ドルオタ目覚める
5歳の洗礼の日――教会は薄明かりに包まれ、静かな祈りの声が響く。この国では、5歳になると洗礼の儀を受け、ステータスやスキル、加護を得ることができる。アルフォンス・ベイクハイト――元の日本では神谷悠真という名前の、普通のサラリーマンだった少年は、意識の奥底で前世の記憶を取り戻す。
(……あれ、俺……ここは……? そうか……転生したんだ……)
幼い身体の中で、過去の記憶が鮮明に甦る。
初めて推しのアイドルに出会った日のこと、毎週のように握手会に通ったこと、初の武道館ライブで涙を流しながら熱狂したこと……。
そしてあの、突然の事故――トラックに轢かれて死んだ日の光景まで、すべてが脳裏に蘇る。
目の前に一人の女性が現れた。長く銀色に輝く髪、透き通る肌、深く澄んだ碧色の瞳。圧倒的な美貌を持つ、絶世の美女だ。悠真は息を飲む。
「……あなたは……誰?」
小さな声で問いかける。
「ふふっ、びっくりした? 私は女神よ。あなたの魂を選ばせてもらったの♪」
悠真は戸惑い、思わず後ずさる。
(女神……? なんで俺なんだ……?)
「お願いがあるの。この世界でちょっとだけ、世界のために頑張ってほしいの」
女神は両手を胸の前で揺らしながら言う。
「その代わり、第二の人生は、あなたの好きに生きていいよっ☆」
(好きに生きていい……でも……異世界にアイドルはいるのか?)
悠真は問いかける。
「ううん、いないの~。それどころか娯楽なんてほとんど発展してないのよ♪」
女神は肩をすくめて笑った。
(推しを追えないなんて……どうしてもやりたいことが……)
「そんなぁ~。あ! それなら自分で作っちゃえば?」
女神は軽く跳ね、瞳を輝かせる。
「……自分で、作る……? そ、そんなことできるのか……?」
「ふふっ、もちろんっ☆ 大変かもしれないけど、楽しんだ分だけ強くなるの。ほら、スキルや加護も授けられるからね!」
女神は片手をひらりと振り、悠真にスキルの名を告げる。
「スキル【エンタメ制作】よ。作りたいものの工程や道具を把握できるし、地球で存在していたものも作れる。利用者が増えればポイントがもらえて、魔法やステータス向上にも使えるの♪」
悠真は目を丸くし、息をのむ。
(……チートすぎる……。こんなスキルがあれば、俺がやりたかったことが全部……)
「……具体的に何から始めればいいんだ?」
思わず尋ねる。
「ふふっ、そこはあなた次第よ♪ 思いついたことから始めればいいの」
女神は軽く笑い、体を小さく跳ねさせる。
(……なるほどな……まずは手探りでもやってみる価値はあるか)
少し前向きな気持ちが芽生える。
「楽しんだ分だけ強くなるから、焦らなくて大丈夫☆」
女神は軽く手を振る。
(よし……どうせ転生するなら、このチャンスを活かして自分のやりたいことをやってみよう)
決意が胸に宿る。
女神はにっこり微笑み、手を振った。
「じゃあ、第二の人生、思いっきり楽しんでねっ☆
悠真くん……いや、アルフォンスくん!」
光が消えると、意識は現実に戻った。5歳のアルフォンスとして、教会の洗礼式に立っている。
今日からこまめに投稿するので温かい目で見守ってください!