強引に恋愛したらうまくいっちゃった話。~恋は駆け引き派?直球派?~
私がこの海に通うようになってから、9度目の春が訪れた。
もう4月にもなれば、桜などの美しい花が開花してくる頃。しかし、その花を愛でていられるほど、私の精神は落ち着いていられなかった。
この海で起こったあの出来事は、桜たちを忘れるくらい印象深く、奇跡だったのだから──。
私は、9年前──19歳くらいの頃から、暇があるとこの海に来ていた。
いつも通り浜辺で海を眺めていると、珍しく人の気配が。後ろに振り向くと、
「あっ、どうも…」
釣り人登場。(キョトン顔)
「どうも…って、もしかして櫻井さんだったり…?」
彼は、知人以上友達以下、とにかく接点のない地域の人。
けど、優しくて、スイーツが好きな、どこにでもいるお兄ちゃんみたいな、地域のおじいちゃんおばちゃんのかっこいいヒ-ロ-だ。ちなみに、私のひとつ上の方なので、私の初恋相手だったりする。
「うん。知ってるの?俺のこと」
「もちろんですよ! っていうか、前も来てましたよね?」
「よく覚えてるなあ。だけど、3年くらい前じゃなかった?」
「やっぱり印象は残ってて。櫻井さんって、今日はお休みですか?」
「うん。2日くらいもらえたの」
「そうですか~。毎日頑張ってますもんね」
「そうかな?わからないけど」
彼がはにかむように笑う。本当、どんな表情してもかわいいなんて、罪つくりだと思う。
「そういえば、君、手ぶらだけど、何も持って来てないの?」
「はい、散歩してただけなので」
「親とか、知ってるの?こんな所にひとりでなんて…。絶対、めちゃくちゃ遠いんでしょう?」
確かに、この辺りに家がないから、そう思うだろうし、実際私の家も、駅2つ分は歩く所にあるんだけど。
「今、両親は旅行に行ってるんです。そしたら、飛行機内で事件が起こっちゃって…。解決するまで帰してもらえないから、観光してるみたいなんですけど、それが結構難事件で、なかなか解決しないんだそうです…」
今思うと、何でこんなこと話たのだろうと思う。けど、このやり取りが、私の運命を変えたのでした。
「じゃあ、君、ひとり暮らししてるってこと?」
「そうですね」
「それだったら…ウチに泊まる?」
「えっ!? あの、お気遣いはありがたいんですけど、そういうのってあんまりよくないと思うんです──って!?」
急に腕を引っ張られ、近くの彼の(?)車に乗せられた。
「あの…何が…?」
「会社の人。見られたくないじゃん」
「あっ、ああ…(苦笑)」
「ところでさ、好きな人とかいるの?」
そう。ふたりきりの男女だから、こういう話題もあるのだろう。
「私は……櫻井さんですよ」
「……ええ~!マジで!?」
驚きを隠せない様子の櫻井さん。まあ、ほぼ告白してるんだよね…。
「はぁ~……いやぁ、驚いた。まあ、今日は遅いから送って行くよ」
「あっ、ありがとうございます」
会話していると、あっという間に家が見えた。
「本当にありがとうございました。また、明日会えませんか…?」
「ああ、うん。夜のうちに荷物まとめておいてね」
「えっ?」
「君、ひとり暮らし続ける気? 君がよくても、俺が心配」
そんなこと真顔で言える櫻井さんもかっこいい! じゃなくて、私は…彼と一緒に暮らす…?
…駄目。想像しただけでヤバい!w
「あっ! 連絡先、教えてよ」
「はい、それくらいなら…」
「ありがとう。じゃあ、また明日」
「はい、それでは」
──翌日。
私は海に来た。といっても、荷物があるのが違和感。
「あっ…お-い! おはよー!」
後ろに櫻井さんが。私はおもいっきり手を振って、彼の元に駆け寄った。
「おはようございます、櫻井さん」
「じゃあ、行こうか」
やっぱり、彼の家で暮らすんだ……。不安だけど、嬉しい。
「お願いします」
荷物を渡し、車に乗る。彼の家は、結構近くて、私の家に行った時よりすぐに着いた。
「ごめんね、散らかってるけど」
しかし、その言葉が社交辞令にしか聞こえないくらい、本当に片付いていた。
「じゃあ、適当に座ってて。ソファーにでも」
「はい、失礼します」
「──そうだ! 今日さ、急に仕事入っちゃって。打ち上げあるって言ってたから、先に寝てて良いよ。…あっ、ちゃんとベッドでね。2階にあるから。俺はソファーで寝るかもしれないけどw」
「ベッド…って…!?」
思わず赤くなる。だって、櫻井さんが寝てるベッドだよね…?
