威力偵察
だがそれから数十分、一向にラ―べは攻めてこなかった。
「もう、首が、痛い」
ずっと空を見上げているので、大分首に負担がかかっている。
だが少しでも空から視線を反らせば高度を下げてくるので、大きく、近付いてくる鳴き声のため少しも気を抜けない。
さっきアプフェルのお陰で盛り上がった雰囲気も、戻ってしまった。
「あいつ、何のつもりですの?」
「カラスは頭が良いからな…… 僕たちが疲労するまで待っている気だろう」
「でも、カラスはそんなに長く飛べるものなのか?」
確かに、カラスが渡り鳥みたいに何時間も飛ぶところは見たことがない。マリグネと化したラ―べも同じはず。
ということは。
鳴き声のリズムが変わり、こちらの警戒心を喚起するかのように甲高くなる。
「疲労がたまるギリギリまで飛び続け、可能な限りこっちの疲労を誘ってたってことか」
ラ―ベは旋回する角度を変え、こちらに降りてくる。
だが動きが遅く、十分に目視できるレベルだ。
僕はストーン・ゴーレムをアプフェルとツィトローネの盾にする。
ズィーベンと初めて接触した時と違い、守られることを拒否せずにアプフェルは大人しくストーン・ゴーレムの影に隠れた。
いや、自分が出るまでもない、ということだろうか。
「来る方向さえわかっていれば!」
ローデリヒが先頭に立ち、剣を構えた。カウンターで真っ二つにしようという腹だろうか。
ラ―べは先細の口を開き、不気味な舌を見せて爪を振り上げてくる。
普通のカラスより爪が長く大きい。抉られれば腕の肉くらい簡単にこそげるだろう。
「絶妙剣!」
ローデリヒが正眼に構えた剣を凄まじい勢いで振りあげ、そのまま振り下ろす。
無駄や虚飾の一切ない、洗練された縦一文字の斬撃。
正眼からの正中線を取っていく、彼の流派の代表技。
だが。
ラ―べはローデリヒに突っ込まず、そのまま空に飛んで行ってしまった。
逃げたのかと思ったが、側の木に止まりこちらを監視するようにうかがっている。
「どういうことですの? ローデリヒに恐れをなした、ということ?」
ローデリヒは唇を噛みながら首を振る。
「いや、僕は弄ばれていた」
「つまり、あいつの、狙いは」
「僕らを徹底して疲労させることだ」
単に上空を旋回し続けるやり方から、威力偵察を織り交ぜるやり方に切り替えたのだろう。




