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悪魔の涙は誰が為に  作者: 考える2丁拳銃
1/5

暴走

ーぼんやりとした微睡の中で意識が覚醒するような、幻の中へ引きずり込まれるような、不思議な感覚。



あたり一面、焼け野原



存在していたことの後味すらも感じさせない、圧殺された大地。

そこの上にに一人佇む青年と思しき人物が、其処にはいた。



元は美しかったであろう白のショートヘアを返り血で真っ赤に染め、彼は虚ろな目で空を見上げていた



ポタリ、ポタリと彼の頬を赤い涙が伝う。


それは次第に速度を、勢いを増していった。



赤い雨。


肌に伝わる生温かさは、それがつい先ほどまで命ある者たちに流れていたのだと否が応でも感じさせる。




頭痛がした。



『おのれ糞餓鬼…今に見ておれ、その力我が間にねじ伏せてくれる…!』



怨嗟のこもった頭に響いてくる言葉



「五月蠅い」



パチン、と指を鳴らすとそれは小さく『ヒッ』と戦慄いてそれきり声は聞こえなくなった。



静寂



赤…


赤…


赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤。




ああ、そうだ。数分前まではここは戦場であった。


人と魔人が剣を交え、獣と獣がぶつかり合った。

今となってはその痕跡はどこにも無く、肉片さえも残らず消し飛んだ彼らは血の雨となって大地に降り注いだ。



生暖かく、ドロリとした気持ちの悪い感覚が少年を包み込む。



震える体に少年は手のひらを見つめた。見るからに人のそれでは無い、赤黒く変色し今もなおドクドクと脈打つ右腕。


それは先の暴走で傷つき、その醜さは目を覆いたくなる程だった。


痛みなど感じない。彼の中にあるのは償えぬ過ちを犯したということへの恐怖と抱えきれぬほどの罪悪感。




「僕は、何を…なんて…ことを…」




人間界と魔界の片方の存亡をかけた大戦。彼は掃討した。



一片残らず。



英雄となるはずの彼は、








人類最悪の罪人となった。





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