「大丈夫だよ、まあ、好きなように留守番しててよ。じゃあ、行ってくるから」
「あっ、はい、行ってらっしゃい…」
出かけ間際、彼に手を振ると、櫻井さんも笑って返してくれた。こういうの、新婚みたいでいいなあ、なんて幸せを噛みしめる私だった。
数時間の留守番も、彼の家を見ていたらあっという間だった。
「ただいまー!」
…あっ、寝てて良いよって言われたのに。
「お帰りなさい」
「…起きてたの。気使わせちゃった?」
少し気がかりな顔をする彼。やっぱりまずかったかなぁ。
「いえいえ。私が勝手に起きてただけですから」
「ならいいか。……ああ疲れた~」
「大変だったんですか?」
「まぁ、いろいろやったからね」
「じゃあ、お風呂でも入って来てください」
「うん、ありがとう」
脱衣場に行った彼を、着替えを持って追いかけると。
「着替え、置いておきますね」
「ありがとう」
上半身裸でズボンに手をかけている櫻井さんをみるだけで、顔が熱い。意識したら負けの同居生活は早くも無理ゲーだと思う私だった。
「ふわぁ~、気持ちよかった!」
お酒も入っているせいか、ふわふわしたテンションの様子。
「そうでしたか、よかったです…──っ!?」
一気に赤くなっていくのが自分でもわかるほど、彼はセクシーだった。そりゃあパジャマを用意したら着てくれたのは嬉しいんだけど……。
「えっ? どうしたの?」
なんというかこう、色香に溢れてる。特に、お風呂上がり特有のかきあげた髪の毛とか……。
「いえ、何でもないです」
「そっか」
彼はそれだけ言うと、ビールの缶を開けた。って、まだ飲むの?w
「──っ!?」
放っておいたら、急に後ろから抱きしめられた。櫻井さんって何でも急だから心臓に悪い…。
「ふわぁ~、眠い……」
私のことを抱き枕にして、ソファーに座る彼。眠いならベッドへ、なんて言えない。というか、甘えっていうレベルじゃないよ、甘えん坊さんっ!
「あのさ」
そこで沈黙を破ったのは、櫻井さんだった。
「俺………君のこと、好きなんだ」
「えっ……!」
「だから…俺と、付き合って欲しい」
後ろからの抱き枕状態のため彼の表情はわからないが、その声と雰囲気から真剣さは十分伝わった。
彼の方に向き直ると。
「──っ!?」
今度は正面から抱きついてきて、気がつくと──唇に、柔らかい感触があった。彼は、目を閉じて、私にキスしていたのだ。
「「…………」」
お互いに体を離す。
ベッドに入っても、その事の真意を考えていたら、大して寝れなかった。
翌日。朝起きたら、目の前にイケメンがいた。
「──って、櫻井さんだ」
まだ寝ているようだ。っていうか、なんでベッドで私と寝てるの。
「まあ、それは酔っぱらいのことだから置いといて」
彼を眺めていたら、ふと昨晩のことを思い出した。
──『好きなんだ。付き合って欲しい』
確かに、彼はそう言った。真剣に。でも、本気で告白されるなんて初めてだから、未だに信じられない。
一旦、朝ごはんを作ってみようと思い直し、ベッドを出た。
ちょっとキッチンに失礼して、朝ごはんを作ってみた。
「…おはよー。──あっ、朝ごはんありがとうね」
何事もなかったかのようにいつも通り(?)な彼。念のため、昨晩のことを話した。
「──と、いうわけで。覚えてますか?」
「…………あっ!」
恥ずかしさがこみ上げてきて、黙り込んでしまう。
「……あのさ」
目を逸らし、赤くなって呟く彼。
「昨日のアレ…ごめんね」
"アレ"とは、明言はできないキスのことだろう。
「…いえ、大丈夫ですよ」
「初めて…でしょう?」
「まあ、はい」
「それは、本当にごめん」
「大丈夫ですって。だって私──あの告白、OKするつもりだったんですから」
「…えっ?」
彼が固まったので、はっきりと告げる。
「私も、櫻井さんとお付き合いしたいんです」
「……嘘? 本当に?w」
自分から告白したはずなのに信じられない様子の彼。
「それより、櫻井さんは本気だったんですよね?」
「うん。俺、君のこと好きだよ。…ひとりの異性として、ね。
本当は海で見た時から気になってたんだけど、一昨日改めて話して、気持ちがはっきりしたんだ。……あ~、言っちゃったよ、お酒って恐いね!w」
朝食後。ふたりでソファーに座っていたら、彼が私の肩を抱いてくれた。彼の方を見ると、恥ずかしいのか、そっぽを向いていた。それが可笑しくて笑ってしまう。
「ちょっ、なんで笑うの?w」
「恥ずかしいならやらなきゃいいのにって思って……w
やるなら、昨日みたいに正面から抱きついてくださいっ!w」
「えっ…こう?」
腕が体に触れるか否か、というくらいぎこちない。だから、いっそのこと、私からおもいっきり抱きついた。
「わっ、倒れるよw」
「押し倒してあげますか?w」
