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母子は偽り自由の中

The Sky of Parts[09]

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

この物語は、軍事好きな筆者が作った育児モノ。


Web上での読みやすさ優先で、適当に改行などをいれたりしてあります。


「……母上、大丈夫?

 仕事が忙しいからって、ちゃんと食べてる?

 ここ二、三日。食事は、後で仕事しながら部屋で食べるって言って……オレと父上が食べてる間も、ずっと仕事してるじゃない」


「ルイーナ。心配してくれていたのね。

 大丈夫。母さん、ちゃーんとご飯食べてる。あなたの小さい頃の動画とか観ながらね。

 頭も十分にリフレッシュしたいから。

 ふふ。

 可愛いあなたを見ていると、目からも栄養補給できるわ」


「そっかー。

 良かった。父上のご機嫌なおったし。

 オレ、言い過ぎてたところあったから、父上もちょっと懲らしめてやろうと思ったんだろうな。

 調理は、子供のオレには危ないからって、ずっとダメって言われていたけど、前からパンケーキって焼いてみたくて――材料を混ぜるところから手伝って良いって言ってくれて。

 楽しかった!

 母上は見てるだけだったけど……あ、お仕事してたんだったね」


「……そうね」


「やっぱり優しいな、父上。

 今日も夕食後は、ボードゲームか、トランプで遊ぼうね。三人で、ああいう『敵対』って面白いよね。

 あ、絶対にオレが勝つから楽しいわけじゃないよ!

 だって、父上と母上は、どうやってオレを勝たせるか、いろいろ考えてくれていて、それ、分かっていたんだ。

 毎回、二人がオレの勝利の為に、協力してくれてるって。オレは、二人に愛されてるんだなって。

 へへっ。

 また良い歌詞や曲が作れそう。

 プロデューサーATも、主君エリオット・ジールゲンも、びっくりするようなLunaの新曲――最初に発表するのは、二人の前だから!

 リビングのソファに並んで座って、二人で一緒に聴いてね」


「……私が、エリオットを倒そうとして、そして、エリオットも私を倒そうとする……結果として、ルイーナが勝っているだけ。

 私たちは、終戦なんてしてはいない。今も『敵対』している」


「母上は、何かあるとすぐに父上と『敵対』してるって言うよね。

 今回、父上とちょっと仲悪くなっちゃったかな……って思ったけど、その後は、前よりも父上の事を好きになった。

 オッケー。

 オレの大好きな父上と母上が、『敵対』が終わって、仲直りして、前よりもずっと深く愛し合えるように――」


「……嬉しいね、ルイーナ。

 そんな風に考えてくれているって――やはり、僕の大事ないとし子だ」


「エリオット……」


「父上っ!」


「おいで、ルイーナ。

 この胸の中に。

 小さい頃のように、母上の温もりを感じさせてあげられなかった頃のように。お前の心が穏やかになるように、この父が抱きしめてやろう。

 ……おや、アリス。

 もっと妬いてくれるかと思ったのに。

 目に宿すものからは、強い意志を感じるが、冷静にしている。

 ああっ。

 許してくれ!

 仕事から、そのままの足で来たんだ。

 だが、今日はちゃんとマントを羽織ってきた。

 この前、軍服姿で君の部屋に現れた時、ルイーナが少し身がすくんでいるんじゃないかと、アリス。君が指摘してくれたので、気をつけてはいるよ。仕草しぐさや、顔つきはね。

 優し気な声を出せるようにも、努力している。

 仕事は忙しいが、僕だって、急に大切な――家族の顔を見たくなる事はあるんだ」


「父上の軍服姿、見た事は何度もあったけど、この前は、たしかにちょっと怖いなって思った。

 でも、オレが、Lunaの時に違う顔を見せるように、父上も、お仕事の最中さいちゅうは違う顔を見せてもいいと思う。

 今日は、もうお仕事終わったの?」


「いや。すまない。

 今からルイーナ――お前のプロデューサーと話がある。

 後で、Lunaにも大事な事を伝えなくてはならない。さあ、お部屋に戻って待っていて。必要な段階になったら、呼ぶから。

 ね?

 アリスは、僕と一緒に来てくれるね」


「……ルイーナの子供の頃の動画……今から見ようと思っていた。

 戻ってきたら、見てもいいか?

 エリオット。

 お前の用事が、長い時間を取らせないという意味で、確約がほしい」


「ふふ……別に構わないよ。

 どうしたの?

 気をつけるよ、軍服姿で君の前に現れる時は。そんなに神経質にならないでほしい。すぐに帰って来れるさ。

 ――でも、僕の仕事は、知っているはず。

 アリス。

 慣れていってほしいな。この姿の僕と、一緒に過ごす事に」



* * * * *



「さて、アリス。

 久々に視力に加えて、聴力を奪い、腕を自由に動かす事も制限させてもらった上で、僕の執務室に来てもらった。

 そして、今も腕は動かせない……気づいているみたいだな。

 今日、なぜ呼ばれたのか。

 視力を奪わせてもらっているのは、このフロアの配置を、完全に把握されない為。VRゴーグル……と君が命名していたね。廊下移動が必要な際は、今でもあれをつけさせてもらっていた。

 でも、お願いしてくれれば、あれも外して、自由にさせてあげられたんだよ。

 だって、アリス。君は、この僕に忠誠を誓ってくれて、功績も十分あげている。

 正直、タケへの示しをつけるぐらいのつもりだったんだ。

 ――僕の部下になってくれた日から、処遇の変更はちゃんと行っていた。

 どうしてだろうね。

 今日の君は、僕の部下として来てもらったのかな? いや、部下だからこそ、動きを制限されて、あるじの前に立ってもらう事もあるんじゃないのか?」


「エリオット。

 私の書いていた物語を読んで、その感想を伝えたいと?」


「うん。さすがはアリス。

 だが、もっとさいなませてくれて、僕の口から言わせてほしかったな。

 いや、いい。

 今から、たっぷり小突きまわさせてもらうから。

 ひどいなぁ。

 アリス。

 こんな重大な発見をしたのに、黙っていたなんて……上司としても、ルイーナの父としても、それなりに怒れてきているんだ。

 いいよね?

 ちょっとぐらい、君をいじめても。

 君も確信をもったのは、この前、僕の元『仕事場』でのライブの後みたいだが、逐次報告は必要だったんじゃないか?

 それにしてもすごい。

 データとしての記録は、暗号化して残すが、それを使っての科学技術計算処理は、君自身が行っていたんだろう?

 心の中にあるソフトウェア……そんなものは、いくら『sagacity』だって見つけられない。いくら戦略関連の情報だっていってもな。

 苦労したよ。

 記録データにしても、あんな物語の中に隠すなんて――。

 ふふ、嘘。

 楽しかった。

 天王寺アリスの謀計ぼうけいを暴いて、打ち砕けたら……君を、あんな風に扱って良くて、そして君も、僕の望む通りになってくれるのかと思うと。

 そうさせようと強く渇求かっきゅうしたから、少しでも早くその未来に到達したくなった!

 ……アリス。

 今日は、近づくなとは言わないんだな。

 いつもなら、僕に抱きしめられたら、すぐにののしり始めて、暴言を撒き散らしてきて、タケの口汚い言葉が吐かれる展開になるのに。今回は、本当に観念しているのか?

 もう万策尽きたって」


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