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私の夫を殺してください  作者: 三愛 紫月


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3/3

夫を殺してください

 この男を信じていいのかは、わからない。

 だけど私をいじめていた人間と同じ名前を口にしたのは、紛れもない事実だ。



「そこの公園で話そうか」

「わかった」

「飲み物買ってくるよ」

「いらないわ。それより早く話してくれない」

「わかった、わかった」


 公園のベンチに並んで座ると男はすぐに話をしてくれる。


 男の名前は、月城博哉つきしろひろや

 年齢は、43歳。

 妹とは、8歳離れているという。

 妹は、私と同じ35歳だ。

 

「妹の名前は月城芽衣子つきしろめいこだった」

「だった?」

「そう。25歳の時に神倉院長に整形してもらって顔も名前も過去も全部捨てた」

「私と同じね」

「あんたも?」

「あんたじゃないわ。私の名前は久間真理亜じゃなくて。本当の名前は、星村りりあ」

「りりあって名前聞いたことあるな」

「元アイドルで今は女優をやってる雪村りりあでしょ」

「彼女か……海外にも進出したりして引っ張りだこだから聞いたことあったんだな」

「私が中学2年の時に彼女が突然現れたの。それから、いじめは酷くなった」

「3000年に1人の美少女って言われてたよな、確か」

「そう」

「星村さんって呼んでいいのかな?」

「ええ」

「星村さんが悪いわけじゃない。いじめた奴が悪いんだ」



 月城さんは、私の目を見て力強く言ってくれる。

 でも、この人だって昔の私を見たらいじめていたはずだ。



「顔は変えたなら、昔の写真はないんだよな」

「あるわけないわ」

「そうだよな。自分の顔なんか嫌いだよな」

「嫌いだったわけじゃなかった。いじめられるまでは……」

「それなら良かった」

「何がいいのよ」

「産まれてきた顔を嫌いじゃない瞬間があったってことが良かったんだよ。あいつにもあったかなーー」



 月城さんは、目を細目ながら空を見つめている。



「きっとあったんじゃないかな。最初から、自分の顔が大嫌いな人なんて、そんなにいないはずだから」

「そうか。それを聞けただけでもよかったよ。話しは逸れちまったけど。それから、芽衣子は神倉にもらった新しい名前で新しい人生を歩み始めたんだ。俺には、時々会ってくれてたんだけどな。それで、3年前。神倉にもらったチケットで行ったコンサートで三原剛毅に出会ったんだ」

「それで」

「半年ほどの交際期間を経て、2年前に2人は結婚した」




 私と同じ。

 これは、偶然?



「新居での生活が始まって、すぐに妹は自殺した」

「どうして?」

「わからない。俺の勝手な憶測だと愛した夫が自分をいじめていた男だと知った絶望はすごかったんだと思う」

「すごいなんてもんじゃないわ」

「まるで、経験したみたいな言い方だな」

「今、まさに経験してるのよ」

「って、もしかして、星村さんも妹と同じだったりするのか?」



 月城さんは、驚いた顔をしながら私を見ている。

 そこそこ大きな目が飛び出してしまいそうですごく怖い。



「同じです」



 小さく呟いた言葉を月城さんは、すぐに拾う。



「同じって、全部か?」

「はい」

「嘘だろ。いや、やっぱりと言うべきか」

「やっぱりですか?」

「ああ。俺は、神倉院長がやったんだと思ってる」

「神倉院長がですか?何のために?」

「金のために決まってるだろ」

「お金のため……。それはあり得ません」

「まだ、神倉を庇おうって思ってるのか?」

「庇うわけじゃありません。私はあの人を知っています。お金で動くなんてありえません」

「じゃあ、何で動いたんだよ」


 

 神倉先生がお金で動かないことは断言できる。

 じゃあ何で動いたかはわからない。



「直接、神倉先生に聞きに行きましょう」

「待て待て。教えてくれるわけないだろ」

「そんなことないと思いますよ」

「あるんだよ」

「何で断言できるんですか?」

「直接聞いたからだよ。妹が死んでしばらくしてからな」

「それじゃあ、どうすれば……」

「なあ、星村さん。俺に協力してくれないか?」

「協力ですか?」

「ああ。俺1人じゃ解決出来なかったことが星村さんとなら出来そうな気がするんだよ」

「何を協力すればいいんですか?」

「俺は、神倉に吐かせて。西山を殺す」

「西山をどうして?」



 月城さんは、西山が妹さんを殺したのではないかと疑っているという。

 西山は妹さんの葬儀のあと、忽然と姿を消したというのが理由みたいだ。




「私の夫も殺してください」

「おい、おい。大きな声を出すなよ」



 西山を殺すという月城さんの言葉を聞いて、私はつい叫んでしまった。



「それで星村さんの夫の名前は?」

「藤崎一弥……」



 月城さんはその名前を聞いて驚いた顔をしながら「殺してやる」と言った。



「もしかして、星村さんが言っていたいじめの相手って」

「私の時は、西山、藤崎を筆頭としてだったけどね」

「ってことは、星村さんは藤崎と結婚したのか?そんなわけないだろ。名前でわかるだろ」

「あいつの今の名前は久間智春。顔も変えているから、わからなかった」

「顔も名前もかえてる。西山と同じだな。で、いつ出会って結婚したんだ?」

「出会ったのは1年前。結婚したのは、2週間前」



 月城さんは私の言葉に頷きながら「それならまだ間に合うな」と言っている。



「本当に協力してくれるんだな」

「もちろん」

「わかった。それなら、今から言う話をよく聞いてくれ」

「何?」



 私の目を見つめると月城さんは「過去に戻る」と言った。



 過去に戻る?

 何を馬鹿げたことを言っているのだろう。

 私は、月城さんの言葉に笑ってしまう。

 



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