表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月の階  作者: 茶野
2/7

 仕事はすぐに終わった。イスタニア皇帝がうっかり逃がしてしまった愛玩ワニを捕まえて檻に入れるという、なんとも簡単なものである。しかもこの依頼は十回目である。数秒でワニの居場所をつきとめ、数分でそこへたどり着き、檻に入れるのは一瞬で終わった。ヴェルデとシセルはただ見ているだけだった(ただしシセルはワニに触ろうとして、皇帝の侍従に叱られた)。

 城から徒歩一分のイスタニア支部に戻り、支部長ダグラスに報告して、アジェスは自分の部屋へ帰った。手紙を取り出して、また読む。

「なるほどなるほど」

 いつの間にかシセルが一緒になって手紙をのぞきこんでいた。

「さっきの話は本当に本当なんだな」

「だから言ったじゃないか」

「でも、あんたはそのフォルミカってやつのこと好きなんだろ?」

「ただの幼なじみだよ。俺とカロンの師匠の娘だ」

「ほんとにそれだけか?」

 シセルがにやりと笑う。

「あんたがそいつのことばかり考えてるって、リーシェンは言ってるぞ」

「そこにいるのか?」

 リーシェンというのは、シセルを拾って育てたという精霊の名前だと聞いている。シセルがうなずく。

「俺の隣で手紙読んでる。ちなみに声に出して」

 見えないし聞こえないのだが、知らない人間――精霊だが――に読まれるのは恥ずかしい。そそくさと手紙をポケットにしまう。

「いいところだったのに、だってさ」

「音読されてたまるか」

 精霊はなんと人間の心が読めるらしい。リーシェンとやらが言うことは本当だ。アジェスはフォルミカのことばかり考えている。ずいぶん前から、少なくとも破門にされた日からずっとそうだ。

「なあ、俺がどうしたらいいか、精霊さんに聞いてくれよ」

「そんなことぼくには関係ない、って言ってる。どうでもいいってさ。リーシェンはこんな感じだから、聞いてもどうしようもないと思うぜ? あれならイーズかラティカを呼んで聞く?」

「いや、いいよ」

 アジェスは別の精霊の名を出したシセルの申し出を断った。

 やるべきことはわかっているのだ。

 約束を果たす。

 ――上級魔法使いになって、迎えに行く。

 ずっと待っているとフォルミカは言った。いくつになっても、会えなくてもずっと待っているから、と。

「会いたいんだろ、そいつに」

 会いたいに決まっている。会って真実を本人の口から聞きたい。だが次に会うときは上級魔法使いになったときだと約束したのだ。

「アジェスが行かないなら、俺が会いに行くぜ」

「……好きにすれば。俺には関係ない。結婚おめでとう、とでも伝えておいてくれ」

 素直じゃねえなあ、とシセルがつぶやいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