アリスとエリオット、互いの思惑
The Sky of Parts[09]
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この物語は、軍事好きな筆者が作った育児モノ。
Web上での読みやすさ優先で、適当に改行などをいれたりしてあります。
「……エリオット。二人きりになりたい。
他の部屋で、タケが監視モニタを見る事を、やめさせろと言うつもりはない」
「閣下っ」
「それは、どういう意味だ?
タケ……竹内イチロウという男はね、君、天王寺アリスよりも、ずっと長く僕に仕えてくれているんだ。
納得の理由がなければ、下がるようには言えない。
立場、分かっているのか?
アリス。
今の君は、僕から処分を言い渡されるのを待つ身だ」
「……ルイーナの事を話すんでしょ。
あの子の今後についても――。
だから、面と向かっては……エリオットと二人になりたい。お願い」
「……分かった。
タケ。
警戒した顔をやめろとも、この女の監視をやめろとも言わない。
あと、このまま手は拘束しておく。
どれだけ輝かしい戦績を残せる軍師と言えども、宿っているのは所詮は女性の身。
手の拘束がなくとも、僕に危害を加えるような真似はできないと、タケもよく分かっているはず。
何かあれば、すぐ呼ぶ。
……だが、このまま、本当にアリスが、僕に罰せられる事を受け入れてくれるのなら――竹内イチロウ。その時は、本当に下がってくれるか?」
「閣下。
お許し頂いた通り、心配りは、続けさせて頂きます。
そのお役目すらも、断てという事であれば……どうぞ、御二人で奥の部屋にでもお下がり下さい。
竹内イチロウの量見と致しましては、それを合図に、この任務を終了させて頂きます」
「さて……タケは下がらせたよ。
なにかな、アリス?
珍しく、お願いなどしてくれて。良く事が運ぶのを期待していいんだろうな?
対空ノイズ研究データの記録隠しに、アリス。君の書いた物語は、たしかに僕の想いそのもの。
――ずっと、君に向けていたものだ。
嬉しかったね……書く君の真意は分からないが、最低限、僕が君にしたい事や、君にしてほしい事を、理解してくれていたと思うとね。
ぜひに、あれをまっすぐな心に、偽りのない気持ちというものにしてくれないか?
いや、させるよ!
手段は問わずに――」
「――あれは、私の胸中そのものだわ。
エリオット。
私は、あなたが望む事、あなたが私に望んでいる事。それはすべて分かっていた」
「ふ。
僕に、人生最大の戦略を知られてしまったから、そんな態度なのかい。
アリス。
それとも、思い断つほどに、本当に降参で、これからは僕に服従するしかないと、すべてを放ってしまったのか?」
「ううん。
逆に気づいてくれていなかったの? 私が……たしかに、エリオットを愛しているって事に」
「アリス……?
どうして、憂いを顔に出さない? 物案じる様子を見せない?
優し気で、心嬉しい気配を、どうして纏える……」
「エリオット。
きっと、あなたは動揺して、そう言うと思っていた。
私だって、あなたがただの個人ではないと、『エリオット・ジールゲン』だと知った時は――私が、知っているつもりだったエリオットではないと分かった時は、それなりにショックだった。
でも、ルイーナを宿す事になった時、私のおなかにあの子がいた時、そして、あの子の顔を初めて見た時……私は、たしかにエリオットを愛していたと思うの。
あなたが、どう思っていたとしても」
「……僕も、アリスを愛していた。それは今でも変わらない。
でも、僕の愛し方が、君の望むものじゃない……そう言いたいのか?
だから、応えられないと。
……そうか。
いい。
言葉にしなくても。そのほんの少し心淋しそうな表情をして、心が孤独の中にあるという様子を見せてもらえれば、返事はいらない。
アリス。
情けなく見えるかもしれないが……顔に手を置いてもいいかい?
頭を整頓させてくれ。
……とりあえず、心配しているのか?
この件、アリスの研究結果を手にして、僕が、ルイーナに何かするのではという事を。
それならば、余計な憂虞を抱えなくてもいい。
扱う方法は……今までのようにはいかないし、Lunaには、もちろん即時に引退してもらう。
しばらくは、かなりレベルをあげて管理させてもらうが、対策は必ず講じると約束しよう。
その間、アリスには、母親として、ルイーナにしっかり寄り添ってやってほしい。
正直、神を恨んだよ。
僕が、ルイーナの父ではなく、ただのエリオット・ジールゲンであれば……良かったと思うほどに。
知らなければ良かったとさえ思ったっ。
まさか、ルイーナの歌声が、『sagacity』の稼働や処理を、狂わす事ができるなんて――」
* * * * *
「父上も、母上も遅いな……部屋、鍵かけられちゃったから、リビングにも行けないし。
そういえば、今夜は、月が出る日なんだ。
きれいな夜空になるかな。
夕飯の後で、二人の前で歌いたいな……歌、なにか作ってみようかな。
あっ!
そういえば、母上に言われていた事があったんだった。
……えっと。
この物語だったかな……?」




