このT字路沿いでは毎月誰かが死ぬ
私の実家は、高台の街の一番端にあって、北側窓から見えるのは葛の葉の生い茂った法面と、その向こうの低地に整然と並んだ新しい戸建て住宅群だった。
南側にあるのは昔からの古い街で、T字路の突き当たりにM家があり、我が家はM家の裏に位置している。
以前は、M家は無くて、我が家がT字路の突き当たりだった。
変形した台形のような土地が、道路ではなくて家の敷地だとわかったのは、M家が建ち始めた時だ。
南側を遮られた挙げ句、道路に出るためには家並みをぐるりと回り込まなくてはならない。ちょっとした恨みのようなものを抱いた私達には、その家の奥さんは意地悪そうに見えた。
「猫を飼い始めたの? 道理で貴方、顔が猫に似て来たわね」
と嗤うような人だった。
ある時、このT字路沿いの家で、毎月誰かが死ぬというまるでオカルトのような噂が広まった。
あやふやな噂なので、いつ、どの家から始まったという確かな話ではない。
先々月はH家で病死、次の月には北隣のO家で老衰死、今月はその北隣のS家で事故死と、何かが北に向かって移動するように、毎月死人が出た。
角にある家には、私の中学時代の同級生が、両親と兄との四人で住んでいた。色白でしっかり者の女の子、という印象で、運動部に入っていて身体は丈夫な方だった。
隣の家で葬式が出た次の月、彼女は若くして亡くなった。
慌てたのは、T字路の突き当たりにある、M家だ。
次は自分達の番に違いないと、翌月M家は、知り合いや親戚の家を転々とした。空き家からは当然死人が出ることもなく、その裏手にある我が家も恙なく一月を過ごした頃に、M家は帰還した。
「まるで探しにきたみたいに、近くに住む親戚が急に死んだけれど、仲は良くなかったからいい気味だわ」
と、M家の奥さんはうちの母に語った。
それ以降この街では、毎月人が死ぬという話は聞かない。
未だにM家は苦手
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