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11月29日

 また、二週間くらい空いちゃった。

 もちろん、勿忘草には毎日欠かさず水やりしてるよ。

 そうそう。約束通り、たまきさんや生田くんたちが見に来てくれた。大切に育ててるのがよく分かるって、またほめられちゃった。自分の子供をほめられてるみたいで、すっごく嬉しい。

 よくお母さんがわたしのこと、自慢の娘だって言ってくれるけど、その気持ちがちょっとだけ分かったかも。

 自分で言うのも何だけど。


 それから昨日、お母さんと一緒にお出掛けした。お嫁に行ったお姉ちゃんも一緒。すっごく久しぶりに会った気がする。

 実はお姉ちゃんは、わたしが引っ越したこと知らなくて、一回も来てくれていなかった。そんな大事なこと、何で今まで知らせなかったのって、怒られちゃった。

 本当は引っ越しが決まった時点で、お母さんはお姉ちゃんにも言わなきゃいけないって準備してたんだ。もともとあまり体調がよくないっていうのは、知らせてたから……だけどわたしが止めた。だってお姉ちゃん、子育てと家事で忙しいし、余計な心配かけたくなかったの。ごめんね。

 今日は日曜日で、旦那さんと子供たちはお家で留守番だって。わたしにとっては、おいっ子とめいっ子ってことになるのかな。めちゃくちゃ元気で、手がかかるって言ってたよ。今日は旦那さんにまかせっきりだから、久しぶりに楽だって笑ってた。そんなこと言って、幸せなくせに。ふふ。

 そんなわけで女三人水入らず、久しぶりに遠出することになった。

 もうすぐ十二月。雪が降って、本格的に寒くなる前に、おばあさんに会いに行ったんだ。

 去年もおばあさんに会ってきたけど、今年はなんだかこれまでと気持ちが違う気がして。ちょっと、緊張した。

 着いて早々、おばあさんに定例報告。今までのこと、これからのこと、そして勿忘草を植えたこと。

 食堂でみんなとお話をするのが、楽しいこと。

 お母さんや近藤先生がお話に来てくれて、嬉しいこと。

 大好きな小説のシリーズ作品が、やっと完結したってこと。

 勿忘草の成長を見守るのが、最近一番の楽しみになってきてるってこと。

 包み隠さず、おばあさんに打ち明けた。おばあさんは黙って、わたしの話を聞いてくれる。

 いつも、そうだった。


 今までわたしはお母さんと二人暮らしだったけど、これからはお母さん一人になるから、何かあったらお姉ちゃんに托すからね……帰り際にそう、お姉ちゃんにはお話をした。

 お姉ちゃんは涙ぐみながら、いいよと言ってくれた。

 泣き虫なんだから、もう。


 おばあさん。もうすぐ、一緒に暮らせるね。

 その時にはまた、昔みたいに一緒に、植物を育てよう。おばあさんのいるところは広いから、たくさんのお花も、お野菜も、育てられるね。

 ……なんて言ったら、おばあさんは怒るかな? でも、これは仕方ないことだから。

 何も言わないで、いつものように受け入れてほしいと思ってる。


 そのまま昨日はおばあさんのところに泊まって、帰ってきた。

 疲れちゃったからすぐにベッドに横になって、眠っちゃった。その間に、お母さんが勿忘草にお水をやってくれたみたい。ありがとう。

 昨日お出かけ前にたくさんお水やっといたんだけど、正直ちょっと心配だった。でも起きてから見に行ったら元気そうだったので、ホッと一安心。

 明日からも毎日、お水をやらなくちゃ。

 わたしが自分の手で、ちゃんとお世話できる間は。

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