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欠陥能力と断罪された俺が、管理社会の“例外”だった話  作者: うまれつきウタマロ


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4/7

平和と安全の定義


 映像は、淡々と始まった。


 古い記録特有のノイズが走り、画面中央に無機質な文字が浮かび上がる。


――第三次世界大戦・終結記録

――人類適応型変異ウイルス投下後経過報告


 主人公は、椅子に固定されたまま、それを見せられていた。


 逃げ場はない。

 これは“説明”ではなく、“手続き”なのだと直感する。


 第三次世界大戦は、資源と人口、そして管理権を巡って起きた。


 戦況は長期化し、従来兵器では決定打に欠けた。

 そこで各国が投入したのが、生体そのものを変質させる兵器——

 能力発現ウイルスだった。


 ウイルスは空気感染型。

 しかし発現する能力は、個体ごとに異なる。


 ある者は身体能力を強化され、

 ある者は感覚を拡張され、

 ある者は常識の枠では測れない“変化”を起こした。


 それは進化ではなく、変異だった。


「重要なのは、能力そのものではありません」


 映像に重なるように、ナレーションが入る。


「能力が“予測不能な抑止力”として機能したことです」


 能力者同士の衝突は、従来の戦争を成立させなかった。

 戦線は崩壊し、国家は“勝利”よりも“管理”を選ぶようになる。


 戦争は、終わった。


 正確には——

 終わらせざるを得なくなった。


 ウイルスは回収できなかった。

 ワクチンも、完全な無効化手段も存在しない。


 能力は世代を超えて、低確率で引き継がれる。


 人類は、変わってしまった。


「そこで我々は、選択を行いました」


 画面が切り替わり、整然とした都市映像が流れる。


「能力を排除するのではなく、管理するという選択です」


 能力者を登録し、数値化し、階級分けする。

 発現条件、危険度、再現性、社会適合率。


 すべてをデータとして扱う。


「管理とは、支配ではありません」


 ナレーションは穏やかだ。


「予測と抑制です」


「能力という不確定要素を可視化し、

 社会から“事故”を排除する」


「それこそが、第三次世界大戦後に確立された

 平和と安全の正体です」


 画面には、犯罪発生率の低下。

 紛争件数の激減。

 平均寿命の上昇。


 数字は、雄弁だった。


「欠陥能力とは、劣っている能力を指す言葉ではありません」


「測定不能、再現不能、

 管理体系に組み込めない能力」


「それらは、社会にとって“リスク”です」


 主人公は、無意識に唾を飲み込んだ。


「あなたの能力は、現行の管理基準に適合しません」


 映像が止まる。


「それは、あなたが異常だからではない」


「——社会が、あなたを理解できないからです」


 照明が明るくなり、扉が開く音がした。


 職員が入ってくる。


「以上が、あなたが置かれている状況の“事実”です」


「我々は、あなたを排除しません」


 淡々と、だがはっきりと告げる。


「管理します」


主人公は理解してしまった。


 この世界において

 “平和と安全”とは——


 理解できないものを、

 理解しようとせず囲い込むことなのだと。



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