたらいいか、まだ分からないところがあるけど、俺らと一緒に行動している事を、お母さんを取り戻せる希望として受け止めてもらえると、とても嬉しい」



* * * * *



「閣下。

 小鳥、不浄なところで歌っているようですが――本当に、ほうっておいてもよろしいのですか?」


「ああ。

 あれから半年も経ったのか。

 早いな。

 システムを修正したり、僕自らが検閲を行ったり、それに加えて日常の業務もあって……なかなか『仕事』を再開できないぐらいに、実に目まぐるしいまま時が過ぎたものだ。

 まあ、僕の代わりにシステムの対応をしてくれる人材が見つかってから、だいぶ楽になったが。

 ――タケ。

 そんなに心配そうな顔をしなくてもいいだろ?

 もっと、自分の腕を信じろ。

 念の為、いざとなったら瞬時に疎結合そけつごうできるように、標準的なインターフェースだけを開示した状態で、対応させている。

 リスクは、非常に大きいが――タケの太鼓判を信じての事さ。

 外部の人員を雇うというのは、これに限らず、一定の危険が伴う。

 しかし、正直、僕が付きっきりで、『sagacity』の面倒を100%みていたら、他の何もできやしない。

 アウトソーシングは、有効に使うべきだと思うんだ。契約関係上の理由で、労働時間が若干短めだが。

 ふふ。なーんてな。

 そういえば、昔、母さんが――物事は、焦って行動すると失敗すると言っていた。

 ……失敗になるのかね?

 『sagacity』を、破壊されると思うかい?

 はは!

 おいおいっ。

 竹内イチロウ。

 そんな焦った顔をして、本気で僕をいさめようとしなくていい!

 少し冗談を言ってみただけだ。

 あははっ。

 僕が、こういう一見ふざけた様子を見せるのは――付き合いも長いタケなら分かるだろう。

 ――限界を超えた怒りを、心の奥底に秘めているんだ。

 くくっ。

 このエリオット・ジールゲンに、愛情をたっぷり注がせておいて……育ててやった恩を忘れるような、小鳥には――何を与えてやればいいのだろう――。

 ね?」


【閣下の階級っていうか、どんな地位だ】

 『Marshal』と『President』を兼ねてる感じのイメージです。

 あれ、Admiral要素は? っていうツッコミのミリタリーなお友達は、とりあえずマーシャルの方が、若干ですが一般的用語なんでぐらいの理由で書いてます。


 大元帥は置かないトコ多いですし、旧日本軍の考えだと、Majestyになってしまうし……まあ、軍隊関係のフィクション作りは、見てる側の時も、曖昧な方が安心します。

 物語であれば、退役提督の救出成功で、年金課の二等兵が少佐へ特進した上に、駆逐艦の艦長になるぐらいの勢いが面白いです。


 のちにファシズムの象徴となるローマ式敬礼とかも……特に、この作品には『独裁者』なんて言葉使っているから……。

 アニメや漫画作品などで、よく見かける「拳を胸につける敬礼」は、現実世界のどこの軍のものでもなく、映画発の演技用敬礼です。


 創作は、リアリティを求めるべき――とは思いますが、軍隊関係は、歴史的な意味でリアリティがない方がよい場合も多いと思います。

 故に、この作品でも、『閣下』という曖昧な設定にしてみました。


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