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第15幕 せっかくなので転生します

 目が覚めると、そこは地球上とは思えない、吸い込まれそうなほど幻想的な場所だった。


「ようこそ、死後の世界へ」


 透き通るような女の声がする。

 そこには、人間離れした美貌びぼうを持つ少女がいた。


「……これは夢か?」


「いいえ、現実です」


「そうか……俺は死んだのか」


 何故だろう、何一つ思い出せない。

 自分には本当に生きていたのかすら疑問に思うほどだ。


「……どうかしましたか?」


「いや、生前の記憶が思い出せなくて……」


「たまに居るんですよね、死んだ時のショックで記憶を失ってしまう人が」


 少女は俺に同情の目を向けた後、安心してくれと言わんばかりに優しい笑顔で提案してくる。


「良かったらもう一度人生をやり直しませんか?」


「え?」


「そんなに若くして死んでしまうだなんて、あまりにも可哀想です。私ならあなたを生き返らせることができます。記憶を戻してあげることはできませんが……」


「あなたは一体何者ですか? ただの女の子には見えませんが…」


「あら、自己紹介が遅れましたね。私の名前はイシス、生と死をつかさどる女神です」


 イシス……聞いたことがないな。

 というか女神ってなんだ?


 何も思い出せない。

 だけど俺にはやるべきことがある……気がする。

 なんだろう。

 只々《ただただ》得体の知れない使命感が、俺に生きろと訴えかけてくる。


「そうですね、せっかくですしもう一度人生をやり直そうかな」


「では、あなたが元いた世界に戻してあげますね」


 イシスが何かの詠唱を始める。

 足元に魔法陣が浮かび上がり、やがて眩い光に包まれ、俺の視界は真っ白になっていく。


「それでは……えーっと……帯向おびなたさん! 願わくばあなたの第二の人生が良きものになります様に……」


 オビナタ……俺の名前はオビナタって言うのか。

 女神の言葉を聞きながら、俺の意識は遠のいて行った。

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