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叫び  作者: 沼池 うろち
6/7

叫び6

 見られてる、見られてる、見られてる、見られてる・・・・


 一瞬、後輩の視線に気を取られて手元が狂う。


 先手を取って叱り飛ばす。

 どこ見てんだ!製品見ろ!と


 見てる、見てる、見てる、見てる、見てる、見てる、見てる、見てる・・・・


 上司がなぜかすぐ後ろに立っている。

 何か用ですか?!今加工中ですよ!と

 責めるように言うと客からの問い合わせで聞きたいことがあったらしい。

 

 見られた、見られた、見られた、見られた、見られた、見られた、見られた、見られた・・・・


 隣の機械で加工してるオペレーターが笑ってる。

 今の一瞬の操作ミスを見られた。

 

 後輩に聞く、さりげなく何事も無かったかのように

 今製品大丈夫だったか?と


 「いや、何も気がつきませんでしたけど、どうしました?」


 本当に抜けてやがる。

 全然製品見てないのかこいつはさっき見とけって言ったばかりだろう。

 

 事務と兼務だからってお客様気分で加工してんじゃねぇよ!と

 叱り飛ばす。


 そして製品を確認して何も不具合が無いことを確めて、ほっと一息つく。


 そもそもあのくらいの一瞬の操作ミスでどうこうなる物じゃないのだ。

 

 それを笑いやがって、加工中によそ見しやがって、

 隣の機械のオペレーターに怒鳴り散らしておく


 加工中によそ見して集中力が足りてないんじゃいないか!と


 そもそも俺は完璧に仕事をしている。

 適当なことをやってるのは周りのほうじゃないか!

  

 その日も残業が終わり一人夜の夜中の交差点で信号が変わるのを待っている。

 だが今日はなかなか信号が変わらない。

 誰かが追ってきているのに。

 

 仕事中に粗が見つからないからと

 とうとう帰り道まで監視し始めた。

 

 また、いつだかの話声が聞こえる。


 「なんで、皆俺を責めたがるんだか、コレだけ完璧に仕事をこなしているのに」


 俺と同じ境遇のそいつについ同情して小さな声で答えてしまう。

 「優秀すぎて皆が嫉妬しているんだ。どいつもこいつも世の中にはろくな奴がいない」




 「へーえ、そのろくでもない奴らはどんな姿をしてるんだい?」

 普通に声の主が、話しかけてくる。


 「な、なんであんな小さな声で答えたのに聞こえてるんだ?」

 思わず全身に震えがはしる。

 頭のてっぺんから背中まで寒気が走り、足が完全にしびれて動けなくなる。


 「聞こえるも何もお前は誰の声を聞いてるんだ?

   こんな夜中の誰もいない交差点で

    一体誰と話してるんだ?」



 その瞬間正面の赤い信号から血の様な赤が迸り暗闇を真っ赤に染める。

 あらゆる物がゆがみ始め、その軋みが世界の叫びとなって聞こえてくる。

 どんなに強く耳を閉じても、その大きすぎる叫びは小さくならない。

 

 誰かが、誰かが赤い世界にいる黒い影が、自分を責める為に近づいてくる。

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