「うわっ、まだ朝だからダ~メ」
「拒否しないんですねw」
「だって、嫌じゃないから」
「…あっ、櫻井さん。いい加減、離してもらっていいですか?w」
「えっ、あっ、ごめん、ずっと抱いてた」
「嬉しいですけどね」
「じゃあ、ずっと抱きしめてようか?」
「どこの王子様キャラですか」
ちょっとツッコんでみた。それが可笑しくて笑い合う私達。
そして、散歩することにした。
「「ただいま~」」
もう家と化している彼の自宅。
「じゃあ、お昼作りますね」
「あっ、いや、俺が作るよ」
「そうですか?」
「うん、女の子なんだから、座ってて」
「はい、できたよ」
「おぉ、本格的!」
「どうかな、不味くない?」
「すごく美味しいですよ」
「…の割に元気ないね」
「いや、負けないように頑張んないとなぁって」
「そう? 君のも美味しいよ」
「それはきっと、彼氏の欲目とかですよ」
「そうなのかなあ。……っていうか、改めて彼氏とか言われると恥ずかしいねw」
「そんなの知らないですよ~」
「そりゃあそうなんだろうけどさ~w」
赤くなって俯く彼。20歳は超えてるはずの彼の年齢に疑問を覚えてしまった。
同居生活改め同棲生活が、一年経とうとしていた。
まだ肌寒くも春らしくなってきた今日に、俺は、彼女を食事に誘った。
「圭人くん、こんばんは」
後ろから、聞き慣れた声。とても大好きな、彼女のかわいらしい声がした。
ちなみに、圭人というのは俺の下の名前で、付き合って半年くらいに、そう呼んでと頼んだ。
「じゃあ行こっか」
歩くこと数分。駅からそれくらい近い所に、目的のお店はあった。
「は~、こんなレストラン、緊張しますね…」
彼女が不安そうな声を出したので、俺は彼女の手を強く握って、お店のドアを開けた。
「いらっしゃいませ。2名様ですか?」
「櫻井圭人で、予約を入れたと思うのですけど…」
「かしこまりました、こちらへどうぞ」
お店の奥の個室に通された。歩いている間、人見知りな彼女は、目付きの鋭い店員にビクビクして、俺にくっついていた。
「ご注文が決まりましたらお呼びください」
メニューを置いて、目付きの鋭い店員は去って行った。彼女は、やっとという声を出す。
「でも、急にこんな所、どうしたの? まあ、圭人くんはいつでも急にだけどw」
彼女は、最近タメ口になってきた。それが実は嬉しかったり。
「たまにはいいじゃない、こういうのも」
「そうですね」
彼女にメニューを見せている間に、コートのポケットを確認する。──うん、大丈夫。
そこには四角い箱がある。中身はもちろん(?)、指輪だったりするわけで。
つまり、今日食事に誘ったのは、サプライズプロポーズ大作戦ってことで。
どんなに愛しくたって、彼氏彼女なら、キス以上はそう簡単にしていいもんじゃない。とはいってももちろん体目当てじゃない。彼女を幸せにして、守ってあげたい、家庭を築きたい、ただそれだけだ。
「……どうしたの? ずっとこっちみて」
「ん? …君がかわいいから見惚れてただけ」
「…………っ!」
俺の言葉がからかいだと気づかないのか、赤くなっていく彼女。──本当にかわいい、見惚れちゃうよ。
「「ごちそう様でした」」
そんなこんなで食事を終え、彼女の知らない、今日の本題に入る。
「……あのさ。…今日呼び出したのは、話があるからで」
「え…?」
緊張してうまく言葉が出ない。告白はあんなに簡単だったのに。ポケットに突っ込んだ手も唇も震えて、心臓がバクバクいってるのがわかった。
「…その…」
震える手で箱を開く。そして──運命の話を告げた。
「…僕と、結婚してください」
「……そんな…っ、…そんなことって……」
彼女は、目に涙を浮かべ、にっこりと笑い、うなずいてくれた。
そんな彼女を見て、俺も、彼女のことを愛しいと思う気持ちがとめどなく溢れてきて……気づいたら、俺も泣いていた。
「……って、なんで圭人くんが泣くの~w」
涙を拭いながらツッコんでくるけど。
「しょうがないじゃん、嬉しいんだから」
「フフフっ、私も、嬉しいです」
どちらからともなく体を近づけてキスをする。
「圭人くんっ」
「ん?」
「大好きですっ!」
「うん。俺も、大好き。」
──こうして、約1年の同棲生活を経て、彼女が20歳になる6月に、結婚することを決めたのでした──。
はじめまして、有岡櫻愛です。
いかがでしたか?
小説は初めて書いたので、これが私の処女作となります。
テーマは、恋愛です。本当は、もう少しコメディ感を出したかったのですが、
時間の関係上、ここで終わらせちゃいました……(泣)。
更なる技術向上の後、もっと違った視点から恋愛小説を書こうと思いますので、
その時も、ぜひお付き合いくださると大変嬉しいです。
最後に、ここまで読んでくださり、誠にありがとうございました!