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27話目:ごまかし

ーーーん、天野さん! ねぇ、なんでこんなところで寝てるのっ!」



「…はっ」




 リリはショッピングモールの駐車場の本当に端、車止めを椅子がわりにして座り込んでいるところを(ゆう)によって声を掛けられる。その拍子に意識がなかったリリは目を覚ます。そして寝ぼけ眼で怒り顔の優へと視線を向ける。



「『はっ!』じゃないよ、本当に心配したんだからね!」



「あ〜…本当にごめんなさい」



「はぁ〜…。にしてもどうしてどこか行っちゃったの? なにかあった? 顔色、凄く悪いけど」


「…う〜ん」



リリは怒りながらも心配してくれている優に対してどう言い訳しようか悩む。ちらりと駐車場に設置された時計を見ると、優たちと離れて怪人の元に向かってから40分程度は経っていた。そして再度、優を見やると顔が真っ赤になって汗が頬から滴っていた。どうやらリリとはぐれてからずっと探し続けてくれたのだろう。そんな優に嘘をつくのはリリの胸が痛むが、よもや怪人と闘っていたなど言えるはずもない。



「えぇと。そ、そう! ショッピングモールから逃げてきた人たちに巻き込まれちゃって。でみんなに連絡を取ろうと思ったんだけど、その、急に気分が悪くなっちゃって」



 優に対してなんとか言い繕い、とにかく謝り倒す。ふと、記憶を辿りながら言い訳を続けていたリリであったが、牛型怪人(ミノタウ)を相手に闘ってから記憶がまるでコマ送りのように途切れ途切れになっていることに気がつく。



「本当にごめんなさい! (あれ、なんでだろう。よく思い出せない…)」



「…わかった、わかった。とにかく天野さんが無事でよかったわ。今、(しい)佳奈(かな)に連絡するから」



 優はショッピングモールの方に視線を向ける。

優やリリが出てきたショッピングモールの入り口にはパトカーが数台横付けされ、入り口には立ち入り禁止のテープが貼られていた。そして数人の警察官が慌ただしく中に入っていくところであった。



「どっちみち、もう今日は遊べなさそうだし」



 優は残念そうにため息を吐くと、スマートフォンで椎と佳奈に電話をしはじめる。内容はリリが無事に見つかったこととこのまま帰ろうという相談であった。その優と椎たちの会話を聞きながら、リリは銀のスライム(奏矢)に出会ったときのことを思い返していた。



(ねぇ、奏矢(ソーヤ)さん。ねぇ)



 リリは鞄の底にいる奏矢へと触れると、頭の中で奏矢に話しかける。だが、返事はない。しばらくそうしていたが、優が通話を終えるのを見て会話を諦めて鞄から手を引く。



「椎も佳奈もこっちにすぐに来るって。 …ねぇ天野さん、立ち上がれそう?」



「あっ、うん。大丈夫、だと思う」



 優は思い付いたように近くの自販機で水を買うとリリへ手渡す。リリはキョトンとしていたが、すぐさま立ち上がって頭を下げる。



「あの、これ」



「いいよ、いいよ。これくらい。ほら、気分が悪いんだから座って休んでて」



 そう言って優はリリを元の場所へと座らせる。

そして優がリリへと気遣いしているうちに優とリリを見つけた椎と佳奈が駆け寄ってくる。



「もう〜、天野さん! 心配したんだからね!」



「椎、そこはわたしが天野さんにキッチリ言ったから。とりあえず今日は帰ろう、ね?」



「…そうね。天野さんも体調良くなさそうだし、もう遊ぶ気分じゃないしね〜」



 そんなやりとりを交わしながら、リリの回復を待って4人で家路へと着くのであった。





※※※※※



 リリたちが立ち去ってから入れ替わるようにパドランブを回してサイレンを鳴らした一台の青いアウディが、ショッピングモールの駐車場へと入ってくる。そして封鎖された入り口近くに荒々しく止めると運転席からはパンツスーツの女が、助手席からは真っ黒なスーツ男が降り立つ。



名瀬(なせ)さぁん。私の予想通りでしょう?」



「ええ、たしかに。氷室(ひむろ)さんの言う通りですね」

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