4話目:訪れた先
銀混じりの戦闘員は1軒の施設の前に立っていた。2階建ての少し広めの庭のあり、周囲を高めのレンガの壁と柵で覆われている。2階建ての一軒家2つを無理矢理繋げたような外観の施設であった。
そして目の前の正門には『養護施設ひらざか園』と表札が掲げられていた。戦闘員はゆっくりと正門に手を掛けると、そのまま敷地内へと足を踏み入れる。
(……おいおい、なんでこんな孤児院なんかに来てるんだよ)
奏矢は心の中で毒付く。
先ほどは少しばかりの時間動かせた身体もまったく自由が効かなくなり、行き着く先をただただ見るだけであった。とにもかくにも逃げ出したかったのにも関わらず、身体は言うことを聞かずに施設の扉の前へと足は進んでいく。
「わた、し……は」
(え?)
ずっと『帰りたい』としか口にしなかった戦闘員が、突如として別の言葉を紡ぎ出す。
そして扉の近くに置かれた花が植えてある植木鉢をずらして隠してあった鍵を取ると、開錠して施設の中へと入り込む。
「私は、ここに、帰りたかった。ここ、の、子供たち、に会いたかった」
そう言いながら、戦闘員はある一室の前で歩みを止める。部屋には『子供部屋(夕焼け)』と書かれたプレートが下げられており、音を立てないように扉を開けて戦闘員は中を覗き込む。
中は廊下と同じくほとんど真っ暗であったが、数人の寝息がその中に人が居ることを感じさせた。
(あんた、ここの施設に住んでいたのか?)
「そうだ。思い出してきた、私は、ここの園長だったんだ。私の名前は確か、えぇと」
そこまで戦闘員は頭を抱えながら考えていたが、ふと廊下に飾られていた『ひらざか園のみんな』と書かれた大きき写真が張られているのに気がつく。
写真には騒がしそうに写る小学生から中学生程度の15人は居る子供たちの横で、優しそうに微笑む初老の男性が立って居た。その男性の下には『沓野輪園長先生』とあり、それを確かめるように戦闘員はそこを指でなぞる。
「そうだ、私は沓野輪。そうだ、そうだ」
(おいおい、あんた大丈夫か)
奏矢は戦闘員もとい沓野輪の言動に対して心配になってくるが、そこに背後から声を掛けられる。
小さくか細い少女の声。その声に反応して沓野輪は背後を見やる。そこにふわふわの無地のパジャマを着た小柄な中学生ぐらいの少女が立って居た。少女の格好といえば髪はボブ程度で、整った顔には怯えの表現を浮かばせていた。その少女を見て沓野輪はぽつりと声を出す。その少女を見て沓野輪はぽつりと声を出す。
「天野……リリ……?」
「なっ、なんで私の名前を……?」
リリと呼ばれた少女がびくりと身体を跳ねさせる。
沓野輪がおもむろにリリに手を伸ばそうとしたとき、施設が大きく揺れて辺りが明るくなるほどの豪炎が辺りを突如して包込む。そして施設の壁を外側からぶち破って現れたのは逃げ出した戦闘員である沓野輪を追ってきた犬型怪人であった。