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浮かばれる願い ~ 『浮かばれる小鳥の歌』

The Sky of Parts[10]

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

この物語は、軍事好きな筆者が作った育児モノ。


Web上での読みやすさ優先で、適当に改行などをいれたりしてあります。


『うん。

 アリス姉さんも、エリオットの事が好きよ。

 大丈夫。

 施設に預けられても――私が、どこかに行ってしまう訳じゃないでしょ?

 いつでも会えるわ。そんな辛い顔しないで。

 えっ?

 うーん、そうね。

 エリオットが、世界で一番、私を護ってくれる人になったらって事?

 いいわ。

 そうなったら、お嫁さんになっても。

 そんな約束で良ければ、いくらでもしてあげる!

 だから、これからも、未来だけを見て、生きていってね。

 私は――アリス姉さんは、絶対に、エリオットの事を嫌いになったりしないから。誓ってあげるわ』



* * * * *



「……閣下。

 『sagacity』の緊急指揮系統、および対空防衛関連の機能は、回復したと思われます。

 対空ノイズも、再び展開されているのを確認致しました。

 ――後処理は、竹内イチロウにお任せください。

 はい。

 気づいた者は、少ないと思いますが、疑う者がおりましたら、速やかに内々処理致します。

 閣下の仰る通りでした。

 その……先日、Lunaの野外ライブを行った会場……あの周辺で、Lunaの動画……歌声を流すイベントが開催されたらしく……ええ。閣下の御名前と御功績をたたえる為に行われたので、警備の者たちも、不審に思わずだったようです。

 ――まさか、録音や録画された歌声でも、『sagacity』に一定のダメージを与える効果があるとは。

 実際に、参加していたのは、閣下の熱狂的な支持者ばかりでした。

 ただ、発起人に関して、不明な点があるので調査中です。

 場所が、場所なだけに……設置されている監視カメラは、『sagacity』検閲対象でした。

 ご指示通り、検閲自体、いったんすべて停止致しました。

 ただ、検閲が使えなくなった事で……ルイーナ様の行方を追う手掛かりも、同時につかみにくくなっております。目撃情報を頼りに、人海戦術じんかいせんじゅつにて対応しております。

 必ずや、閣下の望まれるような成果を、お届け致します。

 ……ルイーナ様が、略取りゃくしゅされた件……大変申し訳ありません。

 完全に、この竹内イチロウの失態です……。

 母上さまから、何か指示されている節があったのですが、見抜き切れず、申し訳ありませんでした!

 どのような処罰でも、お受けする覚悟です。

 はい……。

 寛大な御心おこころを頂きまして……ルイーナ様の奪還成功という結実けつじつとして、この恩赦おんしゃに、必ず報いるつもりでございます!

 今後は、すべてを閣下に頂いたものだと思い、事にあたらせて頂きます。

 それと――。

 たしかに、現代的な定義での『新月』とは、月の見えない日の事で、急襲などを行うには向いています。

 はい、仰せの通りに調べてみました。

 『さくが、何もない』という、ルイーナ様のお言葉が引っかかっておられるとの事でしたが……一般的ではなく、雑学として扱われがちですが、さく――『さく』と言うそうです。

 完全に、月が見えない日の事を。

 私が、ルイーナ様をお迎えに行った時に、御父上には愛されていなかった……申し訳ありません……名前の由来がどうこう、ルイーナ様は、そのようなお言葉を並べておられました。

 閣下。

 これにて、竹内イチロウは、一旦失礼させて頂きます。

 何かありましたら、お呼び下さい。

 ……今は、アリス様の……お手を握って、ただ、彼女の為に祈ってあげて下さい――」



* * * * *



【―これは、小鳥が心―】


 お願い、この声が届いて。


 可愛い小鳥。聞いて、この母の想い。


 偽りの世界のすべてを破る為、母の切望を知る時は今。

 望み、一つに重なる。


 転機迎え、期待に包まれる。母の優しさから離れて、再び地上におりるだけ。


 あなたは、ずっと、歌う。

 嬉しい時も、悲しむ時も、恐れる時も、安らぐ時も、絶える事なく、母の願いにいだかれる。


 さあ、羽を開いて、いとし子よ。


 あなたは、歌を得てしまったから。

 それは、神が与えたから。


 あなたは、歌を得てしまったから。

 それは、うつつが求めたから。


 さあ、羽を開いて、いとし子よ。


 あなたは、移り変わりを迎えた。

 翼を広げた小鳥は、ただ、空へと飛んでいく。


 あなたは、ずっと、口ずさむ。

 嬉しい事も、悲しむ事も、恐れる事も、安らぐ事も、繋がり、ありのまま。


 あなたがあるべき正しい場所を、踏みしめて。母なる大地を、踏みしめて。


 お願い、この声が届いて。



『オレは、オレのまま。嘘偽りない、オレのまま。

 歌を、聴いて。

 大切な貴女と同じ、赤い髪を持っている。

 心躍る陽気な貴女も、悲痛に嘆く貴女も、知っている。

 広げた翼、羽ばたかせると、どうなるの? 教えて。

 それは、通じてただ一つ。

 その温かな胸を離れ、去りて鳥カゴの外。

 それは、ただただ願いの叫び。

 その源たる手を失い、はれて自由の身。

 オレは、オレのまま。嘘偽りない、オレのまま』


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