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10月3日

 定期的に、近藤(こんどう)先生が来てくれる。

 毎日誰かしらお客さんがいるわけじゃないから、外へ出歩かない限り、基本的にわたしはお部屋で独りぼっち。それを案じて、自ら話し相手になってくれているのだ。

 植物に詳しい先生に、窓際の勿忘草を見せた。

 いつごろ種をまき、いつごろ芽が出たか、順を追って説明すると、よく育っているね、と笑顔でほめてくれた。結花(ゆうか)さんが、愛情をこめて毎日世話してあげているからだね、とも。

 わたしをほめる時に、頭をなでてくれるのが好き。大きな手で、頭を包み込まれるように、ふわりと優しいぬくもりが伝わる。その感触がすごく心地いい。心に春風が吹いたように、やわらかな気持ち。

 でも何より、近藤先生が笑ってくれるのが、好き。

 普段は怖いくらい均整のとれた真面目そうな顔つきなのに、笑うと顔全体がくしゃっとなって、本当に楽しそうで、生き生きしてる。目尻に放射状のシワが寄るんだ。それがまた、かわいいの。

 私より年上の男の人捕まえて可愛いだなんて、失礼にもほどがあるかな。でも、そういうのってみんなあると思うんだよね、女の子なら。

 なんていうか、母性? ちょっと違うかもだけど。

 好意を持つ(恋愛的な意味とはちょっと違うんだけど)男の人を、かわいいなぁって思う気持ち。ぎゅーってしたいなって、思うあの感じ。

 何とも説明しがたいけど。


 ……ちょっと、話題がずれちゃった。

 それで近藤先生は、勿忘草がもう少し大きくなったら、やっぱりもっと大きいのに植え替えた方がいいってアドバイスをくれた。よく育っている中から一つか二つだけ植木鉢に残して、あとの苗はプランターに、出来るだけ広い間隔を置いて植えるといいんだって。

 肥料はどうしたらいいかって聞いたら、無いなら無いで特に問題はないみたい。まぁ、うちの庭の土はおばあさんが管理してたから、土自体に結構栄養はあったと思うけど……。

 どうかな。思うように育たなかったら、また考えてみよう。

 それから苗にアブラムシが付きやすいから、その都度ピンセットでこまめに取るか、殺虫剤を置いておくといいんだって。あと、風通しがよくないとそういう害虫が出やすいから、定期的に換気をすることもいいんだって。


 そんなことを、たくさんお話して。

 近藤先生は帰り際、窓際に置くための小さな台を一つくれた。娘さんが、昔使っていたものなんだって。少し低めだけど、シンプルで可愛い。何よりベージュとベビーピンクっていう色合いがたまらないよね。

 そこに置くなら、もう少し大きい植木鉢でもよさそうかなぁ。せっかく枕元でも成長が見えるようにと思って植えたけど、結構いっぱい芽が出てきたから、いつかはどうせ植え替えないといけないし。

 お母さんに、また探しといてもらおう。

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