静寂の嵐06
補助術式は優秀だった。
ぶっちゃけこれがあるなら毛皮はいらない可能性すら出た。
汗疹や湿疹などの皮膚病から、我慢が利かず誤って漏らしてしまうという事故をやらかした時でも汚れることはなく清潔を保てた。驚きだ。
それだけではない、環境適合という謎の式を試したら寒かったはずの気温が適温くらいに感じる。
よく分からないまま破壊成長とかも組み込んだのでたぶん防具として壊れるごとに成長していくという仕様になったのだろう。
これでひとまず全裸で戦闘を行うという極めて重大な危険性は消えてなくなった、我ながら良い仕事をした!
上は白、袴は紺という巫女服っぽい物に仕立ててみたが実は途中で焦った事があった。
糊ってデンプンだよな?と凝り性に陥ってしまったのである。
別に聖職者でも何でもないが僕はネトゲーでも修行中は自分のキャラに巫女服を着せてやっていたという変な性癖とジンクスがあった。
もちろん不都合があればまた作り直すつもりだが、これはどうやら今生ではリアルにやってしまったらしい。
狩った得物たちの皮から防具を作り、相も変わらず様々な補助術式を検証。
そうしているうちにこの世界を訪れてから春になっていた。
生前は天涯孤独だった訳である。
とはいえ和式の巫女服の上には鎧下に着るような鎖帷子もどきと胸当てくらいは着けている。
その上に毛皮のマントを纏うような形なので少しは成長しただろう。
最近覚えた事は武器に属性を込めて使う事が出来るという事だ。
例えば遠距離の相手に弓矢を使うとして普通は風の強さや距離をしっかりと測らないと当てることは難しい。
しかし、矢に風の属性を込める事で推進力は増してさらに通したい軌道と着弾位置まで素人の自分でも計算して紡ぐことができる。
性質付与、と言ったところだろう。
これでもう一つ研究課題が出来た。
属性と性質が異なるなら一つ試してみよう。
火の性質は燃焼と熱、水の性質は固体流体気体としての性質と浄化、土は大地や地形だけでなく物質に関わるもの、風は大気圧によって引き起こせる現象。
そしてこれらの性質を混ぜ合わせてさらに強力にする事も出来る。
半年ほどの研究はここから大まかな組み合わせ方も、ではあったがその辺りは省略。
色々とやった拠点で愛着はかなりあったが最初に感じた戦う為に呼び出されたという勘がある以上はこれ以上のんびりしているよりも世界観を知るために人里を探してみたい。