音楽
幼馴染とは音楽の波長が合い、それなりに仲が良かった。
音楽の才能が自分よりも上だと薄々気がついた時から段々、疎遠になっていった。それに伴って音楽を聞かなくなった。
気が付けば、彼の顔を見たのはテレビ番組での出演が最後だった。
そして、二度と顔を合わせる事は無くなった。彼は自殺した。
遺書は家族に宛てたモノと自分に宛てたモノがあった。
「君が音楽を全く聞かなくなったと聞いた。
周りは凄い凄いと言うだけで、みんな僕と一緒に歩み寄ってくれない。
君までいなくなってしまったら、誰に自分の音楽を聞かせてやればいいかわからない。
死ぬのは怖いけど、生きていく理由が見つけられない。
ねぇ、置いていかないで。」
こんな感じの内容が便箋10枚に書かれていた。
所々、便箋の下に涙の跡がある。
急いで音楽アプリのサブスクに入会した。
彼の曲すべてに懐かしさを感じていた。
理由はすぐにわかった。昔の自分が好きだった音楽の要素が入っていた。
つまり、自分に向けて作曲していた。
最新曲になるにつれて、寂しく悲しい曲調になっている。
その歌詞に込められたメッセージが最後のSOSだとすれば、胸が張り裂けそうになる。
この気持ちをどこに向けたらいい。
そうだ、作曲をしよう。
曲のテーマはただ一つ。
彼への鎮魂歌だ。




