席替え。それは地獄の始まり
どうして俺はこんなにも運が無いのだろう。
「はぁ…」
「ちょっと、何ため息ついてんのよ」
隣の席に座っている月菜が喧嘩腰に声をかけてきた。
「こんなことってあるか?なんで席替えでこいつの横なんかに…」
「はぁー?私の方が嫌なんですけど?」
そう、いまさっき席替えがあった。そしてまさかの隣がこいつ。終わった。俺の高校生活終わった…
「おい」
俺の背中をバシン!と叩きながら由真が小声で話しけてきた。
「いてぇよ!で、なんだ?」
俺も小声で由真にそう聞き返す。
「お前…頑張れよ!」
「は?あなた先程言わなかったかしら?ブチ殺すぞ?」
ドスの聞いた声を発しながら由真を睨みつける。
「過激派反対!!いや、でもなぁ…お前はどう思ってるか知らないが、柚木さんは…」
「未佐良君?私がどうかしたの?ふふふふふふふふ…プチ殺しますわよ?」
「…ごめんなさい」
由真は心底怯えたような顔をしながら謝っていた。
「流石月菜、物騒なやつ」
俺は茶化すようにそう言った。
「はぁ?なんなのあんた?今あんたに話しかけてないんだけど」
「へぇへぇ、それはどうもすいませんねぇ」
「チッ!ほんと人をイライラさせるのが上手いわね」
「ありがとう、俺もそう思うよ」
「いや褒めてないんだけど」
「いや知ってるけど?」
「…」
「…」
「「チッ!!!!」」
「お前ら…怖いぞ?」
由真が恐る恐るといったふうにそう言ってきた。
あぁ、ヤバい。そろそろ限界が近づいてきてる。そう自分で分かるほど月菜にはイライラしていた。
「ちょっと月菜ちゃん、可愛い顔が台無しだよー?」
そんなふうに柔らかい声色で月菜に話しかけたのは仙波蘭 杏寿菜だった。仙波蘭は栗色の髪色でふわっとしたボブ。月菜は綺麗という雰囲気だが仙波蘭は対照的に可愛いといった印象を受ける女の子だ。正直めちゃくちゃ可愛いと思う。月菜みたいに俺に嫌ごと言ってこないしな!
「杏寿菜…ごめん。でもこいつが悪いのよ!」
月菜は俺に向かって真っ直ぐ右手の人差し指を指してきた。
「はぁ?悪いのはお前だろぉ?」
「こら!月菜ちゃんも至芽乃木君もお互いを尊重しなきゃダメだよ!」
「わ、悪い」
「ごめん…」
俺と月菜は仙波蘭に謝った。あぁ…いい子や…めちゃいい子や…それこそ幼馴染を交換したいくらいに。
「うん!分かったらいいんだよ。あ、それと至芽乃木君」
「ん?なんだ?」
俺は仙波蘭に呼ばれて月菜と由真から少し離れた所に行った。
「至芽乃木君、月菜ちゃんがあんなふうに感情を表に出せる人って至芽乃木君くらいしか居ないから月菜ちゃんのこと大切にしてあげてね?」
「なんで俺が…」
「わかった?」
笑顔でそう言った仙波蘭の目は笑っていなかった。怖ぇ…
「わ、わかった」
「分かってくれて良かったー。あ、それとこの話は月菜ちゃんにはしないでね?変な気を回したって怒られそうだから」
「あぁ、分かった」
「それじゃあよろしくね」
友達想いのいい子だな。俺は去っていく仙波蘭の背中を見ながらそんなことを思った。
それから自分の席に戻る。すると月菜が話しかけてきた。
「ちょっと、杏寿菜と何話してたのよ」
言うなって言われてるからな。
「いや、別にそんな大事な話じゃない」
「なによ、教えなさいよ」
「だからたいした話じゃないって言ってるだろ」
「…そう、あんたは私には言えないようなこと杏寿菜と話してたのね」
「…まぁそうなるな」
実際言うなって言われたし。
「っ!あっそ!もういいわよ!」
そう言うと月菜はそっぽを向いてしまった。どうしたんだよ急に…いつも変だが今日は一層変だな。
そんなことを思っていると由真が飛んできた。
「おい!緋月!やっぱり柚木さんは…」
「未佐良くぅーん?何言おうとしてるか知らないけどそれ以上口を開くともう一生話が出来ないようにしてあげるわよぉー?」
「…ほんとすんませんでした」
由真はこれでもかと言うほどに綺麗なDOGEZAをしていた。お前にはプライドと言うものが無いのか…
「緋月…やっぱり頑張れよ!」
「は?なんのことだよ」
俺は本気で分からなくてそう言う。
「はぁ…鈍感なのも程々にしておかないと取り返しつかなくなるぞ」
由真は呆れたようにそう言い残すと自分の席に戻って行った。なんだったんだ?
多分次の話でタイトル回収できると思います!
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