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バレンタイン
バレンタイン一ヶ月前。
お菓子が愛の象徴にされる日がだんだん近づくのは少々痛々しい。
でも、お菓子作りは好きだ。完成したお菓子をSNSに投稿するのが習慣化するくらいには。
クラスメイトに呼び出された。
「バレンタインに最適なお菓子の作り方を教えてくれませんか?」
一瞬、私のスマホが目に入って、趣味がバレてしまった。
正直頼られるのは嬉しいので承諾した。
バレンタインの夕方、クラスメイトは私の袖を掴んで俯き、涙ぐみながら何度も「ごめんね」と謝った。
一緒に丹精込めて作ったバレンタインのチョコは、好きな男子へ贈った数時間後には、踏み砕かれた状態でゴミ箱に入っていた。
作り始めた最初は失敗作ばかりだったが、男子への想いがお菓子作りを上手くさせた。
だからこそ、この痛みは想像を絶する。
どんな言葉も今の彼女には傷つける。
なので、贈るのは言葉ではない。
「これ食って元気出しな」
チョコケーキを出した。クラスメイトと一緒に作ったモノとはまた別だ。
あんなに熱心に作るから、君の気持ちを知りたくなった。
お菓子作りは好きだ。この甘味が君に届いたらいいな。




