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彼と小鳥と軍医

The Sky of Parts[01]

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

この物語は、軍事好きな筆者が作った育児モノ。


Web上での読みやすさ優先で、適当に改行などをいれたりしてあります。


「あっ! おかえりなさい、父上。

 今日も、ボクは、お言いつけを守り、いい子にしていました。

 抱きしめて下さい。

 今度は、ボクとの約束を父上が守る番です!」


「ルイーナ、ただいま。

 いいだろう。さあ、父の胸の中に来ると良い。

 おや。

 ダイニングテーブルの上に置いてある写真を、今日も眺めていたのか」


「あ。はい。

 父上が下さった写真。ボク、すごく気に入ってしまって。

 特に、鉢植え――白い机の上に置かれた鉢植えの写真が、とても好きです。

 この写真と同じような青い花の鉢植えを頂き、ありがとうございました。

 お部屋の中でも、陽がよくあたる場所をさがし、そこに置いてちゃんと世話をしています。父上から頂いたものなので、大切にします。

 七歳になりましたが、まだまだ至らないところがあるボクです。心配して、割れない素材の鉢を用意して下さった事、嬉しく思います。

 ――他の写真も、とても良いんです。

 眺めていると、時間を忘れてしまうぐらいに。

 ぶろぐ?

 でしたっけ?

 そういったものの写真って聞いたおぼえがあります。どんな人が撮ったんだろう?」


「ふふ。

 ルイーナ、その撮影主には、近いうちに会える。

 近いうちにな――」


「え? どういう事ですか、父上」


「……おや、すまない。

 ルイーナ。

 いったん、床におりてくれ。端末の呼び出し音が鳴っている。おそらく、タケからだ」


『閣下。

 このご報告が、プライベートな連絡経路を利用している事をお許し下さい。

 一報を入れるのなら、一刻でも早い方が良いと、竹内イチロウの独断でございます。

 ――天王寺アリスの身柄を確保いたしました。

 私の目の前で、ぐったりしています。

 使った薬の効果は、当分続きますので、次に目をさます時には、もう逃げ出せるような状態ではありません。

 この女が潜伏していた村の殲滅に向かわせた部隊も、こちらに向かっております。

 まもなく合流できるかと。

 今の話で、閣下に伝わっていないなどという事はあり得ないと思っておりますが、御命令通りに、すべての住人を消去済みです。

 この天王寺アリスの回収、極秘作戦にかかわりました者たちの記憶を操作する作業は、タワー『スカイ・オブ・パーツ』に戻りましてから、すぐに行います。全員分の薬は、調合済みです。

 ……あの。

 一つ、ご許可願えますか?』


「タケ、ご苦労だった。

 ん?

 このエリオット・ジールゲンから、何の許可がほしいというのだ。

 言ってみろ。

 先に、褒美として与えてやろう」


『……着替えますよ。

 私、今から、現場指揮官として、部隊と合流するんです。

 スーツも、ネクタイも、整髪料も、禁止しないで下さい。

 この指示だけは、『sagacity』が立てた作戦ではなく、閣下の御戯おたわむれだと思っております。

 閣下とは、大学時代からの長い付き合いですが、竹内イチロウといたしましても、こういった悪ふざけは困ります。

 ご許可をたまわったと信じ、身なりを整えさせて頂きます。

 今後は、こういった下知げちは、お控え下さいますよう、お願い致します』


「ふん。僕の方が、上官だぞ。

 竹内イチロウ。なんて、口のきき方だ!

 まあ、いい。

 お前だから許してやろう。彼女の護送と後処理、引き続き任せたぞ。

 ――細かい報告は、正規のルートで流してこい。

 どうせ、服装の件があったので、プライベート通信をしてきたんだろ?」


『ええ。

 それが一番の理由ですが、早めの報告は、ご評価願えますか。

 閣下。

 ルイーナ様にもお伝え下さい。

 ――母上さまを、悪いやつらから助け出しましたと』


「彼女にプライドを傷つけられたと、今でも強い憎しみを持っている竹内イチロウがそばにいると思うと、信頼できない発言だな」


『ご許可頂ければ、この場で、天王寺アリスの人生を終わらせたいぐらいです。

 ですが、閣下の御命令は絶対故に、ちゃんと御前ごぜんに捧げさせて頂きます。

 この私に見せた態度からして、この女は、閣下の前でも相当反逆すると思います。

 処分したくなったら、仰って下さい。

 竹内イチロウは、いつでも対応可能です。

 そもそも、『sagacity』システムは、戦略上、この女を必ず消すべきと言っているじゃないですか!

 そして、現実として、ブロガーを装って、反乱分子の連中と連絡を取りあい、我が軍を倒す企てを実行しようとしていた。

 後ろ手押さえつけて、地べたに顔を擦りつけてやった程度じゃ、私は納得できないんです!

 抵抗もできない今のうちに、首に少し力をかけておきます!

 ――冗談です。

 御意のとおりに。

 エリオット・ジールゲン閣下の御心おこころのままになるように、取り計らっておきます――』


「ははっ! いろいろ、了解だ。

 タケ、待っているぞ」


「父上、タケとは何のお話をされていたのですか?」


「ルイーナ。

 母上に会う事ができるぞ」


「え! 本当ですか!

 悪いやつらを、タケが倒してくれたんですか?

 母上を救い出せたんですか!」


「悪いやつらか――そうだな。

 ふふ。

 住んでいた村を滅ぼしたり、無理やり連れ去ったりするような悪いやつら。薬で眠らされ、救い出される姫君か」


「え?

 父上、どういう意味ですか?」


「そうだ、ルイーナ。

 お前が、気に入ったというこの写真、大事にしておいた方がいい――写る鉢植えも、白い机も、在りし日の姿だからな」


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